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伝熱工学

接触熱抵抗シミュレーター

2つの固体を押し付けた接触面に生じる「接触熱抵抗」を評価するツールです。接触圧力・表面粗さ・伝達熱量・界面材を変えると、接触熱コンダクタンスと界面温度差(温度ジャンプ)がリアルタイムで分かり、放熱経路のボトルネックを見つけられます。

パラメータ設定
界面の種類
基準接触熱コンダクタンス h_c0 を自動設定(1 MPa・粗さ1µm基準)
接触圧力 P
MPa
界面を押し付ける圧力。高いほどアスペリティが潰れて接触が増える
表面粗さ Ra
µm
接触面の算術平均粗さ。小さいほどすき間が減る
伝達熱量 Q
W
界面を通って流れる熱量
公称接触面積 A
cm²
見かけ上の接触面積(実接触はこの1〜2%)
計算結果
接触熱コンダクタンス h_c (W/m²K)
接触熱抵抗 R_c (K/W)
界面温度差 ΔT (K)
接触面積 A (cm²)
熱流束 (W/cm²)
判定
接触界面の拡大図 — アスペリティと熱流れ

2つの固体は凹凸(アスペリティ)の頂点だけで触れ合います。熱流線は数少ない接触点へ収縮し、界面で温度が ΔT だけジャンプします。

接触熱コンダクタンス vs 接触圧力
界面温度差 vs 表面粗さ
理論・主要公式

$$h_c=h_{c0}\left(\frac{P}{P_{ref}}\right)^{0.85}\left(\frac{R_{a,ref}}{R_a}\right)^{0.6}$$

接触熱コンダクタンス h_c [W/m²K]。h_c0:界面材で決まる基準値、P:接触圧力、R_a:表面粗さ。基準は P_ref=1 MPa、R_a,ref=1 µm。圧力が高いほど、粗さが小さいほど h_c は増える。

$$R_c=\frac{1}{h_c A},\qquad \Delta T=Q\,R_c$$

接触熱抵抗 R_c [K/W] と界面温度差 ΔT [K]。A:接触面積、Q:伝達熱量。アスペリティ間に閉じ込められた空気は熱伝導率が約0.026 W/mK と極めて小さく、ほとんど熱を通さない。だから空気を排除する界面材(TIM)が効くのである。

接触熱抵抗とは

🙋
CPUクーラーを取り付けるとき、必ずグリスを塗りますよね。金属同士をぴったり密着させているのに、なぜわざわざグリスがいるんですか?
🎓
いい質問だね。じつは「ぴったり密着」っていうのは見かけだけなんだ。どんなに磨いた金属面でも、ミクロに見ると山と谷だらけのデコボコ(アスペリティ)になっている。2枚を押し付けても、本当に触れ合っているのは見かけの面積のたった1〜2%くらい。残りはすき間で、ふつうは空気が入っているんだよ。
🙋
え、1〜2%だけ!?じゃあ熱はそのわずかな接触点を通って流れるしかないってことですか?
🎓
そのとおり。広い面を流れてきた熱が、界面では数少ない小さな接触点に「ぎゅっ」と絞り込まれる。これを収縮抵抗と呼ぶんだ。流れがくびれる分だけ熱が通りにくくなって、界面をまたいで温度が不連続に飛ぶ。これが接触熱抵抗 R_c で、その界面温度差を ΔT と言う。左の界面の拡大図で、熱流線が接触点に集まって、界面で温度がカクッとジャンプしているのが見えるはずだよ。
🙋
なるほど。でもすき間に空気があるなら、空気も多少は熱を運んでくれませんか?
🎓
それがほとんど期待できないんだ。空気の熱伝導率は約0.026 W/mK。アルミは約200、銅は約400もあるから、空気は金属の千分の一以下しか熱を通さない。アスペリティ間に閉じ込められた空気の層は、実質的に「断熱材」として働いてしまう。だから界面の大部分は熱の通り道として死んでいる、と考えていい。
🙋
それでグリスの出番なんですね。グリスは何をしているんですか?
🎓
そう。サーマルグリスやサーマルパッドは、その空気のすき間を「熱を通す物質」で埋めるんだ。グリス自体の熱伝導率は金属ほど高くない(数 W/mK程度)けど、空気の100倍以上はある。すき間を空気からグリスに置き換えるだけで、接触熱コンダクタンス h_c が数倍に跳ね上がる。左の「界面の種類」を乾燥接触からグリスに切り替えてごらん。h_c が一気に増えて、ΔT がストンと下がるのが分かるよ。
🙋
グリス以外に、接触熱抵抗を下げる方法はありますか?
🎓
あるよ。大きく2つ。1つは接触圧力を上げること。強く押せばアスペリティの頂点が潰れて、実接触面積が増えるから h_c が上がる。式でも h_c は P の0.85乗で効いている。もう1つは表面を仕上げて粗さ R_a を下げること。デコボコが浅くなればすき間が減るからね。実務では「圧力を確保+面を仕上げ+界面材を塗る」の三段構えで攻めるのが定石なんだ。

よくある質問

2つの固体を「ぴったり接触」させたつもりでも、表面はミクロには凹凸(アスペリティ)の集まりで、実際に触れ合っているのは公称面積のわずか1〜2%にすぎません。残りはすき間で、多くは空気が入っています。熱はこの数少ない微小接触点に絞り込まれて流れるため、界面で熱の流れが「くびれ(収縮抵抗)」を起こし、界面をまたいで温度が不連続に飛びます。この温度ジャンプの起こしやすさを示すのが接触熱抵抗 R_c で、本ツールは R_c と界面温度差 ΔT を計算します。
本ツールは工学的な相関式 h_c = h_c0·(P/P_ref)^0.85·(R_a,ref/R_a)^0.6 で接触熱コンダクタンス h_c [W/m²K] を推算します。h_c0 は材料・界面材で決まる基準値、P は接触圧力、R_a は表面粗さです。接触熱抵抗は R_c = 1/(h_c·A)(A は接触面積)、界面温度差は ΔT = Q·R_c(Q は伝達熱量)で求めます。圧力を上げ粗さを下げると h_c が増え、R_c と ΔT が小さくなります。
対策は大きく3つです。(1) 接触圧力を上げてアスペリティ同士を押しつぶし、実接触面積を増やす。(2) 表面を仕上げて粗さ R_a を下げ、すき間を小さくする。(3) サーマルグリスやサーマルパッドなどの界面材(TIM)を塗り、空気のすき間を熱を通す物質で埋める。本ツールのプリセットを乾燥接触からグリス・パッドに切り替えると h_c が数倍に跳ね上がり、ΔT が大きく下がるのが分かります。
金属の熱伝導率は数十〜数百 W/mK あるのに対し、空気はわずか約0.026 W/mK と、金属の千分の一以下です。アスペリティ間に閉じ込められた空気はほとんど熱を通さず、熱は接触点だけを通って流れざるを得ません。つまり界面の大部分が「断熱材」になっている状態です。だからこそ、空気を排除して熱伝導性の物質で埋めるサーマルグリス・パッドが効果的で、CPUクーラーやパワー半導体の放熱で必須とされるのです。

実世界での応用

電子機器の放熱(CPU・GPU・パワー半導体):発熱するチップから、ヒートスプレッダ、ヒートシンク、筐体へと熱を逃がす経路には必ず固体同士の接触界面が含まれます。接触熱抵抗が大きいと、そこで温度が大きくジャンプし、いくら強力なヒートシンクを付けてもチップ温度が下がりません。サーマルグリス(TIM)を適量塗布して空気のすき間を埋めるのは、まさにこの接触熱抵抗を下げるためです。本ツールで乾燥接触とグリスを切り替えると、その効果が界面温度差として見えます。

機械構造のボルト締結部:フランジ継手や機械の取り付け脚など、ボルトで締め付けた金属同士の接触面も伝熱の通り道になります。締め付け力(=接触圧力)が緩むと接触熱抵抗が増え、想定外の温度上昇や熱変形を招きます。本ツールで接触圧力 P を下げると h_c が落ちて ΔT が増えるのが確認でき、締結管理が熱設計に直結することが分かります。

金型・成形・熱処理プロセス:射出成形金型と成形品、ホットプレートとワークなど、接触で熱をやり取りする工程では接触熱抵抗が冷却・加熱速度を左右します。表面粗さや圧力のばらつきが品質ばらつきの原因になることもあり、界面の状態管理がプロセス安定化の鍵になります。

CAE熱解析の境界条件設定:有限要素法による熱解析では、接触界面に接触熱コンダクタンス(GAPCON、TCC など)を境界条件として与えます。この値を理想的な「完全接触」にしてしまうと、実機より低い温度を予測してしまう典型的なミスになります。本ツールのような相関式で h_c の妥当なオーダーを把握しておくと、解析モデルの界面設定を現実的な値に調整できます。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「金属同士が接触していれば熱は自由に流れる」という思い込みです。CAE熱解析でも、接触部を単に「節点共有(完全接触)」でつないでしまうケースが後を絶ちません。実際には接触界面は実接触面積わずか1〜2%の「半断熱の壁」であり、無視すると界面下流の温度を大きく低く見積もってしまいます。発熱密度の高い電子機器では、接触熱抵抗1点の見落としが温度予測を数十℃ずれさせることもあります。接触界面には必ず有限の接触熱コンダクタンスを設定してください。

次に、「サーマルグリスは厚く塗るほど良い」という誤解です。グリスの役割はあくまで空気のすき間を埋めることであり、グリス自身の熱伝導率は金属よりずっと低い(多くは数 W/mK)。厚く塗りすぎると、本来は金属同士が直接触れ合うべき接触点までグリスの層で隔ててしまい、かえって熱抵抗が増えます。最適なのは「アスペリティの谷だけを埋め、山は金属接触を残す」薄い塗布です。本ツールの h_c0 はあくまで適正塗布を前提とした代表値であり、塗りすぎ・塗り不足の影響は別途考慮が必要です。

最後に、「接触熱抵抗は一定値」だと考えること。本ツールが使う相関式は工学的な近似であり、実際の接触熱コンダクタンスは材料の硬さ、降伏応力、表面の波打ち(うねり)、酸化膜、温度、時間(クリープによる接触点の成長)など多くの要因に依存します。同じ部品でも、組み立てるたびに、また使用とともに値が変わります。本ツールは設計初期にオーダーを把握し、対策の方向性(圧力アップ・面仕上げ・界面材)を判断するための道具と位置づけ、最終的な保証には実測やメーカーデータを併用してください。

使い方ガイド

  1. 接触圧力(MPa)と表面粗さRa(μm)を入力します。アルミニウム合金やステンレス鋼の実装値(圧力5~50MPa、Ra0.4~3.2μm)を参考にしてください
  2. 熱流束Q(W/cm²)と接触面積A(cm²)を設定し、シミュレーターが接触熱コンダクタンスh_c(W/m²K)をMalamuth-Mayingerモデルで計算します
  3. 出力される接触熱抵抗R_c(K/W)と界面温度ジャンプΔTから、放熱パスのボトルネック診断を行い、TIM挿入やプレス力調整の必要性を判定します

具体的な計算例

CPU冷却台座(Cu-Al接合)の事例:接触圧力15MPa、表面粗さRa1.6μmで接触熱コンダクタンスh_c≈18000W/m²K、熱流束50W/cm²印加時に接触熱抵抗R_c≈0.056K/Wが算出されます。接触面積5cm²の場合、界面温度ジャンプΔT≈14Kとなり、グリース層追加(h_c低下→R_c増加)でTIM厚さ0.5mmの影響を定量評価できます

実務での注意点