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RF・電磁波シミュレーター

VSWR シミュレーター — 反射係数・定在波比・回帰損失

線路 Z_0 と負荷 Z_L から反射係数・VSWR・回帰損失・ミスマッチ損失を可視化。複素負荷を含めて、整合の良し悪しと反射電力の様子を体感できます。

パラメータ設定
線路 Z_0
Ω
負荷 Re(Z_L)
Ω
負荷 Im(Z_L)
Ω
入射電力 P_in
dBm

Im(Z_L) を正にすると誘導性、負にすると容量性の負荷を表します。完全整合 Z_L = Z_0 のとき |Γ| = 0、VSWR = 1 です。

計算結果
反射係数 |Γ|
VSWR
回帰損失 RL
ミスマッチ損失 ML
VSWR(|Γ|) 曲線

横軸=反射係数 |Γ|、縦軸=VSWR(対数)/黄点=現在の動作点、破線=整合品質ガイド(VSWR=1.22 / 2 / 3)

電力収支
反射電力(線形)
反射電力(dBm)
透過電力(線形)
透過電力(dBm)
理論・主要公式

線路インピーダンス $Z_0$ に負荷 $Z_L$ を接続したとき、不整合により入射波の一部が反射波として返ります。反射係数 $\Gamma$ は次式で与えられます:

$$\Gamma = \frac{Z_L - Z_0}{Z_L + Z_0}$$

線路上の電圧定在波比 $\mathrm{VSWR}$ は反射係数の大きさだけで決まります:

$$\mathrm{VSWR} = \frac{1 + |\Gamma|}{1 - |\Gamma|}$$

反射の大きさを dB で示すのが回帰損失、入射電力のうち負荷に届かなかった割合を dB で示すのがミスマッチ損失です:

$$RL = -20\log_{10}|\Gamma|, \qquad ML = -10\log_{10}(1 - |\Gamma|^2)$$

入射電力 $P_\text{in}$ に対して、反射電力 $|\Gamma|^2 P_\text{in}$、透過電力 $(1-|\Gamma|^2) P_\text{in}$ が成立し、エネルギー保存則が満たされます。

VSWR シミュレーターとは

🙋
アンテナや無線機の話で「VSWR が大事」ってよく聞くんですけど、結局あれって何の数字なんですか?
🎓
ざっくり言うと、線路と負荷がどれだけ「噛み合ってるか」を一つの数字で表した指標だ。線路の特性インピーダンス $Z_0$ と負荷 $Z_L$ がぴったり同じなら反射ゼロで VSWR=1、ずれるほど反射が増えて VSWR が大きくなる。上のシミュレーターで初期値の $Z_0=50\,\Omega$、$Z_L=75\,\Omega$ を見てごらん。反射係数 $|\Gamma|=0.2$、VSWR=1.5、回帰損失 14 dB と出てるはずだ。
🙋
50 と 75 ってよく出てくる組み合わせですね。なんでこの2つが多いんですか?
🎓
同軸ケーブルを設計するとき、電力を最大に運べるのが約 30 Ω、損失が最小なのが約 77 Ω。この間を取って 50 Ω が計測・無線の事実上の標準になった。一方、テレビ受信のように長距離で損失を抑えたい用途は 75 Ω だ。両者をつなぐと、シミュレーターの初期値そのもの——VSWR=1.5 の不整合が必ず生まれる。許容できる範囲ではあるけど、ベストでもないわけだ。
🙋
「負荷 Im(Z_L)」のスライダーを動かすと、実部が同じでも VSWR が悪化していきますね。これは何ですか?
🎓
それがアンテナや実装が抱える「リアクタンス」だよ。Im が正なら誘導性(コイル的)、負なら容量性(コンデンサ的)。$Z_0$ は純抵抗 50 Ω だから、虚部があるほど整合がずれる。実際のアンテナはほとんど純抵抗ではないので、$L$ や $C$ を挟んで虚部を打ち消す「整合回路」を組むのが現場の仕事だ。
🙋
「回帰損失 14 dB」って結局どれくらい届いてないんですか?
🎓
右側の「電力収支」カードを見て。入射 10 dBm(=10 mW)のうち、反射が 0.4 mW で、負荷に届くのが 9.6 mW。dB で言うとミスマッチ損失は 0.18 dB しかない。回帰損失の 14 dB は「反射の大きさ」、ミスマッチ損失の 0.18 dB は「届かなかった割合」だ。同じ整合状態を別の角度から見た 2 つの指標——ここを混同するとスペックの読み違いにつながる。

よくある質問

用途で異なります。アマチュア無線や一般的な業務無線では 1.5 以下が良好、2.0 までが許容範囲とされることが多いです。レーダーや高出力固体送信機では 1.3 以下を狙うことも珍しくなく、これを超えると保護回路が出力を絞ります。一方、受信専用なら 2 程度でも実害は小さく、ノイズフィギュアと比べれば二次的な要因です。
VSWR=2 のとき |Γ|=1/3 で、回帰損失は約 9.5 dB、ミスマッチ損失は約 0.51 dB です。つまり反射そのものは入射の約 11% ですが、負荷に届く電力は約 89% で、dB の数字としては 0.5 dB しか減っていません。「VSWR=2 は十分悪い」と感じる一方、電力欠損だけ見れば 1 割程度、というギャップが VSWR と dB の感覚的な違いを生みます。
本来 Γ は複素数で、位相情報を持ちます。位相は線路上を伝わるにつれて変化するため、線路長によって負荷側で「容量性に見えたり」「誘導性に見えたり」します。VSWR や回帰損失は $|\Gamma|$ だけで決まるため線路長の影響を受けませんが、整合回路を設計するときは位相込みの $\Gamma$ をスミスチャートで追う必要があります。本ツールは |Γ| と VSWR を扱う入門用です。
短絡 $Z_L=0$ では $\Gamma=-1$、開放 $Z_L=\infty$ では $\Gamma=+1$ で、いずれも |Γ|=1、VSWR=∞ に発散します。入射波が全て反射し、負荷には電力が一切届きません。回帰損失は 0 dB、ミスマッチ損失は無限大になります。シミュレーターで Re(Z_L) を 1 や 500 にして Im を大きく振ると、|Γ| が 1 に漸近する様子が確認できます。

実世界での応用

無線送信機とアンテナ整合:送信機の出力段は 50 Ω 負荷を前提に設計されており、アンテナが整合していないと反射波が増幅器に戻ります。固体素子の電力増幅器(PA)では VSWR がしきい値(例えば 2.0)を超えると自動で出力を下げる保護回路を備えるのが普通で、整合状況を常時監視するセンサーが組み込まれています。

ベクトルネットワークアナライザ(VNA)測定:RF 部品の評価は S パラメータ測定で行われ、入力ポートの反射 $S_{11}$ は周波数ごとの $\Gamma$ の値そのものです。VNA は S パラメータからリターンロス・VSWR・スミスチャートを表示し、フィルタ・カプラ・アンテナの整合性能を数十 GHz まで評価します。

テレビ受信と CATV:家庭用テレビアンテナや CATV 系統は 75 Ω が標準で、F 型コネクタや 75 Ω 同軸ケーブルが使われます。50 Ω 機器(測定器など)を直結するとミスマッチを生むため、75 Ω/50 Ω 変換アダプタや、デシベル差分を補正する変換器が必要になります。

マイクロ波加熱と医療応用:電子レンジや医療用マイクロ波(高周波温熱療法など)でも、マグネトロンや RF 源と負荷(食品・生体組織)の整合が効率と安全性を左右します。負荷インピーダンスは加熱対象によって大きく変動するため、自動整合器(オートチューナー)で常に VSWR を 1 に近づける制御が行われます。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「VSWR が悪い=大きな電力損失」と直結して考えてしまうことです。VSWR=2 で「半分しか届かない気がする」と直感する人がいますが、実際は 0.5 dB(約 11%)の損失にすぎません。シミュレーターで |Γ|=1/3、VSWR=2 のときのミスマッチ損失カードを見れば、約 0.51 dB と表示されるはずです。VSWR の値そのものは反射の大きさを倍率で示すため大きく見え、対数で表す回帰損失や dB 損失とは数字の感覚が異なります。設計レビューでは「VSWR の数値」「回帰損失の dB」「ミスマッチ損失の dB」を分けて議論しないと、深刻度を見誤ります。

次に多いのが、「VSWR が低ければ送信機は安全」と思い込むことです。VSWR は反射「電力」の指標であり、線路上に立つ電圧定在波の「電圧最大値」を直接示します。VSWR=3 なら電圧の山は入射電圧の 1.5 倍、VSWR=10 では 1.83 倍にもなります。高出力時はコネクタ内のエアギャップや誘電体が耐圧を超えてアーク放電を起こすことがあり、VSWR が高い状態を長時間放置すると、増幅器の発熱以前にケーブルやコネクタの絶縁破壊で機器を失います。電力と電圧の両面から評価すべき指標です。

最後に、このシミュレーターが扱うのは「定常状態の単一周波数」の整合度であって、実際の回路では周波数特性も重要だと忘れないでください。アンテナの $Z_L$ は周波数によって大きく変化し、ある周波数で VSWR=1.2 でも別の周波数では VSWR=5 になることが普通です。広帯域システムでは「帯域内最大 VSWR」を仕様に書きます。本ツールで一点の VSWR を最適化できても、それは設計の出発点に過ぎず、実際には VNA で周波数スイープして帯域全体の整合特性を評価する必要があります。