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機械要素シミュレーター

Wahl 補正係数 シミュレーター — 螺旋ばねの最大せん断応力

荷重・平均コイル径 D・線径 d・有効巻数 n_a を動かすと、ばね指数 C、Wahl 補正係数 K_W = (4C−1)/(4C−4) + 0.615/C、最大せん断応力 τ_max、ばね剛性 k が同じ画面で同時更新。コイル形状がどれだけ応力に効いてくるかが一目で分かります。

設計プリセット

計算結果
ばね指数 C
Wahl 補正係数 K_W
最大せん断応力 τ_max
ばね剛性 k_s
螺旋ばね模式図(D・d_w・荷重 F を可視化)
K_W vs ばね指数 C — C が小さいほど応力集中は大
理論・主要公式

$$C = \frac{D}{d_w},\qquad K_W = \frac{4C-1}{4C-4} + \frac{0.615}{C}$$

C はばね指数(無次元)、D は平均コイル径、d_w は線径です。K_W は曲率による応力集中と直接せん断の両方を補正します。

$$\tau_{max} = K_W\cdot\frac{8\,F\,D}{\pi\,d_w^{\,3}},\qquad k_s = \frac{G\,d_w^{\,4}}{8\,D^{3}\,N}$$

F は軸方向荷重 (N)、N は有効巻数、G はせん断弾性係数(鋼: 79 GPa)。τ_max を許容応力と比較し、k_s は荷重あたりのたわみ量を決めます。

Wahl 補正係数 シミュレーターとは

🙋
先生、ばねの応力って F·D/d³ で計算したらいいんだと思ってましたが、Wahl 係数って何ですか?教科書に式が突然出てきて意味が分からなくて…
🎓
いいところに気付いたね。基本式 τ = 8FD/(πd_w³) は「コイルが真っ直ぐな丸棒」と仮定したねじり応力なんだ。でも実際はコイルが曲がっているから、内側の応力が外側より高くなる「曲率効果」と、純粋なねじりとは別に上下方向の直接せん断も乗る。この2つを補正したのが Wahl 係数 K_W だよ。ツールでばね指数 C を 7.5 → 5 にしてみて。K_W が約 1.20 → 1.31 に増えるのが見える。
🙋
なるほど!C が小さいほど補正が大きい。じゃあ C を大きくすれば応力が下がってラクですか?
🎓
それが落とし穴なんだ。確かに K_W は減るけど、τ_max には D の項が分子にある。C = D/d_w を大きくしようとして D を増やすと、応力は逆に増える。それに D が大きいばねは座屈しやすいし剛性も下がる。だから C = 6〜10 のスイートスポットに収まるよう d_w と D をセットで決めるのが定石だ。ツールでデフォルト値(C=7.5)から D を 30→50mm にしてみて、τ がほぼ倍に跳ね上がる。
🙋
「ばね剛性」のほうは K_W が掛かってないんですね。これは曲率の影響を受けないんですか?
🎓
そう、k_s = G·d_w⁴/(8·D³·N) は線形弾性で導かれていて、「全ばねが同じ角度ねじれる」という前提だから補正は要らない。Wahl は「破壊するかどうか」、剛性は「どれだけ縮むか」、と機能が違う。設計の流れは「①必要な剛性 k_s から d_w, D, N を決める」「②その形状で τ_max を K_W 込みで計算」「③許容応力との比で安全率を確認」、の順だね。
🙋
プリセットの「太線」を見たら τ がかなり高いです。実務ではこれ、使えるレベルですか?
🎓
F=1500N, D=40mm, d_w=8mm で τ ≈ 595 MPa。ピアノ線(SWP-B)の許容 τ_allow ≈ 700 MPa なら安全率 1.18 で繰返荷重には心もとない値だ。実務では SF≥1.5、繰返なら 2.0 を狙う。あるいは d_w を 10mm に上げる、N を増やして1巻あたりの応力を下げる、材料を SWOSC-V(許容 900 MPa)にする等の手がある。スライダーで試してみるとイメージ掴めるよ。

よくある質問

Bergsträsser 係数 K_B = (4C+2)/(4C-3) は Wahl 係数を簡略化したもので、曲率補正のみ含み直接せん断は別扱いします。多くのばね設計(JIS B 2704、SAE)では Wahl 係数の式を採用しますが、ASME や一部メーカー資料では K_B が使われます。実用上は同じ C で K_W と K_B の差は 1〜2% 程度で、繰返荷重の疲労評価ではどちらも同じ精度です。
本ツールは圧縮コイルばね(円形断面・密着巻きでない・端部影響を無視)を前提としています。引張ばねは応力の最大点がフック部に集中するため別評価(フック応力解析)が必要、ねじりばねは曲げ応力で計算するため Wahl 補正でなく Wahl-Bergsträsser の曲げ用係数を使います。これらは別ツール「spring-design」「spring-fatigue」を参照してください。
本ツールは鋼(炭素鋼・合金鋼)標準値 G = 79 GPa を採用しています。SUS304 は約 70 GPa、ベリリウム銅は 45 GPa、リン青銅は 41 GPa が代表値です。k_s は G に比例するため、材料を変えたら k_s を係数で換算してください(例:SUS の場合 k_s × 70/79 ≈ 0.886 倍)。応力 τ_max は G に依存しないので変化しません。
圧縮ばねは自由長 L_f と平均コイル径 D の比 L_f/D が 4 を超えると座屈の懸念が出ます。両端固定で L_f/D < 5.3、片端固定なら < 2.6 が安全側目安です(JIS B 2704)。横振動(サージング)は固有振動数 f_n = (1/2)·√(k_s·g/W) で評価し、駆動周波数の 13 倍以上を確保します(共振回避)。これらは本ツールのスコープ外ですが、別途検討が必要です。

実世界での応用

自動車サスペンション:ダブルウィッシュボーン式やマクファーソン式サスのコイルスプリングは、車重と路面入力の繰返荷重を受けます。Wahl 補正込みの τ_max を計算し、修正グッドマン線図で疲労寿命(10⁶ サイクル超)を担保します。線径 12〜14mm、コイル径 120mm 前後、C=8〜10 が標準的です。

バルブスプリング(エンジン):高速回転時のサージング回避と高サイクル疲労(10⁸〜10⁹ 回)が課題。ピアノ線 SWP-B またはオイルテンパ線 SWOSC-V を使い、ショットピーニング処理で表面圧縮残留応力を付与して許容応力を 30〜50% 上げます。

射出成形機・プレス機の金型復帰:大荷重(数十kN)を受ける重荷重用ダイスプリングは、丸線でなく長方形断面(フラットワイヤ)で同じ巻き直径ながらストローク・荷重を最大化します。本ツールの円形断面式とは別の補正係数(K_b)が必要です。

家電・OA機器:プリンタの紙送り、リレー接点、リターンスプリング等で C=4〜8 の小型ばねが使われます。d_w<1mm の細線では加工硬化・残留応力が大きく、Wahl 計算値より許容応力を 10〜15% 下げる慣行があります。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は「Wahl 補正をしないと安全側になる」という思い込みです。K_W は 1 より大きいので「補正なし τ」より「補正あり τ」のほうが大きく、つまり 補正しないと危険側 の評価になります。C=5 のとき補正しないと真の最大応力を 31% 過小評価することになり、寿命予測が大きく狂います。

次に「ばね指数 C を変えるとき d_w だけ動かせばよい」という考え方です。C = D/d_w は両方の関数。τ_max ∝ D/d_w³ なので、d_w を半分にすると応力は 8 倍に跳ね上がります。一方、D を変えると K_W も剛性 k_s も同時に変わるので、設計では「d_w 固定で D を振る」「D 固定で d_w を振る」を分けて評価することが大事です。

最後に「許容応力 τ_allow は静的値でいい」という誤りです。繰返荷重がある場合、修正グッドマン線図で平均応力 τ_m と振幅応力 τ_a の組み合わせ評価が必要。とくに圧縮ばねの片振り(プレロード+作動荷重)では τ_max と τ_min の差が大きく、片振り疲労限度(τ_endurance ≈ 350〜450 MPa for SWP-B)を別途確認しないと安全率を見誤ります。