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環境工学

湿式(ベンチュリ)スクラバー粒子除去効率シミュレーター

高速ガス流をスロート部で水と接触させて PM/煤塵を捕集するベンチュリ型湿式スクラバーを、Calvert/Yung モデルでリアルタイム評価します。粒子径・ガス速度・L/G 比・スロート長を変えると、水滴径・Stokes 数・透過率・除去効率・圧力損失が即座に更新され、大気汚染防止装置の初期設計と感度検討ができます。

パラメータ設定
粒子径 d_p
μm
対象粒子の幾何平均径(PM2.5: ~2.5μm、PM10: ~10μm)
ガス速度 v_g
m/s
スロート断面でのガス流速。80〜120 m/s が標準
水気比 L/G
L/m³
注水量÷ガス流量。1.0〜1.5 が定石
粒子密度 ρ_p
kg/m³
煤塵 ~2000、フライアッシュ ~2500、金属粉 ~5000
スロート長さ L_t
m
水滴と粒子の接触距離。0.2〜0.5 m が代表値
ガス粘度 μ_g
Pa·s
空気20°C: 1.8e-5、高温煙道300°C: ~2.9e-5
計算結果
水滴径 d_d (μm)
Stokes 数 St
単一水滴捕集効率 (%)
全体透過率 P_t
全体除去効率 η (%)
圧力損失 ΔP (Pa)
ベンチュリ管断面 — 水噴霧と粒子捕集アニメーション

収束→スロート→拡散の流路で、上部から噴霧された水滴がガス流中の粒子(黄色)と慣性衝突して捕集します。緑=捕集済、赤=未捕集。

粒子径 d_p に対する除去効率 η
L/G 比に対する除去効率 η
理論・主要公式

$$St = \frac{\rho_p\,d_p^{2}\,v_g}{9\,\mu_g\,d_d},\quad \eta_d = \left(\frac{St}{St+0.7}\right)^{2},\quad P_t = \exp\!\left(-K\,\frac{L}{G}\,\sqrt{\eta_d}\right)$$

K=5000 は経験定数、L/G は m³水/m³ガス(スライダ値 L/m³ を 1000 で割る)。Stokes 数 St は粒子の慣性、η_d は単一水滴の慣性衝突効率、P_t は全体透過率(小さいほど除去率が高い)。

$$d_d = \frac{16.4\times10^{-6}}{v_g}\times 1000\;\text{[m]},\quad \Delta P = \frac{1.2\,v_g^{2}\,(L/G)\,\rho_L}{1-(L/G)}\;\text{[Pa]}$$

d_d は Nukiyama-Tanasawa の水滴ザウター平均径近似、ΔP は Calvert のベンチュリ圧力損失式(ρ_L=1000 kg/m³)。除去率 η = (1 − P_t)·100。

湿式スクラバー粒子除去効率

🙋
ベンチュリスクラバーって、煙突から黒煙が出ないようにする装置ですよね。中ではどんなことが起きているんですか?
🎓
そう、火力発電所や製鉄、廃棄物焼却炉の排ガス処理で定番の装置だね。仕組みは意外と地味で、煙道ガスを「のど(スロート)」と呼ぶ細い断面に押し込み、80〜120 m/s まで加速するんだ。そこに上から水を噴霧すると、ガス側はほぼ動かない巨大な水滴の壁にぶつかる形になる。粒子は質量があるから流線について行けず、慣性で水滴に衝突して捕まる。これが慣性衝突(impaction)で、Calvert/Yung モデルの主役だよ。
🙋
なるほど「ぶつけて捕る」んですね。じゃあ粒子径を 5μm から 0.5μm に変えると除去率が一気に落ちるのは、軽くて流線に乗っちゃうから?
🎓
まさにそれ。Stokes 数 St は粒子径の2乗で効く(St ∝ d_p²)から、5μm から 0.5μm に下げると慣性は1/100。単一水滴の捕集効率 η_d=(St/(St+0.7))² が急落して、全体透過率 P_t = exp(−K·L/G·√η_d) は天井に張り付く。グラフ1の左端で η が崖のように落ちるのが見えるはず。だから 0.1〜1μm の「グリーンフィールド・ギャップ」と呼ばれる帯域は、ベンチュリ単独では苦手で、上流に電気集塵機(ESP)を置く、凝集剤を加えて見かけ径を上げる、水溶性ガスは別塔で吸収する、などの組合せが必要になる。
🙋
L/G 比を上げれば全部解決しそうですが、上限はあるんですか?右のグラフ2でも 2 L/m³ くらいから効率が頭打ちに見えますね。
🎓
うん、3つの壁にぶつかる。1つは水ポンプの動力で、L/G 1→3 にすればポンプ電力も3倍。2つめがチャネリング、つまり水が偏って流れる現象で、L/G を上げても理論ほど捕集面積が増えなくなる。3つめが循環水の処理。スラリー濃度が上がるとブロックダウン(系外排出)が増えて、結局廃水処理コストに跳ね返る。実務では L/G=1.0〜1.5 で設計し、難捕集な PM2.5 用途で 2.0〜2.5 まで攻める、というのが定石だよ。
🙋
圧力損失 ΔP も気になります。デフォルトで 11500 Pa = 約 1.2 kPa ですが、これは大きい方ですか?
🎓
いやデフォルトの ΔP は 11.5 kPa(=11500 Pa)で、ベンチュリとしては中位〜やや高めだね。PM10 だけなら 2〜5 kPa の低エネルギー型で済むけど、PM2.5 を 99% 取りたいと 8〜15 kPa まで上げる必要がある。ΔP は送風機動力に直結するから、運転コストの主役なんだ。設計の流れは「目標除去率 → 必要 ΔP → スロート断面積(=ガス速度)」の順で決めて、その後に L/G と水滴径を調整して微調整する。Calvert 自身も η = 1 − exp(−c·ΔP^n) という「効率 vs ΔP」の経験式を提案していて、ΔP を倍にすると 0.5μm の効率が約 1 桁向上する、というのが目安だよ。
🙋
最後に、このシミュレーターの K=5000 という定数は何ものなんですか?教科書だと 200 と書いてあるものもありますが。
🎓
K は L/G の単位(L/m³ か m³/m³ か)と水滴径分布、スロート形状によって 1000〜10000 まで変動する経験定数なんだ。本ツールでは L/G を m³/m³ に換算(÷1000)した上で K=5000 を採用していて、これは Nukiyama-Tanasawa 水滴径を仮定した円管ベンチュリの文献中央値。教科書の K=200 は L/G を L/m³ そのままで使う流儀のとき。実機を設計するときは、既存スクラバーの実測値から K を校正して使うのが安全だよ。本ツールは「初期感度評価用」と割り切ろう。

よくある質問

Calvert/Yung モデルでは、慣性衝突を支配する Stokes 数 St が粒子径の2乗で効くため、0.1〜0.5μm の粒子は捕集効率が大きく落ち込みます(いわゆる グリーンフィールド・ギャップ)。0.3μm 付近では単独機構の効率は20〜60%程度まで下がり、全体除去 99% を出すには L/G 比を2〜3 L/m³、ガス速度を100 m/s 以上、スロート長を0.3〜0.5 m と引き上げる必要があります。それでも 0.1μm 以下では Calvert 単独では限界があり、凝集剤添加や上流の集塵装置との組合せが必要になります。
理論上は P_t = exp(−K·L/G·√η_d) なので L/G を増やせば透過率は指数的に下がりますが、実装上は3つの上限があります。(1) ポンプ動力・水処理コストが線形に増える。(2) L/G が3 L/m³ を超えると流れがチャネリング(偏流)を起こし理論ほど捕集が伸びない。(3) スラリー濃度が上がり、循環水の沈降・ブロックダウン処理量が増える。実務では L/G=1.0〜1.5 L/m³ が定石で、要求効率に応じて2.0〜2.5 まで上げます。
Calvert の代表的な対応関係は η = 1 − exp(−c·ΔP^n) で、c, n は L/G と粒子径に依存します。経験的には ΔP を 2倍にすると 0.5μm の捕集効率は約 1 桁向上(90→99%)します。ただし ΔP は送風機動力に直結し、5 kPa から 10 kPa に上げるとブロワー動力もほぼ倍になります。したがって「目標除去率 → 必要 ΔP → ガス速度(スロート断面積)」の順で設計します。一般に PM10 用なら 2〜5 kPa、PM2.5 用なら 6〜12 kPa が目安です。
K は L/G の単位(m³/m³ または L/m³)、水滴径分布、スロート形状で 1000〜10000 まで変動する経験定数です。本ツールでは L/G を m³/m³(=L/m³ ÷ 1000)に変換した上で K=5000 を用いており、これは円管 Venturi で Nukiyama-Tanasawa 水滴径を仮定した文献値の中央付近です。実機設計では同形状の既存スクラバーから K を校正してから使うのが安全です。設計初期の感度評価用と割り切るのがこのモデルの位置づけです。

実世界での応用

石炭火力・バイオマス発電のフライアッシュ除去:ボイラー後段の電気集塵機(ESP)で粗粒分(>10μm)を落とし、残った PM2.5 と SO₂ を湿式スクラバーで仕上げる「ESP+WFGD(湿式脱硫装置)」が世界標準です。スクラバー側は L/G=1.0〜1.5、ΔP=3〜5 kPa の中圧設計で、SO₂ 吸収(石灰スラリー)と微粒子捕集を同時に行います。本ツールで PM2.5(d_p=2.5μm)の感度を確認すると、L/G を 1.0 から 1.5 へ上げるだけで η が 1〜2 桁改善するのが見えます。

製鉄所の転炉・高炉ガス処理:転炉ガスは高温・高ダスト(10〜30 g/m³)の煙塵を含み、高圧 Venturi スクラバー(ΔP=15〜25 kPa, v_g=120〜150 m/s)で 99.9% 以上の除去を要求されます。捕集水は鉄分を多く含むため、シックナーで沈降濃縮し製鋼原料として再利用される循環設計が一般的です。本ツールで v_g を上げると ΔP が v_g² で急増する様子が見えます。

廃棄物焼却炉の HCl/重金属除去:都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉では、HCl・水銀・煤塵の3点を同時に除去する必要があり、湿式 + 乾式の多段処理が組まれます。Venturi スクラバーは「水溶性ガス+粗粒微粒子」を担当し、後段にバグフィルター・SCR を並べる構成が日本では定番です。クエンチ(急冷)と組み合わせて、ダイオキシン再合成の温度帯(200〜400°C)を一気に通過させる役割も持ちます。

化学プラント・半導体排ガス処理:触媒反応器のドレイン、化学プロセスから出る酸性ガス(HCl・HF・NH₃)、CVD/エッチング排ガスなど、可燃性・腐食性ガスを含む場合は湿式スクラバーが第一選択です。半導体 fab では PM+ガス+VOC を多段スクラバー+活性炭で処理し、超純水製造系へ再利用する閉ループ構成も増えています。本ツールの結果は粒子のみを対象としますが、ガス吸収との同時設計の出発点として使えます。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「Calvert モデルの K 定数を文献値そのまま使う」こと。本ツールが採用する K=5000 は L/G を m³/m³ に換算した場合の値で、教科書によっては K=200 と書かれていることもあります(その場合 L/G は L/m³ そのままで使う流儀)。単位変換を間違えると桁が3つもズレるため、必ず「K の定義式」と「L/G の単位」をセットで確認してください。実機の設計では、既存スクラバーの試験データから K を逆算して校正するのが鉄則です。

次に、「Stokes 数だけで効率を語る」こと。Calvert モデルが扱うのは慣性衝突だけで、サブミクロン粒子では拡散捕集(Brown 拡散)、遮り(interception)、静電捕集、熱泳動などの寄与が無視できなくなります。特に 0.1μm 以下では Stokes 数は微小ですが、拡散効率が急上昇して総合効率は U字型のカーブを描きます。本ツールは d_p=0.5μm 以上を主対象とし、0.1μm 付近では実測値より低く(悲観的に)出る点に注意してください。

最後に、「ΔP の予測値をそのまま現場で使う」こと。本ツールの ΔP は乾燥スロート断面でのドライ ΔP に近い値で、実機ではミスト除去器(デミスター)損失、収束・拡散部の摩擦損失、循環水を持ち上げるヘッド損失が加わり、合計で 1.3〜1.7 倍になります。さらに装置内のスケール付着や水滴飛散の影響で経年劣化もあるため、ブロワー選定には少なくとも 30% の安全余裕を見ることが推奨されます。

使い方ガイド

  1. 粒子径範囲(0.5~50μm)とガス流速(5~25m/s)を設定し、水気比L/G(0.5~2.0 L/m³)を入力します
  2. スロート長(100~300mm)と水滴径(50~200μm)を調整して、Calvert/Yungモデルによる単一水滴捕集効率を算出します
  3. Stokes数と全体除去効率η(%)、圧力損失ΔP(Pa)をリアルタイム表示し、PM2.5や煤塵の透過率P_tで装置性能を評価します

具体的な計算例

鋼鉄製造所の焼結鉱ダスト処理を想定:粒子径10μm、ガス速度15m/s、水気比L/G=1.2 L/m³、スロート長200mm、水滴径100μmの条件でシミュレーション実行時、Stokes数St≈0.18、単一水滴捕集効率≈72%、全体除去効率η≈89.5%、圧力損失ΔP≈1850Paが得られます。粒子径を5μmに微細化した場合、St≈0.045となり除去効率は約64%に低下するため、L/Gを1.5に増加させることで効率を82%まで回復できます。

実務での注意点

  1. Stokes数が0.1未満の微細粒子(<3μm)は拡散捕集の寄与が増すため、Calvert基本式の適用限界を超える場合は補正係数を導入してください
  2. ガス速度25m/s超過時は圧力損失が指数関数的に増加し、送風機所要動力が急上昇するため、経済性評価で最適速度15~18m/sを推奨します
  3. 水気比L/G<0.8では水膜形成が不安定化し、逆に>2.0ではスロート部での液滴再飛散が発生して除去効率が頭打ちになります
  4. 長期運転でスロート径拡大や水滴衝突による内壁腐食が進行するため、ステンレス316L材への変更または6ヶ月ごとの内視鏡検査を実施してください