非整合メッシュ間データ転送

カテゴリ: 連成解析・マルチフィジックス | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for mapping dissimilar meshes theory - technical simulation diagram
非整合メッシュ間データ転送

理論:値を移すか、量を移すか

概要

🙋

流体解析の熱流束を構造解析に渡したら、温度が合わなくなりました。メッシュが違うのが原因ですか?

🎓

その可能性は高い。流体側は境界層を解くために壁の近くが細かく、構造側は粗いことが多いので、境界の面で2つのメッシュはそろわない。熱流束をどう移すかで結果が変わる。受け取る側の点の位置で値を読み取る方法(整合型)は簡単だが、熱流束の分布に鋭い山があると、その山を取りこぼして伝わる熱の総量が変わってしまう。熱は保存されるべき量なので、総量が変わると構造の温度全体がずれる。重なる面積で平均する保存型にすれば総量は保たれるが、粗いメッシュでは山は平らになる。どちらを使うかは、渡す量の性質で決める。

整合型と保存型の写像

$$ \text{consistent: } q_j^{T} = \sum_i N_i(x_j)\,q_i^{S},\qquad \text{conservative: } q_j^{T} = \frac{1}{|\Gamma_j|}\sum_i |\Gamma_j \cap \Gamma_i|\,q_i^{S} $$

S は送る側(流体)、T は受け取る側(構造)、N は送る側の形状関数(補間)、|Γⱼ ∩ Γᵢ| は2つの要素が重なる面積(1次元では長さ)。

総量の保存

$$ P = \int_\Gamma q\,d\Gamma,\qquad \sum_j q_j^T |\Gamma_j| = \sum_i q_i^S |\Gamma_i|\ \ (\text{conservative}) $$

例の設定:長さ1 mの境界。送る側は97要素で、熱流束 q(x) = 1000·(1 + 0.8 sin 2πx + 3 exp(−((x − 0.3)/0.02)²)) W/m²(x = 0.3 に鋭いピーク)。受け取る側は10要素と40要素。

Coffee Break よもやま話

つながらないメッシュをつなぐ

連成解析が広がり始めた1990年代、境界のメッシュをそろえることは手間がかかり、ほとんど不可能な場合も多かった。そこで、そろっていないメッシュの間で値を移す写像の方法が研究され、空力弾性の分野では、力と変位の写像が仮想仕事を保つように組み合わせる考え方が示された。現在の連成用のライブラリ(preCICE など)では、整合型と保存型を量ごとに選べるようになっている。

計算例

例1:粗い受け取り側(10要素)

方法伝わる熱の総量総量の誤差最大の熱流束
最も近い点の値1,003.5 W/m−9.30%1,813 W/m²
線形補間(整合型)1,002.3 W/m−9.41%1,810 W/m²
重なりで平均(保存型)1,106.4 W/m0.00%2,317 W/m²

例2:やや細かい受け取り側(40要素)

方法総量の誤差最大の熱流束
最も近い点の値−1.52%3,518 W/m²
線形補間(整合型)−0.16%3,753 W/m²
重なりで平均(保存型)0.00%3,699 W/m²

送る側の総量は1,106.35 W/m、最大の要素値は4,571 W/m²。

🙋

10要素のとき、整合型だと熱の1割近くが消えてしまうんですね。

🎓

受け取る側の要素の中心にピークが来なければ、点で読み取る方法はピークを見落とす。ピークの幅(約0.04 m)が受け取る側の要素の長さ(0.1 m)より狭いので、ピークの熱がほとんど伝わらない。熱流束や力のように合計に意味がある量は保存型で渡すのが原則だ。一方、温度や変位のような場の値は整合型で渡す。流体と構造の連成では、構造から流体へ変位を整合型で、流体から構造へ力を保存型で渡すと、境界でのエネルギーの受け渡しも正しくなる。ただし保存型でもピークの高さは受け取る側のメッシュで平らになるので、局所の最高温度を正しく求めたいなら、受け取る側もピークの幅を解像できる細かさにする。40要素にすると、どの方法でもピークの高さはかなり回復した。

写像の選び方と確認

  1. 渡す量が場の値(温度・変位)か、合計に意味のある量(熱流束・力)かを分ける。
  2. 場の値は整合型、熱流束や力は保存型で渡す。
  3. 渡す前後で、総熱量・合力・モーメントを比べる。
  4. 境界の形状が両側で一致しているか(すき間や食い込みがないか)確認する。
  5. 局所の値が重要なら、受け取る側のメッシュを分布の細かさに合わせる。
Coffee Break よもやま話

「冷却されすぎた部品」

ある部品の熱解析で、流体解析で求めた熱伝達の結果を構造の粗いメッシュに渡したところ、部品の温度が実測より10℃以上低く出た。調べると、渡された熱流束の合計が流体側より約8%少なく、高温ガスが当たる狭い範囲の熱が抜け落ちていた。写像を保存型に変え、その範囲の構造メッシュを細かくすると、熱量の差はなくなり、温度は実測と数℃の差に収まった。写像の前後で熱量の合計を比べる確認を、それ以来標準の手順にした。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
熱流束を整合型で渡す熱量が増減保存型にする
総量を確認しない誤差に気づかない前後で合計を比較
受け取る側が粗すぎるピークが平らになる局所を細かく
境界形状のずれ値が外挿される形状を一致させる
力と変位を別々に選ぶエネルギーが保存されない仮想仕事が保たれる組
🙋

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