コシミュレーション(MpCCIによる連成)
理論:別々のソフトを時間でつなぐ
概要
流体はFluent、構造はAbaqusでモデルがあるので、MpCCIでつないで連成解析をしたいです。何に気をつければいいですか?
MpCCIはドイツのFraunhofer SCAIが開発した連成用のミドルウェアで、別々のソフトの間で境界のデータ(力・変位・温度・熱流束など)を受け渡す役目をする。使い慣れたモデルをそのまま使えるのが最大の利点だ。気をつけるのは、データを受け渡す時間間隔(連成の時間刻み)と、その間の値をどう仮定するか。ここを誤ると、それぞれのソフトの中の計算がどんなに正確でも、連成の結果は大きくずれたり、エネルギーが勝手に増えて発散したりするんだ。
計算例のモデル
コシミュレーションの性質を調べる定番の問題として、2つの質点をばね $k_c$ でつないだ系を2つに分け、サブシステム1は $x_2$ を、サブシステム2は $x_1$ を相手から受け取る形にする。$m$ = 1 kg、$k = k_c$ = 1,000 N/m、$c$ = 1 Ns/m。最短の固有周期は0.115 s。
受け渡しの方式
相手の値を、連成の時間刻み $H$ の間は一定とする(保持)か、直前2回の値から直線で延ばす(線形外挿)か。また、両方が同時に前の値を使う方式(ヤコビ型)と、片方を先に進めてその新しい値をもう一方に渡す方式(ガウス–ザイデル型)がある。
連成ミドルウェアの登場
1990年代まで、流体と構造の連成は、研究者が自分でプログラムを書き換えてつなぐのが普通だった。ソフトごとにデータの形式もメッシュも違い、つなぎ込みの手間は膨大だった。そこで、ソフトを問わず境界のデータを受け渡す共通の仕組みとして、ドイツのGMD(のちにFraunhoferに統合)の研究所でMpCCIの開発が始まり、2000年代に市販のソフトどうしをつなぐ道具として広がった。いまでは部品のモデルを交換する規格FMI(Functional Mock-up Interface)も普及し、コシミュレーションは設計の標準的な手法の一つになっている。
計算例:連成の時間刻みと受け渡し方
初期変位0.01 mから2秒間解き、1つにまとめて解いた参照解と比べた。各サブシステムの中は4次のルンゲ–クッタ法で、連成の時間刻みを20分割して正確に解いている。表は $x_1$ の最大誤差(初期変位に対する%)と、2秒後のエネルギーの参照解に対する比。
| 連成の時間刻み | ヤコビ+保持 | ヤコビ+線形外挿 | ガウス–ザイデル |
|---|---|---|---|
| 1 ms(周期の1/115) | 19% (×2.1) | 0.6% (×1.00) | 9.0% (×1.4) |
| 5 ms(1/23) | 185% (×108) | 17% (×1.2) | 55% (×9.1) |
| 10 ms(1/11.5) | 発散 (×11,658) | 77% (×5.7) | 180% (×98) |
| 20 ms(1/5.8) | 発散 | 発散 | 発散 (×5,317) |
周期の1/115という細かい刻みでも、保持だけだと19%もずれるんですか?
そう。値を保持すると、相手の位置はいつも少し古い。ばねの力が遅れて働くと、振動に毎回少しずつエネルギーを足してしまう。減衰がある系なのに、2秒後のエネルギーは参照解の2.1倍、5 msでは108倍だ。線形外挿は遅れを大きく減らすから、同じ1 msで0.6%まで良くなる。ただ、外挿も万能ではなく、20 msではどの方式も発散した。受け渡し方を工夫したうえで、刻みを周期に対して十分小さくする、あるいは1ステップの中で反復して境界を一致させる(強連成)のが基本だよ。
解析の進め方
- 受け渡す量(力と変位、温度と熱流束など)と、どちらのソフトが何を受け取るかを決める。
- 対象の最短の周期や時定数を見積もり、連成の時間刻みの候補を決める。
- 境界のエネルギーの出入りを監視できるようにする。
- 刻みを半分にして結果が変わらないことを確かめる。変わるなら外挿や反復(強連成)を入れる。
- メッシュが一致しない境界では、力の総和が保存される転送方法を選ぶ。
「連成したら振動が止まらない」
構造の解析単体では減衰していく振動が、流体と連成したとたんに少しずつ大きくなり、最後は計算が止まった——という例がある。流体側の時間刻みに合わせて連成の間隔を決めていたが、受け渡しは保持方式だった。境界で流体がした仕事と構造が受け取った仕事を比べると、毎ステップ構造側がわずかに多く受け取っていた。連成の間隔を半分にし、変位を外挿する設定に変えたところ、振動は正しく減衰した。連成でエネルギーが増えていないかは、境界の仕事で確かめるのが早い。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 各ソフトの刻みだけで決める | 連成の誤差を見落とす | 連成の刻みを別に検討 |
| 保持方式のまま | エネルギーが増える | 外挿・反復 |
| 境界のエネルギーを見ない | 発散の原因がわからない | 境界の仕事を監視 |
| 刻みの感度を確かめない | 結果の信頼性が不明 | 刻みを半分にして比較 |
| 非保存の転送 | 力の総和がずれる | 保存型の転送 |
関連する内容も知りたいです。
連成の解き方は分離解法とモノリシック解法、強連成と弱連成、スタガード連成、境界のデータの扱いは異なるメッシュ間のデータ転送、全体の設計はシステム連成の戦略とマルチフィジックスのデジタルツインが参考になるよ。
なった
詳しく
報告