Forchheimer方程式

カテゴリ: 流体解析(CFD) | 2026-09-29 改稿
CAE visualization for forchheimer equation theory - technical simulation diagram
Forchheimer方程式

理論:多孔質の中の流れに慣性を足す

概要

🙋

フィルタの圧力損失をダルシー則で計算したら、実測の半分くらいにしかならなかったんです。

🎓

流速が速すぎてダルシー則の範囲を外れている可能性が高いね。ダルシー則は、粒子や繊維のすき間をゆっくり流れて粘性だけが効く状態の式なんだ。流速が上がると、流れがすき間で加速・減速を繰り返したり粒子の後ろではく離したりして、流速の2乗に比例する損失が加わる。それを足したのがForchheimer方程式だよ。

Forchheimer方程式

$$ -\frac{dp}{dx} = \frac{\mu}{K}\,u + \beta\,\rho\,u^2 $$

$u$ は見かけの流速(流量を断面積で割った値)、$K$ は透過率 [m²]、$\beta$ はForchheimer係数(非ダルシー係数)[1/m]。第1項が粘性、第2項が慣性による損失。2つの項の比が、ダルシー則からのずれの大きさを表す。

$$ \frac{\text{inertia}}{\text{viscous}} = \frac{\beta\,\rho\,K\,u}{\mu}, \qquad Re_p = \frac{\rho\,u\,d}{\mu} $$

充填層ではErgun式

$$ -\frac{dp}{dx} = \frac{150\,\mu\,(1-\varepsilon)^2}{\varepsilon^3 d^2}\,u + \frac{1.75\,\rho\,(1-\varepsilon)}{\varepsilon^3 d}\,u^2 \;\Rightarrow\; K = \frac{\varepsilon^3 d^2}{150(1-\varepsilon)^2},\quad \beta = \frac{1.75(1-\varepsilon)}{\varepsilon^3 d} $$

球に近い粒子が詰まった層では、Ergun式が同じ形の式を与えるので、粒径 $d$ と空隙率 $\varepsilon$ から $K$ と $\beta$ を見積もれる。繊維や発泡体など粒子でない多孔質体では、試験データから係数を決める必要がある。

Coffee Break よもやま話

噴水の水から始まった多孔質の研究

ダルシー則は、1856年にフランスの技術者アンリ・ダルシーが、ディジョンの町の噴水と給水のために砂のろ過槽を設計する中で見つけた経験則だ。それから半世紀近くたった1901年、ドイツの技術者フォルヒハイマーは、流速が大きいと圧力損失がダルシー則より大きくなることを示し、流速の2乗の項を加えた。どちらも理論より先に、水道という実務の必要から生まれた式である。

計算例:ビーズ充填層

係数の見積もり

直径3 mm のガラスビーズを空隙率0.38で詰めた層では、Ergun式から $K \approx 8.56\times10^{-9}$ m²、$\beta \approx 6{,}590$ 1/m。例では水を密度 1000 kg/m³・粘度 0.001 Pa·s、空気を密度 1.2 kg/m³・粘度 0.000018 Pa·s と仮定し、圧力勾配を2つの項に分けた。

流体・流速粒子レイノルズ数粘性の項慣性の項慣性の割合
水 1 mm/s3117 Pa/m7 Pa/m5 %
水 5 mm/s15584 Pa/m165 Pa/m22 %
水 10 mm/s301,168 Pa/m659 Pa/m36 %
水 50 mm/s1505,838 Pa/m16,478 Pa/m74 %
空気 0.05 m/s10105 Pa/m20 Pa/m16 %
空気 0.5 m/s1001,051 Pa/m1,977 Pa/m65 %
🙋

粒子レイノルズ数がたった3でも、5%ずれるんですか。

🎓

そう、ダルシー則が厳密に成り立つのは粒子レイノルズ数が1程度までと言われていて、ろ過や充填層の実際の運転はそれより上のことが多い。地下水のようにごくゆっくりした流れならダルシー則で十分だけど、機器の中の流れではまずForchheimerの項が必要だと考えたほうがいい。冒頭のフィルタの例も、実測が計算の2倍なら慣性の項が半分を占めている状態だね。

試験データから係数を決める

$$ \frac{-\Delta p}{L\,u} = \frac{\mu}{K} + \beta\,\rho\,u $$

圧力損失を流速で割った値を縦軸、流速を横軸にとると直線になる。切片から $\mu/K$、傾きから $\beta\rho$ が求まる。流速の範囲は実際の運転条件を含むように、少なくとも4〜5点で測るとよい。1点だけの測定から $K$ を逆算すると、その流速での慣性の影響まで透過率に押し込んでしまう。

CFDでの使い方

多孔質モデルへの入力

$$ -\nabla p = \frac{1}{\alpha}\,\mu\,\mathbf{u} + C_2\,\frac{1}{2}\rho\,|\mathbf{u}|\,\mathbf{u}, \qquad \frac{1}{\alpha} = \frac{1}{K}, \quad C_2 = 2\beta $$

多くの汎用CFDソフトの多孔質モデルは上の形で書かれていて、入力するのは「粘性抵抗 $1/\alpha$」と「慣性抵抗 $C_2$」。上の充填層なら $1/\alpha \approx 1.17\times10^{8}$ 1/m²、$C_2 \approx 1.32\times10^{4}$ 1/m となる。慣性抵抗の定義に ½ が付くかどうかはソフトで異なるので、マニュアルの式で必ず確認する。

  • 見かけ流速か実流速か:多孔質の中の速度を見かけ流速で扱うモデルと、空隙の中の実際の速度で扱うモデルがある。係数を移すときは、どちらを前提にした値かをそろえる。
  • 方向性:繊維のフィルタやハニカム、熱交換器のフィンでは、方向によって抵抗が大きく違う。直交方向の抵抗を大きな値にして、流れを一方向に整える。
  • 壁の近く:充填層では壁の近くで空隙率が大きく、流れが壁沿いに偏る(壁効果)。容器の直径が粒径の10〜20倍より小さいと無視できない。
Coffee Break よもやま話

「フィルタを詳細にモデル化」は割に合うか

フィルタや触媒担体、ヒートシンクのフィン列を、形状どおりにメッシュ化すると、数億セルになることも珍しくない。多くの場合、目的は機器全体の流量配分や圧力損失なので、多孔質モデルで置き換えるほうが速く、しかも十分に正確だ。詳細なモデルは、試験の代わりに多孔質の係数を求める「仮想試験」として小さな代表部分だけに使い、その結果を全体モデルの係数に渡す、という2段階の進め方が効率的である。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
速い流れにダルシー則だけを使う圧力損失を大きく過小評価慣性項を加える
1点の測定から透過率を逆算別の流速で合わない複数の流速で直線近似
CFDの係数の½を取り違える慣性抵抗が2倍ずれるマニュアルの式で確認
見かけ流速と実流速を混同抵抗が空隙率の分だけずれる前提をそろえる
方向性を無視流れが横に逃げる直交方向の抵抗を大きく
🙋

粒径や流速を変えて試してみたいです。

🎓

Ergun式による充填層の圧力損失計算で粒径・空隙率・流速を変えると、慣性項の割合の変化を確かめられるよ。透過率の考え方はダルシー則・透過率シミュレーター、試験の方法は定水位透水試験シミュレーター。遅い流れはダルシー流れ、壁の近くまで扱いたいときはBrinkman方程式、充填層全体の設計は充填層の記事にまとめてある。

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