電子機器産業のCAE
エレクトロニクスCAEの4領域
エレクトロニクスのCAEって何を解析するんですか? 回路設計のSPICEシミュレーションとは違うものですか?
SPICEは回路レベルの電気的なシミュレーションだけど、エレクトロニクスのCAEはもっと物理寄りだ。大きく分けると4つの領域がある:チップの熱設計、基板のSI/PI(信号品質/電源品質)、筐体のEMC、はんだ接合の疲労寿命予測だ。
4つもあるんですね。どれが一番切実なんですか?
現場で一番「やらないと製品が出せない」のは熱設計だな。最近のスマホのAP(Application Processor、いわゆるSoC)は消費電力5Wをわずか8mm角のダイから放熱する。面熱流束に換算すると 78 kW/m² にもなる。これは太陽光の約60倍だ。放熱設計にFEM-CFD連成が必須なのはこの数字を見れば納得するだろう。
チップの熱設計
78kW/m²って、直感的にどれくらいヤバいんですか?
ホットプレートが数kW/m²くらいだから、その10倍以上の熱がチップから出ているわけだ。しかもチップ内部でも発熱は均一じゃない——CPUコアのホットスポットは平均の3〜5倍の局所的な熱流束になる。だから単純な1次元の熱抵抗計算では足りなくて、3DのFEM熱解析が必要になる。
具体的にはどんなツールを使うんですか?
基板のSI/PI解析
SI/PIって何の略ですか? 基板設計の人がよく話してるんですけど…
SIはSignal Integrity(信号品質)、PIはPower Integrity(電源品質)だ。高速デジタル信号(DDR5で4.8Gbps以上、PCIe Gen5で32GT/s)を基板上で伝送するとき、配線のインピーダンス不整合で反射が起きたり、隣接配線にクロストークが生じたりする。これらを電磁界シミュレーションで事前に評価するのがSI解析だ。
PIの方は電源ラインの問題ですか?
その通り。高速ICが同時にスイッチングすると電源電圧が一瞬落ちる(SSN: Simultaneous Switching Noise)。電源プレーンのインピーダンスをターゲットインピーダンス以下に抑えるために、デカップリングコンデンサの配置をシミュレーションで最適化する。HFSSやCST Studio Suiteが使われる。
はんだ接合の疲労寿命予測
はんだ接合の疲労って、温度変化で壊れるやつですよね? どうやって寿命を予測するんですか?
基本はCoffin-Manson則だ。温度サイクル(例えば-40℃〜125℃)でチップと基板のCTE(線膨張係数)の差からはんだボールにせん断ひずみが蓄積する。このひずみ範囲 $\Delta\gamma$ から疲労寿命 $N_f$ を予測する。
Coffin-Manson則によるはんだ接合の疲労寿命予測式:
$$N_f = C \cdot (\Delta\gamma)^{-n}$$ここで $\Delta\gamma$ は1サイクルあたりの非弾性ひずみ範囲、$C$ と $n$ は材料定数(SAC305はんだの場合、$n \approx 1.9$)である。
FEMではんだボール1個ずつモデリングするんですか? BGAだと数百個ありますよね…
全部モデリングするのが理想だけど、計算コストが大きいから、実務では「最外周のはんだボール」に注目したサブモデリング手法がよく使われる。CTE差による変形は基板の中心からの距離に比例するから(DNP: Distance from Neutral Point)、最外周が最も厳しい。Ansys Mechanicalでクリープ構成則(Garofalo式など)を使って温度サイクル解析を回すのが一般的だ。
5G/ミリ波とEMC
5Gのミリ波帯になると、電磁界解析がどう変わるんですか?
28GHz帯のミリ波だと波長が約10mmで、これはスマホの基板サイズ(数十mm)やICパッケージ(10〜20mm角)と同じオーダーだ。つまり基板やパッケージそのものがアンテナとして振る舞ったり、電波の遮蔽・反射が起きたりする。従来の低周波帯(Sub-6GHz)ではルールベースの設計で済んだことが、ミリ波では3Dフルウェーブ電磁界解析が必須になった。
EMCの規格適合もシミュレーションで確認できるんですか?
完全に置き換えるのはまだ難しいが、設計初期のリスク判定には有効だ。筐体のスリットやコネクタ開口部からの電磁波漏洩をCST Studio Suiteで計算して、CISPR 32/EN 55032の放射エミッション限度値と比較する。試作前に問題箇所を特定できれば、EMC試験のやり直しコスト(1回100万円以上)を大幅に削減できる。
パワーエレクトロニクス
EVとか再エネでパワエレが注目されてますけど、CAEはどう使われていますか?
SiC/GaNデバイスの普及で解析の難しさが一段上がった。従来のSi-IGBTはスイッチング時間がμsオーダーだったけど、SiC-MOSFETは数十nsまで速くなる。この超高速スイッチングで発生するdV/dtは10〜50kV/μsにもなり、配線のインダクタンスで大きなサージ電圧やEMIノイズが生じる。SPICEでの回路解析と、基板や筐体の3D電磁界解析を連成させないと正確に予測できない。
エレクトロニクスのCAEって、熱・電磁気・構造がぜんぶ絡み合ってるんですね。1つの物理だけじゃ済まないのが大変そうです。
まさにそこがポイントだ。チップが発熱すると基板が反って信号品質が悪化する、温度サイクルではんだが疲労する、高速スイッチングでEMIが出る——全部つながっている。だからエレクトロニクスの設計では「マルチフィジックス」のアプローチが不可欠で、熱・構造・電磁気を統合的に扱えるCAEエンジニアの需要がどんどん高まっているよ。
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