コヒーシブゾーンモデル(CZM)

カテゴリ: 構造解析 | 統合版 2026-04-06
CAE visualization for cohesive zone theory - technical simulation diagram
コヒーシブゾーンモデル(CZM)

コヒーシブゾーンモデル(CZM)の理論基礎

CZMとは

🧑‍🎓

先生、CZMは層間剥離のページでも出てきましたが、一般的な破壊にも使えるんですか?


🎓

CZM(Cohesive Zone Model)は界面の破壊をトラクション-セパレーション則で記述する汎用的な破壊モデル。層間剥離だけでなく、接着接合の剥離、金属の延性亀裂、コンクリートのひび割れにも適用。


トラクション-セパレーション則

🎓

バイリニア型:

1. 線形弾性 — 剛性$K$で応力増加

2. 損傷開始 — 強度$t^0$に達する

3. 軟化 — 応力が低下しながら開口が増加

4. 完全分離 — エネルギー$G_c$を消費して破壊


CZMの利点

🎓
  • 亀裂の核生成と進展の両方 — VCCTにない利点
  • メッシュ依存性が少ない — $G_c$による正則化
  • 多モード(I+II+III)に対応 — BK基準等

  • まとめ

    🎓
    • トラクション-セパレーション則応力→損傷→分離
    • 亀裂核生成+進展 — VCCTより汎用的
    • $G_c$で正則化 — メッシュ依存性が少ない
    • 層間剥離、接着、金属、コンクリート — 幅広い適用

    • Coffee Break よもやま話

      Dugdale-Barenblatモデルの競作

      凝集力モデルは1960年にDugdale(英)とBarenblatt(ソ連)が独立に発表した。Dugdaleは鋼板の塑性域を帯状に近似し、Barenblatはより一般的な引力関係を定式化した。冷戦のため数年間情報交換がなく、互いの論文を知ったのは1970年代になってからだという。現在のCZMはこの二人の競作から生まれた。

      コヒーシブゾーンモデル(CZM)の数値計算手法

      CZMのFEM

      🎓

      2つの実装:

      1. コヒーシブ要素 — 界面に薄いコヒーシブ要素を配置(COH3D8等)

      2. 面ベースCZM — 接触面にCZMを設定(要素追加なし)


      Abaqus:

      ```

      *COHESIVE SECTION, RESPONSE=TRACTION SEPARATION

      *COHESIVE BEHAVIOR

      K_n, K_s, K_t

      *DAMAGE INITIATION, CRITERION=QUADS

      t_n, t_s, t_t

      *DAMAGE EVOLUTION, TYPE=ENERGY, MIXED MODE BEHAVIOR=BK

      G_Ic, G_IIc, G_IIIc

      ```


      メッシュ要件

      🎓

      プロセスゾーン内に3〜5要素。$l_{cz} \approx EG_c/(t^0)^2$。


      まとめ

      🎓
      • コヒーシブ要素 or 面ベースCZM — 2つの実装
      • 3パラメータ群: 強度 + $G_c$ + 剛性
      • プロセスゾーンに3〜5要素 — メッシュ要件

      • Coffee Break よもやま話

        TSL曲線の形状と破壊靭性の関係

        凝集力モデルのトラクション-分離則(TSL)は三角形・台形・指数型など複数の形状があり、形状が異なると同じ破壊エネルギーGcでも亀裂進展挙動が変わる。高強度接着剤では台形型が実験をよく再現し、ゴム系接着剤では指数型が合う。ピーク強度σmax と面積Gcの2パラメータが最小限必要で、どちらか一方のみではFEM収束性が悪化する。

        コヒーシブゾーンモデル(CZM)の実務適用

        CZMの実務

        🎓

        複合材の層間剥離、接着接合の強度評価、コンクリートのひび割れ、溶接部の破壊。


        実務チェックリスト

        🎓
        • [ ] CZMパラメータ($t^0, G_c$)が試験データに基づいているか
        • [ ] DCB/ENF試験のFEMシミュレーションで検証したか
        • [ ] プロセスゾーンに3〜5要素あるか
        • [ ] 初期剛性$K$が適切か(大きすぎ: 条件数悪化、小さすぎ: 貫通)
        • [ ] 混合モード基準(BK等)が適切か

        • Coffee Break よもやま話

          航空機パネルの剥離シミュレーション

          Airbus A380の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)パネルと金属フレームの接着界面では、凝集力モデルによる剥離シミュレーションが設計標準となっている。Gc=800 J/m²・σmax=50 MPaのTSLパラメータをMode IとMode IIそれぞれ独立に設定し、落下衝撃後の損傷面積の予測精度±15%を達成した(2010年代、Airbus実証試験より)。

          コヒーシブゾーンモデル(CZM)のソフトウェア比較

          CZMのツール

          🎓
          • Abaqus COH3D8 / Surface-based CZM — CZMの研究標準
          • Ansys CZM — 面ベースCZM
          • LS-DYNA *TIEBREAK — 簡易CZM。衝突の剥離

          • Coffee Break よもやま話

            AbaqusのCZM実装と接触要素

            Abaqus/Standardでは表面ベースのコヒーレント接触(Surface-based cohesive behavior)と専用コヒーレント要素(COH2D4等)の2種類でCZMを実装できる。Boeing社はAbaqusのCZMを使い、B787翼桁の接着接合部の認証解析を実施。FAA規制に基づく300mm×100mmの試験体解析で、剥離荷重の予測誤差を±10%以内に収めた。

            コヒーシブゾーンモデル(CZM)の先端研究

            CZMの先端

            🎓
            • 疲労CZM — サイクル荷重での漸進的損傷。Abaqusの*DAMAGE EVOLUTION, CYCLIC
            • 速度依存CZM — 衝撃速度で破壊エネルギーが変化
            • CZM→Phase-Field — CZMの代替として注目

            • Coffee Break よもやま話

              バイオマテリアルへのCZM適用

              凝集力モデルは2010年代から骨折治癒シミュレーションにも応用されている。皮質骨の破壊靭性Kc=2.2 MPa√mをCZMパラメータに変換し、骨インプラント界面の剥離を再現できる。KITのグループは2018年に股関節インプラントの骨固着力をCZMで予測し、術後3ヶ月の実測値と10%以内の誤差で一致する結果を得た。

              コヒーシブゾーンモデル(CZM)のトラブル対応

              CZMのトラブル

              🎓
              • 収束困難 → 粘性正則化($\mu = 10^{-5}$)。増分を小さく
              • 初期剛性が大きすぎる → 条件数悪化。$K = \alpha E/t_{ply}$, $\alpha = 10 \sim 100$
              • プロセスゾーンに要素が足りない → メッシュを細分化(0.1〜0.5 mm)
              • DCB/ENFと合わない → パラメータ($t^0, G_c$)のキャリブレーション

              • Coffee Break よもやま話

                CZMのメッシュ依存性問題

                凝集力モデルはコヒーレントゾーン内に十分なメッシュ要素が必要で、コヒーレントゾーン長さlcz(材料と荷重依存、通常1〜10mm)に対してメッシュサイズをlcz/3以下にする必要がある。これを無視すると荷重-変位曲線のピークが過大評価される。Al合金の剥離解析でメッシュを5倍粗くすると最大荷重が40%増加した事例もある。

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                Written by NovaSolver Contributors
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