Norton則によるクリープ解析
Norton則によるクリープの理論基礎
Nortonクリープ則
先生、Norton則は座屈のクリープ座屈ページでも出てきましたね。
Norton則(べき乗則)は定常クリープの最も基本的なモデル:
$A$ はクリープ係数、$n$ は応力指数。温度依存性を含む場合:
時間硬化則とひずみ硬化則
遷移クリープ(第1期)も含める場合:
- 時間硬化則: $\dot{\varepsilon}_{cr} = A \sigma^n t^m$ — 時間 $t$ の関数
- ひずみ硬化則: $\dot{\varepsilon}_{cr} = f(\sigma, \varepsilon_{cr})$ — 累積ひずみの関数
どちらを使うべきですか?
定荷重ならどちらも同じ。荷重が変動する場合はひずみ硬化則がより正確。
FEMでの設定
```
*CREEP, LAW=NORTON
A, n, m
```
*VISCOステップで時間積分。
まとめ
Norton則の命名者F.H.Norton
Norton則(べき乗クリープ則)はF.H.Nortonが1929年に著書「The Creep of Steel at High Temperatures」で提案した。Norton はGE社のエンジニアで、蒸気タービン部品の高温変形を体系化した先駆者である。発表から約100年が経つ現在も、クリープのファーストアプローチとしてほぼすべてのFEMコードに実装されており、その普遍性は材料モデルの中でも際立っている。
Norton則によるクリープの数値計算手法
クリープのFEM実装
Abaqusの*VISCOステップ:
```
*STEP, INC=10000
*VISCO, CETOL=0.005
0.01, 100000., 1e-8, 1000.
```
CETOL(クリープひずみ許容誤差)で自動時間刻み。
まとめ
クリープ試験の長期記録
Norton則のパラメータ(A, n)を決定するためのクリープ試験は非常に長期にわたる。日本機械学会の高温材料データベース(NIMS)には、316ステンレス鋼の600℃・100MPaにおける10万時間超(約11年)の試験データが収録されている。この膨大な実験データが、火力・原子力発電プラントの60年設計寿命の根拠となっている。
線形要素(1次要素)
節点間を線形補間。計算コストは低いが、応力の精度が低い。せん断ロッキングに注意(低減積分やB-bar法で緩和)。
2次要素(中間節点付き)
曲線的な変形を表現可能。応力精度が大幅に向上するが、自由度は約2〜3倍に増加。推奨:応力評価が重要な場合。
完全積分 vs 低減積分
完全積分:過剰拘束(ロッキング)のリスク。低減積分:アワーグラスモード(零エネルギーモード)のリスク。適材適所で選択。
アダプティブメッシュ
誤差指標(ZZ推定量等)に基づく自動細分化。応力集中部の精度を効率的に向上。h法(要素分割)とp法(次数増加)がある。
ニュートン・ラフソン法
非線形解析の標準的手法。接線剛性マトリクスを毎反復更新。収束半径内で2次収束するが、計算コストが高い。
修正ニュートン・ラフソン法
接線剛性マトリクスを初期値または数反復毎に更新。各反復のコストは低いが、収束速度は線形的。
収束判定基準
力の残差ノルム: $||R|| / ||F_{ext}|| < \epsilon$(一般に $\epsilon = 10^{-3}$〜$10^{-6}$)。変位増分ノルム: $||\Delta u|| / ||u|| < \epsilon$。エネルギーノルム: $\Delta u \cdot R < \epsilon$
荷重増分法
全荷重を一度に負荷せず、小刻みに増加させる。弧長法(Riks法)は荷重-変位関係の極値点を越えて追跡可能。
Norton則によるクリープの実務適用
クリープの実務
火力発電ボイラー管、タービンブレード、原子力容器、高温配管のクリープ評価。ASME NHで規定。
実務チェックリスト
火力発電ボイラー管の設計指針
超臨界圧火力ボイラー(蒸気温度600℃超、圧力25 MPa超)の主蒸気管設計では、Norton則を用いたクリープ解析が必須である。日本では電気事業法に基づくJISB8201が適用され、10万時間クリープ破断強度の2/3を許容応力の上限としている。この基準はNorton則から外挿した「設計クリープ曲線」を安全率込みで規格化したものであり、1960年代から基本的な考え方は変わっていない。
Norton則によるクリープのソフトウェア比較
クリープのツール
Ansys CREEPコマンドの歴史
AnsysでNorton則クリープを定義するコマンド「TB,CREEP」は、ANSYS 5.0(1993年リリース)以来30年以上、基本構文がほぼ変わっていない数少ないレガシー機能の一つである。現在はWorkbench/Mechanicalから「Creep(Norton)」として選択できるが、内部では同じCREEP定数テーブルが使われており、APDL移行時にパラメータの番号対応を誤るトラブルが今なお報告されている。
Norton則によるクリープの先端研究
クリープの先端
多軸クリープ:von Mises相当応力への拡張
一軸Norton則を多軸応力状態に拡張する際、クリープひずみ速度の方向はPrandtl-Reuss則に従いデビアトリック応力に比例すると仮定される。この等方性クリープ仮定はNorton-Bailey式とも呼ばれ、1935年にBaileyが独自に同式を提案していたことから命名された。ただし強加工材やwelds(溶接部)では主軸方向の異方性クリープが顕著になり、この仮定が破綻することが1980年代の実験で確認されている。
Norton則によるクリープのトラブル対応
クリープのトラブル
時間硬化 vs ひずみ硬化の選択
Norton則には「時間硬化則」と「ひずみ硬化則」の2種類の一次クリープ表現がある。時間硬化則は再負荷後に誤った軟化を示すことがあり、ほとんどの実設計ではひずみ硬化則が推奨される。Ansys Mechanicalのデフォルトはひずみ硬化則(Strain Hardening)であり、時間硬化則に変更すると同一パラメータでも最大応力が5〜20%異なるケースが報告されている。モデル切替時にはパラメータの再フィッティングが原則必要である。
なった
詳しく
報告