Norton則によるクリープ解析

カテゴリ: 構造解析 | 統合版 2026-04-06
CAE visualization for creep norton theory - technical simulation diagram
Norton則によるクリープ解析

Norton則によるクリープの理論基礎

Nortonクリープ則

🧑‍🎓

先生、Norton則は座屈のクリープ座屈ページでも出てきましたね。


🎓

Norton則(べき乗則)定常クリープの最も基本的なモデル:


$$ \dot{\varepsilon}_{cr} = A \sigma^n $$

$A$ はクリープ係数、$n$ は応力指数。温度依存性を含む場合:


$$ \dot{\varepsilon}_{cr} = A \sigma^n \exp(-Q/RT) $$

時間硬化則とひずみ硬化則

🎓

遷移クリープ(第1期)も含める場合:


  • 時間硬化則: $\dot{\varepsilon}_{cr} = A \sigma^n t^m$ — 時間 $t$ の関数
  • ひずみ硬化則: $\dot{\varepsilon}_{cr} = f(\sigma, \varepsilon_{cr})$ — 累積ひずみの関数

🧑‍🎓

どちらを使うべきですか?


🎓

定荷重ならどちらも同じ。荷重が変動する場合はひずみ硬化則がより正確


FEMでの設定

🎓

```

*CREEP, LAW=NORTON

A, n, m

```


*VISCOステップで時間積分。


まとめ

🎓
  • $\dot{\varepsilon}_{cr} = A\sigma^n$ — べき乗則。定常クリープ
  • 時間硬化 vs. ひずみ硬化 — 荷重変動ありならひずみ硬化
  • Abaqus CREEP, LAW=NORTON + VISCO — 標準設定
  • 高温設計(ボイラー、タービン、原子力)で必須

  • Coffee Break よもやま話

    Norton則の命名者F.H.Norton

    Norton則(べき乗クリープ則)はF.H.Nortonが1929年に著書「The Creep of Steel at High Temperatures」で提案した。Norton はGE社のエンジニアで、蒸気タービン部品の高温変形を体系化した先駆者である。発表から約100年が経つ現在も、クリープのファーストアプローチとしてほぼすべてのFEMコードに実装されており、その普遍性は材料モデルの中でも際立っている。

    Norton則によるクリープの数値計算手法

    クリープのFEM実装

    🎓

    Abaqusの*VISCOステップ:

    ```

    *STEP, INC=10000

    *VISCO, CETOL=0.005

    0.01, 100000., 1e-8, 1000.

    ```

    CETOL(クリープひずみ許容誤差)で自動時間刻み。


    まとめ

    🎓
    • *VISCO ステップが標準 — 適応的時間積分
    • CETOL=0.005 — クリープひずみの許容誤差
    • 陰的時間積分 — 安定だが反復が必要

    • Coffee Break よもやま話

      クリープ試験の長期記録

      Norton則のパラメータ(A, n)を決定するためのクリープ試験は非常に長期にわたる。日本機械学会の高温材料データベース(NIMS)には、316ステンレス鋼の600℃・100MPaにおける10万時間超(約11年)の試験データが収録されている。この膨大な実験データが、火力・原子力発電プラントの60年設計寿命の根拠となっている。

      線形要素(1次要素)

      節点間を線形補間。計算コストは低いが、応力の精度が低い。せん断ロッキングに注意(低減積分やB-bar法で緩和)。

      2次要素(中間節点付き)

      曲線的な変形を表現可能。応力精度が大幅に向上するが、自由度は約2〜3倍に増加。推奨:応力評価が重要な場合。

      完全積分 vs 低減積分

      完全積分:過剰拘束(ロッキング)のリスク。低減積分:アワーグラスモード(零エネルギーモード)のリスク。適材適所で選択。

      アダプティブメッシュ

      誤差指標(ZZ推定量等)に基づく自動細分化。応力集中部の精度を効率的に向上。h法(要素分割)とp法(次数増加)がある。

      ニュートン・ラフソン法

      非線形解析の標準的手法。接線剛性マトリクスを毎反復更新。収束半径内で2次収束するが、計算コストが高い。

      修正ニュートン・ラフソン法

      接線剛性マトリクスを初期値または数反復毎に更新。各反復のコストは低いが、収束速度は線形的。

      収束判定基準

      力の残差ノルム: $||R|| / ||F_{ext}|| < \epsilon$(一般に $\epsilon = 10^{-3}$〜$10^{-6}$)。変位増分ノルム: $||\Delta u|| / ||u|| < \epsilon$。エネルギーノルム: $\Delta u \cdot R < \epsilon$

      荷重増分法

      全荷重を一度に負荷せず、小刻みに増加させる。弧長法(Riks法)は荷重-変位関係の極値点を越えて追跡可能。

      Norton則によるクリープの実務適用

      クリープの実務

      🎓

      火力発電ボイラー管、タービンブレード、原子力容器、高温配管のクリープ評価。ASME NHで規定。


      実務チェックリスト

      🎓
      • [ ] Norton則のパラメータ($A, n$)が試験データに基づいているか
      • [ ] 温度依存性($Q/RT$項)が含まれているか
      • [ ] 運転温度でクリープが有意か確認(鋼: 350°C以上)
      • [ ] 時間単位が一致しているか(/s? /h?)
      • [ ] NLGEOM=YESが必要か(大変形のクリープ)

      • Coffee Break よもやま話

        火力発電ボイラー管の設計指針

        超臨界圧火力ボイラー(蒸気温度600℃超、圧力25 MPa超)の主蒸気管設計では、Norton則を用いたクリープ解析が必須である。日本では電気事業法に基づくJISB8201が適用され、10万時間クリープ破断強度の2/3を許容応力の上限としている。この基準はNorton則から外挿した「設計クリープ曲線」を安全率込みで規格化したものであり、1960年代から基本的な考え方は変わっていない。

        Norton則によるクリープのソフトウェア比較

        クリープのツール

        🎓
        • Abaqus CREEP NORTON + VISCO — 最も柔軟。適応的時間積分
        • Nastran SOL 106/400 — クリープ対応
        • Ansys — クリープモデル対応

        • Coffee Break よもやま話

          Ansys CREEPコマンドの歴史

          AnsysでNorton則クリープを定義するコマンド「TB,CREEP」は、ANSYS 5.0(1993年リリース)以来30年以上、基本構文がほぼ変わっていない数少ないレガシー機能の一つである。現在はWorkbench/Mechanicalから「Creep(Norton)」として選択できるが、内部では同じCREEP定数テーブルが使われており、APDL移行時にパラメータの番号対応を誤るトラブルが今なお報告されている。

          Norton則によるクリープの先端研究

          クリープの先端

          🎓
          • 損傷力学との連成(Kachanov-Rabotnov) — クリープ損傷→破断予測
          • 結晶塑性クリープ — 粒界すべり、空孔拡散
          • 次世代原子炉の高温クリープ — 700°C超の新材料

          • Coffee Break よもやま話

            多軸クリープ:von Mises相当応力への拡張

            一軸Norton則を多軸応力状態に拡張する際、クリープひずみ速度の方向はPrandtl-Reuss則に従いデビアトリック応力に比例すると仮定される。この等方性クリープ仮定はNorton-Bailey式とも呼ばれ、1935年にBaileyが独自に同式を提案していたことから命名された。ただし強加工材やwelds(溶接部)では主軸方向の異方性クリープが顕著になり、この仮定が破綻することが1980年代の実験で確認されている。

            Norton則によるクリープのトラブル対応

            クリープのトラブル

            🎓
            • クリープ変形がゼロVISCOステップを使っているか。STATICではクリープが計算されない
            • 時間単位の不一致 → Nortonの$A$の時間単位(/s vs. /h)と解析の時間単位を確認
            • 時間ステップが極端に小さい → 座屈に近づいている or パラメータ$A$が大きすぎる
            • NLGEOM=NOのまま → クリープ座屈を評価するならNLGEOM=YES必須

            • Coffee Break よもやま話

              時間硬化 vs ひずみ硬化の選択

              Norton則には「時間硬化則」と「ひずみ硬化則」の2種類の一次クリープ表現がある。時間硬化則は再負荷後に誤った軟化を示すことがあり、ほとんどの実設計ではひずみ硬化則が推奨される。Ansys Mechanicalのデフォルトはひずみ硬化則(Strain Hardening)であり、時間硬化則に変更すると同一パラメータでも最大応力が5〜20%異なるケースが報告されている。モデル切替時にはパラメータの再フィッティングが原則必要である。

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              Written by NovaSolver Contributors
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