等方硬化モデル

カテゴリ: 構造解析 | 統合版 2026-04-06
CAE visualization for isotropic hardening theory - technical simulation diagram
等方硬化モデル

等方硬化の理論基礎

等方硬化とは

🧑‍🎓

先生、等方硬化って何ですか?


🎓

等方硬化(isotropic hardening)は塑性変形で降伏面が一様に膨張するモデル。降伏応力が塑性ひずみの蓄積とともに上昇。


$$ \sigma_Y = \sigma_{Y0} + H \varepsilon_p $$

$H$ は硬化係数。テーブル形式(応力-塑性ひずみの対応表)で任意の硬化曲線を定義可能。


特徴

🎓
  • 単調載荷で正確 — 引張→引張(同方向の繰り返し)
  • 繰り返し載荷で不正確 — 引張→圧縮(バウシンガー効果を表現できない)
  • 全ソルバーのデフォルト — 最もシンプルな硬化モデル

  • 🧑‍🎓

    バウシンガー効果って何ですか?


    🎓

    引張で塑性変形した後、圧縮方向の降伏応力が低下する現象。等方硬化では引張と圧縮の降伏応力が同じ値に膨張するため、この効果を表現できない。繰り返し載荷(疲労)には移動硬化(キネマティック硬化)が必要。


    FEMでの設定

    🎓
    • Abaqus: *PLASTIC(デフォルトが等方硬化)
    • Nastran: MATS1, TYPE=PLASTIC
    • Ansys: TB, BISO or TB, MISO
    • LS-DYNA: *MAT_24(等方硬化がデフォルト)

    • まとめ

      🎓

      要点:


      • 降伏面が一様に膨張 — 全方向で同じ降伏応力
      • 単調載荷に最適 — 繰り返し載荷にはキネマティック硬化
      • バウシンガー効果は表現不可 — 引張→圧縮で降伏応力が同じ
      • 全ソルバーのデフォルト — 最もシンプル

      Coffee Break よもやま話

      等方硬化の降伏面膨張

      等方硬化則では塑性変形に伴い降伏曲面が等方的に拡大し、中心位置は変わらない。累積塑性ひずみεₚで降伏応力σy(εₚ)を更新する。1934年にPrandtlが塑性流れ則を定式化して以来、単調負荷問題では最もシンプルな選択肢として90年以上使われ続けている。

      等方硬化の数値計算手法

      等方硬化の数値処理

      🎓

      Return Mappingアルゴリズムで処理。弾性予測→降伏判定→半径方向戻し。von Misesの塑性と同じ。


      テーブル入力

      🎓

      ```

      *PLASTIC

      250., 0.0

      300., 0.02

      400., 0.1

      450., 0.2

      ```

      真応力-真塑性ひずみの対応表。中間値は線形補間。


      まとめ

      🎓
      • Return Mapping + 半径方向戻し — von Mises + 等方硬化の標準
      • テーブル入力 — 真応力 vs. 真塑性ひずみ
      • 線形補間 — テーブルの点間は自動補間

      • Coffee Break よもやま話

        硬化曲線の入力形式

        多くのソルバーは等方硬化を「真応力vs累積塑性ひずみ」の表形式で受け付ける。Abaqusでは*PLASTICカードに最大200点まで入力可能。実務では引張試験から得た工学応力-ひずみをσ_true=σ_eng(1+ε_eng)、ε_true=ln(1+ε_eng)で変換し、弾性ひずみを差し引いてεₚを求める手順が基本だ。

        等方硬化の実務適用

        等方硬化の実務

        🎓

        金属の単調載荷(引張試験、成形、圧力試験)で最も広く使用。


        実務チェックリスト

        🎓
        • [ ] 応力-塑性ひずみが真値(公称値ではない)か
        • [ ] テーブルの最大ひずみが解析の最大ひずみをカバーしているか
        • [ ] 繰り返し載荷の場合、キネマティック硬化を検討したか
        • [ ] 降伏応力の温度依存性が必要か(高温問題)

        • Coffee Break よもやま話

          プレス成形解析の定番

          自動車ボディパネルのスタンピング解析では、等方硬化則にSwift式(σ=Cεₙ)を組み合わせるのが1980年代から続く定番手法。高張力鋼DP980のC≈1600MPa、n≈0.12が代表値。板厚減少率の予測精度は実験値との乖離が一般的に3〜5%に収まるため、金型設計の初期検討に広く使われる。

          等方硬化のソフトウェア比較

          等方硬化のツール

          🎓

          全ソルバーで標準。設定方法が異なるだけ。


          ソルバー設定
          Abaqus*PLASTIC テーブル
          NastranMATS1 + TABLES1
          AnsysTB, BISO(バイリニア)or TB, MISO(マルチリニア)
          LS-DYNA*MAT_24
          Coffee Break よもやま話

          LS-DYNAでのMAT_024

          LS-DYNAのMAT_024(PIECEWISE_LINEAR_PLASTICITY)は等方硬化を表形式で定義するもっとも汎用的なカード。1990年代から板成形・クラッシュ解析で使われ続け、2024年版でもデフォルト選択肢の一つ。SIGY(初期降伏応力)とLCSSカーブIDを組み合わせた入力形式は業界標準として定着している。

          等方硬化の先端研究

          等方硬化の先端

          🎓
          • Voce硬化則 — $\sigma_Y = \sigma_{sat} - (\sigma_{sat}-\sigma_0)e^{-\delta\varepsilon_p}$。飽和硬化
          • Swift硬化則 — $\sigma = K(\varepsilon_0 + \varepsilon_p)^n$。べき乗硬化
          • 混合硬化(Voce + Swift) — 広いひずみ範囲で正確

          • Coffee Break よもやま話

            Combined硬化との組合せ

            等方硬化と移動硬化を重ね合わせるCombined則はChabocheが1986年に定式化。等方成分の飽和応力Q∞と進化係数bを追加するだけで、バウシンガー効果と全体的な硬化を同時に表現できる。Abaqusでは*COMBINED HARDENINGキーワードで実装され、疲労寿命解析への適用が増えている。

            等方硬化のトラブル対応

            等方硬化のトラブル

            🎓
            • 応力がテーブルの最大値で一定になる → テーブル範囲外。範囲を拡張するか、外挿の設定を確認
            • 繰り返し載荷でラチェティング → 等方硬化では繰り返しの塑性蓄積を過小評価。キネマティック硬化に
            • 公称値で入力してしまった → 大ひずみで不正確。真値に変換

            • Coffee Break よもやま話

              除荷時の過大スプリングバック

              等方硬化則だけで板成形後のスプリングバックを予測すると実測より過大になるケースが多い。これはバウシンガー効果を無視するためで、DP鋼ではスプリングバック角度が実測比で最大30%過大評価される事例が報告されている。移動硬化または複合硬化則への切替えで改善する。

              関連シミュレーター

              この分野のインタラクティブシミュレーターで理論を体感しよう

              シミュレーター一覧

              関連する分野

              熱解析製造プロセス解析V&V・品質保証
              この記事の評価
              ご回答ありがとうございます!
              参考に
              なった
              もっと
              詳しく
              誤りを
              報告
              参考になった
              0
              もっと詳しく
              0
              誤りを報告
              0
              Written by NovaSolver Contributors
              Anonymous Engineers & AI — サイトマップ
              プロフィールを見る