モンテカルロ放射解析

カテゴリ: 熱解析・放射 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for monte carlo radiation theory - technical simulation diagram
モンテカルロ放射解析

理論:光線を数えて放射を求める

概要

🙋

モンテカルロ法は乱数を使うんですよね。そんな方法で正確な答えが出るんですか?

🎓

光線を十分たくさん飛ばせば出る。ただし誤差は光線の数の平方根でしか小さくならないので、精度を上げるほど計算は重くなる。その代わり、形が複雑でも、波長や向きで性質が変わっても、気体が光を吸収・散乱しても、光線をたどるという同じ手順で扱える。厳密解のある2枚の円板の形態係数と、吸収のある層の透過率で、モンテカルロ法がどこまで合うか、光線の数でどう変わるかを確かめよう。

形態係数と統計誤差

$$ F_{12} \approx \frac{N_{hit}}{N},\qquad \sigma_F \approx \sqrt{\frac{F(1-F)}{N}},\qquad \sin\theta = \sqrt{R_\theta},\ \phi = 2\pi R_\phi $$

面1の上の点を一様に選び、方向は拡散放射に合うよう余弦分布で選ぶ($R$ は0〜1の一様乱数)。面2に当たった割合が形態係数になる。当たる・当たらないの二項分布なので、ばらつきは $\sqrt{F(1-F)/N}$。

吸収のある層

$$ s = -\frac{\ln R}{\kappa},\qquad \tau_{collimated} = e^{-\kappa L},\qquad \tau_{diffuse} = 2E_3(\kappa L) $$

$s$ は吸収されるまでの距離で、吸収係数 κ の指数分布から選ぶ。拡散光は斜めに進む光線が長い距離を通るので、平行光より透過しにくい。

Coffee Break よもやま話

ロスアラモスから熱放射へ

モンテカルロ法は1940年代、アメリカのロスアラモスでウラムやフォン・ノイマンらが中性子の動きを計算するために考えた方法で、名前はカジノで有名なモナコの地区から取られた。熱放射への応用は1960年代にハウエルらが進め、複雑な形の炉や宇宙機の放射の計算に使われるようになった。今では、映画のコンピュータグラフィックスでも、同じ光線追跡の考え方で光の明るさを計算している。

計算例

例1:向かい合う円板の形態係数

半径1、間隔1の同軸の2枚の円板。厳密値は0.38197。光線の本数ごとに乱数の種を変えて10回ずつ計算した。

光線数平均標準偏差理論の標準偏差
1000.37100.06710.0486
1,0000.38760.01220.0154
10,0000.38290.00380.0049
100,0000.38200.00120.0015
1,000,0000.38190.00060.0005

例2:吸収のある層の透過率

光学的厚さ κL平行光 MCexp(−κL)拡散光 MC2E₃(κL)
0.10.90450.90480.83230.8326
10.36780.36790.21850.2194
30.05030.04980.01800.0179

各20万本の光線で計算した。

🙋

100万本でやっと小数第4位がそろうんですね。けっこう大変ですね。

🎓

そこがモンテカルロ法の弱点だ。誤差を10分の1にするには光線を100倍にしなければならない。でも、どんなに形が複雑でも、面の数がどれだけ多くても、誤差の減り方は変わらない。面の数が増えると形態係数の行列が急に大きくなる方法と比べて、複雑な問題ほど有利になる。実務では、必要な精度(例えば熱流束で1%)から光線数の目安を決め、本数を2倍、4倍と変えて結果が落ち着くことを確かめる。分散を小さくする工夫(重点サンプリング、相反関係の利用)で、同じ本数でも精度を上げられる。

解析のポイント

  1. まず厳密解のある簡単な形でコードを確かめる。
  2. 光線数を2倍ずつ増やし、結果のばらつきが1/√Nで減ることを確認する。
  3. 相反関係 A₁F₁₂ = A₂F₂₁ や総和則 ΣF = 1 で結果を点検する。
  4. 小さな面や当たりにくい面では誤差が大きくなるので、光線を重点的に配分する。
  5. 乱数の質と種を記録し、結果を再現できるようにする。
Coffee Break よもやま話

「小さなセンサーの温度がばらついた」

ある炉の放射解析で、壁に付いた小さな温度センサーの計算温度が、計算するたびに数十Kもばらついた。センサーの面積が炉全体に比べて非常に小さく、そこに当たる光線がわずかしかなかったのだ。センサーに向けて光線を多く飛ばし、その分の重みを小さくする重点サンプリングを使うと、同じ計算時間でばらつきは数Kに収まった。モンテカルロ法では、注目する場所に十分な光線が届いているかを確かめる必要がある。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
方向を一様分布で選ぶ拡散放射と合わない余弦分布を使う
光線数が少ない結果がばらつく1/√Nで決める
小さな面に光線が届かない局所の誤差重点サンプリング
相反関係を確認しないバグを見逃す総和と相反で点検
乱数の種を固定しない再現できない種を記録
🙋

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