プランクの法則

カテゴリ: 熱解析・放射 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for planck law theory - technical simulation diagram
プランクの法則

理論:黒体放射の波長分布

概要

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放射の計算はσT⁴で済むことが多いですよね。プランクの法則まで考える必要があるのはどんなときですか?

🎓

材料の性質が波長によって変わるときだ。ガラスは可視光を通すが長い赤外線は通さない。塗料や金属の放射率も波長で変わる。センサーやカメラは決まった波長帯しか見ていない。こうした場面では、放射のエネルギーが波長ごとにどう分かれているかが必要になる。プランクの式を数値積分して、全体がσT⁴になることを確かめ、身近な温度で放射がどの波長に集まっているかを計算しよう。

プランクの式

$$ E_{b\lambda}(\lambda,T) = \frac{C_1}{\lambda^5\left[\exp\!\left(\dfrac{C_2}{\lambda T}\right) - 1\right]},\quad C_1 = 3.742\times10^8\ \mathrm{W\,\mu m^4/m^2},\ C_2 = 14{,}388\ \mathrm{\mu m\,K} $$

全放射、ピーク、波長帯の割合

$$ \int_0^\infty E_{b\lambda}\,d\lambda = \sigma T^4,\qquad \lambda_{max}T = 2{,}898\ \mathrm{\mu m\,K},\qquad F_{\lambda_1\to\lambda_2} = \frac{1}{\sigma T^4}\int_{\lambda_1}^{\lambda_2}E_{b\lambda}\,d\lambda $$

全波長で積分するとσT⁴、ピークの波長は温度に反比例する。波長帯の割合 F は、その帯に入る放射が全体の何割かを表す。

Coffee Break よもやま話

量子のはじまり

1900年、ドイツのマックス・プランクは、実験で測られた黒体放射の分布を説明する式を見つけた。その式を導くには、エネルギーが hν の整数倍という飛び飛びの値しかとれないと仮定する必要があった。プランク自身は数学上の工夫と考えていたが、これが量子論の出発点になった。温度計を使わずに高温の物体の温度を測る放射温度計も、このプランクの式に基づいている。

計算例

例1:数値積分とσT⁴

温度数値積分σT⁴
300 K459.3 W/m²459.3 W/m²
1,000 K56.7 kW/m²56.7 kW/m²
5,800 K64.2 MW/m²64.2 MW/m²

例2:ピークの波長

温度例ピーク波長
300 K室温の物体9.66 µm
1,000 K赤く光る鉄2.90 µm
1,500 K溶けた鋼に近い1.93 µm
2,800 K白熱電球1.03 µm
5,800 K太陽の表面0.50 µm

例3:波長帯の割合

波長帯温度割合
可視光 0.38〜0.78 µm2,800 K9.7%
可視光 0.38〜0.78 µm5,800 K46.6%
赤外線カメラ 8〜14 µm300 K37.6%
ガラスを通る 2.7 µm以下5,800 K97.2%
ガラスを通る 2.7 µm以下300 K0.002%
4 µm以上1,000 K51.9%
🙋

白熱電球は放射の1割も光にならないんですね。それに、ガラスが太陽光は通すのに室内の熱は通さないのも、波長の違いだったんですね。

🎓

フィラメントの2,800 Kでは、放射のピークは1 µmの近赤外線にあり、目に見える波長はすそ野の一部にすぎない。太陽は5,800 Kでピークが可視光の真ん中にあるので、半分近くが光になる。ガラスの話も同じで、太陽光の97%は2.7 µm以下でガラスを通るが、室温の物体の放射はほとんどが2.7 µmより長い赤外線なので、ガラスに吸収されて外へ出にくい。こうして熱がたまるのが温室の仕組みだ。逆に、断熱窓のLow-E膜は、この長い赤外線を反射して熱の出入りを減らしている。

解析での使い方

  1. 材料の放射率や透過率が波長で変わるなら、波長帯に分けて(バンドモデルで)計算する。
  2. 各バンドの黒体放射の割合は、プランクの式の積分(F関数)で求める。
  3. 太陽光と室温の放射のように温度が大きく違う場合は、少なくとも短波長と長波長の2バンドに分ける。
  4. 放射温度計や赤外線カメラでは、測る波長帯の放射率を使う。
  5. 気体の放射(CO₂、水蒸気)は特定の波長だけで起きるので、波長ごとの扱いが必要になる。
Coffee Break よもやま話

「金属の温度を赤外線カメラで測ったら低かった」

ある工場で、加熱した金属部品の温度を赤外線カメラで測ると、熱電対の値より100 K以上低く出た。金属の表面は8〜14 µmの長い赤外線での放射率が0.1程度と低く、カメラは放射率を0.95と設定したままだったのだ。表面に黒い耐熱塗料を塗った基準点を作り、そこで放射率を合わせると、正しい温度が得られた。波長ごとの放射率を意識しないと、放射温度の測定は大きく外れる。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
ガラスを灰色体で扱う日射熱と放熱を誤る2バンド以上
放射率を波長で区別しない測温が大きく外れる測定帯の値を使う
単位の混同(µmとm)桁違いの結果定数の単位を確認
温度を℃で代入放射量を大きく誤る絶対温度を使う
気体を灰色で扱う燃焼炉で誤差分光モデル
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