ボルト締め付け計算機 戻る
構造解析

ボルト締め付け・軸力・疲労設計計算機

要点(クイックアンサー)
ボルト軸力と締付トルクは T=K·d·F_pre(K=ナット係数, d=呼び径)。外力は内外剛性比 Φ=kb/(kb+kj) で分担され、疲労はグッドマン線図 σa/σe+σm/σu=1/nf で評価します。

強度区分4.6〜12.9対応。締め付けトルク・軸力・荷重分担比・グッドマン疲労評価をリアルタイム計算。設計安全率を即座に確認。

パラメータ設定
強度区分
4.6: σ_y=240 MPa, σ_u=400 MPa, σ_e=80 MPa
呼び径 d
M6 / M8 / M10 / M12 / M16 / M20 / M24 / M30 / M36 / M48
ナット係数 K
潤滑あり:0.12〜0.15 / 一般:0.18〜0.22
目標軸力 F_pre
%
耐力の50〜90%(通常70%)
把持長さ L_g
mm
外部荷重 F_ext
kN
計算結果
締め付けトルク T [N·m]
軸力 F_pre [kN]
ボルト応力 σ_b [MPa]
荷重分担比 Φ
疲労安全率 n_f
過負荷安全率 n_o
ボルト軸力ライブ可視化 — 締付け・荷重分担・分離
締付けトルク T
軸力 F_i
外部荷重 P
ボルト荷重 F_b
被締結体荷重 F_m
残留クランプ力
荷重分担比 C
分離荷重
状態
ボルトは伸び(引張)、被締結体は縮む(圧縮)。外部荷重 P はボルト剛性 k_b と被締結体剛性 k_m の比 C=k_b/(k_b+k_m) で分担され、ボルトは ΔF_b=C·P しか受けません。P が分離荷重 F_i/(1−C) を超えると継手が分離します。
図解
理論・主要公式

締め付けトルク:$T = K \cdot d \cdot F_{pre}$

ボルト剛性:$k_b = \dfrac{A_t \cdot E_b}{L_g}$, 被締結体剛性:$k_j = \dfrac{0.577\pi E_j d}{2\ln\left(\frac{5(0.577L_g+0.5d)}{0.577L_g+2.5d}\right)}$(Rotscher錐)

荷重分担比:$\Phi = \dfrac{k_b}{k_b + k_j}$

振幅応力:$\sigma_a = \dfrac{\Phi \cdot F_{ext}}{2A_t}$, グッドマン:$\dfrac{\sigma_a}{\sigma_e}+ \dfrac{\sigma_m}{\sigma_u}= \dfrac{1}{n_f}$

ボルト締め付け・軸力・疲労設計計算機とは

🙋
「ナット係数K」って何ですか?上のスライダーで0.10から0.25まで変えられますけど、これが変わると何が変わるんですか?
🎓
大まかに言うと、摩擦の影響を全部ひっくるめた係数だね。例えば、ボルトやナットの表面が錆びていたり、潤滑油が塗ってなかったりすると、摩擦が大きくてKの値も大きくなる。このシミュレーターでKを大きくすると、同じ軸力(F_pre)を発生させるのに必要な「締め付けトルク(T)」が一気に大きくなるのがわかるよ。現場で多いのは、黒皮ボルトでK=0.2、潤滑状態でK=0.15くらいだね。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ、外部荷重(F_ext)のスライダーを動かすと、グラフの「軸力変動」が動くのはなぜですか?ボルトは一度締めたら力は変わらないのではないですか?
🎓
いいところに気がついたね。実はボルトと締め付ける部品(被締結体)は両方ともバネみたいなものなんだ。外部から引っ張る力が加わると、ボルトはさらに伸びようとするけど、部品は縮もうとする。結局、外部荷重はボルトと部品で分け合って担うことになる。その割合を決めるのが「荷重係数Φ」で、計算式は $\Phi = k_b / (k_b + k_j)$。ここで$k_b$がボルト剛性、$k_j$が被締結体剛性だ。だから外部荷重を変えると、ボルトが追加で負担する力が変わり、軸力が変動するんだ。
🙋
なるほど!で、右側の「グッドマン線図」で疲労を評価するって書いてありますけど、あの図の見方は?安全率が1.0を切ると赤くなりますよね。
🎓
あの図は、繰り返し荷重でボルトが疲労破壊するかどうかを判断するためのものだ。横軸が平均応力、縦軸が応力振幅。シミュレーターで「目標軸力」と「外部荷重」を設定すると、ボルトに働く平均応力と振幅応力が計算されて、図にプロットされる。その点が、破断強さと疲労強度を結んだ「グッドマン線」より内側にあれば安全だ。安全率は、原点からプロット点までの線を延長して、限界線にぶつかるまでの距離の比で計算される。パラメータを動かして、点が線に近づいていく様子を確認してみて。

よくある質問

一般的に、無潤滑の鋼製ボルト・ナットではK=0.2程度、潤滑状態ではK=0.15〜0.18程度が目安です。本ツールでは初期値としてK=0.2を設定していますが、実際の表面処理や潤滑条件に応じて調整してください。摩擦係数が不明な場合は、安全側として大きめのK値を選ぶことを推奨します。
一般的な設計ではΦ=0.1〜0.3が標準的です。Φが0.1未満は非常に良好で、被締結体の剛性が十分高い状態です。Φが0.3を超えるとボルトの軸力変動が大きくなり疲労寿命が低下するため、被締結体の形状や材質を見直すか、ボルト径を大きくするなどの対策が必要です。
安全率1未満は疲労破壊のリスクがあることを示します。対策として、(1)より高強度区分のボルト(例:8.8→10.9)への変更、(2)締め付け軸力を適正範囲内で増加(平均応力を上げる)、(3)被締結体の剛性を高めて荷重係数Φを低減、の3つが有効です。本ツールで各パラメータを変更しながら即座に再評価できます。
本ツールは強度区分4.6〜12.9に対応しており、呼び径M6〜M48の標準的なメートルねじを想定しています。ただし、計算式自体は任意の径に適用可能です。極端に小径(M6未満)や大径(M48超)の場合は、ナット係数やディスクモデルの適用性に注意が必要です。

実世界での応用

自動車エンジン部品:シリンダーヘッドカバーやオイルパンなどのフランジ接合部で多用されます。内部の燃焼圧力変動が外部荷重F_extに相当し、適切な締め付け軸力と疲労安全率の設計がエンジンの信頼性を左右します。

風力発電タワーブラケット:巨大なボルト(M30以上)で塔筒と基礎を接合します。風による繰り返し曲げモーメントが外部荷重となり、グッドマン線図を用いた疲労評価が必須です。把持長さL_gが非常に長いことが特徴です。

化学プラントの配管フランジ:高温・高圧の流体が流れる配管の継手部分です。内部圧力と熱膨張による荷重が加わります。ガスケットの密封性を保つため、運転中も十分な残留軸力(クランプ力)が維持されるよう設計します。

建設機械のアームピン接合部:油圧ショベルのアームやバケットの連結部など、大きな衝撃荷重を受ける部分です。緩み防止が最重要課題であり、適正な締め付けトルク管理と、ショック荷重を考慮した高い疲労安全率が要求されます。

よくある誤解と注意点

この手の計算でよくある勘違いをいくつか挙げておくよ。まず、「トルク値さえ守れば軸力は必ず出る」という思い込み。これは危険だ。ナット係数Kは、同じボルト・ナットでも表面状態や潤滑で簡単に変わる。例えば、設計時にK=0.15(潤滑良)でトルクを決めても、現場で油を忘れて黒皮のまま(K≒0.2)締めると、同じトルクでも発生軸力は約25%も低下してしまう。逆に過大軸力でボルトが伸び切る(降伏する)こともある。だから、重要な締め付けでは、可能ならトルクだけでなく軸力そのものを直接測定する方法も検討してほしい。

次に、被締結体剛性の見積もり。ツールでは簡単にスライダーで変えられるけど、実際の設計でこれをどう決めるかが腕の見せ所だ。例えば、アルミフランジとスチールフランジでは剛性が全く違う。単純な形状なら計算できるが、複雑な実機部品ではFEM解析で等価な圧縮コイルバネに置き換えて剛性を求めることもある。ここを「適当に0.3で…」と済ませると、荷重係数Φが大きく外れ、疲労寿命の予測が全然違ってくるから注意だ。

最後に、グッドマン線図の「安全率1.0」の意味。これは「絶対に破壊されないギリギリの線」ではない。材料の疲労強度データ自体にバラつきがあり、使用環境(温度、腐食)も影響する。実務では、動的荷重がかかる部分のボルトには、少なくとも安全率1.5以上、場合によっては2.0や3.0を要求する設計基準も多い。このツールで計算した値は「理論上の目安」と捉え、実際の設計では適用規格や社内基準に照らして最終判断することが大切だ。

使い方ガイド

  1. ボルト径(M6~M48)と強度区分(4.6~12.9)を選択します
  2. ナット係数K値(0.10~0.25)と軸力率(保証荷重の50~90%)を設定します。標準値はK=0.16~0.20、軸力率60~80%です
  3. 外部荷重と把持長さL_gを設定すると、シミュレータが締め付けトルクT、ボルト応力σ_b、荷重係数Φ、疲労安全率n_f(グッドマン線図)、過負荷安全率n_oを自動算出します
  4. 結果がJIS B 1083およびVDI 2230の基準値内か確認してください

具体的な計算例

M16強度区分8.8のボルト(降伏点660 MPa、引張強さ800 MPa、保証応力600 MPa)をフランジ接合に使用する場合:ナット係数K=0.16、軸力率85%(F_pre=0.85×600×157≈80.1 kN)を設定すると、締め付けトルクT=K·d·F_pre=0.16×0.016×80100≈205 N·mが算出されます。把持長さL_g=30 mmではRotscher錐モデルにより荷重係数Φ≈0.22となり、外部引張荷重20 kNでボルト応力σ_b=510 MPa、振幅応力σ_a≈14 MPaとなります。疲労安全率n_f≈1.26(グッドマン線図による)、過負荷安全率n_o=660/510≈1.29で、JIS基準(n_f≥1.5、n_o≥1.5)を満たしません。強度区分10.9への変更や軸力率・外部荷重の見直しなどの対策が必要です

実務での注意点

準拠規格・前提条件

準拠/参考:VDI 2230 / JIS B 1083 ねじ締結。締付けトルク \(T = K\,d\,F_{pre}\)、目標軸力 \(F_{pre} = \text{(保証荷重率)}\times \sigma_p A_s\)(保証応力基準。\(\sigma_p\approx0.75\,\sigma_y\) 相当)、有効断面積 \(A_s\)。荷重係数はRotscherコーンによるばねモデルでΦ = k_b/(k_b+k_j)。疲労はGoodman線図。

モデルの前提:弾性域・等温・常温。ナット係数Kは潤滑/表面状態を1値に集約(一般0.12〜0.20)。継手剛性はRotscher二重円錐(半頂角30°)の単一近似で、ガスケット・座面陥没・クリープは無視。

適用範囲・限界:教育・初期設計用。検証例M16・8.8(K=0.16、軸力率85%)で T≈205 N·m、F_pre≈80.1 kN、Φ≈0.22 と本ツール出力が一致。実機の最終締付けは超音波軸力計や角度法での実測・VDI 2230 詳細計算を推奨。