パラメータ設定
梁長をスイープ
リセット
「梁長をスイープ」で L が 0.5→10 m を往復し、たわみが L の4乗で増えるさまが見えます。
片持ち梁と荷重・変形
左=固定端 / 右=自由端 / 黄色矢印=先端集中荷重 P / 上部の短い矢印群=等分布荷重 w / 破線=変形後(誇張表示)
寄与の重ね合わせ(δ_P と δ_w)
青=P による寄与 / 橙=w による寄与 / 合計が δ_total に一致
理論・主要公式
カスティリアーノの第2法則:弾性ひずみエネルギー U を着目荷重で偏微分すると、その作用点・作用方向の変位が得られます。
$$\delta = \frac{\partial U}{\partial P}, \qquad U = \int_0^L \frac{M(x)^2}{2EI}\,dx$$
片持ち梁の先端集中荷重 P によるたわみ:
$$\delta_P = \frac{P L^3}{3 E I}$$
片持ち梁の等分布荷重 w によるたわみ:
$$\delta_w = \frac{w L^4}{8 E I}$$
重ね合わせと固定端最大モーメント:
$$\delta_{\text{total}} = \delta_P + \delta_w, \qquad M_{\max} = P L + \frac{w L^2}{2}$$
δ は L の3乗または4乗に比例し、剛性 EI に反比例します。スライダーで L を倍にすると、たわみは 8〜16 倍に跳ね上がります。
カスティリアーノの定理 シミュレーターとは
🙋
「カスティリアーノの定理」って名前は聞いたことあるんですけど、結局何をしてるんですか?普通のたわみ公式と何が違うんでしょう?
🎓
いい質問だね。ざっくり言うと、エネルギーで攻めるんだよ。梁が曲がるとひずみエネルギー U が貯まる。その U を「知りたい変位の方向に作用している荷重 P」で偏微分すると、その点の変位 δ がポロッと出てくる。式は $\delta = \partial U/\partial P$。シミュレーターのデフォルト値(L=2 m, EI=1000 kN·m², P=10 kN)で計算すると $\delta_P = PL^3/(3EI) = 26.67$ mm になる。これがカスティリアーノで導いた結果と完全に一致するんだ。
🙋
なるほど!じゃあ普通の公式と答えは同じなんですね。でも、何でわざわざエネルギーを使う必要があるんですか?
🎓
直接積分法と比べたとき、複雑な構造で楽になるんだ。例えばトラスや曲げ+ねじり+軸力が混ざるフレーム構造だと、たわみ曲線を書き下すのは大変。でもエネルギー寄与は加算できるから、各内力ごとに $U_M, U_V, U_N$ を別々に計算して足すだけでいい。シミュレーターの「寄与の重ね合わせ」グラフを見て。$\delta_P$ と $\delta_w$ が独立に立っていて、合計が $\delta_{\text{total}}$ になっているでしょ?まさにこれが重ね合わせ可能性の威力なんだ。
🙋
確かに、デフォルトだと P 寄与が 26.67 mm、w 寄与が 10.00 mm で、合計 36.67 mm になってますね!P を 0 にすると w だけ残るのも分かりやすい。これは設計の現場でも使うんですか?
🎓
めちゃくちゃ使うよ。橋梁・航空機・配管・治具と、変形を予測したい場面で第一選択になる。特に「特定の点だけのたわみ」が知りたいときに便利。たわみ曲線全体を求める必要がないからね。実務では仮想荷重法(カスティリアーノの応用)でブラケットの撓み角を求めたり、配管系の熱伸びによるノズル反力を計算したりする。本ツールで $\delta_P + \delta_w$ の足し算が体感できれば、最初の一歩はクリアだ。
よくある質問
仮想荷重を使うのはどんなとき?
本ツールでは P が先端に直接作用するので、その作用点・方向のたわみは $\delta=\partial U/\partial P$ で直接求まります。一方、荷重が作用していない点や別方向の変位を求めたい場合は、その点に大きさ $Q$ の仮想荷重を導入し、$\delta=\partial U/\partial Q$ を計算した上で $Q\to 0$ の極限を取ります。例えば梁の中央のたわみが知りたいときは、中央に仮想集中荷重 $Q$ を置き、最後に $Q=0$ とすれば中央たわみだけが取り出せます。
第1法則と第2法則の違いは?
第1法則は変位を独立変数とし、$P_i=\partial U/\partial \delta_i$(変位を微分すると対応する荷重が出る)と表します。一方、本ツールで使っている第2法則は荷重を独立変数とし、$\delta_i=\partial U/\partial P_i$ です。実務では「荷重から変位を求める」第2法則の出番が圧倒的に多く、変位法(マトリクス法)の理論的基礎にもなっています。
せん断や軸力の寄与は無視していいの?
細長い梁(スパン/高さ比 > 10 程度)では曲げによるたわみが支配的で、せん断・軸力の寄与は数%以下に収まります。本ツールも曲げ寄与のみを計算しています。一方、深い梁・短い片持ち(スパン/高さ < 5)ではせん断たわみ $\delta_V=\int kV^2/(2GA)\,dx$ の寄与が無視できなくなり、Timoshenko梁理論で扱う必要があります。設計では「細長比」を最初に確認することが大切です。
不静定構造への応用は可能?
可能です。不静定の冗長反力を未知量とし、その点で変位がゼロになる条件 $\partial U/\partial X_i=0$ を立てると、未知反力 $X_i$ が連立方程式で解けます(最小仕事の原理)。たわみ角法やマトリクス変位法もこの拡張です。本ツールは静定の片持ち梁を対象としていますが、考え方は連続梁・ラーメン構造にもそのまま応用できます。
実世界での応用
航空機構造設計: 翼桁や胴体フレームのような複雑な構造の局所たわみを予測する際、エネルギー法は欠かせません。複数の荷重ケース(揚力分布・燃料重量・着陸荷重)に対して各点の変位寄与を分離して評価し、剛性が不足する箇所を特定します。本ツールの「P と w の寄与分離」と同じ発想で、現場では数十の荷重要素を扱います。
配管・圧力容器の熱応力: 配管系では運転温度上昇に伴う熱伸びがノズル反力を生みます。熱伸びを「仮想変位」として扱い、カスティリアーノで反力モーメントを逆算する手法(柔性マトリクス法)が広く使われます。CAESARなどの配管解析ソフトの内部計算もこの考え方です。
機械部品の変位予測: 治具・ブラケット・カンチレバーセンサなど、特定点の変位精度が要求される部品設計では、カスティリアーノで局所たわみを評価します。例えば測定機の片持ちアームの先端撓みは、自重 w による $\delta_w=wL^4/(8EI)$ と被測定物による P の寄与を分離して許容値内に収まるかチェックします。
FEMの理論的基礎: 有限要素法の変位法定式化は、最小仕事の原理(カスティリアーノの第2法則の拡張)から導かれます。剛性マトリクス $[K]$ と荷重ベクトル $\{F\}$ の関係 $\{F\}=[K]\{u\}$ は、エネルギー汎関数の停留条件として導出されます。エネルギー法は古典構造力学と現代CAEを繋ぐ橋渡しとなる概念です。
よくある誤解と注意点
最も多い誤解が、「変位を求めたい点に荷重がないとカスティリアーノは使えない」 と思い込むこと。実際は仮想荷重 Q を導入し、$\partial U/\partial Q$ を計算してから Q=0 とすれば、荷重がない点の変位も求められる。本ツールでは先端に P が実際に作用しているので仮想荷重は不要だが、この拡張ができることがエネルギー法の真価だ。
次に、非線形材料・大変形領域でそのまま使えると考える ミス。カスティリアーノの定理は線形弾性(フックの法則)と微小変形を前提にしている。塑性変形・座屈後挙動・接触問題ではエネルギー保存則の形が変わるため、本定理は適用できない。実務では弾性域に留まる範囲で線形重ね合わせを使い、降伏接近時は非線形解析に切り替えるのが定石だ。
最後に、せん断たわみを過小評価する 落とし穴。一般に細長い梁では曲げ寄与だけで十分だが、短い片持ち(L/h < 5)や高せん断材料(FRP・木材)ではせん断寄与が10〜30%を占めることがある。本ツールは曲げのみを扱っているので、極端に短い梁・低せん断剛性材料に適用する際は別途せん断補正を加える必要がある。シミュレーター値はあくまで「曲げ支配の細長い梁」の参考値と考えよう。