パラメータ設定
リセット
P と w は同時に作用し、重ね合わせで δ と θ を求めます。たわみ曲線は表示用に誇張して描いています。
計算結果
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P によるたわみ δ_P = PL³/(3EI)
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w によるたわみ δ_w = wL⁴/(8EI)
片持梁モデルとたわみ曲線
左端=固定端/青曲線=たわみ曲線(誇張表示)/赤矢印=先端集中荷重 P/橙矢印群=等分布荷重 w
実モーメント M(x) と単位仮想モーメント m(x)
青実線=M(x)(P+w による実モーメント)/黄破線=m(x)=−(L−x)(単位先端荷重による仮想モーメント)
理論・主要公式
単位荷重法は、求めたい点・方向に大きさ 1 の仮想荷重を置いて、その仮想モーメントと実モーメントの積を梁全体で積分する方法です。
先端たわみ δ(単位集中荷重を仮想荷重に取る):
$$\delta \;=\; \int_0^L \frac{M(x)\,m(x)}{EI}\,dx$$
片持梁・先端集中荷重 P:実 $M = -P(L-x)$、仮想 $m = -(L-x)$ より
$$\delta_P \;=\; \frac{P L^3}{3 E I}$$
片持梁・等分布荷重 w:実 $M = -\tfrac12 w(L-x)^2$ より
$$\delta_w \;=\; \frac{w L^4}{8 E I}$$
先端回転角 θ は仮想モーメント $m = -1$ を用いて
$$\theta \;=\; \frac{P L^2}{2 E I} + \frac{w L^3}{6 E I}$$
複数の荷重が同時に作用する場合は、各荷重による δ・θ を重ね合わせて合計値を得ます。
単位荷重法シミュレーターとは
🙋
梁のたわみの公式って $PL^3/(3EI)$ とか $5wL^4/(384EI)$ とか、丸暗記してたんですけど、これってどこから出てくるんですか?
🎓
出どころの一つが「単位荷重法」、別名モール積分だよ。ざっくり言うと、たわみを知りたい場所と向きに大きさ1の「ニセモノ」の荷重を仮に置いて、そのときに梁にかかるモーメント $m(x)$ と、本物の荷重によるモーメント $M(x)$ を掛けて梁全体で積分する。式にすると $\delta = \int_0^L M\,m / (EI)\,dx$。シミュレーターで P と w を動かすと、どちらの公式もこの積分から出てくるのが感覚的に分かるはずだ。
🙋
「ニセモノの荷重」って物理的に何なんですか?ぶっちゃけ気持ち悪いんですけど。
🎓
気持ちは分かる。あれは「仮想仕事の原理」を使う計算上のテクニックなんだ。実際にその荷重が作用しているわけじゃなくて、変位を取り出すための「掛け算の相手」を作っているだけ。先端のたわみが知りたければ先端に単位集中力、回転角が知りたければ単位モーメント——欲しい変位に対応する仮想荷重を置けば、その変位だけを綺麗に積分で取り出せる。シミュレーターの $m(x) = -(L-x)$ が、まさに先端単位集中力に対応する仮想モーメントだよ。
🙋
なるほど!既定値だと δ_total が 321 mm って結構大きいですね。これって現実的なんですか?
🎓
いいところに気づいた。EI = 1000 kN·m² は教科書で扱う「数字が分かりやすい例」のための値で、実際の鋼梁にしては小さい。実構造ならスパン 3 m で EI が数万 kN·m² 以上はあって、たわみは数 mm に収まるのが普通。シミュレーターの EI スライダーを大きくしてみてごらん。たわみが急に小さくなる——$\delta$ は $1/EI$ に比例するからね。
🙋
P と w を別々に計算してから足してますけど、これって混ぜちゃダメなんですか?
🎓
線形弾性なら「重ね合わせの原理」で OK。$M(x)$ の中に P の項と w の項が両方入っていて、それを同じ $m(x)$ と掛けて積分するから、結果として $\delta_P + \delta_w$ になる。実務でも、自重・積載荷重・地震荷重をバラバラに解いてあとで足す、という流れが基本だ。ただし非線形(材料が降伏する・大変形になる)になると話は別。あくまで弾性範囲での話と覚えておいて。
よくある質問
単純梁や両端固定梁にも同じ方法が使えますか?
単純梁(両端ピン)にはそのまま適用できます。例えば中央集中荷重 P の中央たわみは、実モーメントが三角形、仮想モーメント(中央単位荷重)も三角形になり、両者を掛けて 0〜L で積分すると $PL^3/(48EI)$ が得られます。両端固定梁は不静定なので、力法と組み合わせて余剰反力を先に求めてから単位荷重法を使います。
せん断変形や軸変形も含められますか?
含められます。一般化された単位荷重法は、$\delta = \int (Mm/EI + Vv/(GA_s) + Nn/(EA))\,dx$ のように、曲げ・せん断・軸力の各項を足した形になります。細長い梁(スパン/せいが 10 以上)では曲げ項が支配的なので、シミュレーターのように曲げのみで十分です。トラスや短い梁、ティモシェンコ梁を扱う場合は他項も無視できません。
カスティリアーノの第二定理との違いは何ですか?
どちらもエネルギー法に属しますが、視点が異なります。カスティリアーノの第二定理は「ひずみエネルギーを荷重で偏微分すると、その荷重作用点の変位になる」というもので、$\delta = \partial U/\partial P$ で計算します。単位荷重法は仮想仕事の原理から導かれ、$\delta = \int Mm/EI\,dx$ の積分形で扱います。両者は数学的に等価で、片持梁の手計算ではしばしば同じ式に辿り着きます。問題によって使いやすい方を選びます。
CAE 解析でも単位荷重法は使いますか?
商用 FEM の内部計算は剛性方程式 $[K]\{u\} = \{F\}$ を直接解くため、ユーザーが手で単位荷重法を回すことはありません。しかし「単位荷重法的な発想」は、影響線の計算、感度解析、構造最適化のための随伴法など、現代の解析手法の根底に流れています。FEM 結果の妥当性検証として手計算と照合するときには、今でも最も頼れる方法の一つです。
実世界での応用
橋梁・建築構造の手計算検証: 橋梁の主桁、建物の梁・柱・ラーメンの変位計算は、設計実務でしばしば手計算による検算が求められます。単位荷重法は、自重・活荷重・地震荷重を重ね合わせて任意点の変位や回転角を直接求められるため、FEM 結果との照合に最適です。たわみ制限(スパンの 1/300 など)の確認手段としても標準的に使われます。
不静定構造の応力解析: 連続梁、ラーメン、トラス橋などの不静定構造は、力法(応力法)と単位荷重法を組み合わせて解きます。余剰力を未知数として、その作用点の変位条件式(適合条件)を単位荷重法で立て、連立方程式を解くと反力・断面力が決まります。コンピュータ普及前の構造設計はこの方法が主流であり、今も鉄道橋・道路橋の設計教科書の中核を占めています。
影響線の作成: 移動荷重を受ける橋梁設計では、各点の最大応力を与える荷重位置を知るために「影響線」を描きます。単位荷重を橋上で動かしたときの断面力・変位の変化が影響線そのものであり、その理論的裏付けが単位荷重法です。鉄道橋・クレーン梁などの設計で今でも必須の概念です。
構造力学教育の中核: 大学の構造力学・材料力学では、単位荷重法はエネルギー法の代表として必ず学ぶ内容です。仮想仕事の原理→単位荷重法→カスティリアーノの定理→マトリックス変位法という流れで、有限要素法の理論的基礎へと繋がっていきます。手計算で物理的意味を掴んでおくと、FEM のブラックボックス化を防げます。
よくある誤解と注意点
最も多い誤解は、「単位荷重法は片持梁の先端たわみ専用の公式」だと思ってしまう ことです。実際には、求めたい点・方向に「対応する仮想荷重」を置きさえすれば、どんな静定構造の任意点の変位・回転角・相対変位でも計算できます。例えば「梁中央のたわみ」なら中央に単位集中力を、「梁端の回転角」なら梁端に単位モーメントを置く——これだけです。シミュレーターは説明を簡潔にするため先端変位のみを示していますが、原理は遥かに一般的です。
次に多いのが、「δ_total が大きすぎる、計算が間違っている」と感じてしまう ことです。既定値で δ_total ≈ 321 mm という値は、$L = 3$ m に対して 10% 以上のたわみで実構造としては破滅的です。しかし計算自体は正しく、原因は EI = 1000 kN·m² が極端に小さいから——教科書の例題で数字を見やすくするための値です。実際の鋼梁(H 形鋼 H-400 など)なら EI は数万〜数十万 kN·m² で、同じ荷重でもたわみは桁違いに小さくなります。スライダーで EI を 10000 にすると、$\delta$ が 1/10 になることが確認できます。
最後に、$m(x)$ の符号を間違える つまずきです。実モーメント $M$ と仮想モーメント $m$ は、それぞれ「下側引張りを正」「上側引張りを正」など符号規約を厳密に統一する必要があります。片持梁・先端集中下向きの場合、$M = -P(L-x)$ と $m = -(L-x)$ はどちらも負ですが、積 $M\cdot m = +P(L-x)^2$ は正、これを積分した結果も正の値(下向きのたわみ)になります。途中で符号規約を変えると符号が逆転して「上向きにたわむ」というあり得ない結果になるので、最初に決めた規約を最後まで守ることが鉄則です。