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熱力学

コンバインドサイクル発電シミュレーター

ガスタービン(ブレイトンサイクル)と蒸気タービン(ランキンサイクル)を組み合わせた発電所をモデル化するツールです。各タービンの熱効率・燃料投入熱量・排熱回収率を変えると、総合熱効率と出力配分、煙突への損失がリアルタイムで分かり、なぜこの方式が最高効率なのかを体感できます。

パラメータ設定
ガスタービン熱効率 η_gas
トッピングサイクル(ブレイトン)単独の熱効率
蒸気タービン熱効率 η_steam
ボトミングサイクル(ランキン)単独の熱効率
燃料投入熱量
MW
燃料が持つ化学エネルギーの投入率
排熱回収ボイラ(HRSG)回収率 η_HRSG
ガスタービン排熱のうちHRSGが回収する割合
計算結果
コンバインド熱効率 η_cc (%)
総発電出力 (MW)
ガスタービン出力 (MW)
蒸気タービン出力 (MW)
煙突への損失 (MW)
単独運転比の効率向上 (ポイント)
プラント構成図 — エネルギーフロー

燃料がガスタービンへ入り、その高温排ガスがHRSGで蒸気を作り、蒸気タービンを回します。矢印の太さは運ぶエネルギー(MW)に比例し、粒子が流れるエネルギーを表します。

コンバインド効率 vs ガスタービン効率
エネルギーの内訳
理論・主要公式

$$\eta_{cc}=\eta_{gas}+(1-\eta_{gas})\,\eta_{HRSG}\,\eta_{steam}$$

コンバインドサイクルの総合熱効率。第1項はガスタービン(トッピングサイクル)の効率、第2項はガスタービンが捨てた排熱 (1−η_gas) を HRSG が回収率 η_HRSG で回収し、蒸気タービンが効率 η_steam で電力化したボトミングサイクルの寄与。

$$P_{total}=P_{gas}+P_{steam}$$

総発電出力はガスタービン出力と蒸気タービン出力の和。蒸気(ボトミング)サイクルはガスタービンの排熱を熱源にして発電するため、燃料を追加せずに出力を上乗せできる。

コンバインドサイクルとは

🙋
「コンバインドサイクル発電」ってよく聞くんですけど、ふつうの火力発電と何が違うんですか?
🎓
ざっくり言うと「タービンを2段がけする」発電方式だね。まず燃料を燃やしてガスタービンを回す。これがブレイトンサイクル。そのあと出てくる排ガスがまだ500〜650°Cくらいの高温なんだ。ふつうのガスタービンはこれを煙突からそのまま捨てちゃう。コンバインドサイクルは、その排ガスでもう一回お湯を沸かして蒸気タービンを回す。これがランキンサイクル。つまり「捨てる熱でもう一発発電する」のがミソだよ。
🙋
え、排ガスってそんなに熱いんですか。捨てるのもったいないですね…。
🎓
そう、まさにそこなんだ。左のスライダーで「ガスタービン熱効率」を0.38にしてみて。燃料200MWを入れても、ガスタービンが電気にできるのは76MW。残りの124MWは排ガスとして出ていく。単独運転だとこの124MWが丸ごとムダになる。コンバインドサイクルはこの124MWを排熱回収ボイラ、略してHRSGに通すんだ。
🙋
HRSGって何をするものなんですか?
🎓
Heat Recovery Steam Generator、排熱回収ボイラだ。高温の排ガスを通して、その熱で給水を蒸気に変える巨大な熱交換器だよ。スライダーの「HRSG回収率」が0.85なら、124MWのうち105.4MWを蒸気にできる。残り18.6MWは煙突から逃げる。その105.4MWの熱を蒸気タービンが効率0.33で回すと、約34.8MWの追加発電になるんだ。プラント構成図の矢印の太さがエネルギーの大きさを表しているから、見てみるといい。
🙋
合計するとガス76MW+蒸気34.8MWで110.8MW…効率は55%超えですか!すごい。
🎓
そのとおり。η_cc=110.8÷200で約55.4%。ガスタービン単独なら38%だったから、17ポイントも上がった。これは「捨てるはずの熱」からタダで生まれた分だ。最新のコンバインドサイクルは入口ガス温度を上げて64%近くまで届いている。従来の汽力発電が40%、原子力でも33%前後だから、火力発電としては圧倒的に高効率。だから今、新しく建つガス火力はほとんどコンバインドサイクル方式なんだよ。
🙋
じゃあ効率をもっと上げたいときは、どこをいじればいいんですか?
🎓
3つの方向がある。1つ目はガスタービン効率 η_gas を上げること。入口ガス温度を上げるのが王道だけど、タービン翼の耐熱が壁になる。2つ目はHRSG回収率 η_HRSG を上げて煙突損失を減らすこと。3つ目は蒸気タービン効率 η_steam を上げること。下の「コンバインド効率 vs ガスタービン効率」のグラフを見ると、η_gas を上げても総合効率の伸びは意外と緩やかなのが分かる。式 η_cc=η_gas+(1−η_gas)η_HRSG η_steam を見ると、η_gas が増えると第2項の (1−η_gas) が減るから、ガス側と蒸気側はある意味で取り合いの関係なんだ。バランスよく設計するのが腕の見せどころだよ。

よくある質問

総合熱効率は η_cc = η_gas + (1−η_gas)·η_HRSG·η_steam で求めます。第1項 η_gas はガスタービン単独の熱効率、第2項は「ガスタービンが捨てた排熱 (1−η_gas) のうち HRSG が回収した分 η_HRSG を、蒸気タービンが効率 η_steam で電力に変えた」寄与です。例えば η_gas=0.38、η_HRSG=0.85、η_steam=0.33 なら η_cc=0.38+0.62·0.85·0.33≈0.554、すなわち約55%になります。
単独のガスタービンは、燃料エネルギーの約6割を高温の排ガスとして大気に捨てています。コンバインドサイクルはこの排ガスを排熱回収ボイラ(HRSG)に通し、水を沸かして蒸気を作り、2台目のタービン(蒸気タービン)を回します。捨てるはずだった熱からさらに発電するため、ガスタービン出力の半分ほどの電力が「上乗せ」され、総合効率が55〜64%まで上がります。これが現在の火力発電方式で最も高い効率です。
HRSG(Heat Recovery Steam Generator)は、ガスタービンから出る500〜650°C程度の高温排ガスを受け取り、その熱で給水を加熱・蒸発・過熱して高圧蒸気を作る熱交換器です。コンバインドサイクルの「橋渡し役」で、ボトミングサイクル(蒸気側)の熱源そのものを供給します。HRSGの熱回収率が高いほど煙突から逃げる熱が減り、蒸気タービンに送れる熱が増えるため、総合効率が向上します。
従来の汽力発電(ボイラ+蒸気タービンのみ)の効率は約40%、単独運転のガスタービンも30〜40%程度です。コンバインドサイクルはガスタービンと蒸気タービンを直列につなぎ、ガス側の排熱を蒸気側で再利用することで55〜64%という高効率を実現します。起動が速く負荷追従性も良いため、近年は新設のガス火力のほとんどがコンバインドサイクル方式に置き換わっています。

実世界での応用

大型ガス火力発電所:都市近郊の大規模LNG火力は、ほぼ例外なくコンバインドサイクル方式です。ガスタービン1台に対しHRSGと蒸気タービンを組み合わせた「1軸形」や、複数のガスタービンの排熱を1台の蒸気タービンに集める「多軸形」があります。1ユニットあたり数百MW〜1GW級の出力を、55〜64%という高効率で供給します。本ツールの燃料投入熱量を1000MWに設定すると、こうした大型機の規模感がつかめます。

調整電源・負荷追従運転:コンバインドサイクルは起動が速く出力の上げ下げも機敏なため、太陽光や風力など出力が変動する再生可能エネルギーの「穴埋め」役として重宝されます。昼間に太陽光が増えれば出力を絞り、夕方に需要が伸びれば素早く立ち上げる。電力系統の安定運用に欠かせない調整電源として、現代の電力ミックスの中核を担っています。

コージェネレーション(熱電併給):工場や地域熱供給では、蒸気タービンの抽気や排気を工業プロセス用蒸気・暖房用温水として利用します。発電だけでなく熱も使うことで、燃料エネルギーの総合利用率を80%以上に高められます。コンバインドサイクルにこの熱利用を組み合わせた構成は、エネルギーの「カスケード利用」の代表例です。

火力プラントのリパワリング:既設の古い汽力発電所(ボイラ+蒸気タービン)に、新しくガスタービンとHRSGを追加し、既存の蒸気タービンをボトミングサイクルとして再利用する改造を「リパワリング」と呼びます。設備を全更新せずに効率を40%台から50%台へ引き上げられるため、低コストでの効率改善・CO2削減策として採用されています。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「総合効率はガス効率と蒸気効率を足せばよい」という誤解です。正しい式は η_cc = η_gas + (1−η_gas)·η_HRSG·η_steam で、単純な足し算ではありません。蒸気タービンが使えるのは「ガスタービンが捨てた排熱」だけなので、第2項には必ず (1−η_gas) という係数が掛かります。η_gas を上げると第1項は増えますが第2項の (1−η_gas) は減るため、ガス側と蒸気側は熱の取り合いの関係にあります。両方を単純に足した値(例:0.38+0.33=0.71)は物理的にあり得ません。

次に、「HRSG回収率を100%にできる」という思い込み。HRSGは熱交換器なので、排ガスを給水温度まで完全に冷やすことは原理的にできません。排ガス温度が露点(おおむね100°C前後)を下回ると、燃料中の硫黄分が硫酸となって配管を腐食させるため、実機では煙突出口温度を意図的に90〜110°C程度に保ちます。つまり排熱の一部は必ず煙突から逃げる設計になっており、本ツールでも η_HRSG の上限を0.95としているのはこのためです。

最後に、「ガスタービン入口温度を上げれば無条件に効率が上がる」という単純化。確かに入口ガス温度が高いほどブレイトンサイクルの効率は上がりますが、1500°Cを超えるような高温では、タービン動翼が金属の融点に迫る過酷な環境にさらされます。実機では翼内部に空気を流す空冷や、セラミックの遮熱コーティング、単結晶合金などの先端材料技術で耐えていますが、それでも翼寿命・冷却空気の抽気損失・NOx生成量とのトレードオフがあります。効率は熱力学だけでなく、材料・冷却・排ガス規制を含めた総合設計で決まる点に注意してください。

使い方ガイド

  1. ガスタービン効率(%)を入力:通常35~42%範囲で設定。LM6000では約42%、重型ガスタービンは40%程度
  2. 蒸気タービン効率(%)を入力:ランキンサイクルで30~45%。高圧蒸気条件(100bar以上)で効率向上
  3. 燃料入力(MW)を設定:天然ガス発電所は150~400MW、石炭代替なら200~300MW範囲
  4. HRSG(給水加熱器)効率(%)を入力:85~92%。排熱回収率が総合効率を左右する重要パラメータ
  5. シミュレーション実行で、ブレイトンサイクル+ランキンサイクルの統合性能を解析

具体的な計算例

燃料入力250MW、ガスタービン効率41%、蒸気タービン効率38%、HRSG効率88%の場合:ガスタービン出力=250×0.41=102.5MW、排熱=250-102.5=147.5MW、蒸気タービン出力=147.5×0.88×0.38=49.3MW、コンバインド総出力=151.8MW、総合熱効率=151.8/250=60.7%。単独ガスタービンのみ(41%)比で、19.7ポイント効率向上を実現。煙突への最終損失は約32.2MW。

実務での注意点

  1. HRSG効率が1%低下すると総合熱効率は約0.4ポイント低下。スケーリング・腐食防止で定期清掃が必須
  2. 蒸気タービンは排気損失(背圧)を0.08bar以下に管理しないと効率が急低下。冷却水温度管理が重要
  3. ガスタービン吸気温度が1℃上昇すると出力は約0.3%低下。夏季高温時は吸気冷却設備で補正
  4. 部分負荷運転時、蒸気タービンの効率は設計点の75%以下に低下。併聯制御で両タービンバランス維持が不可欠