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土木・構造材料

コンクリートのクリープ・収縮シミュレーター

Eurocode 2 / fib Model Code 2010 の簡易式で、コンクリートのクリープ係数 φ(t,t₀)、弾性・クリープ・収縮の各ひずみと等価長期弾性係数をリアルタイム計算します。圧縮強度・載荷時齢・相対湿度・名目厚さ・セメント種別を変えて、プレストレストコンクリート、橋梁、超高層ビルの軸縮みなど長期変形の当たりを取れます。

パラメータ設定
圧縮強度 f_cm
MPa
28日材齢の平均圧縮強度。NSC 25〜50、HSC 60〜90
載荷時齢 t₀
day
プレストレス導入・型枠脱型・荷重作用の時齢
評価時齢 t
day
解析する時刻。3650日=10年、36500日≈100年
相対湿度 RH
%
屋外 70〜80、屋内 40〜60、水中 100
名目厚さ h₀
mm
2A_c/u(断面積×2÷外周長)。厚い部材ほど乾燥が遅い
載荷応力 σ
MPa
長期持続応力。0.4·f_cm を超えると非線形クリープ領域
セメント種別
α=N:0 / R:+1 / S:−1(時齢の実効補正)
計算結果
クリープ係数 φ(t,t₀)
弾性ひずみ (μ)
クリープひずみ (μ)
収縮ひずみ (μ)
全長期ひずみ (μ)
等価長期弾性係数 (GPa)
コンクリート部材の長期たわみアニメーション

片持ち梁が載荷直後の弾性たわみから 1 日 → 10 年へと時間が進むにつれてクリープ+収縮で追加変形していく様子を表示します。色は ε_total の大きさ(緑→橙→赤)。

クリープ係数 φ(t,t₀) の時間変化(対数時間軸)
相対湿度 RH 別の最終クリープ・収縮ひずみ
理論・主要公式

$$\phi(t,t_0) = \phi_{RH} \cdot \beta(f_{cm}) \cdot \beta(t_0) \cdot \beta_c(t,t_0),\quad \epsilon_{cc} = \phi \frac{\sigma}{E_{cm}}$$

φ:クリープ係数、ε_cc:クリープひずみ、σ:載荷応力、E_cm:平均弾性係数。Eurocode 2 / fib MC2010 の標準形。

$$\phi_{RH} = \left(1 + \frac{1-RH/100}{0.1\,h_0^{1/3}}\right)\left(\frac{35}{f_{cm}}\right)^{0.1\alpha}, \quad E_{cm} = 22000\left(\frac{f_{cm}}{10}\right)^{0.3}\;[\mathrm{MPa}]$$

φ_RH:湿度・部材厚さの効果、E_cm:平均弾性係数(MPa)。α はセメント種別(N=0, R=+1, S=−1)。

$$\epsilon_{sh,total} = \epsilon_{sh,autogenous} + \epsilon_{sh,drying}, \quad E_{eff} = \frac{\sigma}{\epsilon_{elastic}+\epsilon_{cc}}$$

収縮ひずみは自己収縮+乾燥収縮、等価長期弾性係数 E_eff は長期解析で線形弾性式をそのまま使えるようにする換算値。

コンクリートのクリープ・収縮 — Eurocode 2 / fib MC2010 モデル

🙋
コンクリートって硬化したら形は変わらないと思っていたんですが、「クリープ」とか「収縮」って何ですか?建物が縮むんですか?
🎓
そう、これ意外と知られていないんだけどコンクリートは時間と共に少しずつ変形する材料なんだ。大きく分けて2つあって、応力をかけ続けると徐々にひずみが増えていくのがクリープ、応力をかけなくても水分が抜けたりセメントが水和反応で縮んだりして勝手に縮むのが収縮。例えばドバイのブルジュ・ハリファは828mの超高層ビルだけど、低層階の柱は上の荷重とクリープ・収縮で完成後に約1m縮んだと報告されているんだ。
🙋
1メートルも!すごい変形ですね…。それでこのツールに出てくる「クリープ係数 φ」って何ですか?2.0 って数字が出てますが。
🎓
φ は「弾性ひずみの何倍がクリープで追加されるか」を表す無次元の係数だ。ε_cc = φ × σ/E_cm という関係になっている。デフォルト条件(f_cm=35MPa、RH=70%、t₀=28日、t=10年)で φ≈2.0 ということは、最初に載荷したときの弾性ひずみ 250 με に対して、10年後にはクリープでさらに 500 με 追加されて、合計で 750 με になるという意味。Eurocode 2 では φ_RH(湿度効果)×β(f_cm)(強度効果)×β(t₀)(時齢効果)×β_c(時間進展)の4要素の積で計算するんだ。
🙋
湿度で大きく変わるんですか?左の RH スライダーを動かすと確かにグラフがガラッと変わりますね。
🎓
変わるね。乾燥した環境(RH 40%)と湿潤環境(RH 100%)ではクリープ係数が 2 倍くらい違うこともある。理由はコンクリート中の水分が動くことでクリープが進むから。屋内の暖房された部屋(RH 40%)に置いた梁は、屋外(RH 80%)の梁より長期たわみが大きくなる。逆に水中に沈めた橋脚(RH 100%)はクリープが小さい代わりに乾燥収縮も起きないので、設計式では別扱いになるんだ。下の RH 別グラフを見ると、湿度が低いほど棒グラフが伸びるのが分かるよ。
🙋
名目厚さ h₀ って何ですか?「部材厚さ」じゃダメなんですか?
🎓
h₀ = 2A_c/u で定義されていて、A_c は断面積、u は大気に触れる外周の長さ。例えば 200mm 角の柱なら h₀ = 2×40000/800 = 100mm。同じ材積でも、薄い壁は外周比が大きいから h₀ が小さく、乾燥が早く進む。逆にダムや橋脚のように分厚いマスコンクリートは h₀ が大きく、内部はほとんど乾燥しない。h₀ を変えると β_c の時間進展速度が変わるから、薄板は短期間で収縮が完了し、厚いマスコンは数十年かかって徐々に進むことが分かる。
🙋
プレストレストコンクリート (PSC) の設計でこれを使うって聞いたんですが、何のためですか?
🎓
PSC では PC 鋼材で導入したプレストレスが、コンクリートのクリープと収縮で時間とともに減っていくんだ。これをプレストレスロスと呼ぶ。例えば導入時に 1000 N/mm² だった PC 鋼材応力が、100年後には 800〜850 N/mm² まで下がる。E_eff = σ/(ε_e+ε_cc) という等価長期弾性係数を使うと、クリープ込みの応力解析が線形弾性の式そのままでできるから便利だ。デフォルトでは E_cm≈32 GPa が φ≈2 で E_eff≈11 GPa と1/3 まで下がる。橋梁の中央部降下や PSC 桁のキャンバー設計、長大橋の押し出し工法、すべて Eurocode 2 / fib MC2010 のこの式群で見積もるよ。

よくある質問

Eurocode 2 (EN 1992-1-1) と fib Model Code 2010 では、クリープ係数を φ(t,t₀) = φ_RH × β(f_cm) × β(t₀) × β_c(t,t₀) の積で表します。φ_RH は相対湿度と名目厚さ h₀ の関数、β(f_cm)=16.8/√f_cm は強度効果、β(t₀)=1/(0.1+t₀^0.2) は載荷時齢効果、β_c は時間進展関数です。RH=70%・f_cm=35MPa・t₀=28日・t=∞ で典型的に 2.0〜2.5 となり、本ツールでは t=10年 のデフォルトで φ≈2.0 が出ます。
クリープ (creep) は「応力をかけ続けたときに時間とともに増えるひずみ」で、ε_cc = φ × σ/E_cm と書けます。一方、収縮 (shrinkage) は「応力に関係なくコンクリート自身が縮むひずみ」で、セメントの水和反応で起きる自己収縮 (autogenous) と、水分が抜けて起きる乾燥収縮 (drying) の和になります。普通コンクリートの最終収縮ひずみは 200〜700 με が典型で、構造物のたわみや PSC のプレストレスロスでは両者の和を見積もる必要があります。
クリープを考慮した長期解析では、コンクリートの応力-ひずみ関係が時間とともに柔らかくなります。これを「実効的に縮んだ弾性係数」 E_eff = E_cm / (1+φ) で表すと、線形弾性解析の式をそのまま使ったまま長期たわみや断面の応力再配分を計算できます。ツールでは σ/ε_total で実効弾性係数を出しており、デフォルトでは E_cm≈32 GPa が φ≈2 のクリープで E_eff≈10.7 GPa まで低下することがわかります。
Eurocode 2 では α パラメータでセメント種別を表し、N(普通)=0、R(早強)=+1、S(低熱)=−1 を使います。R は若材齢で速く硬化するため、同じ載荷時齢 t₀ でも実効的な時齢が大きくなり β(t₀) が小さく、クリープ係数が下がります。逆に S は同じ t₀ でも実効的な時齢が小さく、クリープ係数が大きく出ます。マスコンや早期ジャッキアップでは、セメント種別の選択がプレストレスロスや橋梁の長期沈下に直結します。

実世界での応用

プレストレストコンクリート (PSC) 橋梁・建築:PC 桁橋や PCa 床版では、プレストレス導入後のクリープと収縮で PC 鋼材の応力が時間とともに低下し、これが「プレストレスロス」となります。fib MC2010 の式で長期 φ と ε_sh を求めて、初期プレストレス×(1 − ロス率) で残存プレストレスを設計します。ロスの割合は通常 15〜25%、長大橋では 30% を超えることも。Eurocode 2 ではこれを陽に式で評価することが要求されています。

長大橋・カンチレバー張出し架設:京葉港大橋や明石海峡大橋のような長大橋、PCa セグメントの片持ち架設では、施工中のステージごとにクリープと収縮による中央部降下を予測しなければ橋面線形が合いません。施工管理ではプレキャストの「設計与え高」を、解析で算出した長期変形分だけ上方に与えて、最終的に設計線形に収束するよう調整します。本ツールのように時間 t を変えながらクリープ係数の発達を可視化できると、ステージ管理のキャンバー設計に直感的なヒントが得られます。

超高層ビルの軸縮 (column shortening):200m を超える RC・SRC・コンポジット超高層ビルでは、低層階の柱が上層階の荷重とクリープ・収縮で数十 cm 〜 1 m 縮みます。ブルジュ・ハリファ (828m) では完成後の軸縮みが約 1 m、上海タワー (632m) でも 400 mm 程度と報告されています。対策として、施工中に柱の高さを設計値より大きめに作って後でクリープで縮むのを許容する「コンペンセーション」と、内外柱の縮み差を抑えるために材料を使い分ける「差動シュリンケージ対策」が必須となります。

マスコンクリート温度・収縮ひび割れ:ダム、橋脚、地下壁などの厚いマスコンクリート (h₀ > 500mm) では、水和発熱による温度応力と、その後の乾燥収縮で表層に温度収縮ひび割れが発生します。低熱セメント (S 種) を選んで α=−1 とし、クリープによる応力緩和を期待しながら設計するのが定石です。本ツールでセメント種別 S にして h₀ を 1000 mm 付近にすると、時間進展がゆっくりで、初期の高 φ で熱応力が緩和される効果が読み取れます。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「クリープと収縮は同じ現象」と混同すること。両者は物理メカニズムが完全に違います。クリープは「応力下でカルシウム-シリケート水和物 (C-S-H) ゲル中の水分が再配置」するのが主因で、応力を取り除くと一部回復します。収縮は「無応力でも水和反応と乾燥で C-S-H ゲルそのものが体積収縮」するもので、応力とは無関係。Eurocode 2 / fib MC2010 が両者を別々に式化しているのもこのためです。実務で「クリープ=収縮」と勘違いすると、PSC のロス計算で 50% も誤差が出ることがあります。本ツールも 6 つの stat カードで弾性、クリープ、収縮を分離表示しているのはこの混同を防ぐためです。

次に、「載荷応力が高いほどクリープ係数 φ も大きくなる」という誤解。Eurocode 2 の線形クリープ理論では、応力レベル σ/f_cm < 0.4 の範囲では φ は応力に依存せず、上記の式で表される定数です。応力が 0.4·f_cm を超えると非線形クリープ域に入り、追加の係数 k_σ で増加させる必要があります。本ツールは σ < 0.4·f_cm を想定した線形クリープのみを計算しているため、デフォルトの 8 MPa < 14 MPa (0.4×35) の範囲では正確ですが、σ を 20 MPa などに上げると本来は非線形補正が必要です。verdict で「σ > 0.4·f_cm」の警告を出すのはこのため。

最後に、「t=∞ のクリープ係数だけ見れば十分」という考え方も危険です。実務では PSC の即時ロス(緊張直後)、早期ロス(数ヶ月)、長期ロス(数十年)でそれぞれ φ の値を使い分けます。例えば PCa 桁の架設後 30 日でジャッキアップする場合、t=30 日 での φ≈0.5〜1.0、その後 t=10年 で φ≈2.0、t=100年 で φ≈2.3 と段階的に進みます。各段階の φ で個別にロスを計算しないと、施工誤差や残存プレストレス管理を見誤ります。本ツールでは評価時齢 t をスライダーで自由に変えられるので、複数の時点を試して時間進展を体感してください。

使い方ガイド

  1. コンクリート圧縮強度 fck(MPa)を入力します。一般的な橋梁は35~50MPa、プレストレスト部材は40~60MPa、超高層建築は50~80MPaです
  2. 載荷時齢(日数)を設定します。打設後28日の標準載荷、または実際の施工工程に合わせて7日や90日を入力してください
  3. 評価時齢(日数)を指定します。1年後は365日、10年後は3650日として、長期変形を追跡します
  4. 相対湿度(%)と名目厚さ h₀(mm)を入力すると、Eurocode 2 式により φ(t,t₀)、クリープひずみ εcc(t,t₀)、乾燥収縮 εcd(t,t∞) が自動計算されます
  5. 全長期ひずみと等価長期弾性係数を確認し、プレストレス損失量や部材たわみの見積もりに使用してください

具体的な計算例

橋梁用PC梁:fck=50 MPa、載荷時齢 t₀=7日、評価時齢 t=3650日(10年後)、相対湿度 RH=80%、名目厚さ h₀=600 mmの場合、クリープ係数 φ(t,t₀)≈2.8~3.1、クリープひずみ εcc≈950~1100 μとなります。自己収縮 εcs≈200 μ、乾燥収縮 εcd≈350 μを加えた全長期ひずみは約1500~1650 μです。5m梁での残留たわみは約15~18 mmと予測されます。等価長期弾性係数は Ec,eff≈13 GPa(初期値 30 GPa比で約43%低下)となり、プレストレス損失計算の際、クリープによる約8~10% の力低下を見込む必要があります。

実務での注意点

  1. Eurocode 2 では 28日圧縮強度から計算していますが、実際の fck は型枠脱型後の養生温度・湿度に左右されるため、工事成績書の試験体結果を優先入力してください
  2. 相対湿度が低い地域(RH<60%)では乾燥収縮が顕著になり、クリープと合わせて 2000 μ を超える場合があります。プレストレス部材では設計時の定着延長を再確認してください
  3. 名目厚さ h₀ は部材寸法ではなく、周囲長と断面積から h₀=2Ac/u で算出します。厚肉部材(h₀>800 mm)では内部の湿度勾配でクリープが小さくなるため、fib Model Code 2010 の追加係数を適用してください
  4. 高強度コンクリート(fck>80 MPa)では基本クリープ φ₀ が大幅に減少し、微細ひび割れが閉じやすいため、乾燥収縮を二次的に考慮する必要があります