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コンクリート長期挙動

コンクリート 収縮・クリープ ACI 209R シミュレーター

ACI 209R-92 モデルでコンクリートの乾燥収縮ひずみとクリープ係数を計算するツールです。養生方法・載荷時年齢・湿度・v/s 比・スランプを動かすと、PC 桁橋やプレストレス部材で重要な長期総ひずみがリアルタイムで分かり、テンドンの緊張損失や橋のクリープ変位を見積もれます。

パラメータ設定
養生方法
時間関数の係数 f_t(湿潤=35 / 蒸気=55)を切り替え
載荷時年齢 t₀
day
経過時間 t
day
載荷応力 σ
MPa
圧縮持続応力。0.4·fc' 以下が線形クリープの目安
環境湿度 RH
%
v/s 比
mm
体積/表面積比。薄い壁ほど小さく収縮大
スランプ
mm
収縮開始齢
day
湿潤養生終了の材齢。脱型・型枠撤去のタイミング
計算結果
クリープ係数 φ
弾性ひずみ (×10⁻⁶)
クリープひずみ (×10⁻⁶)
乾燥収縮ひずみ (×10⁻⁶)
終局クリープ係数 φ_u
長期総ひずみ (×10⁻⁶)
コンクリート梁 — 持続荷重による長期たわみ進行

持続圧縮荷重下で梁が時間と共に下方へクリープ変形し、同時に乾燥収縮で全長が縮みます。色は総ひずみの大きさ(緑→橙→赤)を表します。

クリープ係数 φ の時間履歴
収縮 vs クリープ寄与比較
理論・主要公式

$$\phi(t,t_0) = \frac{(t-t_0)^{0.6}}{10+(t-t_0)^{0.6}}\phi_u,\quad \varepsilon_{sh}(t) = \frac{t}{35+t}\varepsilon_{sh,u}$$

φ=クリープ係数、ε_sh=乾燥収縮、t_0=載荷齢、補正係数 γ で湿度・寸法・スランプ影響を反映。蒸気養生では分母 35 を 55 に置き換える。

$$\phi_u = 2.35\cdot\gamma_{la}\cdot\gamma_{RH}\cdot\gamma_{vs}\cdot\gamma_{slump}$$

終局クリープ係数。γ_la=載荷齢、γ_RH=湿度(1.27-0.0067·RH)、γ_vs=寸法、γ_slump=スランプの補正。

$$\varepsilon_{c,total}(t) = \varepsilon_e(1+\phi(t,t_0)) + \varepsilon_{sh}(t)$$

長期総ひずみ。弾性ひずみ ε_e = σ/E_c に (1+φ) を乗じてクリープ込みとし、乾燥収縮を加算する。

コンクリート 収縮・クリープ — ACI 209R モデル

🙋
コンクリートって打設後ずっと縮んだり、荷重を載せっぱなしだとジワジワ変形したりするって聞いたんですが、本当ですか?鉄やアルミではあまり聞かない話で…。
🎓
そう、コンクリート特有の「長期変形」だね。原因は大きく 2 つで、1 つが「乾燥収縮」、もう 1 つが「クリープ」だ。乾燥収縮はセメントペースト中の水分が大気に逃げて、ゲル粒子同士が引き寄せ合って体積が縮む現象。典型的に 300〜1000 με(マイクロストレイン)くらい縮む。クリープは持続荷重を載せた状態でゲル構造が長時間スリップして、弾性ひずみの 1.5〜3 倍くらい余分に変形する現象。28 日齢で載荷して 1 年経つと、最初の弾性ひずみの 2 倍くらいまで膨らむんだ。
🙋
じゃあ橋とか高層ビルとか、長く使う構造だとどんどん沈んでいくってことですか?
🎓
いいところに気づいたね。実際に PC 桁橋では、施工後 10〜30 年でクリープと収縮で中央部が数 cm 沈下するのが普通だよ。横浜ベイブリッジや本州四国連絡橋みたいな長スパン PC 橋では、設計段階でクリープによるたわみ進行を逆算して、打設時に「上向きキャンバー」を付けておく。あと、もっと深刻なのが「プレストレス損失」。PC 鋼材を緊張して入れたコンクリートが収縮・クリープすると、鋼材も一緒に縮んで張力が抜ける。長期で 15〜25% も損失するから、設計時にあらかじめ過大に緊張しておくんだ。
🙋
湿度を上げると収縮が減るのは直感的に分かるんですが、左の v/s 比って何ですか?値を小さくすると数値がガッと増えますね。
🎓
v/s は「体積/表面積比」で、断面の「乾燥しにくさ」を表す指標だよ。例えば壁厚 100mm の壁なら v/s≈50mm、太さ 1m の柱なら v/s≈250mm。v/s が小さいと表面積が相対的に大きいから水分逸散が速くて、収縮もクリープも一気に進む。だから、薄いスラブや薄い壁は厚い柱より長期変形がずっと大きい。逆に原子炉格納容器みたいに 1m 超の厚壁構造では v/s が非常に大きく、収縮はかなり抑えられる。
🙋
ACI 209R 以外にもモデルってあるんですか?どれを使えばいいのか迷いそうです。
🎓
主要モデルは 3 つ。ACI 209R-92(アメリカ)、CEB-FIP MC2010(ヨーロッパ・Eurocode 2)、JSCE 2017(日本)。ACI 209R は補正係数が直感的で実務向き。MC2010 はゲル水分の物理機構を細かく組み込んでいて研究向き。JSCE は日本の骨材・気候に合わせて係数を調整してある。一般建築なら ACI 209R で十分、長スパン橋や原発のように長期予測の精度が要る案件なら MC2010 や FEM(解析コード Abaqus, DIANA, MIDAS Civil)でステップ毎にクリープ重ね合わせる、と使い分けるんだ。

よくある質問

ACI 209R-92 ではクリープ係数を φ(t,t0) = ((t-t0)^0.6 / (10+(t-t0)^0.6)) · φ_u と定義します。t は経過時間(日)、t0 は載荷時年齢(日)、φ_u は終局クリープ係数で、標準値 2.35 に対して載荷時年齢・湿度・v/s 比・スランプ等の補正係数 γ をかけて求めます。t-t0 が小さい初期は急増し、長期では飽和に近づく時間依存挙動を表現します。
湿潤養生コンクリートの乾燥収縮は εsh(t) = (t / (35+t)) · εsh_u で表され、終局収縮ひずみ εsh_u は基準値 780×10⁻⁶ に湿度補正 γ_RH、寸法補正 γ_vs、スランプ補正 γ_slump を乗じて算出します。蒸気養生では分母の 35 を 55 に置き換えます。湿度 40% では γ_RH が 1.0、湿度 80% では 0.6 程度となり、湿潤環境ほど収縮は小さくなります。
PC 桁のテンドン緊張損失は、クリープ・乾燥収縮・PC 鋼材のリラクセーションの 3 要素で長期に 15-25% 程度発生します。本ツールが出力する長期総ひずみ(弾性+クリープ+収縮)にテンドンのヤング率 195 GPa を掛けると、応力損失の概算が得られます。例:総ひずみ 1200×10⁻⁶ → 損失応力 ≈ 234 MPa。実設計では JSCE 2017 や ACI 318 の式で 3 要素を個別に評価します。
v/s 比は体積/表面積比(mm)で、断面の「乾燥しにくさ」を表します。薄い壁では v/s が小さく内部からの水分逸散が速いため、収縮もクリープも大きくなります。一方、太い柱や厚いマット基礎では v/s が大きく、内部に水分が長く残るため変形が小さくなります。ACI 209R では γ_vs = 1.2·exp(-0.00472·v/s)(収縮)や γ_vs = 2/3·(1+1.13·exp(-0.0213·v/s))(クリープ)で寸法効果を補正します。

実世界での応用

プレストレス桁橋(PC 橋):横浜ベイブリッジ(中央径間 460m)や本州四国連絡橋の PC 桁では、施工後 10〜30 年でクリープにより中央部が数 cm 沈下します。設計時に ACI 209R や JSCE 2017 で長期たわみを予測し、打設時に逆方向の「上向きキャンバー」を仕込んで最終的に水平になるよう補正します。テンドンの緊張損失も同時に評価し、初期張力を 15〜25% 過大に与えることで長期張力を確保します。

原子炉格納容器(PCCV):1m を超える厚壁の PC 容器では、v/s 比が極端に大きく内部の乾燥が遅いため、収縮は数十年単位で進行します。Reactor 運転中に内部圧力が掛かる条件下で、コンクリートのクリープと PC 鋼材の張力履歴を 40〜60 年にわたって解析する必要があり、Abaqus / DIANA で時間刻みのクリープ重ね合わせ解析が行われます。

高層ビルのコア柱の鉛直短縮:50 階建て以上の RC・SRC 高層ビルでは、下層階の柱と上層階の柱で軸力に大きな差があるため、クリープによる鉛直短縮量が階によって異なります。これを無視すると、コア柱と外周柱で施工後 10 年で数十 mm の段差が出てカーテンウォールに損傷が出ます。施工段階毎にクリープ短縮を予測してジャッキで調整します。

マスコンクリート・ダム:1m 超の厚壁を持つダム躯体では、水和熱とその後の冷却収縮、さらに長期の乾燥収縮がひび割れの主因です。打設後 1 ヶ月で温度収縮、その後 10 年スケールで乾燥収縮が継続します。ACI 207 と 209R を組み合わせ、ひび割れ抑制鉄筋の配筋設計に使われます。

よくある誤解と注意点

第一の落とし穴が、「クリープは線形だと思い込む」こと。ACI 209R の式は応力レベル σ/fc' が 0.4 以下の「線形クリープ域」を前提としています。σ/fc' が 0.4 を超えると「非線形クリープ」になり、応力の指数関数的にクリープが増大します。さらに 0.7〜0.8 を超えると「クリープ破壊(クリープ・ラプチャー)」が起き、数日〜数ヶ月で破壊に至ります。プレストレス導入時の局所応力や、火災後の高温部位では、本ツールの線形予測は安全側ではないため注意してください。

第二に、「収縮は均一に起こる」と仮定すること。実際には、断面表面から内部に向かって乾燥が進むため、表面は早く収縮し内部は遅れる「収縮勾配」が生じます。これが拘束されると表面側に引張ひずみが集中し、いわゆる「乾燥収縮ひび割れ」になります。本ツールが出す εsh は断面平均値であり、表面ひずみ予測には別途湿度拡散解析が必要です。床スラブの収縮ひび割れ予測では、表面ひずみが平均の 1.5〜2 倍になることがあります。

第三に、「経過時間が長ければクリープは飽和して止まる」と思い込むこと。ACI 209R の式は (t-t0)^0.6 で増加が緩やかになりますが、完全には止まりません。30 年後でも年間 0.5〜1% のオーダーで進行し続けます。さらに、構造物の使用期間中に応力履歴が変わると(例:上載荷重の追加、テンドンの再緊張)、その都度「クリープ重ね合わせ(Boltzmann の重畳則)」を適用する必要があり、単純な静的計算では予測できません。長寿命構造の設計では、ステップごとの数値解析が不可欠です。