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破壊力学

CTOD(き裂先端開口変位)計算ツール

遠方応力・き裂寸法・降伏応力から、応力拡大係数K_Iに基づく弾性CTODとDugdaleストリップ降伏CTODを即時計算。平面応力・平面ひずみの拘束係数を切替え、CTODと応力の関係をリアルタイム可視化します。

入力条件
き裂寸法 a (mm)10
降伏応力 σy (MPa)500
限界CTOD δc (μm)40

一時停止中はスライダーを動かすと結果が即座に更新されます。

計算結果
δ = K²/(m·σy·E′)(δ ∝ 荷重²)
δ < δc:安全(破壊なし)
き裂先端の開口(CTOD)アニメーション
リアルタイム計算結果
遠方応力 σ (MPa)
応力拡大係数 K (MPa√m)
CTOD δ (μm)
状態(δc 比較)
理論・主要公式

$$\delta = \frac{K_I^{2}}{m\,\sigma_y\,E'}$$

弾性CTOD(m):$\delta$ はき裂先端開口変位。$m$ は拘束係数で平面応力 $m\approx1$、平面ひずみ $m\approx2$。

$$K_I = Y\,\sigma\,\sqrt{\pi a}$$

モードI応力拡大係数(Pa√m):$\sigma$ は遠方応力(Pa)、$a$ はき裂寸法(m)、$Y$ は形状係数。

$$\delta_{\mathrm{Dug}} = \frac{8\,\sigma_y\,a}{\pi E}\,\ln\!\left[\sec\!\left(\frac{\pi\sigma}{2\sigma_y}\right)\right]$$

Dugdaleストリップ降伏モデル(m)。$E' = E$(平面応力)または $E/(1-\nu^2)$(平面ひずみ)。$\sigma\to\sigma_y$ で Dugdale CTOD は発散します。

CTOD(き裂先端開口変位)とは

🙋
先生、CTODって名前は聞いたことがあるんですが、結局なにを測っているんですか?応力拡大係数K_ICとは別物ですか?
🎓
CTODは Crack Tip Opening Displacement、つまり「き裂の先端がどれだけパカッと開くか」を直接表す量だよ。記号はδ、単位はmm(このツールではμm表示)。K_ICはき裂先端の応力場の強さを表す量だけど、CTODは先端の塑性変形そのものの大きさを測る。だから、破壊する前に大きく降伏してしまう材料でも使えるのが強みなんだ。まず上の「拘束状態」を平面応力にして、遠方応力σを動かしてみて。CTODが伸びていくのが分かるよ。
🙋
なるほど。でも、それならいつもK_ICではなくCTODを使えばいいじゃないですか。なぜ使い分けるんですか?
🎓
良い質問だね。K_ICは「小規模降伏」、つまりき裂先端の塑性域が試験片寸法に比べて十分小さいことが前提なんだ。高強度で脆い材料ならそれでいい。でも、造船や橋梁に使う延性の高い構造用鋼の溶接部は、破壊前に大きく降伏する。そうなるとK_ICは成立しない。CTODはまさにその塑性変形を直接測るから、中〜大規模降伏まで適用できる。ツールの「σ/σy」を見て。これが1に近づくほど降伏が支配的で、K_ICの世界からCTODの世界に移っていくんだ。
🙋
平面応力と平面ひずみで結果が変わるのはなぜですか?同じ式に見えるのに。
🎓
δ=K_I²/(m·σy·E′) の m と E′ が状態で変わるんだ。平面応力(薄板)はm≈1、E′=E。平面ひずみ(厚板)はm≈2、E′=E/(1−ν²)。だから同じK_Iでも、平面ひずみのCTODは平面応力の約半分になる。厚板はき裂先端が周囲に強く拘束されて開きにくい、という物理を表しているんだ。ツールで拘束状態を切り替えてごらん。弾性CTODが約26.9μmから約12.3μmに落ちるはずだよ。これが「拘束効果」さ。
🙋
実際のCTOD試験はどうやるんですか?このツールの計算とどう関係しますか?
🎓
実試験ではBS 7448やASTM E1820に従って、SENB(3点曲げ)やCT試験片を使う。き裂口の開き(CMOD)をクリップゲージで測り、ヒンジモデルでき裂先端まで外挿してδを求めるんだ。このツールは弾性CTODとDugdaleモデルで「理論的にδがどう振る舞うか」を示すもの。実試験の限界値δ_cと並べて、設計でどれだけ余裕があるかを直感的に掴むのに役立つよ。Dugdaleの曲線がσ→σyで急に立ち上がるのも見てほしい。これが大規模降伏の危険信号なんだ。

物理モデルと主要な数式

CTODは、応力拡大係数K_Iと材料の降伏応力を結びつけることで弾性的に推定できます。基本となる関係は次の通りです。

$$\delta = \frac{K_I^{2}}{m\,\sigma_y\,E'},\qquad K_I = Y\,\sigma\,\sqrt{\pi a}$$

ここで、$\delta$ はき裂先端開口変位[m]、$K_I$ はモードI応力拡大係数[Pa√m]、$\sigma$ は遠方応力[Pa]、$a$ はき裂寸法[m]、$Y$ は形状係数、$\sigma_y$ は降伏応力[Pa]です。拘束係数 $m$ と有効弾性係数 $E'$ は、平面応力で $m\approx1,\ E'=E$、平面ひずみで $m\approx2,\ E'=E/(1-\nu^2)$ をとります。

降伏が進むとき裂先端の塑性域が無視できなくなります。Dugdaleのストリップ降伏(帯状降伏)モデルは、き裂前方に降伏応力で閉じようとする仮想的なストリップを置くことで、弾塑性のCTODを閉じた形で与えます。

$$\delta_{\mathrm{Dug}} = \frac{8\,\sigma_y\,a}{\pi E}\,\ln\!\left[\sec\!\left(\frac{\pi\sigma}{2\sigma_y}\right)\right]$$

$\sigma/\sigma_y$ が小さいときはこの式は弾性CTOD(平面応力)にほぼ一致しますが、$\sigma\to\sigma_y$ で $\sec$ の引数が $\pi/2$ に近づき、CTODは対数的に発散します。これは完全弾塑性材で大規模降伏(LSY)に至るとき裂先端が無限に開こうとする、ネッキング・全面降伏の極限を表しています。

準拠規格・前提条件

依拠する規格とモデル

前提条件

適用範囲と限界

実世界での応用

溶接構造物の健全性評価:造船・橋梁・海洋構造物の溶接継手は、靱性が低く残留応力も大きいため、CTODが破壊評価の主役です。BS 7910などの欠陥評価では、構造物に作用するδを推定し、材料のδ_cと比べて「許容できる欠陥寸法か」を判断します。延性破壊が前提のためK_ICでは過大評価・過小評価が起こりやすく、CTODが採用されます。

パイプライン・圧力容器の設計:天然ガスパイプラインや圧力容器では、低温での脆性破壊を避けるためにCTOD遷移温度を管理します。母材・溶接金属・熱影響部それぞれでδ_cを測定し、運用最低温度でも十分な開口余裕(δ)が確保されることを確認します。

低温・極低温機器の材料選定:LNGタンクや寒冷地構造物では、温度低下とともにき裂先端の拘束が増し平面ひずみ的になります。本ツールで拘束状態を平面ひずみに切り替えるとCTODが小さくなるのは、まさにこの「低温で開きにくく脆くなる」傾向を反映しています。

事故解析・余寿命評価:構造物が予期せず破壊したとき、破面から推定したき裂寸法と運用応力でδを逆算し、材料のδ_cと比較して破壊の根本原因を探ります。き裂が見つかった供用中機器では、現状のδと限界δ_cの差から「あと何年使えるか」を見積もります。

よくある誤解と注意点

まず、「CTODは大きいほど良い、小さいほど危険」と単純に読み替えるのは誤りだよ。CTODそのものは「先端がどれだけ開くか」を表す指標で、これに対応するのは材料の限界値δ_c。評価は必ず「作用δ ≦ 限界δ_c」という比較で行う。作用δが大きく出ても、その材料のδ_cがそれ以上に大きければ問題ない。ツールの数値だけを見て「危険/安全」と判断せず、必ず試験で得た限界値とセットで考えること。

次に、拘束係数 m を「常に1か2のどちらか」と固定的に捉えないこと。m≈1(平面応力)、m≈2(平面ひずみ)はあくまで理想化された両極端で、実際の試験片厚さや幾何条件では m は連続的に変化する。文献によってはσ_yの代わりに流動応力(降伏と引張強さの平均)を使う流儀もある。このツールの平面応力/平面ひずみ切替は教育的な目安であり、現場では拘束補正(T応力やQパラメータ)を併用するのが普通だ。

最後に、Dugdaleの発散を「実材料でもCTODが無限大になる」と誤解しないこと。$\sigma\to\sigma_y$ でDugdale CTODが急上昇するのは、完全弾塑性・無限板という理想化の帰結だ。実材料では加工硬化があり、試験片は有限寸法だから、全面降伏に至ってもCTODは有限にとどまる。この発散はむしろ「大規模降伏に入ったので線形破壊力学から弾塑性評価へ移るべき」という警告として読むのが正しい使い方だよ。

よくある質問

CTOD(Crack Tip Opening Displacement、き裂先端開口変位)は、荷重を受けたときにき裂の先端がどれだけ開くかを表す弾塑性破壊力学のパラメータです。記号はδ、単位はmm(本ツールではμm表示)。延性的に降伏しながら破壊する構造用鋼などで、線形破壊力学のK_ICが使えない場合の破壊靱性指標として用いられます。
K_ICは小規模降伏(き裂先端の塑性域が十分小さい)を前提とする線形破壊力学のパラメータです。構造用鋼の溶接部のように、破壊前に大きく降伏する材料ではK_ICが成立しません。CTODはき裂先端の塑性変形そのものを直接測る量なので、中〜大規模降伏まで適用でき、より現実的な破壊評価が可能です。
弾性CTODはδ=K_I²/(m·σ_y·E′)で表され、拘束係数mと有効弾性係数E′が状態で変わります。平面応力ではm≈1、E′=E。平面ひずみではm≈2、E′=E/(1−ν²)。このため同じK_Iでも平面ひずみのCTODは平面応力の約半分になり、厚板ほど見かけの開口が小さく拘束が強いことを表します。
標準的にはBS 7448やASTM E1820に従い、SENB(3点曲げ)またはCT試験片を用います。き裂口開口変位(CMOD)をクリップゲージで測定し、ヒンジモデルでき裂先端まで外挿してCTOD(δ)を求めます。延性破壊では限界値δ_c、δ_u、δ_mなどを荷重−CMOD曲線の特徴点から定義します。

使い方ガイド

  1. 「拘束状態」で平面応力(薄板、m≈1)または平面ひずみ(厚板、m≈2)を選択します
  2. 遠方応力σ、き裂寸法a、降伏応力σy、ヤング率E、ポアソン比ν、形状係数Yをスライダーまたは数値入力で設定します
  3. K_I、弾性CTOD(δ)、Dugdale CTOD、σ/σy が即時に算出されます
  4. CTOD−応力曲線で、弾性CTODとDugdaleの差がσ/σyの増加とともに広がる様子を確認します

具体的な計算例

遠方応力σ=300 MPa、き裂寸法a=10 mm、降伏応力σy=500 MPa、ヤング率E=210 GPa、ν=0.3、Y=1.0、平面応力の場合、K_I=53.17 MPa√m、弾性CTOD δ=26.93 μm、Dugdale CTOD=32.22 μm と算出されます。同条件で平面ひずみに切り替えると、m=2・E′=E/(1−ν²) の効果で弾性CTODは約12.25 μm に低下し、厚板での拘束による開口抑制を表します。σ/σy=0.6 は小〜中規模降伏域に相当します。

実務での注意点

  1. 本ツールの弾性CTODは小〜中規模降伏の概算です。σ/σyが0.8を超える領域ではDugdale(弾塑性)または実試験のδ評価を優先してください
  2. 拘束係数mは平面応力/平面ひずみの理想値です。実際の厚さ・拘束ではT応力やQパラメータによる補正を併用します
  3. Dugdale CTODはσ→σyで発散します。これは大規模降伏の警告であり、実材料の加工硬化・有限寸法では有限にとどまります
  4. 得られたδは必ず材料の限界値δ_c(BS 7448 / ASTM E1820試験値)と比較して評価してください