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材料・破壊

モードII/III破壊力学・混合モード破壊

KI・KII・KIIIを設定して混合モード破壊基準・き裂偏向角・ひずみエネルギー解放率をリアルタイム計算。最大周方向応力基準による偏向角予測と破壊包絡線を可視化。

パラメータ設定
KI (モードI)
MPa√m
KII (モードII)
MPa√m
KIII (モードIII)
MPa√m
KIC (モードI破壊靭性)
MPa√m
KIIC / KIC 比
き裂長さ a (mm)
mm
ヤング率 E (GPa)
GPa
ポアソン比 ν
解析条件
計算結果
Keff [MPa√m]
σnom [MPa]
θc き裂偏向角 [°]
G_total [J/m²]
ψ モード混合角 [°]
破壊余裕
き裂
混合モード破壊包絡線
き裂偏向角 vs KII/KI
理論・主要公式

$$K_{II} = \tau \sqrt{\pi a}$$

モードII応力拡大係数(Pa√m):面内せん断応力 $\tau$(Pa)と半亀裂長さ $a$(m)。

$$\sigma_{ij}^{II} = \frac{K_{II}}{\sqrt{2\pi r}} f_{ij}^{II}(\theta)$$

亀裂先端応力場:$r$ は先端からの距離、$\theta$ は角度、$f_{ij}^{II}$ は角度関数。

$$G_{II} = \frac{K_{II}^2}{E'}, \quad E' = \frac{E}{1-\nu^2}$$

エネルギー解放率(J/m²):$E'$ は平面ひずみの有効弾性率。

モードII/III破壊力学・混合モード破壊とは

🙋
「モードI」は教科書でよく見るけど、「モードII」や「モードIII」って何ですか? せん断が関係するって聞いたけど…。
🎓
大まかに言うと、き裂の開き方の「型」の違いだね。モードIは引きはがす「開口型」。モードIIはき裂面が横にずれる「面内せん断型」。モードIIIはき裂がねじれる「面外せん断型」だ。例えば、飛行機の胴体や橋の溶接部では、引張りとせん断が複合した力がかかるから、モードIIやIIIも無視できないんだ。シミュレーターで`KII`のスライダーを動かすと、き裂先端の応力状態がどう変わるか体感できるよ。
🙋
え、そうなんですか!じゃあ「混合モード」って、それらが同時に起こる状態なんですね。でも、き裂は真っ直ぐ進むと思ってました。複数の力が働くと、進む方向が変わるということ?
🎓
その通り!き裂は最も「進みやすい」方向に曲がって進展する。それを予測するのが「破壊基準」だ。このツールで使っている「最大周方向応力(MCS)基準」は、き裂の先端周りの応力を計算して、最も引っ張られる方向(周方向応力が最大の方向)に曲がると考えるんだ。`KI`と`KII`の値を変えて「き裂偏向角」がどう計算されるか、すぐに確認してみよう。
🙋
実務では、この「破壊靭性`KIC`」と「応力拡大係数`KI`」を比べて安全か判断するんですよね。でも、モードIIやIIIが混ざると、`KIC`だけじゃダメなんですか?
🎓
いいところに気づいたね。純粋なモードIなら`KI < KIC`でOKだけど、混合モードでは`KI`と`KII`を組み合わせた「等価応力拡大係数」を考え、それが材料の限界を超えるかどうか評価する。ツールの「混合モード破壊基準」の部分で、`KIIC/KIC比`を変えてみて。この比は材料によって変わるんだ。例えば複合材はせん断に弱いから比が小さくなる。実際のCAE解析では、ABAQUSなどで求めた`KI`, `KII`をこのツールに放り込んで、破壊の余裕度と進む方向を一気に評価するんだ。

よくある質問

本ツールは最大周方向応力基準(MTS)を実装しています。その他、最小ひずみエネルギー密度基準(SED)や最大エネルギー解放率基準(Gmax)などがありますが、これらは別途実装が必要です。MTSは脆性材料のき裂偏向角予測に広く使われる標準的な基準です。
き裂偏向角が負の値になるのは、モードIIのせん断方向が負の場合や、混合モード比によってき裂が進展する方向が反対側に曲がるためです。符号は座標系の定義に依存します。ツールでは偏向角を度単位で表示し、正負で曲がる方向を示しています。
エラーにはなりませんが、現実の材料ではK値が破壊靭性値を超えると不安定破壊が発生します。ツールは計算結果を表示しますので、破壊包絡線と照らし合わせて、入力値が破壊開始条件を満たすかどうかをご確認ください。
本ツールは静的な混合モード破壊基準と偏向角の計算に特化しており、繰り返し荷重による疲労き裂進展のシミュレーション機能はありません。疲労解析には別途、パリ則などを用いた専用ツールが必要です。

実世界での応用

航空機構造物の損傷許容設計: 機体のリベット穴や窓の角から発生するき裂は、機体の曲げ(モードI)とねじり(モードII/III)により混合モード状態で進展します。定期検査間隔を決定するために、き裂の進展方向と速度をこのようなツールで予測します。

自動車の溶接継手評価: シャシーやサスペンションの溶接部には複雑な残留応力が存在し、疲労き裂は混合モードで進展します。CAEで求めた応力拡大係数を本ツールに入力し、破壊余裕度とき裂の偏向を評価することで、危険な進展経路を事前に把握できます。

複合材料の層間はく離解析: CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの積層板では、層と層の間(界面)ではく離が生じやすく、これは主にモードIIのせん断破壊が支配的です。ツールの`KIIC/KIC比`を小さく設定することで、せん断に弱い界面の破壊挙動をシミュレートできます。

電子デバイスの接着接合部信頼性: スマートフォンや車載ECUのチップ実装部では、熱膨張の差による応力で接着界面にき裂が発生します。この応力は引張りとせん断が複合しているため、混合モード破壊基準を用いて寿命を予測し、信頼性を向上させます。

よくある誤解と注意点

このツールを使い始める際、特にCAE初心者が陥りがちな落とし穴がいくつかあります。まず第一に、「応力拡大係数Kは、き裂先端の応力そのものではない」という点です。Kはあくまで「応力場の強さ」を表すパラメータ。例えば、同じK値でも、き裂先端のごく近傍と少し離れた場所では応力値は全く異なります。ツールでKを大きくすると応力分布が「強く」なるのは確かですが、特定の点の応力値を直接読み取ることはできません。

第二に、幾何係数Fの重要性を見落とすことです。ツールではシンプルにKをスライダーで操作できますが、実務ではこのFが全てと言っても過言ではありません。例えば、板の端にあるき裂と中心にあるき裂、あるいは穴の縁から発生するき裂では、Fの値が大きく異なります。ツールの計算結果を実際の設計に適用する際は、対象の幾何形状に合ったFを文献や専門書で必ず確認しましょう。

第三は、混合モード破壊の評価基準は一つではないということ。このツールは最大周方向応力(MCS)基準を採用していますが、他にも「ひずみエネルギー解放率基準」や「最小ひずみエネルギー密度基準」など複数の理論があります。特にモードIIIが大きく関与する三次元問題では、これらの基準間で予測されるき裂進展角が異なることがあります。一つの答えだけを絶対視せず、「どの理論をなぜ選ぶのか」を考える習慣が大切です。