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CubeSat って大学のサークルでも作っているニュースを見ました。あの 10cm 角の箱で、本当に観測とか通信ができるんですか?電力的に厳しそうですけど…。
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そう、実はそこが CubeSat 設計の一番のキモなんだ。1U(10×10×10cm、約 1.33kg)の小さな箱に、姿勢制御・通信・観測機器を全部詰めて、しかも電源は機体側面の太陽電池だけ。だから最初に必ずやるのが「パワーバジェット(電力予算)」なんだ。発電量と消費電力を 1 W 単位で積み上げて、軌道平均で余裕があるか調べる。これが赤字だと、いくら高性能な観測機を積んでも軌道上で動かないんだよ。
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左で「3U・効率 29%・4 面パネル」のデフォルトだと、機体パネル発電が 12 W くらい出ていますね。でも軌道平均だと 7.8 W に落ちている。これってなぜそんなに減るんですか?
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理由は 2 つある。1 つ目は「機体面マウントの幾何効果」で、回転する箱の側面は常に半分しか太陽を向いていない。回転平均で 1/π ≒ 0.318 倍の受光ファクタが効くんだ。2 つ目が「食(eclipse)」。低軌道だと 1 周期 90 分のうち約 35% は地球の影に入ってしまう。だから 12 W × (1 − 0.35) ≒ 7.8 W、というふうに目減りするわけ。展開パネルで太陽追尾すれば 0.9 倍くらいの効率で計算するから、機体面の倍以上効率的に発電できるよ。
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食時間中は何もできないんですか?電気を使う機器はストップ?
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そこで蓄電池の出番。日照中に余った電力を充電しておいて、食時間中はそれで全負荷をまかなう。だから必要蓄電池容量は E_batt = P_load × t_eclipse / η_batt で決まる。デフォルト条件だと食時間が 0.54 時間(≒ 32 分)で、3.5 W × 0.54 / 0.88 ≒ 2.14 Wh、7.4V の Li-ion パックなら約 290mAh で足りる計算だ。ただし実機では放電深度(DOD)を 30〜50% に抑えて寿命を延ばすので、実装する電池は 600〜1000mAh クラスを選ぶことが多い。
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電力余裕(マージン)はどれくらい確保すべきですか?右上の判定では「30% 以上で OK」と出ますが、3 桁の余裕(123%)はさすがに過剰ですよね?
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いい質問。デフォルトの 123% は「機体面 4 面・3U・低消費ペイロード」というかなり余裕のあるベースラインだからだね。実機ではここに高出力アンプ(送信時 8〜10W)、推進系(電熱式で 5〜20W)、観測機器の同時起動などが乗ってくる。NASA / ESA のガイドラインでは PDR 段階で EOL マージン 30% 以上、CDR で 20% 以上を推奨。本ツールは BOL(理想値)なので、放射線劣化や姿勢誤差を考えると、ツール上では 30〜50% を最低ラインと考えるのが現実的だよ。逆にマージンが余りすぎているなら、太陽電池面を減らしてマス予算を確保したり、より高出力なミッション機器を積み込めるサインでもある。
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じゃあ実際に大学衛星で電力不足が出てしまうのは、どういう失敗パターンが多いんですか?
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古典的なのは「姿勢制御失敗で太陽を向けず発電が想定の半分」、「Li-ion 電池が低温(-20℃以下)で容量激減」、「打ち上げ後の放射線劣化で BOL→EOL が予想より早い」の 3 つかな。だから本ツールで 30% 以上のマージンを確保しても、実機ではさらに姿勢誤差ファクタ 0.7、温度ファクタ 0.9、放射線ディグレード 0.85 みたいに掛け算で目減りしていく。SpaceX の Starlink、JAXA のはやぶさ 2、NASA の MarCO など先進的なミッションでも、必ず「ワーストケースで全機器同時起動・電池低温・パネル一部失われた状態」での電力収支シミュレーションを行っているんだ。
まず太陽電池の総発電 P_gen を P_gen = A·S·η·k で求めます。A は太陽電池面積(m²)、S は軌道上の太陽定数(約 1361 W/m²)、η はセル効率、k は受光ファクタです。機体面マウントのパネルは回転平均で k≈1/π=0.318、展開パネルで日射を追尾する場合は 0.9 程度を使います。次に食時間(地球の影に入る時間)を差し引いて P_avg = P_gen·(1 − η_eclipse) を計算します。η_eclipse は典型 LEO で 0.30〜0.40 です。
食時間中に全負荷を供給できる電力量が最低条件です。E_batt = (P_load · t_eclipse) / η_batt で必要容量を計算します。η_batt は蓄電池の充放電効率で、Li-ion で 88〜92% が目安。さらに実用上、放電深度(DOD)を 30〜50% に抑える設計をするため、上で求めた容量を 2〜3 倍したセル容量を選びます。本ツールは Wh と 7.4 V 2セル Li-ion パック前提の mAh を表示します。
機体表面積はおおむね U 数に比例して増えます。1U(10×10×10cm)の側面 1 枚は 80cm²、3U(10×10×30cm)の長辺側面 1 枚は 240cm² です。機体面マウントのみで効率 29% のセルを 4 面使った場合、1U で約 4 W、3U で約 12 W が軌道平均で取れるイメージです。1U では基本ペイロードに 0.5〜1 W しか使えないケースが多く、本格的な無線通信や推進系を入れたい場合は展開パネルか 3U 以上を選びます。
実務では PDR(基本設計審査)時に EOL(End-of-Life)で 30% 以上、CDR(詳細設計審査)で 20% 以上のマージンが NASA / ESA のガイドラインで推奨されています。本ツールの値は BOL(Beginning-of-Life)の理想値なので、放射線劣化や姿勢変動による損失を考えると、本ツール上では最低でも 30〜50% の余裕を確保しておくと現実的です。マージン < 0% は完全 NG、< 30% は警告として表示されます。
大学・スタートアップの実証衛星:東京大学の CUTE-1(1U、2003 年)から始まり、現在では九州工業大学・東工大・北海道大学など多くの大学が独自 CubeSat を打ち上げています。スタートアップでは Planet Labs(Dove 3U)、Spire(Lemur 3U)が GNSS-RO や地球観測の常設コンステレーションを構築。共通するのは「パワーバジェットの慎重なサイジング」で、本ツールのような単純計算で初期トレードオフを実施します。
科学ミッション(NASA MarCO、ESA M-ARGO):NASA の MarCO(2018)は CubeSat として初めて深宇宙に到達し、火星探査機 InSight の着陸通信を中継しました。深宇宙では太陽定数が地球軌道の半分以下になるため、巨大な展開パネルが必要。電力予算は地球軌道の数倍シビアで、休止モードとアクティブモードを軌道周期で細かく切り替える運用が前提となります。
商用コンステレーション(Starlink、OneWeb):Starlink V2 mini は CubeSat より大型ですが、量産・低コスト設計思想は CubeSat の延長線上です。1 機 800kg 級でも、太陽電池パネル効率・食時間・蓄電池サイクル寿命の最適化は CubeSat 同様に重要。コンステレーション全体の運用 ROI を決めるのは、結局のところ電力予算の余裕度です。
探査機・有人宇宙機の予備検討:はやぶさ 2、SLIM など JAXA の本格的な探査機でも、初期検討では本ツールのような簡易電力予算で「太陽電池サイズ・電池サイズ」のオーダーを決めます。詳細設計では STK / SOAP などのソフトで姿勢込みの精密な電力シミュレーションに移行しますが、最初の数十時間で「現実的に成立する設計か」を判断するための簡易ツールはいつの時代も重要です。
まず最大の落とし穴が、「BOL(Beginning-of-Life)の値だけで電力予算を組む」こと。本ツールの計算は理想値(BOL)で、実機では打ち上げ後すぐに放射線劣化が始まります。GaAs 太陽電池でも 5 年で 10〜20% の出力低下、低軌道では原子状酸素や紫外線でカバーガラスが曇るとさらに減少。EOL(End-of-Life)では BOL の 70〜80% を想定するのが普通で、本ツールで 30% のマージンがあっても EOL では実質ゼロ、というケースは珍しくありません。設計時には BOL 計算結果に 0.7〜0.8 を掛けた EOL 値で評価する習慣をつけてください。
次に、「姿勢制御が完璧」という前提。本ツールでは機体面マウントの受光ファクタを 1/π = 0.318 とおいていますが、これはランダム回転中の理想平均値です。実際には姿勢制御エラーや姿勢未収束時間で受光率が大きく変動し、最悪ケースでは数分間まったく発電できないこともあります。打ち上げ直後のチェックアウト期間(数日〜数週間)は姿勢が安定しないことが多く、電池だけで全システムを駆動するため、その間も電池が枯渇しないかをワーストケースで検証する必要があります。
最後に、「電池容量さえあれば食時間を乗り切れる」という単純化。Li-ion 電池は温度依存性が極めて強く、-20℃ では公称容量の 50% 以下、+50℃ では寿命が急激に縮みます。CubeSat の軌道上温度は -40℃〜+60℃ で激しく変動するため、電池を放射線シールドと熱絶縁で囲み、ヒーターで -10℃ 以上を維持する設計が必須です。これらのヒーター電力(数 W 規模)もパワーバジェットに必ず計上してください。さらに DOD(放電深度)を 30〜50% に抑えないとサイクル寿命が 1 年も持たないため、計算上必要な容量の 2〜3 倍を実装するのが定石です。