衛星熱制御計算ツール 戻る
JP EN ZH
熱解析

衛星熱制御シミュレーター

太陽フラックス・地球赤外・アルベド・内部発熱から均衡温度を算出。日照時・日陰時の温度変動、放熱板面積サイジング。LEO・GEO・深宇宙対応。

軌道・環境プリセット
外部熱環境
太陽定数 Gs [W/m²]
W/m²
地球赤外フラックス qIR [W/m²]
W/m²
アルベド係数 a
衛星・表面特性
太陽吸収率 αs
赤外放射率 ε
投影面積 As [m²]
全表面積 A_total [m²]
内部発熱 Q_int [W]
W
日陰時間比 β_eclipse
計算結果
日照時 T_sun [°C]
日陰時 T_ecl [°C]
吸収熱 Q_in [W]
放熱板面積 [m²]
熱収支内訳(日照時)
温度
▲ 軌道1周期の温度変動(日照/日陰サイクル)
▲ 放熱板面積 vs 設計温度(Q_int 変化)
理論・主要公式

熱収支(定常):$Q_{in}= Q_{out}$

$$Q_{in}= \alpha_s A_s G_s + \alpha_s A_s a G_s F_{alb}+ \varepsilon_{IR}A_{IR}q_{IR}+ Q_{int}$$ $$Q_{out}= \varepsilon \cdot A_{total}\cdot \sigma \cdot T^4$$

均衡温度:

$$T_{eq}= \left(\frac{Q_{in}}{\varepsilon \cdot A_{total} \cdot \sigma}\right)^{1/4}$$

放熱板サイジング:$A_{rad}= Q_{reject}/(\varepsilon \sigma T_{rad}^4 - q_{abs})$

衛星熱制御シミュレーターとは

🙋
衛星って宇宙の真空中なのに、どうやって温度が決まるんですか?太陽光が当たるだけじゃないの?
🎓
大まかに言うと、衛星は「入ってくる熱」と「宇宙空間へ放射する熱」のバランスで温度が決まるんだ。太陽光だけじゃなくて、地球からの赤外線や衛星内部の電子機器の発熱も「入熱」になる。シミュレーターの「太陽定数」や「内部発熱」のスライダーを動かすと、このバランスがどう変わるかすぐにわかるよ。
🙋
「アルベド」って何ですか?聞いたことない単語です。それと、日陰になったら急に冷えてしまうのではないですか?
🎓
アルベドは地球が太陽光を反射する割合だよ。例えば、雲や雪は反射率が高いから、衛星が地球の照らされている側にいると、この反射光も熱として受け取るんだ。日陰(地球の影)に入ると、太陽光とアルベドがゼロになるから、確かに温度は下がる。シミュレーターで「日陰時間比」を0.3(軌道の約30%が影)に設定してみると、日照時と日陰時の温度差がグラフで見えるよ。
🙋
なるほど!でも、電子機器は決まった温度で動かしたいですよね。温度が変動しすぎないようにするには、どう設計するんですか?
🎓
良いところに気が付いたね。そこで活躍するのが「放熱板」だ。余分な熱を宇宙空間に捨てる専用の面で、表面を高い「赤外放射率」に加工する。シミュレーターの「放熱板サイジング」の部分で、目標温度を例えば20℃に設定して「計算」ボタンを押すと、必要な放熱板の面積が自動で計算されるんだ。実務では、この計算をもとにヒートパイプやループヒートパイプをレイアウトするよ。

よくある質問

本シミュレーターでは、衛星の熱容量を考慮した非定常熱収支式を解くことで、日照時と日陰時の温度変動を計算します。入力として軌道周期と日陰時間を指定すると、各フェーズでの入熱変化に応じた温度の時間応答を出力します。
目標とする均衡温度と内部発熱量から、必要な放熱面積を逆算します。具体的には、放射熱量Q=εσAT^4の式を用い、許容最高温度と宇宙空間の背景温度(3K)を考慮して、放射率εと面積Aを調整します。結果はグラフで確認できます。
主な違いは太陽定数と地球からの熱入力です。LEOでは地球赤外(約240W/m²)とアルベド(約0.3)の影響が大きく、日陰時間も長くなります。GEOでは地球からの影響は小さく、日陰時間も短いため、太陽フラックスと内部発熱が支配的です。
衛星表面の材質やコーティングに依存します。例えば、白色塗料はαs≈0.2、εIR≈0.9、黒色塗料はαs≈0.9、εIR≈0.9です。実機に近い値は材料データベースやメーカー仕様書を参照し、劣化を考慮して安全側の値を推奨します。

実世界での応用

地球観測衛星(LEO):極軌道を周回するため、日照と日陰の繰り返しが激しく、温度変動が大きくなります。シミュレーターで日陰時間比を調整し、カメラやセンサーが許容できる温度範囲内に収まるよう、ヒーターや放熱板を設計します。

通信衛星(GEO):静止軌道では地球の影に入る期間(春分・秋分の前後)が限定的です。しかし、一年中太陽光をほぼ一定に受けるため、大きな発熱をする送信機の熱を如何に捨てるかが課題で、大型の放熱板が必須となります。

深宇宙探査機:火星以遠では太陽定数が急激に小さくなります。シミュレーターで太陽定数を地球軌道の約半分(火星)や数%(木星)に下げると、内部発熱が支配的になり、放射性同位体熱電気転換器(RTG)の熱を有効利用する設計が重要になります。

超小型衛星(CubeSat):限られた体積と電力の中で熱設計を行うため、表面の塗装(αs/εの比を制御するサーマルコーティング)や、展開式の放熱板の利用が検討されます。シミュレーターで投影面積と全表面積の比を変えることで、コンパクトな機体の熱的特性を評価できます。

よくある誤解と注意点

まず、「投影面積」と「表面積」を混同しないでください。太陽光や地球赤外の計算で使うのは、熱が入射する方向から見た「影の面積」、つまり投影面積です。例えば、一辺1mの立方体衛星が太陽光を正面から受ける場合、投影面積は1m²ですが、全表面積は6m²です。この違いを間違えると、入熱を最大6倍も見積もってしまう重大な誤りになります。次に、材料の「太陽吸収率(α_s)」と「赤外放射率(ε)」は独立したパラメータです。真っ白な塗装はα_sが低く(太陽熱を吸収しにくい)、εは高い(熱を放射しやすい)という理想的な特性を持ちますが、金属表面はその逆です。シミュレーターで「表面仕上げ」を変えるときは、この両方をセットで変更する意識を持ちましょう。最後に、「定常計算」の結果はあくまで平均値だという点です。例えば、内部発熱100Wの機器が10分間ON、10分間OFFを繰り返す場合、平均50Wで計算した均衡温度は参考値でしかありません。実際には、機器ON時に想定温度を超えないか、熱容量を使った過渡解析が別途必要になります。