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振動・波動

弾性波伝播シミュレーター
(P波・S波)

固体中を伝わる縦波(P波)と横波(S波)の速度・波形をリアルタイム可視化。材料の弾性率・密度を変えて超音波探傷や地震波解析の基礎を体感できます。

材料プリセット
物性パラメータ
ヤング率 E
GPa
GPa単位 — 鋼210, Al70, CFRP135, コンクリート30
ポアソン比 ν
密度 ρ
kg/m³
波形パラメータ
周波数 f
kHz
探傷超音波: 1〜10 MHz / 地震波: 1〜10 Hz
振幅
再生コントロール
波形比較
💡 キャンバスクリック: 波源位置を設定できます。クリックした位置から波が発生します。
計算結果
cP [m/s]
cS [m/s]
λP [mm]
λS [mm]
Z [MRayl]
波形アニメーション t = 0.00 μs
P波(縦波・圧縮波) S波(横波・せん断波)
理論・主要公式

$$c_L = \sqrt{\frac{E(1-\nu)}{\rho(1+\nu)(1-2\nu)}}$$

縦波(P波)速度(m/s):ヤング率 $E$(Pa)、ポアソン比 $\nu$、密度 $\rho$(kg/m³)。

$$c_T = \sqrt{\frac{G}{\rho}} = \sqrt{\frac{E}{2\rho(1+\nu)}}$$

横波(S波)速度(m/s):せん断剛性率 $G$ と密度で決まる。常に $c_T < c_L$。

$$Z = \rho c$$

音響インピーダンス(Pa·s/m):境界での反射率 $R = (Z_2 - Z_1)^2/(Z_2+Z_1)^2$ を決める。

弾性波伝播とは

🙋
P波とS波って何ですか?地震のニュースで聞くけど、固体の中でも伝わるんですか?
🎓
その通り!大まかに言うと、固体の中を伝わる「体積変化の波」がP波、「形が歪む波」がS波だ。例えば、鉄の棒の端を押すと、押した部分が縮んで元に戻ろうとする動きがP波として伝わる。横に揺すると、そのねじれがS波として伝わっていくんだ。このシミュレーターでは、上のスライダーで「ヤング率」や「密度」を変えると、波の伝わる速さがどう変わるか、すぐに体感できるよ。
🙋
え、そうなんですか!でも、材料が変わると速さはどれくらい変わるんですか?鋼とゴムだと全然違いますか?
🎓
圧倒的に違うね。鋼は硬くて重いから波は速く、ゴムは柔らかくて軽いから波は遅く伝わる。実務では、この違いを利用して材料の内部欠陥を探る「超音波探傷」が盛んだ。シミュレーターで「密度」を小さく、「ヤング率」を大きくしてみて。波の速度が大きく上がるのがわかるはずだ。
🙋
なるほど!でも、P波とS波の速さの比って、材料によって決まってるんですか?「ポアソン比」ってパラメータも関係ありますか?
🎓
鋭い質問だ!実は、速度比 $c_P/c_S$ は「ポアソン比」だけで決まる、とても重要な性質なんだ。例えば、鋼のポアソン比は約0.3で、その時の速度比は約1.84。シミュレーターでポアソン比を0.25に変えてみると、比は$\sqrt{3}\approx 1.73$になる。地震学では、この比を測ることで地下の岩盤の種類を推定しているんだよ。

よくある質問

P波速度はヤング率とポアソン比に正比例し、密度に反比例します。S波速度はせん断弾性係数に依存し、液体(せん断弾性係数0)では伝播しません。材料を硬くするほど両方の速度が上がり、密度を上げると速度は低下します。
ポアソン比が0.5に近づくとP波速度の分母がゼロに近づき、速度が極端に大きくなります。これは非圧縮性材料(ゴムなど)を表しますが、数値的に不安定になるため、通常は0.49以下での使用を推奨します。
はい。材料パラメータを変更することで、鋼やアルミなど実際の探傷対象に近いP波・S波速度を再現できます。波形の伝播遅延や反射の様子を視覚的に確認でき、探傷原理の理解に役立ちます。
S波はせん断変形(形状変化)によって伝播しますが、液体はせん断弾性係数がゼロで、変形に対する復元力を持ちません。そのため、液体中ではS波は発生せず、P波(体積変化)のみが伝わります。

実世界での応用

超音波非破壊検査:航空機エンジン部品や橋梁の溶接部など、内部にき裂や空洞がないかを調べるために広く利用されています。探触子から発信した超音波(主にP波)が欠陥で反射する時間や波形の変化を計測し、内部状態を可視化します。

地震学と地下構造探査:地震で発生したP波とS波が観測点に到達する時間差から震源までの距離を求めます。また、地中を伝わる波の速度や $V_P/V_S$ 比を解析することで、地殻やマントルの構成物質(岩盤、マグマ等)を推定します。

医用超音波診断:超音波プローブを体表に当て、体内組織の境界で反射するエコーを画像化します。組織の弾性率(硬さ)の違いは音速の違いとして現れ、がん組織などの発見に役立ちます。

地盤調査:地表からハンマー等で衝撃を与えて発生させた弾性波の伝播速度を計測し、地盤の硬さ(N値)や支持力を評価します。建設現場での基礎設計に不可欠なデータとなります。

よくある誤解と注意点

「P波は縦波でS波より速いから、常に最初に到達する」と思いがちですが、実際には材料のポアソン比や境界条件によってS波が特定の方向で卓越する場合があり、必ずしもP波だけが最初に観測されるとは限りません。特に異方性材料では波の伝播方向によって速度が変化するため注意が必要です。

「密度が大きいほど波の速度も速くなる」と誤解されがちですが、実際には弾性率(ヤング率や剛性率)と密度の比で速度が決まるため、密度が大きいと逆に速度が低下するケースもあります。例えば鉛は鉄より密度が高いですが、弾性率が低いためP波速度は約半分になります。

「S波は液体中も伝わる」と思いがちですが、実際にはS波はせん断変形を伝えるため、せん断弾性率がゼロの液体や気体中では伝播しません。超音波探傷で液体中にS波を入射する際は、固体との境界でモード変換が生じる点に注意が必要です。