ファブリー・ペロー干渉計シミュレーター 戻る
光学シミュレーター

ファブリー・ペロー干渉計シミュレーター — フィネスと透過スペクトル

2枚の高反射ミラーの間で多重干渉する光のAiry透過スペクトルを可視化。自由スペクトル領域FSR・フィネス・FWHM・Q値をリアルタイム計算します。

パラメータ設定
ミラー間隔 d
mm
ミラー反射率 R
入射波長 λ
nm
入射角 θ
°

空気充填(n=1.0)、無損失ミラーを仮定。既定値は緑レーザー(λ=532 nm)です。

計算結果
自由スペクトル領域 FSR
フィネス F*=π√R/(1-R)
FWHM
Q値 (f/FWHM)
Airy透過スペクトル T(ν)

横軸=周波数(中心 c/λ の周囲±2 FSR)/縦軸=透過率 T/赤丸=現在波長/矢印=FSR/黄帯=FWHM

理論・主要公式

平行2枚ミラー間で光が多重反射・干渉します。位相 δ = (4πd/λ) cosθ の関数として、透過率はAiry関数で与えられます:

$$T(\delta) = \frac{1}{1 + F\,\sin^2(\delta/2)}, \quad F = \frac{4R}{(1-R)^2}$$

自由スペクトル領域 FSR(隣接ピーク間の周波数間隔):

$$\text{FSR} = \frac{c}{2 n d \cos\theta}$$

フィネス F* とピークのFWHM:

$$F^* = \frac{\pi\sqrt{R}}{1-R}, \qquad \text{FWHM} = \frac{\text{FSR}}{F^*}$$

共鳴条件 δ = 2πm より λ_m = 2nd cosθ / m。反射率Rが1に近いほどF*が大きくなり、ピークが鋭くなります。

ファブリー・ペロー干渉計シミュレーターとは

🙋
ファブリー・ペロー干渉計って、よく聞きますけど何ができる装置なんですか?2枚のミラーで光を挟むだけ?
🎓
ざっくり言うと、平行に向き合った2枚の高反射ミラーの間で、光を何百回も往復させて多重干渉を作る装置だよ。共鳴する波長だけが鋭く透過する。シミュレーターの初期値(d=1 mm、R=0.95)で「自由スペクトル領域 FSR」のカードが149.9 GHzになっているだろう? 隣のピーク同士の周波数差がこれだ。
🙋
「フィネス」って61.2って出てますね。これは何ですか?
🎓
フィネスは「ピークの細さ」を表す無次元量で、FSRをピークのFWHM(半値全幅)で割った値だ。式は $F^*=\pi\sqrt{R}/(1-R)$ で、ミラー反射率Rだけで決まる。R=0.95で61、R=0.99で約313、R=0.999で約3140と、Rが1に近づくにつれ急激に大きくなる。フィネスが高いほど、より細かい周波数差を分解できるんだ。
🙋
じゃあ「反射率 R」のスライダーを0.99まで上げてみると…おお、ピークがすごく細くなりました!
🎓
それが多重干渉の威力だ。Rが高いと光が共振器内を何百回も往復し、強め合いの波数が増える。共鳴からわずかにずれただけで打ち消し合いが効くから、ピークが鋭くなる。Airy関数 $T=1/(1+F\sin^2(\delta/2))$ の $F=4R/(1-R)^2$ がこの鋭さを決めている。Rを0.95→0.99に上げると、Fは1520→39600と26倍になるんだよ。
🙋
「ミラー間隔 d」を変えるとFSRが変わりますね。dを10 mmにするとFSRが15 GHzに減りました。
🎓
FSR = c/(2nd cosθ) だから、間隔dを長くすると往復時間が伸びてFSRは小さくなる。光スペクトラムアナライザでは、測定したい周波数範囲に合わせてdを調整する。狭い線幅のレーザーを測るなら短いd(広いFSR)、近接した周波数モードを分解するなら長いd(細いFWHM)が必要だ。実機ではdを圧電素子で nm 精度に掃引して、透過ピークの位置を電気信号として取り出すよ。

よくある質問

ほとんどのレーザーは、利得媒質を2枚のミラー(出力結合鏡と全反射鏡)の間に置いたファブリー・ペロー型共振器です。共振器のFSRがレーザーの「縦モード間隔」、フィネスが「モード線幅」を決めます。例えば共振器長300 mmならFSRは500 MHz、ミラー反射率99%ならフィネスは約313でモード線幅は約1.6 MHzとなり、これがレーザー線幅の理論下限になります。実際の線幅は熱雑音や量子雑音でさらに広がりますが、共振器設計が出発点です。
ファブリー・ペロー型エタロンは超狭帯域フィルタとして使えますが、透過ピークが周期的に並ぶため、欲しい1本だけを取り出すには別の粗い帯域フィルタで他のピークを除去する必要があります。また入射光が傾くと共鳴条件 2nd cosθ = mλ がずれるため、角度に敏感です。コリメート(平行光化)と機械的安定性が重要で、温度変化によるd の伸縮を補償するためインバー製スペーサや温度制御を併用します。
リング共振器(マイクロリング共振器など)は、光が閉ループを一方向に周回する構造です。透過スペクトルがAiry型のローレンツ関数列になる点、FSRとフィネスで性能を表す点はファブリー・ペローと同じです。違いは反射光が戻らないこと(ファブリー・ペローでは反射が問題になる場合がある)と、ドロップポートを設けて特定波長だけ取り出せること。シリコンフォトニクスのWDM分波器や光バイオセンサで広く使われています。
反射防止コートや誘電体多層膜は、各層の境界での反射光が干渉する点で同じ原理に基づきます。違いは膜厚が波長程度と非常に薄く(dは µm 以下)、各界面の反射率も低いこと。結果としてフィネスは1〜数程度と低く、ピークではなく緩やかな反射・透過スペクトルになります。誘電体多層膜ミラーを多数積層して反射率99.9%以上を実現したものを、ファブリー・ペロー干渉計の高反射ミラーとして使う——というように、両者は実用上も組み合わせて使われます。

実世界での応用

レーザー共振器:半導体レーザー、固体レーザー、ガスレーザーのほぼ全てがファブリー・ペロー型共振器を基本構造としています。共振器長で発振波長と縦モード間隔(FSR)が決まり、ミラー反射率でモード線幅とビーム取り出し効率がトレードオフされます。単一縦モード発振が必要な精密計測用レーザーでは、外部共振器型(ECDL)として追加のファブリー・ペロー素子で1本のモードを選別します。

光スペクトラムアナライザと波長計:圧電素子で共振器長 d を nm 精度で掃引するスキャニング・ファブリー・ペロー干渉計は、レーザーの線幅・モード構造・周波数雑音を測定する標準機器です。フィネス1万以上の高分解能機種では、数百 kHz の線幅まで分解できます。電気通信のDWDM光信号の波長監視にもエタロン型FPフィルタが使われます。

重力波検出器(LIGO・KAGRA):レーザー干渉計型重力波検出器は、4 km のマイケルソン干渉計の各腕にファブリー・ペロー共振器を組み込み、実効光路長を数百倍に伸ばしています。フィネス約450、Q値約10^13という超高Q共振器で、10^-19 m という陽子サイズ以下の長さ変化を検出します。鏡の熱雑音と量子雑音の制御が感度を決める最先端技術です。

光通信と分光計測:WDM光通信のチャンネル間隔(100 GHz グリッド)に合わせたファブリー・ペロー型エタロンは、波長安定化や狭線幅フィルタリングに使われます。ラマン分光や蛍光分光では、励起光のレーリー散乱を除去するノッチフィルタとして高フィネスFP干渉計が活躍します。原子物理学では、原子の遷移線(線幅 MHz オーダー)を分解するために超高フィネスFPが不可欠です。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「ミラー反射率を上げるほど透過率が下がる」と単純に考えてしまうことです。確かにオフレゾナンスでの透過率は下がりますが、共鳴ピークでの透過率は無損失なら理想的に T=1 のままです。シミュレーターで反射率Rを0.5から0.99まで上げてみてください。ピークの高さは変わらず、幅だけが細くなることが分かります。これは多重干渉が完全な強め合いになる条件 δ=2πm では、何回往復しても透過光が全て同位相で重なるためです。実機ではミラーの吸収・散乱損失でピーク高さが下がりますが、それは別の効果です。

次に多いのが、FSRとFWHMを混同することです。FSRは「隣接ピーク間の周波数間隔」、FWHMは「1本のピークの半値全幅」で、両者の比がフィネスです。シミュレーターの透過スペクトル上で、横軸目盛り間隔がFSR、黄色い帯がFWHMです。R=0.95でFSRが149.9 GHzなのに対しFWHMはわずか2.45 GHzと、61倍の差があります。「分解能 = FWHM」「測定範囲 = FSR」と理解すると、フィネス = 分解能と測定範囲のトレードオフを表す指標であることが見えてきます。

最後に、入射角θの影響を見落とす点に注意してください。共鳴条件 2nd cosθ = mλ にθが含まれるため、入射角が変わると共鳴波長がシフトします。シミュレーターで入射角を0°から10°まで動かしてみると、FSRがわずかに変化するのが分かります(cosθの変化分)。実機では入射ビームの発散角がフィネスを実効的に下げる「角度フィネス」の問題があり、平行光化(コリメーション)と開口絞りが必須です。逆にこの角度依存性を利用したのが「同心円干渉縞」で、拡張光源を入れると共振条件を満たす方向に環状の干渉縞が現れます。これがFPを「干渉計」と呼ぶ所以です。