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森林の「バイオマス」って、要するに木の重さですよね?でも 1 本 1 本切らないと量れない気がするんですが、どうやって 100 ヘクタールの森全体の炭素量を出すんですか?
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いいところに気づいたね。切らずに測るのが「アロメトリー式 (Allometric Equation)」の仕事だよ。胸高直径 DBH(地上 1.3 m での幹の太さ)と樹高、それから樹種の木材密度 ρ がわかれば、AGB = 0.0673·(ρD²H)^0.976 という Chave 2014 の式で、1 本あたりの地上部バイオマスがほぼ ±10% 程度の精度で推定できる。これが熱帯林の global standard なんだ。あとは ha あたりの本数を掛けて、面積を掛ければ林分全体の量になる。
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なるほど、「太さ²×高さ×密度」をひとまとめにして 0.976 乗、って覚えればいいんですね。じゃあ根っこの分は無視ですか?
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無視しないよ。地下部バイオマス BGB は IPCC のガイドラインで「AGB の 0.24 倍」と決まっているのが既定値。つまり 1 本の総バイオマスは 1.24·AGB になる。熱帯多雨で DBH 30 cm・樹高 20 m なら AGB ≈ 601 kg、BGB ≈ 144 kg で合計 745 kg/木。これに 800 trees/ha を掛けると約 596 t/ha、100 ha なら約 5.96 万 t という巨大な数字になる。森って、想像以上に重いんだ。
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で、その「重さ」がどうして「CO₂ 吸収量」になるんですか?単位が違うような…
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2 段階で換算するよ。まず乾燥バイオマスの 47% は炭素 C(残りは水素や酸素)。次に、その炭素はもともと大気中の CO₂ から固定されたものだから、分子量比 44/12 = 3.667 を掛けると CO₂ 等価質量になる。例えば 1 t の木は 0.47 t-C = 1.72 t-CO₂ を「大気から取り除いた」ことになる。これが森林の炭素貯留 (Carbon Stock) の意味だね。
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下に「年間 CO₂ 吸収」と「カーボンクレジット」も出てますね。これは別の計算ですか?
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そう、「貯まっている量」と「毎年増える量」は別物だよ。毎年の増分は MAI (Mean Annual Increment) と呼んで、林相ごとに 3〜10 t/ha/y の経験値がある。熱帯多雨で 8 t/ha/y、亜寒帯で 3 t/ha/y、という感じ。これに面積・炭素率 0.47・44/12 を掛けると「年間 CO₂ 吸収量」、さらに $50/t-CO₂ という参考価格を掛けるとカーボンクレジット価値になる。100 ha の熱帯多雨林なら年間 1,379 t-CO₂ ≒ $69,000 のクレジット、ってわけ。REDD+ や J-クレジット制度の事業性検討では、最初にこういう「ざっくり推定」が必要なんだ。
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REDD+ って初めて聞きました。J-クレジットとは何が違うんですか?
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REDD+ は国連気候変動枠組条約 (UNFCCC) の途上国向けスキームで、森林減少・劣化を防ぐことで CO₂ 排出を「減らした分」をクレジット化する仕組み。J-クレジットは日本の環境省と林野庁が運営する国内制度で、間伐や植林など森林経営による吸収量をクレジット化して、企業が排出オフセットに使える。年間 100 万 t-CO₂ 規模が認証されていて、Verra VCS や Gold Standard と並ぶ正式な MRV (Measurement, Reporting, Verification) 体系を持っている。本ツールの推定はあくまで概算だけど、案件初期のスクリーニングには十分役立つよ。
アロメトリー式 (Allometric Equation) は、樹木の胸高直径 (DBH)・樹高・木材密度などの容易に計測できる寸法から、立ち木全体のバイオマス (kg) を統計的に推定する経験式です。森林を伐倒せずに広域の炭素貯留量を見積もれるため、Chave 2014 pantropical (AGB = 0.0673·(ρD²H)^0.976) が熱帯林の global standard として広く使われています。温帯では Jenkins 2003 (USA)、マングローブでは Komiyama 2008 など、生態系や地域に応じた式が選ばれます。
根系の質量は地上部バイオマス AGB の 0.24 倍 (root-to-shoot ratio = 0.24) で見積もるのが IPCC 2006 ガイドラインの既定値です。実際には林相や樹齢で 0.15-0.40 程度の幅があり、boreal や乾燥地ほど根の比率が大きくなる傾向があります。本ツールは全樹体バイオマス = AGB + 0.24·AGB = 1.24·AGB として扱い、炭素クレジット算定で標準的な総量を出力します。
乾燥バイオマスの炭素含有率は概ね 47% (IPCC 2006、針葉樹 50%・広葉樹 47% の代表値) とされ、Carbon (t-C) = Biomass × 0.47 で変換します。さらに大気中で吸収された CO₂ の質量は、炭素原子量 12 / CO₂ 分子量 44 の比から CO₂ (t-CO₂) = C × 44/12 ≈ C × 3.667 となります。本ツールでは「林分全炭素貯留」と「年間 CO₂ 吸収量 (MAI ベース)」を別々に表示します。
カーボンクレジット価値 = 年間 CO₂ 吸収量 × 50 USD/t-CO₂ で算定しています。Verra VCS や Gold Standard など国際的な森林クレジットの 2024 年取引価格 (10-50 USD/t-CO₂) や、EU-ETS 価格 (60-90 EUR/t-CO₂) を踏まえた中間的な参考値として 50 USD/t を採用しました。実際の取引価格はプロジェクト種別・保有期間・追加性 (additionality) の認証コストで大きく変動するため、参考目安としてください。
REDD+ / J-クレジット案件の事前スクリーニング:熱帯途上国での REDD+ プロジェクトや、国内 J-クレジット (林野庁・環境省) の事業性検討では、まず対象林分の現存炭素ストックと年間吸収量の概算が必要です。本ツールのようなアロメトリー式ベースの推定で、事業として 1,000 t-CO₂/y を超えるか、$50,000/y のクレジット収入が見込めるかを 1 分で判断でき、本格的な森林インベントリ調査 (1 案件あたり数百万円) に進むかどうかを決められます。
IPCC NGGI 報告と国別森林インベントリ:パリ協定下で各国が提出する温室効果ガスインベントリ (NGGI) では、土地利用部門 (LULUCF: Land Use, Land-Use Change and Forestry) の吸収量算定が必須です。日本の森林吸収量は約 4,400 万 t-CO₂/y (2022 年度) で、これも Chave 式や Jenkins 式などのアロメトリーが基礎データとして使われています。本ツールは個別林班・小面積の概算用、本格算定には FRA (Forest Resources Assessment) と地域固有式が必要です。
森林経営計画と長期収支シミュレーション:森林管理者が伐期 (rotation age) を 50 年から 80 年に延長したとき、伐採収入と炭素クレジット収入の合計がどう変わるかの試算に使えます。本ツールの「伐期」スライダーで rotation 60 yr → 80 yr に伸ばすと累積クレジットが約 33% 増えますが、その間の伐採収入は遅延します。J-クレジット制度では伐期延長プロジェクト (Forest Management) が認証対象で、Verra IFM (Improved Forest Management) と類似の枠組です。
リモートセンシング AGB マッピングの地上検証:NASA GEDI (Global Ecosystem Dynamics Investigation) や ESA Sentinel-2、JAXA ALOS-2 PALSAR-2 など、衛星 LiDAR・SAR による広域 AGB マッピングが急速に進展しています。これら衛星推定値の校正 (calibration) には地上での DBH・樹高実測値とアロメトリー式による「真値」プロキシが必要で、本ツール程度の概算は精度比較のベンチマークになります。
最大の落とし穴が、「pantropical アロメトリー式をどんな森林にも適用してしまう」こと。Chave 2014 式は熱帯林 (tropical) の 4,000 本以上の伐倒実測データから回帰されたもので、温帯針葉樹林やマングローブ林に当てはめると 20-50% の系統誤差を生みます。本ツールでは林相選択で木材密度 ρ と MAI を切り替えていますが、アロメトリー式の構造そのものは Chave 式を流用しています。本格用途では温帯広葉に Jenkins 2003、マングローブに Komiyama 2008、boreal に Lambert 2005 など、生態系固有の式を使うべきです。地域・樹種固有の式があれば、必ずそちらを優先してください。
次に、「MAI が伐期全期間で一定」と思い込むこと。本ツールは簡略化のため MAI を一定値 (例:熱帯多雨 8 t/ha/y) としていますが、実際の年成長量は若齢期に低く、林分閉鎖後の壮齢期にピーク、老齢林で減衰する S 字カーブを描きます。Yield Table (収穫表) や CBM-CFS3 (Carbon Budget Model) などの動的モデルでは年齢別 NPP (Net Primary Productivity) を考慮しますが、本ツールの定常 MAI は「平均」としての概算値です。特に若齢林 (10 年未満) では実測の方がツール値より低くなる傾向があります。
最後に、「炭素クレジット = 純利益」ではないという点。本ツールが表示する「年間カーボンクレジット (USD)」は粗額で、実際には Verra VCS や Gold Standard の認証費 (初期 $50,000-$200,000)、MRV (Measurement, Reporting, Verification) コスト (毎年 $20,000-$100,000)、リーケージ (leakage) 控除 (10-30%)、永続性バッファ (permanence buffer, 10-20%)、ロイヤリティ・取引手数料を差し引いた額が事業者の手取りになります。100 ha 規模の小プロジェクトでは認証費が大きすぎて成立しないことが多く、最低 1,000 ha・年間 5,000 t-CO₂ 以上が採算ラインと言われています。事業化検討では必ずプロジェクト開発者 (PDD) と詳細費用試算を行ってください。