パラメータ設定
z をスイープ
リセット
既定値は λ = 1064 nm(Nd:YAG)、w₀ = 100 μm、z = 100 mm、M² = 1.0(回折限界)。z < z_R は近似平行ビーム、z > z_R は発散優位の遠方場です。
ビーム包絡線(z 方向)
横軸=z (mm) 0〜500/縦軸=±w(z) [μm]/ウエスト(z=0)から左右対称に広がる双曲線/緑破線=レイリー長 ±z_R/黄縦線=現在の z 位置/カラー(青→赤)=軸上強度 I(z) = I₀(w₀/w(z))²
現在 z でのビーム断面(円形・ガウス強度)
中心が最高強度/半径方向に I(r) = I₀·exp(-2r²/w(z)²) で減衰/白円=ビーム半径 w(z)(強度が 1/e² まで下がる位置)/表示直径=2·w(z)
理論・主要公式
ガウシアンビーム(TEM₀₀)はパラ軸 Helmholtz 方程式の最低次解で、横方向強度がガウス分布、縦方向にはウエスト $w_0$ から双曲線状に広がります。
伝播距離 $z$ でのビーム半径:
$$w(z) = w_0 \sqrt{1+\left(\frac{z}{z_R}\right)^{\!2}}$$
レイリー長と遠方発散半角($M^2$ ファクター付):
$$z_R = \frac{\pi w_0^2}{M^2 \lambda},\qquad \theta_{\mathrm{div}} = \frac{M^2 \lambda}{\pi w_0}$$
軸上強度(パワー保存則):
$$I(z) = I_0 \left(\frac{w_0}{w(z)}\right)^{\!2}$$
$w_0$ はビームウエスト半径(強度が 1/e² まで下がる位置の半径)、$\lambda$ は真空波長、$M^2$ はビーム品質係数($M^2 \ge 1$、回折限界の TEM₀₀ で 1)。$z \ll z_R$ では近似的に平行ビーム、$z \gg z_R$ では半角 $\theta_{\mathrm{div}}$ の円錐に漸近します。
ガウシアンビーム シミュレーターとは
🙋
レーザーポインターの光って「平行に進む」と教わったんですが、実際は遠くまで行くと広がりますよね?それを計算するツールなんですか?
🎓
いい疑問だ。レーザー光は厳密には平行ではなく、ガウシアンビームと呼ばれる「双曲線状」に広がりながら進む。式は w(z) = w₀√(1+(z/z_R)²)。本ツールの既定値(λ=1064 nm、w₀=100 μm、M²=1)で「計算結果」を見てみて — レイリー長 z_R が約 29.53 mm、z=100 mm でビーム半径が 353 μm まで広がるのが分かる。レーザーポインター(赤色 650 nm、w₀ ≈ 0.5 mm)の場合 z_R ≈ 1.2 m なので、数メートル先までは「ほぼ平行」に見えるんだ。
🙋
えっ、29.53 mm って想像より短いですね。「レイリー長」って何の長さなんですか?
🎓
レイリー長 z_R は「ビーム半径が √2 倍(断面積で 2 倍)になる距離」だ。z < z_R なら近似的に平行、z > z_R では発散優位になる。式は z_R = πw₀²/(M²λ)。w₀ を倍にすると z_R は 4 倍になる — これがレーザー切断やフォトリソグラフィで「焦点深度(DOF)」と呼ばれる重要量だ。本ツールで w₀ スライダーを 100 → 200 μm に動かすと z_R が 29.53 mm → 約 118 mm に伸びることを確認してみて。
🙋
「ビーム品質 M²」というスライダーもありますね。これはどういう意味ですか?
🎓
M² は「実ビームを理想 TEM₀₀ ガウシアンと比べてどれだけ集束性が悪いか」を表す無次元量で、M² = 1 が回折限界(最良)、M² = 5 だと発散角が 5 倍になり、レイリー長は 1/5 に縮む。He-Ne レーザーや単一モードファイバーで M² ≈ 1.05、Nd:YAG マルチモードで 5〜25、ファイバーレーザー高出力品で 1.1〜1.5 程度だ。本ツールで M² を 1.0 → 5.0 に動かしてみて — z_R が 29.53 mm → 5.91 mm に縮み、発散角 θ が 3.39 mrad → 16.93 mrad に拡大する様子が見える。レーザー切断機選定で「Output Power」だけでなく「M² ≤ 1.3」が仕様要件になる理由がここだ。
🙋
右下のグラフで、z を遠くにすると断面が大きく、強度(色)が薄くなっていきますね。これってエネルギー保存と矛盾しないんですか?
🎓
良い観察だ。ビームの「総パワー P」は伝播中保存される(吸収・散乱がない理想条件下)。しかし軸上強度 I(z) = I₀·(w₀/w(z))² は z² に逆比例して減衰する — ビーム断面が広がる分、単位面積あたりの強度が下がるんだ。例えば z=1 m 先では w が約 3.4 mm(直径 6.78 mm)、面積比 (w₀/w)² ≈ 0.00087 になり、軸上強度はウエスト位置の約 1/1147 まで落ちる。これがレーザー安全規格で「光源近傍と遠方の最大許容露光量(MPE)」を別々に規定する物理的理由だ。本ツールの色グラデーション(青→赤)はこの I(z) を可視化している。
よくある質問
ガウシアンビームのレイリー長 z_R とは何ですか?
レイリー長 z_R はビームウエストからビーム半径が √2 倍(断面積で 2 倍)になる距離で、z_R = πw₀²/(M²λ) で与えられます。z << z_R の領域は近似的に平行ビームとみなせる「コリメート領域」、z >> z_R は遠方場で発散角 θ ≈ M²λ/(πw₀) を持つ円錐に漸近します。本ツールの既定値(λ=1064 nm、w₀=100 μm、M²=1)では z_R ≈ 29.53 mm と表示され、ウエスト径 w₀ を 200 μm に倍増すると z_R は 4 倍の約 118 mm に伸びることが体感できます。レーザー切断の焦点深さ設計や顕微鏡対物レンズの被写界深度はこの z_R で決まります。
ビーム品質 M² は何を表す数値ですか?
M² はビームの集束性能を理想的な TEM₀₀ ガウシアンモードと比較した無次元量で、M² = 1 が回折限界(理論的最良値)、M² > 1 ほど集束しにくく発散も大きくなります。He-Ne や単一モード半導体レーザーで M² ≈ 1.05、シングルモードファイバーレーザーで M² ≈ 1.1、Nd:YAG マルチモードで M² ≈ 5〜25、高出力ディスクレーザーで M² ≈ 1.5〜3 程度が代表値です。本ツールで M² を 1.0 から 5.0 まで動かすと、レイリー長が 1/M² 倍に短縮し、発散角が M² 倍に拡大することが直感的に確認できます。レーザー切断・微細加工では M² が小さいほど狭い焦点と大きな焦点深度を両立できます。
ビーム半径 w(z) と直径はどう違いますか?
ガウシアンビームの「半径 w(z)」は、軸上強度の 1/e²(≈13.5%)まで強度が下がる位置までの距離と定義されます。これは強度の半値全幅 FWHM ではなく、慣例的に光学設計で使われる定義です。直径は 2w(z) で、FWHM ≈ 1.18·w(≒ 0.59·2w)と関係します。レーザー安全規格(IEC 60825-1)の最大許容露光量計算では 1/e² 直径ではなく FWHM や 1/e 直径を使う場合があるため、ビーム径仕様の出典定義を必ず確認してください。本ツールは光学業界標準の 1/e² 半径で表示し、stat-card の「1 m 先のビーム直径」も 2·w(1m) を出力します。
本ツールが扱わない実際の物理現象は何ですか?
本ツールはパラ軸近似下の TEM₀₀ ガウシアンモードを仮定し、(1) 高次モード(TEM₁₀, TEM₁₁ など)の重ね合わせ、(2) レンズによる集束・コリメート(ABCD 行列法は別ツール)、(3) 大気乱流・熱レンズ効果による波面歪み、(4) 散乱・吸収媒質中の伝播、(5) 強度分布の偏光依存性 — を考慮しません。実際の高出力レーザーでは熱レンズで実効 M² が 2〜3 倍悪化し、km オーダーの大気中伝播では Cn² 構造定数によりビーム広がりが理論値の 2〜10 倍になります。本ツールは設計初期のサイジングと教育用途に十分で、精密設計には Zemax や VirtualLab Fusion などの物理光学シミュレーターを併用してください。
実世界での応用
レーザー切断・溶接・微細加工: 金属板の CO₂ レーザー切断(λ=10.6 μm、w₀=50 μm、M²≈1.2)では z_R ≈ 0.74 mm と非常に短く、板厚以上の焦点深度を確保するため光学系(コリメート+集束)の設計が重要です。ファイバーレーザー(λ=1.07 μm、w₀=20 μm、M²=1.1)では同条件で z_R ≈ 1.07 mm。本ツールで波長と M² を変えて、なぜ近赤外ファイバーレーザーが切断業界で主流になったか — 短波長と高ビーム品質による細い焦点と長い焦点深度のメリット — が直感できます。半導体製造の EUV リソグラフィ(λ=13.5 nm)はさらに極端で、サブ nm 級の集束を実現します。
光通信・ファイバー結合: シングルモードファイバー(SMF-28、モードフィールド径 10.4 μm at 1550 nm)への光結合効率は、入射ガウシアンビームの w₀・波面曲率・偏心がモードと一致するほど高くなります。本ツールで w₀=5.2 μm(SMF-28 のモード半径)、λ=1550 nm、M²=1 と設定すると z_R ≈ 54.8 μm、結合レンズの位置許容誤差が μm 級になることが分かります。光通信モジュール(CFP・QSFP)の組立で「アクティブアラインメント」が必須な物理的根拠です。
レーザー測距・LiDAR: 自動運転 LiDAR(典型値 λ=905 nm、w₀=2 mm、M²=1.5)では 100 m 先でビーム半径が約 22 mm(直径 44 mm)に広がり、これが「点群解像度」と「目検出範囲」のトレードオフを決めます。本ツールで w₀ を 0.5 → 5 mm に動かすと、近距離で細かい解像度を得たい用途と、遠距離まで電力密度を保ちたい用途の最適 w₀ が異なることが体感できます。FMCW LiDAR や Geiger モード単一光子型でも、ビームウエスト設計が SNR と検出距離を決定づけます。
共焦点顕微鏡・光学トラップ: 共焦点顕微鏡の対物レンズ(NA=0.9、λ=488 nm)はビームを w₀ ≈ 0.34 μm まで集束し、z_R ≈ 0.75 μm の極めて短いレイリー長で μm 級の光学切片を可能にします。光ピンセット(光学トラップ)では w₀ ≈ 0.5 μm の集束ビーム焦点に粒子(ビーズ・細胞・ナノ粒子)を捕捉し、力定数 ∝ P/w₀⁴ で pN 級の力が得られます。本ツールで波長を 400〜800 nm に動かし、w₀ を 0.5 → 5 μm に動かすと顕微鏡の解像度限界とトラップ力の関係が直感できます。
よくある誤解と注意点
最も多い誤解は、「レーザー光は完全に平行に進む」 というイメージです。実際にはどんなレーザーも回折により発散し、その下限が θ_min = λ/(πw₀)(M²=1)で決まります。例えば 532 nm 緑色レーザーポインター(w₀=1 mm)でも θ ≈ 0.17 mrad、1 km 先で約 17 cm に広がります。本ツールで w₀ を小さくすると θ が反比例で大きくなり、「狭く絞れば絞るほど早く広がる」という量子力学的不確定性関係(位置 × 運動量の Fourier 共役)の光学版が確認できます。レーザー兵器や恒星間通信で w₀ を大きく取る理由はここにあります。
次に多いのが、「ビーム径は計測位置で測れば一意に決まる」 という勘違いです。ガウシアンビームには 1/e²(13.5%)半径、FWHM(半値全幅)、D86(86% パワー封入径)など複数の定義があり、本ツールのような光学業界標準の 1/e² 半径と FWHM では数値が約 1.7 倍違います(FWHM = 1.18·w)。レーザー仕様書を読む際は「Beam diameter (1/e²) = 4 mm」のように定義の出典を必ず確認し、安全計算(IEC 60825-1)の MPE 適用時は規格で要求される定義(多くは 1/e)に変換してください。本ツールの「1 m 先のビーム直径」は 2·w(1m) すなわち 1/e² 直径です。
最後に、「実際のレーザーも理想ガウシアン(M²=1)」 と仮定してビーム品質を確認しないケース。スペック上 M²=1 でも、温度上昇による熱レンズ効果で実効 M² が 2〜3 に悪化することが珍しくありません。たとえば 100 W ファイバーレーザーで仕様 M²=1.1 でも、長時間連続運転後は M²=1.5 になり、焦点位置と径が想定からずれて加工精度が落ちます。本ツールで M² を 1.0 と 2.0 で比較すると、レイリー長と焦点強度の差が劇的(1/4 倍)になることが分かります。実機ではビームプロファイラーで定期的に M² を測定し、ビームエクスパンダーや空間フィルターでビーム品質を維持することが推奨されます。