レーザー共振器設計計算ツール 戻る
電磁気・光学

レーザー共振器設計シミュレーター

閾値電流・スロープ効率・縦モード間隔・ラウンドトリップゲイン・Q 値・光子寿命をリアルタイム計算。L-I 特性曲線と縦モード スペクトル図を動的に可視化します。

パラメータ設定
プリセット
共振器パラメータ
共振器長 L
μm
前面反射率 R₁
後面反射率 R₂
屈折率 n
利得・損失パラメータ
内部損失 αᵢ
cm⁻¹
材料利得係数 g₀
cm⁻¹
光閉じ込め係数 Γ
内部量子効率 ηᵢ
発振波長 λ
nm
計算結果
閾値電流 Ith [mA]
スロープ効率 [W/A]
鏡面損失 αm [cm⁻¹]
縦モード間隔 [GHz]
Q値 (×10⁶)
フォトン寿命 [ps]
理論・主要公式

$$G_{th} = \alpha_i + \frac{1}{2L}\ln\frac{1}{R_1 R_2}$$

発振閾値利得:\(\alpha_i\) 内部損失、\(L\) 共振器長、\(R_1,R_2\) 反射率

$$P_{out} = \eta_d \cdot \frac{hc/\lambda}{e}(I - I_{th})$$

出力パワー:\(\eta_d\) 微分量子効率、\(I_{th}\) しきい値電流 [A]

$$w_0 = \sqrt{\frac{\lambda L}{\pi}\left(\frac{g_2/g_1 \cdot (1-g_1 g_2)}{(g_1 g_2)^{1/2}}\right)^{1/2}}$$

共振器ウエスト半径:\(g_i = 1 - L/R_i\) は安定パラメータ

L-I特性(光出力 vs 電流)
Li
縦モードスペクトル

鏡面損失:

$$\alpha_m = \frac{1}{2L}\ln\!\frac{1}{R_1 R_2}$$

閾値利得条件:

$$\Gamma g_{th}= \alpha_i + \alpha_m$$

微分量子効率:

$$\eta_d = \eta_i \cdot \frac{\alpha_m}{\alpha_i + \alpha_m}$$

縦モード間隔:

$$\Delta\nu = \frac{c}{2nL}$$

フォトン寿命:

$$\tau_{ph}= \frac{n}{c(\alpha_i + \alpha_m)}$$

レーザー共振器設計とは

🙋
このシミュレーターで計算できる「閾値電流」って何ですか?発振のスイッチみたいなものですか?
🎓
その通り!大まかに言うと、レーザーが「光る」か「光らないか」の境目の電流値だ。キャビティ内を往復する光のゲインが、鏡からの漏れや材料の吸収などの全損失をやっと上回るポイントだね。例えば、レーザーポインターはこの閾値を超える電流を流すから、あの鋭い光が出るんだ。シミュレーターで「内部損失」のスライダーを大きくすると、この閾値電流が大きく上がるのがわかるよ。
🙋
なるほど!じゃあ「スロープ効率」は、光らせた後にどれだけ効率よく光るかを表すんですか?
🎓
鋭い質問だね。そう、閾値を超えた後、電流を1mA増やした時に光出力がどれだけ増えるか(W/A)の指標だ。実務では、光通信の送信モジュールなどで高いスロープ効率が求められる。シミュレーターで「前面反射率 R₁」を下げてみて。鏡からの光の取り出しが増えるからスロープ効率は上がるけど、その代わり閾値電流も上がる、というトレードオフの関係が見えてくるはずだ。
🙋
「縦モード間隔」って聞きますが、これは何に影響するんですか?
🎓
共振器の中で定在波が作れる「許された波長」の間隔だ。これが狭いと、複数の波長で同時に発振しやすくなり、単一波長(単一モード)で動作させたい光通信などでは問題になる。逆に、VCSELという短い共振器のレーザーはこの間隔が広くて単一モードになりやすい。試しに「共振器長 L」を短くしてみると、間隔が大きく広がるのが計算されるよ。

よくある質問

共振器長Lを長くすると、縦モード間隔Δν=c/(2nL)が狭くなり、鏡面損失α_m=(1/2L)ln(1/(R1R2))が減少するため、閾値電流が低下する傾向があります。一方、ラウンドトリップゲインはLに比例して増加します。L-I特性曲線の傾き(スロープ効率)も変化するため、実測値と比較しながら調整してください。
内部損失α_iは、利得媒質内の散乱や自由キャリア吸収など共振器内部で生じる光損失を表し、材料や構造に依存します。鏡面損失α_mはミラーからの光の透過による損失で、ミラー反射率R1,R2と共振器長Lで決まります。閾値条件Γg_th=α_i+α_mにおいて、両者は加算的に寄与し、設計時に分けて評価することで損失要因を特定できます。
Γが小さいと、利得媒質と光の重なりが減少するため、同じ材料利得gを得るために必要なキャリア密度が増加し、閾値電流が上昇します。また、スロープ効率も低下する傾向があります。実際のデバイスでは、活性層の厚さや屈折率分布を調整してΓを最適化します。シミュレーターでΓを変化させ、L-I曲線への影響を確認してください。
理想的なレーザーでは閾値以上でL-I曲線は直線ですが、実際には熱飽和や利得飽和、リーク電流などの影響で高電流域で傾きが減少(ロールオーバー)することがあります。本シミュレーターは線形モデルを基本としているため、ロールオーバーは再現しません。非線形効果を考慮したい場合は、外部パラメータ(温度上昇など)を手動で補正しながらご利用ください。

実世界での応用

光ファイバー通信:レーザーダイオードの光源として、低い閾値電流(省電力)と高いスロープ効率(高出力)が求められます。また、単一縦モードで安定して発振する設計が不可欠で、DFB(分散帰還型)レーザーなどが用いられます。

レーザー加工・溶接:高出力の固体レーザーやファイバーレーザーでは、効率よく光を共振器から取り出すため、片側のミラー反射率を極端に低く(例えば数%)設定します。これによりスロープ効率は最大化されますが、その分高い利得(=高い励起)が必要になります。

センシング・計測:ガスセンサなど波長安定性が重要な用途では、縦モード間隔が広く単一波長で発振しやすい短共振器のVCSEL(垂直共振器面発光レーザー)が利用されます。共振器長は数μm程度と極めて短いのが特徴です。

光メモリ(Blu-ray等):青紫色レーザーダイオードでは、微小な共振器で高い光出力密度を実現する設計が鍵です。内部損失を極限まで低減し、光閉じ込め係数Γを高めるための特殊な導波路構造が研究されています。

よくある誤解と注意点

まず、「反射率R1とR2はとにかく高ければ高いほど良い」というのは誤解です。確かに高反射率は閾値電流を下げますが、光を取り出すためのミラー(通常はR1側)の反射率を高くしすぎると、スロープ効率が悪化し、肝心の出力光パワーが出なくなります。例えば、R1=0.99, R2=0.99という超高反射ミラーでは、閾値電流は非常に低くなりますが、取り出せる光はほとんどありません。実用的なレーザーでは、出力側ミラーの反射率は用途に応じて最適化され、光通信では0.1〜0.3、高出力加工用では0.01以下になることもあります。

次に、パラメータの単位系の混在に注意が必要です。内部損失α_iの単位は[cm⁻¹]、共振器長Lは[cm]が一般的ですが、シミュレーターによっては[mm]や[μm]を使う場合があります。単位を間違えて入力すると、計算結果が1000倍も違ってしまうので、必ず確認しましょう。例えば、L=300μmを入力する際、0.03cmと入力する必要があります。

また、「計算された閾値電流がそのまま実デバイスの絶対値」と考えるのは早計です。このシミュレーターで算出されるのは、理想的な条件下での理論値です。実際には、電流の注入効率やキャリアの拡散など、ここには含まれていない多くの要因が影響します。したがって、このツールの真価は絶対値の予測ではなく、「R1を5%下げると、閾値電流はどれくらい増え、スロープ効率はどれくらい改善するか」といったトレンドの把握や設計指針の立案にあります。