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熱交換器シミュレーター

LMTD シミュレーター — 対向流と並流の対数平均温度差

高温流体・低温流体の入口出口温度から、対向流(counter-flow)と並流(parallel-flow)の対数平均温度差 LMTD を実時間に計算します。温度プロファイル比較と LMTD 関数曲線で、なぜ対向流のほうが伝熱性能で優位なのかを可視化します。

パラメータ設定
高温側入口 T_h_in
°C
高温側出口 T_h_out
°C
低温側入口 T_c_in
°C
低温側出口 T_c_out
°C

既定値(T_h_in=150°C、T_h_out=90°C、T_c_in=25°C、T_c_out=80°C)では対向流 LMTD ≈ 67.5 K、並流 LMTD ≈ 45.5 K、対向流 / 並流の比 ≈ 1.48 が表示されます。物理的整合性(T_h_in > T_h_out > T_c_in、T_c_out > T_c_in、並流時 T_h_out > T_c_out)が崩れる組み合わせでは LMTD が「—」「invalid」と表示されます。

計算結果
対向流 LMTD
並流 LMTD
対向 / 並流 比
対向流の優位
温度プロファイル(対向流/並流)

上半分=対向流(counter-flow):高温流体は左→右、冷流体は右→左に流れる/下半分=並流(parallel-flow):両流体が左→右に同方向/赤=高温流体/青=低温流体/緑点線=両端の温度差 ΔT_1, ΔT_2

LMTD/ΔT_1 vs ΔT_2/ΔT_1

横軸=両端温度差比 ΔT_2/ΔT_1(0.05〜1.0)/縦軸=LMTD/ΔT_1(無次元)/青曲線=LMTD 関数 (1−r)/ln(1/r)/黄丸=現在の対向流配置/橙丸=現在の並流配置/対向流のほうが r が 1 に近く(両端 ΔT が近い)、LMTD が大きい領域に位置することが多い

理論・主要公式

対数平均温度差 (Log Mean Temperature Difference, LMTD) は、熱交換器の長さ方向に変化する温度差の代表値で、両端の温度差 $\Delta T_1, \Delta T_2$ から定義されます:

$$\mathrm{LMTD} = \frac{\Delta T_1 - \Delta T_2}{\ln(\Delta T_1/\Delta T_2)}$$

対向流(counter-flow)と並流(parallel-flow)では両端の温度差の取り方が異なります:

$$\Delta T_1^{\text{co}} = T_{h,\text{in}} - T_{c,\text{out}},\quad \Delta T_2^{\text{co}} = T_{h,\text{out}} - T_{c,\text{in}}$$ $$\Delta T_1^{\text{pa}} = T_{h,\text{in}} - T_{c,\text{in}},\quad \Delta T_2^{\text{pa}} = T_{h,\text{out}} - T_{c,\text{out}}$$

伝熱面積方向に積分した全体の熱交換量 $Q$ は LMTD を駆動力として:

$$Q = U\,A\,\mathrm{LMTD}$$

$U$ は総括熱伝達係数 (W/m²K)、$A$ は伝熱面積 (m²)。$\Delta T_1 = \Delta T_2$ の特異点では極限値 $\mathrm{LMTD} = \Delta T_1$ を用います。

LMTD シミュレーターとは

🙋
熱交換器の伝熱面積を求めるとき、必ず LMTD って出てくるんですけど、結局あれは何を表してるんですか?平均温度差と何が違うんでしょう?
🎓
いい着眼点だ。熱交換器の中では場所によって ΔT が変わる — 入口は大きく、出口は小さい。そこを単純な算術平均でなく、「対数」で平均するのが LMTD だ。式は LMTD = (ΔT_1 - ΔT_2) / ln(ΔT_1/ΔT_2)。実は q = U·dA·ΔT(x) を伝熱面積に沿って積分すると、自然に対数の形で出てくるから「自然平均」と呼んでも良い。本ツール既定値(T_h_in=150°C、T_h_out=90°C、T_c_in=25°C、T_c_out=80°C)で見ると、対向流 LMTD が約 67.5 K、並流が約 45.5 K と表示されるはずだ。
🙋
同じ入口出口温度でも、対向流と並流で 22 K も違うんですか?同じ熱量を運んでるはずなのに不思議です。
🎓
そう、ここが核心だ。対向流では両端で温度差を「広く」保てる:入口端で 150−80=70 K、出口端で 90−25=65 K と、両方そこそこ大きい。並流だと入口で 150−25=125 K と巨大だが、出口は 90−80=10 K と極小になり、平均が小さくなってしまうんだ。本ツールの上半分のグラフを見るとわかる — 対向流の温度線はほぼ平行に下がるが、並流の温度線は入口で開いて出口で閉じる「くさび形」になる。比は 1.48 で、約 48% 対向流のほうが伝熱性能が高い。同じ Q を達成するには並流のほうが約 1.48 倍の面積を要する、ということだ。
🙋
じゃあ全部対向流で作ればいいんですか?なんで並流の熱交換器が現役で残ってるんですか?
🎓
いい疑問だ。実は並流にも 3 つのメリットがある。まず(1)熱衝撃が小さい:対向流は出口側で高温流体と冷流体の温度差が大きいため、固体壁にきつい熱応力が掛かる。並流は出口で温度がほぼ揃うため穏やかだ。(2)固化リスクの低減:たとえば溶融プラスチックを冷却するとき、対向流だと出口で急冷されて固化・閉塞することがあり、並流ならゆっくり冷えるので問題が出にくい。(3)製造が簡単な型式がある。とはいえ伝熱効率が約 30〜40% 落ちるから、現代の標準は基本的に対向流 + クロスフローだ。本ツールで T_h_out を T_c_out 近くに動かしてみて — 並流 LMTD はみるみる小さくなり「invalid」になることがわかる。
🙋
右下の LMTD/ΔT_1 のグラフって何を表してるんですか?対向流と並流の点の意味も教えてください。
🎓
よく気づいた。LMTD 公式の本質はじつは「両端温度差の比 r = ΔT_2/ΔT_1」だけで決まる、ということだ。LMTD/ΔT_1 = (1−r)/ln(1/r) という無次元曲線が引けて、r=1(両端温度差が同じ)で頂上 1.0、r が小さくなる(一方の ΔT が極端に小さい)と急降下する。対向流では両端 ΔT が近いから r が 1 に近く曲線の高い位置(黄丸)に居る。並流では一方が大きく一方が小さいから r が小さく、曲線の低い位置(橙丸)に落ちる。これが LMTD の差を一目で説明する図だ。スライダーを動かして両方の点が動く様子を見てみてくれ。

よくある質問

LMTD(Log Mean Temperature Difference, 対数平均温度差)は、熱交換器の伝熱面に沿って変化する高温流体と低温流体の温度差の代表値で、両端の温度差 ΔT_1, ΔT_2 から LMTD = (ΔT_1 - ΔT_2) / ln(ΔT_1/ΔT_2) で計算します。これを Q = U·A·LMTD に代入することで、面積方向に積分した実効的な伝熱駆動力として全体の熱交換量 Q を求められます。本ツールの既定値(T_h_in=150°C, T_h_out=90°C, T_c_in=25°C, T_c_out=80°C)では対向流 LMTD ≈ 67.5 K、並流 LMTD ≈ 45.5 K と表示されます。
対向流では高温流体と低温流体が逆方向に流れるため、入口端と出口端の両方で温度差を大きく保てます。一方並流(同方向)では入口で温度差が最大、出口で両流体の温度が漸近して温度差が極小になります。同じ Q を達成するために必要な ΔT 平均が対向流のほうが大きいため、同じ U·A であれば対向流のほうが多くの熱を移動でき、同じ Q なら必要面積を小さくできます。本ツール既定値で対向流 / 並流の LMTD 比は約 1.48、つまり対向流の伝熱性能は並流より約 48% 高くなります。
並流(同方向)配置では熱は常に高温側から低温側に流れるため、出口で T_h_out が T_c_out より低くなる「温度交差」は熱力学第二法則により不可能です。本ツールで T_h_out を T_c_out 以下に設定すると並流 LMTD が「invalid」と表示され、また ΔT_2 ≤ 0 となるため対数が定義されません。対向流ではこの制約が緩く、T_c_out > T_h_out(温度交差)が可能で、これが対向流の効率上の優位の一因です。設計時は両配置で物理的整合性を確認してください。
ΔT_1 = ΔT_2 のとき LMTD = (ΔT_1 - ΔT_2) / ln(ΔT_1/ΔT_2) は形式上 0/0 となりますが、極限を取ると LMTD = ΔT_1 = ΔT_2 に収束します(ロピタルの定理)。本ツールでも両者が等しい場合は LMTD = ΔT_1 として表示します。物理的には熱交換器の長さ方向に温度差が一定の場合に相当し、たとえば質量流量×比熱が両流体で等しい対向流(C* = 1)でちょうど成立します。算術平均と対数平均が一致する極限ケースとして覚えておくと便利です。

実世界での応用

シェル&チューブ熱交換器の面積設計:化学プラント・発電所のシェル&チューブ熱交換器では、プロセス条件から決まる Q と入口出口温度を用い、A = Q / (U · LMTD · F) で必要面積を逆算します。F は流れ配置補正係数(純対向流で 1.0、シェル&チューブの 1-2 配置で 0.8〜0.95)で、TEMA 規格にチャートが整備されています。本ツールで対向流の LMTD を直接読み取り、典型的な液-液 U=1000 W/m²K、Q=1 MW を仮定すると、67.5 K の LMTD で A=Q/(U·LMTD)=14.8 m² 必要となる、と即座に概算できます。

HVAC(空調)の冷温水コイル:ビル空調の冷温水コイルでは外気を 35°C から 14°C へ冷却するため、7°C 入口 12°C 出口の冷水を流します。並流コイルだと出口 ΔT_2 = 14−12 = 2 K と極小になりますが、対向流(カウンタフロー)コイルなら入口端の ΔT_1 = 35−12 = 23 K と出口端 ΔT_2 = 14−7 = 7 K を保ち、LMTD = 13.8 K と十分大きく取れます。本ツールに同じ値を入れて確認すると、対向流が約 2 倍の伝熱駆動力を提供することがわかり、HVAC コイルが現代では基本的に対向流であることが理解できます。

原子力プラントの蒸気発生器:PWR 蒸気発生器は高温の一次冷却水(300°C → 280°C)からニ次系の水(230°C 沸騰)へ熱を渡します。本ツールで T_h_in=300、T_h_out=280、T_c_in=230、T_c_out=230(蒸発相変化のため出入口温度が同じ)を入れると、対向流 LMTD ≈ 59 K となり、熱出力 1 GW のプラントで A = 10^9/(U·LMTD) ≈ 5,500 m²(U=3000 W/m²K の場合)が必要であることがわかります。U字管型蒸気発生器は実質クロスフロー + 対向流のハイブリッドで、F=0.9 程度の補正で設計されます。

排熱回収(エコノマイザー)の経済性評価:工業炉の排ガス熱回収では、燃焼排ガス(200°C → 100°C)から燃焼空気(25°C → 150°C)へ熱を渡します。並流配置ではこの状態が温度交差(150 > 100)で原理的に不可能ですが、対向流なら可能で、LMTD ≈ 62 K の駆動力を得られます。本ツールでこの値を入れて並流 LMTD が「invalid」となり、対向流のみ計算できることを確認すると、なぜ排熱回収機がほぼ全て対向流であるかが直感的に理解できます。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解が、「LMTD は両端温度差の単純な平均」というものです。実際には算術平均 (ΔT_1 + ΔT_2)/2 は常に LMTD より大きく、特に ΔT_1/ΔT_2 比が大きいほど両者の差が拡大します。たとえば ΔT_1=125, ΔT_2=10 の並流既定値では、算術平均 = 67.5 K だが LMTD = 45.5 K — 算術平均で設計すると伝熱面積を約 33% 過小評価してしまいます。実務では ΔT_1/ΔT_2 < 2 の場合のみ算術平均近似が許容され(誤差 4% 以内)、それ以上では必ず対数平均を使う必要があります。本ツールのスライダーで T_h_out を変えて両者の発散を観察してください。

次に多いのが、「LMTD さえあれば全ての熱交換器配置を扱える」という誤解です。LMTD 法は純粋な対向流または並流に対しては厳密ですが、シェル&チューブの 1-2 配置、クロスフロー、多パス配置などでは流れの混合により実効 ΔT が低下し、補正係数 F (< 1) を掛ける必要があります — Q = U·A·F·LMTD。F は TEMA や Bowman らのチャートで読み取り、典型的に F > 0.75 となるよう設計します(F < 0.75 だと設計が不安定で、配置変更を検討すべき)。本ツールは F=1 の理想配置を計算するため、実機適用時は F 補正を別途行ってください。

最後に、「LMTD と NTU-ε 法は別物の独立な方法」と思いがちですが、両者は同じ熱力学を異なる視点から記述したものです。LMTD 法は両流体の出口温度が既知のとき必要面積を計算するのに、NTU-ε 法は面積と U が既知のとき出口温度を予測するのに、それぞれ便利です。実は ε = f(NTU, C*) の効率関係式と Q = U·A·LMTD は同じ第二法則制約から導かれます。本ツールは LMTD 計算に特化していますが、NTU-ε 法による効率計算は別の熱交換器ツールを参照してください。両方を組み合わせると、設計と性能予測の両方が可能になります。