質量拡散シミュレーター 戻る
対話型シミュレーター

質量拡散・フィックの法則シミュレーター

拡散係数・スラブ厚さ・境界条件を設定して濃度プロファイルの時間発展を可視化。浸炭・水素脆化・酸化解析に対応。

パラメータ設定
材料プリセット
拡散係数 D [m²/s]
10⁻¹⁴ ~ 10⁻⁸ m²/s(対数スケール)
スラブ厚さ L [mm]
mm
表面濃度 C_s / C₀
初期濃度比 C₀/C_s
表示時刻数
最大時間 t_max [h]
h
初期濃度プロファイル
チャートをクリックして初期濃度分布の点を設定できます。クリックした位置に濃度ポイントが追加され、線形補間されます。
再生コントロール
0.00 s
濃度分布スナップショット
計算結果
拡散長 √(Dt) [μm]
浸透深さ (C/Cs=0.1) [μm]
平均濃度 C̄/Cs
表面フラックス J₀ [mol/m²s]
50%到達時間 [h]
差分
理論・主要公式

フィックの第2法則(拡散方程式):

$$\frac{\partial C}{\partial t}= D \frac{\partial^2 C}{\partial x^2}$$

半無限体解(erfc):

$$\frac{C - C_0}{C_s - C_0}= \text{erfc}\!\left(\frac{x}{2\sqrt{Dt}}\right)$$

有限スラブ解(フーリエ級数):

$$\frac{C - C_0}{C_s - C_0}= 1 - \sum_{n=0}^{\infty}\frac{4(-1)^n}{(2n+1)\pi}\exp\!\left(-\frac{(2n+1)^2\pi^2 Dt}{4L^2}\right)\cos\!\left(\frac{(2n+1)\pi x}{2L}\right)$$

表面フラックス:$J_0 = -D\left.\dfrac{\partial C}{\partial x}\right|_{x=0}= (C_s-C_0)\sqrt{\dfrac{D}{\pi t}}$

質量拡散・フィックの法則シミュレーターとは

🙋
「フィックの第2法則」って何ですか?教科書に $\frac{\partial C}{\partial t}= D \frac{\partial^2 C}{\partial x^2}$ って書いてあるけど、これがどういう現象を表してるのかイメージが湧かないです。
🎓
大まかに言うと、「濃度が高いところから低いところに物質が広がっていく速さ」を決める方程式だね。例えば、コーヒーにミルクを垂らすと、最初は点だったミルクがじわーっと広がるよね。あの「じわーっ」と広がる速さを、数式で予測できるのがフィックの法則なんだ。このシミュレーターでは、上の「拡散係数 D」のスライダーを動かすと、その広がる速さがどう変わるかが一目でわかるよ。
🙋
え、そうなんですか!「半無限体」と「有限スラブ」って、右側の選択肢にありますけど、何が違うんですか?
🎓
実務でよく使う区別なんだ。「半無限体」は、材料がすごく厚くて、拡散が反対側の面に届かない初期段階を想定している。例えば、歯車の表面だけを硬くする「浸炭処理」の初期はこれで近似できる。一方、「有限スラブ」は板のように厚さが決まっている場合。シミュレーターで「スラブ厚さ L」を小さくして「半無限体」から「有限スラブ」に切り替えてみて。反対側の面から濃度が跳ね返る様子が見えるはずだよ。
🙋
プリセットに「鉄中炭素」とか「ニッケル中水素」ってありますね。これって実際の設計で使う数字なんですか?
🎓
その通り!現場でそのまま使える値だよ。「鉄中炭素」は歯車や軸の浸炭深さを設計するとき、「ニッケル中水素」は原子炉材料や化学プラントで水素が入って脆くなる「水素脆化」を評価するときに使う。プリセットを選ぶと、現実の材料に近い拡散係数が自動で設定されるから、パラメータを動かして「この厚さの板に水素が浸透するのに何時間かかるか」をすぐに試算できるんだ。

よくある質問

代表的な材料の拡散係数は文献やデータベースで調べられます。例えば、鉄中の炭素拡散係数は約1e-11 m²/s(1000℃)です。概算でよい場合は、類似材料の値を参考に、シミュレーション結果が実測と合うよう調整してください。
「一定濃度」は表面濃度を固定(例:浸炭でガス濃度一定)、「一定フラックス」は表面への流入量を固定(例:酸化膜を通した拡散)します。前者は濃度が時間変化せず、後者は濃度勾配が一定になります。用途に応じて選択してください。
薄いスラブでは濃度勾配が急峻になり、数値計算の時間刻みが不足すると発散します。対策として、拡散係数と厚さから決まる特性時間(τ=L²/D)より十分小さい時間刻みを設定するか、自動時間刻み調整機能をご利用ください。
可能です。拡散係数に水素の値を(例:鉄中で約1e-9 m²/s)、境界条件に水素濃度またはフラックスを設定することで、時間経過に伴う水素濃度分布を可視化できます。ただし、脆化の閾値評価には別途応力解析が必要です。

実世界での応用

表面硬化処理(浸炭・窒化): 自動車のギアやベアリングの表面を硬くして耐磨耗性を向上させる処理です。拡散シミュレーションを用いて、所望の硬化深さを得るために必要な処理温度と時間を設計します。

水素脆化評価: 高強度鋼やニッケル合金が水素を吸収することで脆くなる現象です。材料内部の水素濃度分布を予測し、遅れ破壊が発生するリスクや許容応力を評価するために拡散計算が用いられます。

酸化皮膜成長解析: チタン合金(Ti-6Al-4V)や高温合金の表面に形成される保護酸化膜の成長は、酸素イオンの拡散によって支配されます。膜厚の時間変化を予測し、部品の寿命を推定します。

CAEソフトウェアの検証: ABAQUSやCOMSOL Multiphysicsなどの高度な質量拡散解析を行う前に、本シミュレーターのような単純な1次元モデルで手計算や簡易計算を行い、ソルバー設定や境界条件の妥当性を確認するベンチマークとして利用されます。

よくある誤解と注意点

このシミュレーターを使い始める際、特に実務に近い計算をしたい時に気をつけてほしいポイントがいくつかあるよ。まず「拡散係数Dは温度で大きく変わる」ということ。例えば、鉄中への炭素の拡散係数は、900°Cでは約1.5×10⁻¹¹ m²/sだけど、1000°Cだと約3.0×10⁻¹¹ m²/sとほぼ倍になる。シミュレーターでDをいじる時は、それが「どの温度での値なのか」を常に意識しよう。データシートの値を使う時は温度を確認だ。

次に、初期条件と境界条件の設定ミス。半無限体の解は「初期濃度C₀が全体で一様」が大前提。例えば、すでに内部に濃度勾配がある材料の経時変化を予測したい時は、この単純な解は使えない。また、表面濃度Cₛを「一定」と仮定している点にも注意。実際の浸炭処理では、炉内の炭化ガス濃度が変わればCₛも変動する。シミュレーション結果は「理想的な条件」での予測であることを忘れずに。

最後に、「有限スラブ」の結果の解釈。板の厚さLを小さくすると、反対面からの「反射」が起きて濃度分布が複雑になるけど、これは物理的に物質が跳ね返っているわけじゃない。拡散の「波」が境界で遮られるイメージだ。特に、両面から拡散する条件(例えば、板の両面を浸炭)をシミュレートしたい時は、初期条件と解の形が変わるから、このツールの結果をそのまま使うのは危険だよ。