そのとおり。蒸気経済はまさに「生蒸気1kgあたり何kgの水を蒸発させたか」だ。単一効用缶なら水1kgを飛ばすのに蒸気1kg、つまり蒸気経済は1。3重効用なら理想で3になるから、同じ仕事を蒸気1/3で済ませられる。下の「必要蒸気量 vs 効用数」グラフを見ると、効用数を増やすほど蒸気消費が 1/n でストンと落ちるのがわかるよ。
そう、実機では n より少し低くなる。理由は2つ。1つは「沸点上昇」——砂糖水や黒液のように溶質が濃いと、純水より沸点が上がってしまい、缶ごとに使える有効温度差を食ってしまう。もう1つは缶や配管からの放熱損失だ。この2つで、実際の蒸気経済は理想 n より10〜20%ほど下がるのが普通。本ツールは理想の n で計算しているから、実機を見積もるときは少し割り引いて考えてね。
よくある質問
多重効用缶は、蒸発缶(効用)を直列に並べ、ある効用で水を沸騰させて出た蒸気を、次の効用の加熱蒸気として再利用する省エネ蒸発装置です。各効用は前の効用より低い圧力・低い沸点で運転されるため、1つ前の蒸気でも次の液を沸騰させられます。これにより、生蒸気(ボイラからの蒸気)1kgでおよそ効用数 n kg の水を蒸発させられ、単一効用缶に比べて蒸気消費量を大幅に削減できます。
蒸気経済(スチームエコノミー)は「生蒸気1kgあたり何kgの水を蒸発させられるか」を表す指標です。理想的には効用数 n に等しく、3重効用なら蒸気経済は約3、5重効用なら約5になります。実際には、各効用で溶質による沸点上昇が起きて有効な温度差が減ること、放熱損失があることから、理想値より10〜20%程度低くなるのが普通です。本ツールは理想値 n を用いて計算するため、実機では少し控えめに見積もってください。
まず多いのが、「効用数を増やせば蒸気経済はいくらでも上がる」という誤解です。確かに理想計算では蒸気経済=効用数 n ですが、現実には沸点上昇と放熱損失で n より10〜20%低くなります。さらに重要なのは、効用数を増やしても処理量が増えるわけではない点。利用できる全体の温度差は一定なので、効用を増やすほど1缶あたりの温度差が痩せ細り、同じ蒸発量を得るのに伝熱面積をどんどん増やさなければなりません。蒸気代の節約は伝熱面積(=設備費)の増加と引き換えであり、最適な効用数は経済性で決まります。
次に、「沸点上昇を無視してよい」という思い込み。本ツールは入門用に固形分収支と理想の蒸気経済だけを扱っていますが、実機設計では各効用での沸点上昇(Boiling Point Elevation, BPE)を必ず考慮します。濃い砂糖液や黒液では沸点上昇が10℃以上になることもあり、その分だけ各効用で使える有効温度差(加熱蒸気温度−沸点)が減ります。沸点上昇を見落とすと、計算上は蒸発するはずなのに実機では能力不足、というトラブルになります。