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電気工学

電力ケーブルの許容電流シミュレーター

電力ケーブルに連続して流せる電流の上限「許容電流(アンペアシティ)」を設計するツールです。導体の材質・断面積・絶縁種類・周囲温度・敷設方法を変えると、絶縁の温度限界を超えない安全な電流値と発熱量がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
導体材質
抵抗率 ρ₂₀ と温度係数 α を自動設定
導体断面積 A
mm²
絶縁種類
導体の温度限界 T_limit を自動設定
周囲温度 T_a
ケーブル周囲の空気・土壌の温度
敷設方法
放熱のしやすさ(実効熱伝達係数)を決める
計算結果
許容電流(アンペアシティ)I_max (A)
導体抵抗(運転温度)(mΩ/m)
許容温度上昇 ΔT (K)
発熱量 @I_max (W/m)
電流密度 @I_max (A/mm²)
判定
ケーブル断面図 — 発熱と放熱のアニメーション

中央の金属導体に I²R 熱が発生し、絶縁層を通って放射状に周囲へ逃げます。導体の色は温度(青=低温/橙赤=温度限界付近)を表します。

許容電流 vs 導体断面積
許容電流 vs 周囲温度
理論・主要公式

$$I_{max}=\sqrt{\dfrac{\Delta T}{R_{ac}\,R_{th}}},\qquad R_{ac}=\frac{\rho(T)}{A}$$

許容電流 I_max は、I²R のジュール熱がちょうど導体を絶縁の温度限界まで上げる電流。ΔT:許容温度上昇、R_ac:運転温度の導体抵抗、R_th:熱抵抗、A:導体断面積。

$$\rho(T)=\rho_{20}\,\bigl(1+\alpha\,(T_{limit}-20)\bigr)$$

運転(限界)温度での抵抗率。ρ₂₀:20℃の抵抗率、α:抵抗温度係数、T_limit:絶縁の温度限界(XLPE 90℃/PVC 70℃)。

$$R_{th}=\frac{1}{h_{eff}\,\pi\,d_{cond}},\qquad \Delta T=T_{limit}-T_{a}$$

導体から周囲までの熱抵抗 R_th と許容温度上昇 ΔT。h_eff:実効熱伝達係数(敷設方法で決まる)、d_cond:導体の等価直径、T_a:周囲温度。

ケーブルの許容電流とは

🙋
ケーブルの「許容電流」って、これ以上流すとケーブルが溶ける、という限界の電流のことですか?
🎓
よくある誤解なんだけど、実は「溶ける電流」ではないんだ。許容電流(アンペアシティ)は温度で決まる。電流を流すと導体に I²R のジュール熱が出る。その熱は絶縁を通って外へ逃げていく。許容電流っていうのは、発生する熱と逃げられる熱がちょうど釣り合って、導体が「絶縁の耐えられる温度限界」にぴったり達するときの電流のことなんだ。溶けるよりずっと手前、温度で線を引いている。
🙋
なるほど、温度の話なんですね。じゃあ「絶縁の温度限界」って具体的に何度くらいなんですか?
🎓
絶縁材料で決まっていて、普通のビニル(PVC)絶縁なら70℃、架橋ポリエチレン(XLPE)なら90℃が代表値だね。左の「絶縁種類」を XLPE から PVC に切り替えてみて。温度限界が90℃から70℃に下がると、許容できる温度上昇 ΔT が縮むから、許容電流もすっと下がるはずだ。XLPE が高い電流を流せるのは、より高温まで耐えられるからなんだ。
🙋
周囲温度のスライダーを上げると、許容電流がどんどん減っていきます。これも温度限界と関係があるんですか?
🎓
そのとおり。許容できる温度上昇は ΔT=(温度限界 − 周囲温度) だ。周囲が暑いほど ΔT が小さくなって、逃がせる熱の余裕が減る。許容電流は √ΔT に比例するから、周囲温度が限界温度に近づくと許容電流はゼロに向かって落ちていく。だから真夏の天井裏や、機械室のような暑い場所に通すケーブルは、カタログ値そのままじゃ危ない。実務では基準温度からのずれを「温度補正係数」で割り引くんだ。
🙋
敷設方法も選べますね。電線管内・気中・直接埋設で、そんなに違うものなんですか?
🎓
かなり違うよ。これは「熱の逃がしやすさ」を変えているんだ。電線管の中は管内の空気層が断熱材みたいに働いて熱がこもるから、許容電流は小さめ。気中は対流で放熱できるからもう少し流せる。意外なのが直接埋設で、湿った良い土は熱伝導がけっこう良くて、しっかり冷やしてくれる。土に埋めた方が涼しい、っていうのは直感に反するけど本当なんだ。それから、ケーブルを何本も束ねると互いに暖め合うから、これもグループ補正で割り引く必要がある。
🙋
導体を銅からアルミに変えると許容電流が落ちました。銅の方が「電気を通しやすい」からですか?
🎓
そう、銅は抵抗率が低い。アルミは銅の約1.6倍も抵抗率が大きいから、同じ電流でも発熱 I²R が大きくなって、温度限界に早く達してしまう。だから同じ断面積なら銅の方がたくさん流せる。逆に言うと、アルミで同じ電流を流すには太い断面積が必要になる。それでもアルミは軽くて安いから、架空送電線や大サイズの配電ケーブルでは主役なんだ。設計は「銅かアルミか」「太さ」「絶縁」「環境」の組み合わせで決まる、というわけだね。

よくある質問

許容電流は、ヒューズのように「溶ける電流」ではなく、定常状態の温度で決まります。電流が流れると導体に I²R のジュール熱が発生し、その熱は絶縁を通って周囲へ逃げます。発生する熱と逃げられる熱が、導体が絶縁の温度限界(PVCで70℃、XLPEで90℃)にちょうど達したときに釣り合う電流が許容電流です。式では I_max=√(ΔT/(R_ac·R_th)) で、ΔT は許容温度上昇、R_ac は運転温度の導体抵抗、R_th は熱抵抗です。
許容電流は導体を温度限界まで上げられる「温度の余裕」ΔT=(限界温度−周囲温度) に依存します。周囲温度が高いほど ΔT が小さくなり、逃がせる熱が減るため許容電流も下がります。許容電流は √ΔT に比例するので、ΔT が半分になると許容電流は約0.71倍になります。周囲温度が絶縁の限界温度に近づくと ΔT はゼロに近づき、許容電流も0に向かって落ちていきます。実務では基準温度(多くは30℃や40℃)からのずれを温度補正係数で補正します。
敷設方法は導体から周囲への放熱のしやすさ、つまり実効熱伝達係数 h を変えます。気中は対流で放熱でき h はやや大きく、電線管内は管内の空気層が断熱になって h が小さく許容電流が下がります。意外に思われますが、湿った良質な土壌への直接埋設は土の熱伝導が良いため放熱性が高く、h が大きくなって許容電流は大きくなります。複数本を束ねたり近接配線したりすると互いに加熱し合うため、グループ補正係数でさらに低減します。
同じ断面積なら銅の方が大きい電流を流せます。銅の20℃抵抗率は約1.72e-8 Ω·m、アルミニウムは約2.82e-8 Ω·m で、アルミは銅の約1.6倍の抵抗率です。抵抗が大きいほど同じ電流での発熱 I²R が大きくなり、温度限界に早く達するため許容電流が小さくなります。逆に同じ電流を流すには、アルミは銅より太い断面積が必要です。アルミは軽量・低コストという利点があり、架空送電線や大サイズの配電ケーブルで広く使われます。

実世界での応用

建築電気設備の幹線・分岐回路:ビルや工場の受電盤から分電盤、分電盤からコンセント・機器までのケーブル選定は、許容電流計算の最も基本的な用途です。負荷電流に対して許容電流が上回るケーブルを選び、さらに周囲温度補正・グループ補正・電圧降下を確認します。許容電流不足は絶縁の劣化・焼損につながるため、配線設計の根幹となる検討です。

太陽光・再生可能エネルギー設備:太陽光パネルからパワーコンディショナ、連系点までの直流・交流ケーブルは、屋外の高い周囲温度や屋根上の輻射熱にさらされます。基準温度より高い環境では温度補正で許容電流が大きく下がるため、本ツールのように周囲温度の影響を直接確認することが、過熱トラブルの予防に役立ちます。

地中送配電線路:都市部の電力ケーブルは管路や直接埋設で布設されます。土壌の熱抵抗、埋設深さ、ケーブル間隔、他回線との相互加熱を考慮して許容電流を決めます。直接埋設は土壌が放熱を助ける一方、乾燥した土壌では熱抵抗が急増するため、土壌条件の評価が重要です。

電気設備のトラブル解析:「ケーブルが異常に熱い」「絶縁被覆が変色・硬化した」といった不具合は、許容電流オーバーや想定外の周囲温度・束ね配線が原因のことが多くあります。本ツールのような熱平衡計算で、現在の電流・環境で導体温度が限界を超えていないかを確認し、ケーブル増設・サイズアップ・敷設方法変更の要否を判断できます。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「許容電流=ケーブルが溶ける電流」という思い込みです。許容電流は溶断電流よりはるかに低く、定常状態の温度限界で設定されています。電流のたびに I²R 発熱が起こり、その熱は絶縁を通って周囲へ流れ出ます。許容電流とは、導体が絶縁の耐えられる最高温度(普通のPVCで70℃、架橋ポリエチレンXLPEで90℃)に座ったとき、発生する熱と逃がせる熱がちょうど釣り合う電流に過ぎません。放熱を妨げるものはすべて許容電流を下げます——周囲温度が高い(温度の余裕が小さい)、電線管内や他ケーブルとの束ね(冷却が悪い)、暑い場所での使用などです。逆に冷却を良くする条件は許容電流を上げます——湿った良質な土壌への直接埋設はかなり良く冷えます。抵抗率の低い銅は同じ断面積でアルミより多くの電流を流せます。技術者は基準許容電流から出発し、周囲温度とグループ化の補正係数を適用します。許容電流を超えると絶縁が焼け、早期に劣化し、やがて故障します。

次に、「カタログの許容電流をそのまま使ってよい」という油断です。メーカーの許容電流値は、特定の基準条件(基準周囲温度・単独布設・標準的な敷設方法)で定義されています。実際の現場が基準と違えば、温度補正係数とグループ補正係数を掛けて低減しなければなりません。真夏の天井裏で複数回路を束ねれば、補正後の許容電流はカタログ値の半分以下になることも珍しくありません。基準条件を確認せずにカタログ値で設計すると、過熱・絶縁劣化を招きます。

最後に、「定常状態の許容電流だけ見ればよい」という落とし穴。本ツールが扱うのは連続使用時の定常熱平衡です。しかし実際には、短絡電流のような大きな瞬時電流に対する短時間許容電流(熱容量で決まる)や、間欠負荷・始動電流のような過渡的な発熱も別途検討が必要です。また電圧降下は許容電流とは別の制約で、長距離配線では許容電流に余裕があっても電圧降下で太さが決まることがよくあります。許容電流・短時間耐量・電圧降下の三つを合わせて、最終的なケーブルサイズを決めてください。

使い方ガイド

  1. 導体材質(銅または赤銅)と断面積(1.25~400mm²)を選択します
  2. 周囲温度(-10~50℃)と敷設条件(直埋・管内・トレイ)を指定します
  3. シミュレーターが導体抵抗・許容温度上昇・発熱量を自動計算し、許容電流値(アンペアシティ)と電流密度を出力します

具体的な計算例

銅導体CV22kV 38mm²、周囲温度40℃、直埋条件の場合:導体抵抗は運転温度80℃で0.587mΩ/m、許容温度上昇は45K、許容電流I_maxは243A、発熱量は34.7W/m、電流密度は6.4A/mm²となります。これに対し同じ仕様で管内敷設の場合、散熱性低下により許容電流は189Aに低下し、発熱量は21.1W/mに抑制されます。

実務での注意点

  1. 複数ケーブル並設時は相互加熱係数(通常0.7~0.9)を乗算し、算出電流を低減してください
  2. 接地導体・中性線を含む場合、導体断面積の合計で抵抗値が変わるため個別計算が必要です
  3. JEC-127規格では埋設深さ0.7m基準;深さ変更時は地温補正係数を適用してください
  4. ケーブルトレイ内で縦並びの場合、最下段が最高温度となるため上位段の電流を15~20%削減推奨です