ケーブルの電圧降下シミュレーター 戻る
電気工学

ケーブルの電圧降下シミュレーター

電力ケーブルに負荷電流を流すと、導体の抵抗のぶんだけ電圧が下がります。負荷電流・ケーブル長さ・導体断面積・配線方式を変えると、電圧降下・電圧降下率・電力損失・負荷端電圧がリアルタイムで分かり、許容範囲に収まる電線サイズを探せます。

パラメータ設定
負荷電流 I
A
ケーブルが運ぶ電流
ケーブル長さ L
m
電源から負荷までの片道距離
導体断面積 A
mm²
電線1本の銅導体の太さ
系統電圧 V
V
電源側の供給電圧
配線方式
電圧降下の係数 k が変わります
計算結果
導体抵抗(片道)(Ω)
電圧降下 (V)
電圧降下率 (%)
電力損失 (W)
負荷端電圧 (V)
電圧降下の判定
配線回路図 — 電圧降下アニメーション

左の電源から右の負荷へ電流が流れ、ケーブルに沿って電圧が下がっていきます。落差が電圧降下、ケーブルから出る色は熱として失われる電力です。

電圧降下率 vs ケーブル長さ
電圧降下率 vs 導体断面積
理論・主要公式

$$V_{drop}=k\cdot I\cdot R,\qquad R=\frac{\rho\,L}{A}$$

電圧降下 V_drop と片道の導体抵抗 R。ρ:銅の抵抗率(0.0172 Ω·mm²/m)、L:ケーブル長さ、A:導体断面積、I:負荷電流。係数 k は単相2線式で 2、三相3線式で √3。

$$\delta = \frac{V_{drop}}{V}\times100\,[\%]$$

電圧降下率 δ。系統電圧 V に対する電圧降下の割合。分岐回路で約2%、全体で約5%が許容の目安。

$$P_{loss}=m\cdot I^{2}\cdot R,\qquad V_{load}=V-V_{drop}$$

電力損失 P_loss(ケーブルで熱になる電力、係数 m は単相で 2・三相で 3)と負荷端電圧 V_load。電圧降下は導体断面積 A を大きくするほど小さくなる。

ケーブルの電圧降下とは

🙋
電線って電気をそのまま運ぶものだと思っていました。「電圧降下」って、ケーブルの中で電圧が減るってことですか?
🎓
そうなんだ。電線は理想的な「抵抗ゼロの線」じゃなくて、銅でも必ずわずかな抵抗を持っている。そこに電流を流すと、オームの法則どおり「電流×抵抗」のぶんだけ電圧が落ちる。だから電源側が200Vでも、長いケーブルの先にある負荷には190Vしか届かない、なんてことが起きる。この差が電圧降下だよ。
🙋
10Vくらいの差なら、たいしたことなさそうですけど…ダメなんですか?
🎓
それが結構困るんだ。機器は決められた定格電圧で動くように設計されている。電圧が足りないと、モーターはトルクが落ちて発熱し、照明は暗くなり、電子機器は誤動作したりリセットしたりする。しかも落ちた電圧ぶんの電力はケーブルの中で熱になって捨てられる。お金を払った電気が、ただ電線を温めるだけで消えていくわけだ。左で「ケーブル長さ」を伸ばしてみて。電圧降下率がぐんぐん上がるのが分かるよ。
🙋
本当だ、長くするだけで降下率が5%を超えて赤くなりました。どうすれば下げられますか?
🎓
一番効くのは「導体を太くする」ことだね。導体抵抗 R = ρL/A は断面積 A に反比例するから、電線を太くすれば抵抗も電圧降下もそのぶん減る。下の「電圧降下率 vs 導体断面積」のグラフを見ると、太くするほど降下率がスッと下がる曲線が見えるはずだ。長距離の配線で電圧降下が問題になったら、まず一段太い電線を検討する、というのが現場の定石だよ。
🙋
配線方式に「単相」と「三相」がありますね。これで電圧降下も変わるんですか?
🎓
変わるよ。単相2線式は電流が行きと帰りで2本の導体を通るから、電圧降下は 2·I·R。三相3線式は √3·I·R になって、係数が 2 から約1.73に下がる。つまり同じ条件なら三相のほうが電圧降下が小さい。配線方式を切り替えてみると、判定の数値がちゃんと変わるよ。三相が大電力の送配電に使われる理由のひとつが、この効率の良さなんだ。
🙋
なるほど。電圧降下って「電線をどう選ぶか」の話なんですね。
🎓
そのとおり。電線サイズの選定は「許容電流(電線が溶けないか)」と「電圧降下(機器がちゃんと動くか)」の両方で決まる。短い配線なら許容電流で決まるけど、長い配線では電圧降下のほうが先に効いてくることが多い。だから配線設計では、必ずこの電圧降下の計算をしてサイズを確かめるんだ。

よくある質問

まず片道の導体抵抗 R = ρL/A を求めます。ρ は銅の抵抗率(約0.0172 Ω·mm²/m)、L はケーブル長さ、A は導体断面積です。電圧降下は配線方式で係数が変わり、単相2線式では電流が往復2本の導体を流れるため V_drop = 2·I·R、三相3線式では V_drop = √3·I·R となります。電圧降下率は V_drop を系統電圧で割って百分率にした値で、本ツールはこれを許容値と比較して判定します。
一般的な目安として、分岐回路(末端回路)では約2%以内、引込口から負荷までの全体では約5%以内に収めるのが望ましいとされます。本ツールは電圧降下率が2%未満なら「良好」、2〜5%なら「許容範囲」、5%超なら「過大(要改善)」と判定します。電圧降下が大きいとモーターのトルク低下、照明の暗化、電子機器の誤動作などを招くため、許容値を超えたら導体断面積を大きくするのが基本対策です。
最も確実なのは導体断面積 A を大きくすること(太い電線にする)です。導体抵抗 R = ρL/A は断面積に反比例するため、A を2倍にすれば抵抗も電圧降下も半分になります。そのほか、ケーブル長さ L を短くする経路に変更する、負荷電流 I を分散させる、系統電圧を上げる、といった手段があります。電圧降下は L と I に比例し A に反比例するので、長距離配線ほど太い電線が必要になります。
同じ電流・同じ導体抵抗でも、単相2線式は電流が行きと帰りで2本の導体を通るため V_drop = 2·I·R、三相3線式は V_drop = √3·I·R(≈1.73·I·R)になります。つまり同条件なら三相のほうが電圧降下が小さく、係数比は √3/2 ≈ 0.87 です。三相が大電力の送配電に広く使われる理由のひとつが、この電圧降下と導体使用量の効率の良さです。

実世界での応用

建築・ビルの電気設備設計:受変電設備から各階の分電盤、そこから照明・コンセント・空調機までの幹線・分岐回路は、すべて電圧降下を計算して電線サイズを決めます。長い幹線では許容電流に余裕があっても電圧降下で一段太い電線が必要になることが多く、設計図面には電圧降下率の検討結果が必ず記載されます。

工場・設備の動力配線:大型モーターやポンプ、コンプレッサへの動力ケーブルは電流が大きいため電圧降下も大きくなります。特にモーターは始動時に定格の数倍の電流が流れ、その瞬間に電圧が大きく落ちると始動できなかったり、ほかの機器が誤動作したりします。始動時の電圧降下まで見込んで電線を選定します。

太陽光発電・再生可能エネルギー:太陽光パネルからパワーコンディショナまでのDCケーブルや、屋外設置の風力発電機からの長距離ケーブルでは、電圧降下が発電量の損失に直結します。発電した電気を無駄なく届けるため、長距離になるほど太い導体を選び、電圧降下率を低く抑える設計が行われます。

電気設計の概算・チェック:本ツールのような抵抗のみの簡易モデルは、配線設計の初期段階で「この電線サイズで電圧降下は足りるか」を素早く当たりづけするのに役立ちます。詳細設計では長距離・高圧の配線でケーブルのインダクタンス(リアクタンス)の寄与も加えますが、まずこの概算で電線サイズの目星をつけるのが実務的な進め方です。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「電圧降下は抵抗だけで決まる」という思い込みです。本ツールは力率1(純抵抗)の抵抗のみモデルで、短〜中距離の低圧配線ではこれで十分な精度が得られます。しかし長距離の配線や高圧線では、ケーブルのインダクタンスによる誘導性リアクタンスも電圧降下に寄与します。さらに負荷の力率が1より小さい(モーターなど誘導性負荷)と、リアクタンスぶんの電圧降下が無視できなくなります。長距離・大電流・低力率の案件では、抵抗とリアクタンスの両方を考慮した式で再検討してください。

次に、「導体抵抗は温度に関係なく一定」という誤解。銅の抵抗率は温度が上がると増加し、20°Cと70°Cでは約2割も違います。電流を流して電線自体が発熱すると抵抗が増え、電圧降下と電力損失がさらに大きくなる、という悪循環が起きます。本ツールは代表値 ρ=0.0172 Ω·mm²/m(およそ20°C相当)を使っていますが、連続して大電流を流す配線では、運転温度での抵抗率で検討するのがより安全です。

最後に、「電圧降下さえ満たせば電線は細くてよい」という考え方。電線サイズは電圧降下だけでなく「許容電流」でも決まります。許容電流を超える電流を流すと、たとえ電圧降下が小さくても電線が過熱し、絶縁被覆が劣化して最悪は火災につながります。電線選定は「許容電流」と「電圧降下」の両方を満たすサイズを選ぶのが原則で、本ツールは後者を確認するための道具です。前者の許容電流は電線の種類・敷設方法・周囲温度で決まるため、必ず別途確認してください。

使い方ガイド

  1. 負荷電流(A)、ケーブル長さ(m)、導体断面積(mm²)、システム電圧(V)を入力します
  2. 導体抵抗は銅導体の抵抗率0.0175Ω·mm²/mを基準に片道値として計算されます
  3. 電圧降下(V)=電流×往復距離×抵抗率÷断面積の公式で算出し、電圧降下率(%)を確認します
  4. JIS C 8201-2-1では低圧配電線の電圧降下は3%以内、動力線は5%以内が目安です
  5. 計算結果から最適なケーブルサイズの選定判定が自動表示されます

具体的な計算例

照明負荷100Aを200m離れた建物に供給する場合:システム電圧400V、導体断面積22mm²のVVFケーブルを使用します。導体抵抗=0.0175×400÷22≒0.318Ω、電圧降下=100×0.318≒31.8V、電圧降下率=31.8÷400×100≒7.95%となり、3%基準を大幅に超過するため断面積を38mm²に変更すると電圧降下率は4.8%に改善され、基準内に収まります。

実務での注意点