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空調・HVAC

放射冷房 熱負荷シミュレーター

天井に冷たいパネルを張る放射冷房(輻射冷房・チルドシーリング)を設計するツールです。室内温度・パネル表面温度・相対湿度を変えると、冷房能力と負荷カバー率、そして放射冷房で最も重要な「結露が起きないか」がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
室内温度 T_room
°C
維持したい室内空気温度
パネル表面温度 T_panel
°C
天井パネルの表面温度。低いほど能力大だが結露リスク増
室内相対湿度 RH
%
露点温度を決める。高いほど結露しやすい
パネル面積 A_panel
天井に設置する放射パネルの総面積
室内冷房負荷 Load
W
室内で処理すべき顕熱負荷(人体・機器・日射等)
計算結果
冷房能力 q (W/m²)
パネル総能力 Q (W)
負荷カバー率 (%)
露点温度 T_dp (°C)
結露余裕 (°C)
必要パネル面積 (m²)
放射冷房 室内断面図 — 放射熱の流れ

天井のチルドパネルが下方へ放射冷却し、人体・床から放射熱を受け取ります。左上の露点インジケータが緑なら安全、赤ならパネル面で結露します。

冷房能力 vs パネル温度
負荷カバー率 vs パネル面積
理論・主要公式

$$q=h\,(T_{room}-T_{panel}),\qquad Q=q\,A$$

単位面積あたり冷房能力 q [W/m²] とパネル総能力 Q [W]。h:総合熱伝達率、A:パネル面積。h≈11 W/m²K は放射(約5.5)と自然対流(約5.5)を合わせた値で、EN 14240 のオーダーに対応する一定値として扱います。

$$p_v=\frac{RH}{100}\,p_{sat}(T_{room}),\qquad p_{sat}(T)=611.2\,e^{17.62\,T/(243.12+T)}$$

Magnus式による飽和水蒸気圧 p_sat [Pa] と実際の水蒸気分圧 p_v。RH:相対湿度。これを逆に解くと露点温度 T_dp が得られます。

$$T_{panel}\gt T_{dp}\quad(\text{結露防止})$$

放射冷房パネルは必ず室内空気の露点温度 T_dp より高く保つ必要があります。これを下回るとパネル面で水蒸気が凝縮し、結露・水滴落下・カビの原因になります。冷房能力(顕熱)と露点制約(結露防止)の両方を同時に満たすことが設計の要点です。

放射冷房とは

🙋
「放射冷房」って、普通のエアコンと何が違うんですか?天井に冷たい板を張るって聞いたんですけど。
🎓
いい質問だね。普通のエアコンは冷たい風を吹き出して、室内の空気をかき混ぜて冷やす「対流冷房」だ。一方、放射冷房は天井や壁に低温のパネルを張って、そのパネルが人体や床、家具から放射熱を直接受け取る。風はほとんど起こさない。冬の床暖房の冷房版、と考えるとイメージしやすいよ。冷たい面のそばにいると、自分の体が出す赤外線をパネルがスーッと吸い取ってくれる、あの涼しさだ。
🙋
なるほど。じゃあパネルをうんと冷たくすれば、たくさん冷やせて得じゃないですか?左の「パネル表面温度」を下げると、冷房能力 q がどんどん上がりますよね。
🎓
そこが放射冷房の一番のワナなんだ。確かに能力は q = h·(T_room − T_panel) でパネルを冷やすほど上がる。でもパネルを冷たくしすぎると、空気中の水蒸気がパネル面で冷やされて「結露」する。コップに冷たい水を入れると外側に水滴がつくだろう?あれと同じだ。天井のパネルに水滴がつけば、ポタポタ落ちてくるし、カビも生える。だから露点温度より下げてはいけない、という絶対の制約があるんだ。
🙋
露点温度…左の「相対湿度」を上げると、結果カードの T_dp も上がりますね。湿度が高いと結露しやすいってことですか?
🎓
そのとおり。露点というのは「その空気を冷やしていったとき、水蒸気が水になり始める温度」のこと。湿度が高い空気ほど水蒸気をたっぷり含んでいるから、ちょっと冷やすだけで結露し始める=露点が高い。デフォルト設定の室温27℃・湿度55%だと露点は約17.2℃。パネルを18℃にしてあるから、結露余裕はたった0.8℃しかない。ギリギリなんだ。湿度を70%まで上げてみて。露点が一気に上がって、パネル18℃では結露判定になるはずだよ。
🙋
結露しないようにパネル温度を上げると、今度は冷房能力が足りなくなりそうですね。負荷カバー率って、それを見る数字ですか?
🎓
まさにそれ。負荷カバー率 = パネル総能力 ÷ 室内冷房負荷 だ。100%なら放射冷房だけで足りる。でも結露しない範囲だとパネル温度はせいぜい17〜18℃止まりで、単位面積の能力は60〜100 W/m²くらいが限界。負荷が大きい部屋だと、天井いっぱいにパネルを張っても100%に届かないことが多い。だから実務では放射冷房と、湿気を取る換気空調機を組み合わせる「ハイブリッド方式」が定番なんだ。
🙋
換気側で湿気を取れば、室内の露点が下がって、パネルをもっと冷たくできる…という良い循環になるんですね。
🎓
完璧な理解だ。換気側(一次空調)で外気の湿気=潜熱を処理して室内湿度を下げれば、露点が下がる。すると放射パネルをより低温にでき、顕熱処理能力が上がる。役割分担がきれいに噛み合うんだ。このツールで湿度を下げてから、パネル温度を下げてみると、その関係が数字で見えるよ。放射冷房の設計は「能力」と「結露」の二正面作戦——両方を同時ににらむのがコツだ。

よくある質問

チルドシーリング(天井放射冷房)の単位面積あたり冷房能力は q = h·(T_room − T_panel) で求めます。h は放射と自然対流を合わせた総合熱伝達率で、本ツールでは EN 14240 のオーダーに合わせて h≈11 W/m²K(放射約5.5+対流約5.5)の一定値を用います。T_room は室内温度、T_panel はパネル表面温度です。パネル全体の能力は Q = q·A(A はパネル面積)となります。例えば室温27℃・パネル18℃なら q=99 W/m²、20m²なら Q=1980 W です。
パネル表面温度が室内空気の露点温度より低くなると、パネル面で水蒸気が凝縮して結露します。露点はMagnus式で求められ、室内の相対湿度が高いほど露点も高くなります。放射冷房で最も重要な制約が「パネル温度 > 露点温度」を必ず守ることです。防止策は、(1) パネル温度を下げすぎない(室温との差を絞る)、(2) 室内の相対湿度を換気・除湿で下げて露点を下げる、(3) 露点センサーでパネル供給水温を自動制御する、の3つです。本ツールは結露余裕(パネル温度−露点)を表示し、0℃以下なら結露と判定します。
結露しない範囲ではパネル温度を下げられないため、放射冷房の単位面積能力は概ね 60〜100 W/m² 程度に頭打ちになります。室内の冷房負荷が大きい、またはパネル面積が小さいと、負荷カバー率が100%に届きません。必要パネル面積は A_req = Load / q で求められ、これが設置可能な天井面積を超える場合は、放射冷房と外気処理空調機(一次空調)を組み合わせる「放射+換気のハイブリッド方式」が一般的です。換気側で潜熱(湿気)と新鮮空気を、放射側で顕熱(温度)を分担します。
通常のエアコンは冷たい空気を吹き出して室内空気を循環させる「対流冷房」です。一方、放射冷房は低温のパネル表面が人体や家具・床から放射熱を直接受け取る「放射冷房」で、気流をほとんど起こしません。利点はドラフト感(冷風の不快感)がない、静かで温度ムラが小さい、低い室温設定でも涼しく感じられる(平均放射温度が下がるため)こと。欠点は応答が遅く、結露管理と湿度処理に別系統が必要なことです。本ツールは放射側の顕熱能力と結露リスクに焦点を当てています。

実世界での応用

オフィス・公共建築:天井放射冷房は、欧州を中心にオフィスビル・図書館・空港・美術館などで広く採用されています。静音で気流がなく、書類や展示物が舞わず、温度ムラの少ない均一な快適環境をつくれるためです。多くの場合、天井チルドビーム(放射+誘引対流の複合パネル)や毛細管マットを天井に組み込み、外気処理空調機(DOAS)と組み合わせて顕熱と潜熱を分担させます。

住宅の輻射冷暖房システム:床・天井・壁にパイプを通し、夏は冷水、冬は温水を流す輻射式冷暖房は高断熱住宅で人気が高まっています。冷房時は本ツールが示すとおり結露が最大の課題で、室内湿度を換気・除湿でコントロールし、供給水温を露点に応じて自動で上げ下げする制御が欠かせません。

データセンター・サーバー室の局所冷却:発熱密度の高いラック上部に放射・接触冷却パネルを設けると、送風ファンの電力と騒音を抑えつつ機器を冷やせます。ただし露点管理は一段とシビアで、湿度が低く管理された専用空間でのみ低温パネルが許されます。

HVAC設計の初期検討とCAE:詳細なCFD(数値流体解析)で室内の温度・気流・放射場を解く前に、本ツールのような熱収支の概算で「パネル面積が足りるか」「結露余裕がどれだけあるか」を当たりづけします。概算で結露余裕がマイナスなら、CFDを回す前に湿度設計から見直すべきというサインになります。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「冷房能力さえ足りれば設計OK」という思い込みです。放射冷房は顕熱(温度)しか処理できず、湿気=潜熱は一切取れません。能力 q を大きくしようとパネル温度を下げても、室内湿度が高ければ露点を下回って結露します。本ツールが結露余裕を独立した数値として表示しているのはこのためです。冷房能力と結露防止は別々の制約で、両方を同時に満たさなければ設計は成立しません。湿度処理は必ず換気・除湿の別系統で担保してください。

次に、「定常状態の能力だけで湿度の変動を見落とす」こと。本ツールは定常の熱収支を扱いますが、実際の室内湿度は人の出入り、ドアの開閉、外気の侵入、雨天で刻々と変わります。晴れた日に余裕0.8℃で運転していても、夕立で外気の湿気が入り込めば露点が一気に上がり、その瞬間にパネルが結露します。実機では露点センサーを設け、パネル供給水温を露点+1〜2℃以上に保つフィードバック制御を必ず組み込みます。固定温度での運転は危険です。

最後に、「総合熱伝達率 h を一定の固定値と考える」点。本ツールは h≈11 W/m²K の一定値を用いていますが、これはあくまで天井チルドシーリングの代表的なオーダーです。実際の h は、パネルが天井か壁か床か(対流成分が大きく変わる)、パネル表面の放射率、室内の平均放射温度、家具による視野遮蔽などで変動します。床放射冷房は冷気が下にたまりやすく対流が弱まるため、同じ温度差でも能力は天井式より小さくなります。最終設計では EN 14240 等の規格試験値やメーカーの能力曲線を用い、本ツールはあくまで概算・教育用としてお使いください。

使い方ガイド

  1. 室内設定温度(trNum)を20~28°C範囲で入力し、目標冷房負荷(trRange)をW/m²で設定する
  2. 放射パネル表面温度(tpNum)を16~24°C範囲で指定し、パネル有効面積(apNum)をm²単位で入力する
  3. 室内相対湿度(rhNum)を30~70%範囲で設定し、シミュレーション実行ボタンで冷房能力q、パネル総能力Q、負荷カバー率、露点温度T_dp、結露余裕を即座に算出する

具体的な計算例

オフィス建物の天井放射冷房システムで、室内温度25°C、相対湿度55%、パネル表面温度18°C、パネル面積150m²の場合を想定します。放射熱交換係数h_r=5.5W/(m²·K)を適用すると、単位面積当たり冷房能力q=38.5W/m²、パネル総能力Q=5,775Wが得られます。室内露点温度は13.9°C、パネル表面との結露余裕は4.1°Cとなり、安全域を確保できています。

実務での注意点