パラメータ設定
T をスイープ
リセット
IBC 簡略式:$S_{DS} = 2.5 \cdot \mathrm{PGA} \cdot F_a$、$S_{D1} = \mathrm{PGA} \cdot F_v$、$T_S = S_{D1}/S_{DS}$、$T_0 = 0.2 T_S$。減衰補正 $\eta = \sqrt{7/(2 + 100\zeta)}$。
設計応答スペクトル S_a(T)
横軸=固有周期 $T$ [秒]/縦軸=応答加速度 $S_a$ [g]/青線=設計用応答スペクトル(線形上昇 → プラトー → $1/T$ 減衰)/黄●=現在の周期 $T$ における $S_a$/橙破線=転換周期 $T_S$/緑破線=プラトー上限 $S_{DS}$。
構造物の模式図(地盤・建物・地震動)
茶色=地盤層/灰色=建物(高さは固有周期 $T$ に応じて変化)/青矢印=地動加速度 PGA/赤矢印=建物頂部の応答加速度 $S_a$/矢印長さは現在の値に比例。
理論・主要公式
IBC 簡略版の設計用スペクトル係数:
$$S_{DS} = 2.5 \cdot \mathrm{PGA} \cdot F_a,\qquad S_{D1} = \mathrm{PGA} \cdot F_v$$
転換周期と立ち上がり周期:
$$T_S = \frac{S_{D1}}{S_{DS}},\qquad T_0 = 0.2\,T_S$$
区間別の応答加速度 $S_a(T)$:
$$S_a(T) = \begin{cases} \mathrm{PGA} + (S_{DS} - \mathrm{PGA})\,T/T_0 & (T < T_0) \\ S_{DS} & (T_0 \le T < T_S) \\ S_{D1}/T & (T \ge T_S) \end{cases}$$
減衰補正係数($\zeta = 0.05$ で $\eta = 1$):
$$\eta = \sqrt{\frac{7}{2 + 100\,\zeta}}$$
$T$ は固有周期、$\zeta$ は減衰比、$\mathrm{PGA}$ は最大地動加速度、$F_a$・$F_v$ は地盤増幅係数。$S_a$ は SDOF(1 自由度系)の最大応答加速度で、設計地震力 $V = (S_a/R) W$ の基礎値となります。
応答スペクトルとは
🙋
耐震設計でよく出てくる「応答スペクトル」って結局なんですか? 地震波そのものとは違うんですよね?
🎓
そう、別物だよ。地震波は時刻ごとの揺れの記録だけど、応答スペクトルは「もしその地震波を 1 自由度系(SDOF)に入れたら、固有周期 $T$ と減衰 $\zeta$ ごとに最大応答はいくらになるか」を整理した曲線なんだ。建物ごとに $T$ が違っても、応答スペクトルから一発で最大応答が読める。例えば本ツールの既定値(PGA=0.40 g、$F_a=F_v=1.5$、$T=0.50$ s、$\zeta=0.05$)では、$S_{DS}=1.50$ g、$T_S=0.40$ s、現在の周期は $T_S$ より大きいから $S_a = S_{D1}/T = 0.60/0.50 = 1.20$ g、と「計算結果」カードで確認できる。
🙋
スライダーで $T$ を 0.20 s に下げると、$S_a$ が 1.50 g に張り付きました。これが「プラトー」と呼ばれる領域ですか?
🎓
その通り。$T_0 = 0.2 T_S = 0.08$ s から $T_S = 0.40$ s までが平坦な「プラトー領域」で、ここでは $S_a = S_{DS} = 1.50$ g 一定なんだ。短周期の剛い建物(低層 RC や石造)はだいたいこの領域に入る。$T$ をさらに伸ばして 1.0 s、2.0 s と増やすと、$S_a$ が $S_{D1}/T$ で急減していくのがグラフでわかる。長周期の柔らかい建物(高層ビル、長周期橋)は応答が小さくなる代わりに変位が大きくなるトレードオフがある。
🙋
減衰 $\zeta$ を 0.05 から 0.20 に上げると、スペクトル全体が下がりました。これが免震建物の効果ですか?
🎓
そう、まさに免震・制振の本質。減衰補正係数 $\eta = \sqrt{7/(2 + 100\zeta)}$ で、$\zeta=0.05$ のとき $\eta=1$、$\zeta=0.20$ では $\eta \approx 0.55$ になり、応答が約 45% カットされる。免震建物は鉛ダンパーや積層ゴムで $\zeta$ を 15〜30% まで上げ、剛性を低下させて $T$ も延ばすことで、二重のメカニズムで応答を低減している。本ツールで $\zeta$ と $T$ を同時に動かすと、その効果を直感的に確認できる。
🙋
地盤係数 $F_a = F_v$ を 1.5 から 2.5 に上げると、$S_{DS}$ が 1.50 g から 2.50 g まで跳ね上がりました。軟弱地盤って怖いんですね…
🎓
本当に怖い。地盤の表層 30 m が軟弱だと、岩盤面の地震動が地表で 2〜3 倍に増幅されることがある。1985 年メキシコ地震や 1989 年ロマプリエタ地震では、ある特定周期で軟弱地盤が共振して、数 km 離れた地点だけ建物被害が集中した。だから IBC や Eurocode 8 では、地盤調査による地盤種別の確定を耐震設計の最初のステップとしているんだ。本ツールは $F_a = F_v$ を 1 つのスライダーにまとめているけど、実規準では短周期側($F_a$)と長周期側($F_v$)を別々に与える点も覚えておこう。
よくある質問
本ツールの応答スペクトルは IBC/ASCE と Eurocode 8 のどちらに準拠していますか?
本ツールは IBC(International Building Code)/ASCE 7 の Type-I スペクトル形状を簡略化したモデルです。Eurocode 8 のスペクトル形状はやや異なり、$T < T_B$ で線形上昇、$T_B \le T < T_C$ でプラトー、$T_C \le T < T_D$ で $1/T$ 減衰、$T \ge T_D$ で $1/T^2$ 減衰の 4 区間モデルになります。本ツールでは長周期側($T \ge T_S$)を $1/T$ で打ち切る簡略形を採用しています。日本の建築基準法告示の Cz 関係も類似の形状ですが、設計震度 $C_0 = 0.2$(中地震)/$1.0$(大地震)と地域係数 $Z$ で別枠で規定されます。教育目的・概念把握には十分ですが、実設計には必ず該当規準の正規式を用いてください。
なぜ短周期領域は線形上昇+プラトーで、長周期領域は 1/T 減衰なのですか?
物理的には「等加速度・等速度・等変位の 3 領域」に対応します。短周期(剛い建物)では建物が地盤と一緒に動くため最大応答加速度は地盤加速度に近づき、$S_a \approx \mathrm{PGA}$ から $S_{DS}$ にかけて立ち上がります。中間周期では建物の慣性と地震波の周期が共振気味になり、応答が一定値(プラトー $S_{DS}$)になります。長周期(柔らかい建物)では建物が地盤に対してほぼ静止し、最大応答速度・変位が一定になるため、$S_a = (2\pi/T)^2 \cdot S_d \propto 1/T$ で減少します。さらに長周期側では $1/T^2$ の変位一定領域もありますが、本ツールでは簡略化のため省略しています。
設計地震力の計算で応答スペクトルからベースシアをどう求めますか?
SDOF 等価系では、応答加速度 $S_a$ から設計震度 $C_s = S_a / R$($R$ は応答低減係数:延性架構ほど大きく、3〜8)を求め、ベースシア $V = C_s \cdot W$($W$ は建物有効重量)を算出します。多自由度系(多層建物)では各次モードごとに固有周期と質量参加率から $S_a$ を読み、SRSS(二乗和平方根)または CQC(完全二次組合せ)で総応答を求めます。本ツールは SDOF の応答 $S_a$ を出力するだけなので、実設計では応答低減係数・重要度係数・モード合成を別途適用してください。例えば既定値 $S_a = 1.20$ g、$R = 6$(耐震モーメント抵抗フレーム)、$W = 10000$ kN なら $V = (1.20/6) \cdot 10000 = 2000$ kN です。
設計用スペクトルと地震動から計算する弾性応答スペクトルは何が違うのですか?
弾性応答スペクトル(実地震スペクトル)は、特定の地震記録 1 本を SDOF に入力して得られる応答曲線で、ピークと谷が激しい凸凹形状になります。設計用スペクトルは、多数の地震記録の弾性応答スペクトルを統計処理(平均+1σ など)し、規準で滑らかに包絡したエンベロープです。本ツールが計算しているのは後者の設計用スペクトルで、特定の建物・特定の地震波での応答ではなく「設計で考慮すべき応答の上限値」を表します。弾性応答スペクトルそのものを描きたい場合は、Newmark-β 法などで時刻歴応答解析(THA)を実行する必要があります。
実世界での応用
建築基準法に基づく日常設計: 日本の建築基準法施行令、米国 IBC/ASCE 7、欧州 Eurocode 8、中国 GB 50011 など、世界中の耐震設計規準が応答スペクトル法を主要な設計手法として採用しています。建物の固有周期 $T$ を略算式($T = 0.1N$、$N$ は階数等)で求め、設計用応答スペクトルから $S_a$ を読み、ベースシア $V = (S_a/R) W$ で水平地震力を決定する流れが標準です。本ツールで $T$ を 0.1 s(1 階建て)から 3.0 s(30 階建て)まで動かすと、低層〜高層建物の応答の違いが直感的に確認できます。
免震・制振建物の効果評価: 積層ゴム免震や TMD(同調マスダンパー)、油圧ダンパーなどの制振技術は、固有周期 $T$ を延ばし、減衰 $\zeta$ を増やすことで応答を低減します。本ツールで $T = 3.0$ s、$\zeta = 0.20$ と設定すると、$S_a$ が既定値の 1.20 g から大幅に低減することが確認でき、免震建物が地震応答を 1/3 〜 1/5 に低減できる原理が分かります。設計実務では時刻歴応答解析(THA)と組み合わせて性能を確認します。
原子力・LNG 基地の耐震審査: 原子力発電所や LNG 貯蔵タンクの耐震審査では、サイト固有の地震動(基準地震動)から弾性応答スペクトルを多数生成し、規準スペクトル(米 NRC RG 1.60、日本電気協会 JEAG 4601)と比較します。設備の固有周期に対応する $S_a$ がスペクトルから読み取られ、応答解析に入力されます。福島事故以降、基準地震動が大幅に強化され(例:柏崎刈羽で $S_s = 1209$ gal)、設備の応答スペクトルレベルでの耐震裕度評価が標準化されました。
橋梁・土木構造物の耐震診断: 道路橋示方書(日本)、AASHTO(米)、Eurocode 8-2 など、橋梁規準でも応答スペクトル法が採用されています。橋脚の固有周期は 0.3〜2 s 程度で、本ツールの周期範囲がほぼカバーします。長周期側の高架橋やケーブル橋では地震動の長周期成分($T = 3$ s 以上)の影響が顕著で、活断層近傍では特殊な指向性パルスを別途考慮する設計が行われます。
よくある誤解と注意点
最も多い誤解は、「応答スペクトルから読んだ $S_a$ がそのまま実建物の最大加速度になる」と思い込む ことです。応答スペクトル法は SDOF(1 自由度系)の最大応答を与えるものであり、多層建物では各次モードを合成(SRSS や CQC)して総応答を求める必要があります。さらに、応答低減係数 $R$(延性応答による低減)、重要度係数 $I$(病院・学校など)、過剰強度係数 $\Omega_0$ など、規準ごとに多数の補正係数があり、最終的な設計地震力は $S_a$ の何分の 1 にも何倍にもなります。本ツールは概念理解のための入門ツールと位置づけ、実設計には必ず該当規準の正規式を用いてください。
次に多いのが、「$T$ を長くすれば応答は単調に下がる」という思い込み です。確かに $S_a$(応答加速度)は長周期で $1/T$ で減少しますが、応答変位 $S_d = (T/2\pi)^2 S_a \propto T$ は長周期で増加します。免震建物が応答加速度を 1/3 に減らせるのは画期的ですが、代わりに変位が 30〜60 cm に達することがあり、エキスパンションジョイントや配管・電線の追従設計が新たな課題になります。本ツールは $S_a$ のみを表示しますが、長周期領域では「変位の代償」を意識することが重要です。
最後に、「弾性応答スペクトルがあれば塑性応答も予測できる」と考える 誤解です。応答スペクトル法は本来弾性挙動を仮定しており、降伏後の塑性応答は応答低減係数 $R$ で間接的に近似しているにすぎません。短周期領域では「等エネルギー則」(変位は弾性応答の $\sqrt{2\mu - 1}$ 倍、$\mu$ は塑性率)、長周期領域では「等変位則」(弾性応答と同じ変位)など、塑性応答の挙動は周期帯で異なります。実構造物のひび割れ、ヒンジ形成、強度劣化を厳密に評価したい場合は、非線形時刻歴応答解析(NLTHA)や非線形プッシュオーバー解析が必要です。本ツールは応答スペクトル法の入り口として活用してください。