多段ロケット設計計算機 戻る
航空宇宙

多段ロケット設計・ペイロード比計算機
ΔV・ペイロード比・質量構成

1〜3段ロケットのΔVとペイロード比をリアルタイム計算。Isp・構造比・推進剤量を設定してサターンV・ファルコン9等の性能を再現。Canvas段間図付き。

ロケット設定
プリセット
段数
ペイロード質量
kg
重力損失 ΔVg
m/s
第1段
Isp₁
s
推進剤質量₁
kg
構造質量比 ε₁
第2段
Isp₂
s
推進剤質量₂
kg
構造質量比 ε₂
第3段
Isp₃
s
推進剤質量₃
kg
構造質量比 ε₃
計算結果
総ΔV [m/s]
ペイロード比 [%]
推進剤質量比
LEO投入判定
ロケット
Dv
理論・主要公式

ツィオルコフスキー方程式(各段):$\Delta V_i = I_{sp,i}\,g_0\,\ln\!\left(\dfrac{m_{0,i}}{m_{f,i}}\right)$

構造質量:$m_{s,i}= \varepsilon_i \cdot m_{p,i}$

有効ΔV = $\sum \Delta V_i$ − 重力損失 − 空気抵抗損失

ペイロード比 = $m_{payload}/ m_{total,0}$

多段ロケットの設計とは

🙋
ロケットって、なんで何段にも分かれているんですか?1本の大きなロケットのほうが効率が良さそうなのに。
🎓
大まかに言うと、燃え尽きた“重り”を捨てるためだよ。ツィオルコフスキーの方程式 $\Delta V = I_{sp}g_0 \ln(m_0/m_f)$ で、$m_f$ を小さくするほど速度増分 $\Delta V$ は大きくなるよね。1段式だと、燃え終わった巨大なタンクも最後まで運び続けなきゃいけない。でも多段式なら、その“重り”を宇宙空間で切り離せる。このシミュレーターで「段数」を1段と3段で切り替えて、同じペイロード質量で比べてみて。総ΔVが大きく異なるから!
🙋
え、そうなんですか!「構造質量比 ε」って何ですか?パラメータにε₁とかε₂ってありますけど。
🎓
これは設計の肝だね。$\varepsilon = m_s / m_p$ で、推進剤質量 $m_p$ に対する構造(タンクやエンジン)の質量 $m_s$ の割合だ。例えばε=0.1なら、推進剤100トンに対してタンクなどが10トン。この値が小さいほど、軽くて強いタンクを作れたということ。実務では液体ロケットで0.06〜0.12くらいだね。上のスライダーを動かしてεを0.15から0.08にしてみて。ペイロード比が大きく上がるのがわかるよ。
🙋
「Isp」もパラメータにありますね。これとエンジンの種類って関係あるんですか?
🎓
その通り!Isp(比推力)はエンジンの効率を表す数字で、値が高いほど少ない推進剤で大きな推力を出せる。例えば、プリセットの「サターンV」を確認してみて。1段目はケロシン燃料でIsp約300秒、2・3段目は液体水素でIsp約420秒と、上段ほど高性能エンジンを使っているんだ。シミュレーターで「ファルコン9」に切り替えると、全て同じエンジンでIspが統一されている、現代的な設計も体験できるよ。

よくある質問

実際のロケットでは空気抵抗や重力損失、推力方向の制御損失が発生します。本ツールは真空中の理想的なツィオルコフスキー方程式に基づくため、実際のΔVより5〜20%程度高めに出ます。大気圏内飛行を考慮する場合は、Ispを真空中より低めに設定するか、損失分を差し引いてください。
最も効果が大きいのは各段の比推力(Isp)の向上です。次に構造比(構造質量/推進剤質量)を小さくすること、特に上段の構造を軽量化することが重要です。また、段数を増やすとペイロード比は向上しますが、複雑さとコストが増大するトレードオフがあります。
第1段: Isp=263s(海面)、構造比0.08、推進剤質量約2,100t。第2段: Isp=421s(真空中)、構造比0.10、推進剤約450t。第3段: Isp=421s、構造比0.12、推進剤約110t。ペイロード約45t(月軌道投入)を目安に調整してください。Canvas段間図で質量配分を視覚確認できます。
理論上は段数が多いほどペイロード比が向上し、同じペイロードでより大きなΔVを得られます。ただし、各段の構造質量や分離機構の追加により、1段あたりの構造比が悪化するため、実用的には2〜3段が最適となる場合が多いです。本ツールで段数を変えて比較し、効率的な構成を見つけてください。

実世界での応用

打ち上げ機の初期設計:新型ロケットの構想段階で、目標軌道に必要なΔV(例えば低軌道投入で約9.5 km/s)を達成するための段数、各段のエンジン種別(Isp)、タンクサイズ(推進剤質量)、構造軽量化目標(ε)を迅速にトレードオフ評価します。本シミュレーターはその「マスバジェット」計算そのものです。

既存ロケットの性能分析:サターンVやファルコン9などの公開データをプリセットとして用意し、その設計思想(上段に高性能エンジンを用いるか、エンジン共通化を図るか)がペイロード比にどう影響するかを定量的に比較・理解するために用いられます。

軌道遷移ミッションの計画:地球脱出軌道や他の惑星への遷移など、より大きなΔVが必要なミッションにおいて、与えられた打ち上げ能力(ペイロード質量)でどのような軌道変更が可能か、逆に必要な機器(ペイロード)を運ぶにはロケットをどう強化する必要があるかの概算に使われます。

CAE/シミュレーションソフト連携前の検証:STK (Systems Tool Kit) や GMAT (General Mission Analysis Tool) などで詳細な軌道解析を行う前に、本ツールで必要なΔVの大まかな見積もりと質量配分を行い、ミッションの実現可能性を素早く判断する基礎データとして活用されます。

よくある誤解と注意点

「多段ロケットでは、単段より必ずペイロード比が劇的に向上する」と思いがちですが、実際は段数増加による構造質量の累積や段間機構の重量が無視できず、特に2段から3段への効果は著しく逓減します。また、「各段の比推力(Isp)が高いほど全体のΔVが単純に増える」と考えられがちですが、実際には高Ispエンジンはノズル重量や推進剤タンクの大型化を招き、構造比が悪化するトレードオフに注意が必要です。さらに、「ΔV計算で各段の質量比を単独で掛け合わせればよい」と誤解されがちですが、実際にはペイロードを含む全体の質量構成を逐次計算しなければならず、特に上段の初期質量には下段の構造や推進剤が含まれる点を見落としがちです。ツールではCanvas段間図で視覚化していますが、数値の変化が微小な領域でも設計全体に影響するため、感度分析を怠らないことが重要です。