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環境工学

合理式による雨水流出量シミュレーター

小さな流域に降った雨が、どれだけのピーク流量となって排水管に流れ込むのかを合理式で計算するツールです。流域面積・流出係数・降雨強度を変えるとピーク流出量が、管径・管路勾配を変えるとマニング式による排水管の流下能力がリアルタイムで分かり、溢水しない管径を探せます。

パラメータ設定
流域面積 A
ha
対象点へ雨水が集まる土地の広さ(1 ha = 10000 m²)
流出係数 C
降った雨のうち地表を流出する割合(舗装≈0.9/芝地≈0.2)
降雨強度 i
mm/hr
設計対象とする降雨の強さ(確率年で決める)
排水管の内径 D
mm
雨水を流す円形管の内径
管路勾配 S
%
管底の勾配。急なほど流速が上がる
計算結果
ピーク流出量 Q (m³/s)
流出量 (L/s)
管路の満流流速 (m/s)
管路の流下能力 (m³/s)
能力余裕率 (倍)
管径の判定
流域・排水模式図 — 降雨と管路流のアニメーション

傾いた流域に雨が降り、地表を流れ落ちて集水ますへ集まり、円形の排水管を流れます。管内の水位がピーク流出量を、管断面が流下能力を表し、能力を超えると溢水します。

ピーク流出量 vs 降雨強度
管路流下能力 vs 管路勾配
理論・主要公式

$$Q=\frac{C\cdot i\cdot A}{360},\qquad V=\frac{1}{n}R^{2/3}S^{1/2}$$

合理式によるピーク流出量 Q と、マニング式による満流流速 V。i を mm/hr、A をヘクタールで入力すると Q は m³/s で得られます。R は径深、S は管路勾配(無次元)、n は粗度係数。

$$A_p=\frac{\pi D^{2}}{4},\qquad R=\frac{D}{4},\qquad Q_{cap}=A_p\cdot V$$

満流の円形管では、管断面積 A_p は πD²/4、径深 R は管径 D の 1/4。流速 V を掛けると流下能力 Q_cap が得られます。D は管の内径。

$$\text{能力余裕率}=\frac{Q_{cap}}{Q}$$

流下能力がピーク流出量の何倍あるか。1.0 を下回ると管径不足で溢水のおそれがあります。

合理式とは

🙋
「合理式」って初めて聞きました。雨水の排水を設計するときに使う計算式なんですか?
🎓
そう。英語だと Rational Method といって、都市の雨水排水設計でいちばん古くて、いまでもいちばん広く使われている式なんだ。式そのものは拍子抜けするほどシンプルで、ピーク流出量 Q = 流出係数 C × 降雨強度 i × 流域面積 A。それだけ。駐車場や道路の排水管をどの太さにするか、という現場の判断はほとんどこの一行で決まっているといっていい。
🙋
そんなに単純でいいんですか? C・i・A はそれぞれ何を表しているんでしょう。
🎓
一つずつ意味がはっきりしているのがこの式のいいところだよ。A は流域面積、つまり対象とする地点へ雨水が集まってくる土地の広さ。i は降雨強度で、これは設計対象の雨——たとえば「10年に1回の大雨」のように確率年で決める。そして C が流出係数。降った雨のうち、しみ込んだり蒸発したりせず実際に地表を「流れ出る」割合なんだ。
🙋
流出係数って、場所によってかなり違うものなんですか?
🎓
これがものすごく違う。アスファルトの駐車場や屋根のような不透水面だと C はほぼ 0.9。雨はほとんど全部流れ出る。ところが芝生や林地だと 0.1〜0.3 しかない。土にしみ込んでしまうからね。だから土を舗装に変えていく都市化が進むと、同じ雨でも流出量が一気に増える。これが「都市化で洪水ピークが大きくなる」いちばんの理由なんだ。左の C スライダーを動かすと、Q がどれだけ跳ね上がるか実感できるよ。
🙋
こんなに簡単な式で、大きな川の洪水も計算できるんですか?
🎓
いや、そこが大事な注意点だ。合理式には「降雨が流域全体から同時に出口へ流れ出るほど長く続く」という前提が組み込まれている。これは敷地・駐車場・道路区間のような小さな流域なら成り立つけれど、大きな河川流域では成り立たない。だから合理式はあくまで小流域の管路設計用。目安としては流域 1〜2 km² くらいまでだね。
🙋
なるほど。出したピーク流出量は、そのあとどう使うんですか?
🎓
そのピーク流量を、水を流し去る排水管・暗渠・水路の寸法を決めるのに直接使う。このツールではそこにマニング式を組み合わせて、「選んだ管がそのピーク流量を本当にさばけるか」まで照査している。合理式で需要を出し、マニング式で供給を確かめる——これでループが閉じるんだ。能力余裕率が 1 を切ったら、管が細すぎて溢水するサインだよ。

よくある質問

1/360 は単位をそろえるための換算係数です。合理式を Q=C·i·A の形で使うとき、降雨強度 i を mm/hr、流域面積 A をヘクタール(ha)で入力し、ピーク流出量 Q を m³/s で得たい場合、1 mm/hr × 1 ha = 0.01 m × 10000 m² ÷ 3600 s = 1/360 m³/s となります。したがって Q[m³/s] = C·i[mm/hr]·A[ha] / 360 です。面積を km² で扱う一般式では係数が 1/3.6 になります。本ツールは ha・mm/hr 入力に統一しています。
流出係数 C は、降った雨のうち地表を流れ出る割合です。アスファルト舗装や屋根などの不透水面では 0.85〜0.95 と高く、芝地や森林では 0.10〜0.30 と低くなります。一つの流域に複数の土地利用が混在する場合は、各面積で重み付けした加重平均をとって流域全体の C を求めます。土地利用が舗装化されるほど C は大きくなり、これが都市化で洪水ピークが増える主因です。本ツールでは代表的なプリセットから選べます。
合理式は「降雨が流域全体から同時に出口へ流出するほど長く続く」ことを前提にした式です。この仮定は、敷地・駐車場・道路区間のような小流域では妥当ですが、大きな河川流域では成り立ちません。一般には流域面積がおおむね 1〜2 km²(100〜200 ha)程度までが目安で、それ以上は流出ハイドログラフを追える単位図法や貯留関数法などを用います。本ツールは小流域の排水管設計を対象としています。
本ツールは満流(管いっぱいに水が流れる状態)のマニング式で照査します。流速 V=(1/n)·R^(2/3)·S^(1/2)、流量 Q=A·V です。円形管が満流のとき径深 R は管径 D の 1/4、断面積 A は πD²/4 です。粗度係数 n はコンクリート管で 0.013 を用います。求めた流下能力をピーク流出量と比べ、その比が能力余裕率です。1.5 以上で十分、1.0〜1.5 で余裕少、1.0 未満は管径不足(溢水のおそれ)と判定します。

実世界での応用

宅地・施設の雨水排水計画:戸建て団地、商業施設、物流倉庫の敷地から出る雨水をどの管で受けるか——この基本判断に合理式が使われます。敷地を区域分けし、屋根・舗装・植栽ごとに流出係数を当てて加重平均の C を求め、確率年で選んだ降雨強度を掛けてピーク流出量を算定。本ツールのように管径と勾配を振りながら、流下能力がピーク流量を上回る組み合わせを探します。

道路排水・側溝・横断暗渠:道路の路面に降った雨は側溝に集まり、一定間隔の集水ますから排水管へ落とされます。山地を横断する道路では、上流側の小流域から来る流量を合理式で出し、横断カルバート(暗渠)の断面を決めます。流量が少なく見積もられると豪雨時に道路が冠水し、通行止めや路体洗掘の原因になります。

都市化・開発に伴う流出増の評価:農地や山林を宅地に造成すると、流出係数が 0.2 前後から 0.7〜0.9 へ跳ね上がり、同じ雨でもピーク流出量が数倍になります。開発前後で合理式を回し、増えた分を調整池や浸透施設で受け止められるか検討するのが、雨水流出抑制(オンサイト貯留)計画の出発点です。

既設排水路の能力照査・内水氾濫の診断:「大雨のたびに同じ交差点が冠水する」といった内水被害では、既設の管や水路の流下能力が現在の流域条件に対して不足していることが多くあります。流域の舗装化が進んだ後の C と現在の設計降雨で合理式を回し、本ツールのように既設管径のマニング式能力と比べれば、改修すべき区間や必要管径の当たりをつけられます。

よくある誤解と注意点

まず多い誤解が、「降雨強度は適当に大きめの値を入れておけばよい」というものです。合理式の i は本来、流域の到達時間(流域のいちばん遠い点から出口まで雨水が流れ着く時間)に対応する継続時間の降雨強度を、降雨強度式(IDF曲線)から読み取って決めます。短い継続時間ほど強度は大きく、長いほど小さい。到達時間を無視して一律の値を使うと、小流域では過小、大流域では過大な流量になります。本ツールでは i を直接入力しますが、実務では到達時間と確率年から i を求める手順が前提です。

次に、「マニング式の満流流量が最大流量だ」という思い込み。円形管は実は満流の少し手前——管径の 0.93〜0.94 倍くらいの水深——で流量が最大になり、満流ちょうどよりわずかに大きい流量を流せます。逆にいえば満流で計算した流下能力は安全側のやや控えめな値です。また粗度係数 n はコンクリート新管で 0.013 ですが、経年でぬめりや堆積物が付くと実質的に大きくなり、流下能力は下がります。新設時の n で「ぎりぎり足りる」設計は、数年後には不足するおそれがあります。

最後に、「ピーク流量さえ流せれば排水計画は完成」ではないという点。合理式が出すのはあくまでピーク「流量」であって、雨が降りやんだ後に流域から出続ける総「水量」ではありません。下流に調整池や貯留管を設ける場合は、ハイドログラフ(流量の時間変化)の面積、すなわち総流出量が必要で、合理式だけでは設計できません。また自由水面のある管路では、急勾配での跳水や、満管時の圧力流への遷移といった水理現象も起こります。合理式+満流マニング式は管径の一次選定には強力ですが、貯留や非定常流が絡む場面では、より詳細な不定流解析や貯留計算と併用してください。

使い方ガイド

  1. 流域面積(ha)・流出係数(0.3~0.9)・降雨強度(mm/h)を入力し、合理式Q=1/360×C×I×Aでピーク流出量を算出
  2. 管径(mm)と勾配(‰)を設定して、Manning公式により満流流速と流下能力を計算
  3. ピーク流出量と管路流下能力の比較から能力余裕率を判定し、管径の適否を確認

具体的な計算例

市街地団地開発で流域面積12ha、流出係数0.65(アスファルト舗装率60%)、10年確率降雨強度67mm/hの条件。ピーク流出量Q=1/360×0.65×67×12=1.44m³/s(1440L/s)。管径φ600mmで勾配1/200(5‰)の場合、粗度係数n=0.013のManningの式から満流流速v=1.96m/s、流下能力=1.76m³/s。能力余裕率は1.22倍で安全設計。

実務での注意点

  1. 流出係数は土地利用区分ごと(屋根0.9、舗装0.7、公園0.3)に加重平均し、将来開発による変化を考慮する必要がある
  2. 降雨強度は計画雨量の確率年数(5年~50年)に応じた局所的なIDF曲線を選定し、時間雨量ではなく時間最大強度を使用
  3. 管路勾配が1‰未満の低勾配では、泥砂堆積と流速低下のリスクが増加し、定期的な清掃計画が必須