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材料試験シミュレーター

硬さ換算シミュレーター — HB ↔ HRC ↔ HV ↔ HK ↔ HS

ブリネル HB を基準に、ビッカース HV・ロックウェル HRC・ヌープ HK・ショア HS・引張強度 σ_B を ASTM E140 / JIS Z 2244 の経験式でリアルタイム換算。鋼材を中心に、材料群と試験荷重ゲージによる補正も同時に可視化します。

パラメータ設定
ブリネル硬さ HB
HB
材料モード
試験荷重ゲージ
規格

材料モード: 0 = 鋼 (基準)、1 = ステンレス、2 = アルミ合金、3 = 銅合金。試験荷重ゲージ: 0 = 標準、1 = 低荷重 (微小硬さ寄り)。規格: 0 = ASTM E140、1 = JIS Z 2244。HRC は HB ≤ 250 程度で「—」と表示されます。

計算結果
Vickers HV
Rockwell C HRC
引張強度 σ_B (推定)
Knoop HK
HB に対する各スケール換算曲線

横軸=HB [100–600]、縦軸=各スケール値。赤=HV、青=HRC、緑=HK、紫=σ_B/10 [MPa]。黄縦線=現在 HB、丸=各曲線との交点。

理論・主要公式

硬さスケール間の換算は厳密な物理式ではなく、ASTM E140 や JIS の表に基づく経験的回帰です。ここでは鋼材を基準にした簡略式を用います。

ブリネル HB → ビッカース HV (簡略線形):

$$\mathrm{HV} \approx 1.05\,\mathrm{HB} + 5$$

HV → ロックウェル HRC (ASTM E140 多項式、HV 240 以上):

$$\mathrm{HRC} \approx -29.8 + 0.108\,\mathrm{HV} - 4.83\times10^{-5}\,\mathrm{HV}^2$$

HV → ヌープ HK、HV → ショア HS、HB → 引張強度 σ_B:

$$\mathrm{HK} \approx 0.985\,\mathrm{HV},\qquad \mathrm{HS} \approx 0.05\,\mathrm{HV} + 8,\qquad \sigma_B\,[\mathrm{MPa}] \approx 3.5\,\mathrm{HB}$$

関連ツールとして圧痕径からの HB 計算は brinell-hardness.html、ベルト摩擦は belt-friction.html、ペルトン水車は pelton-turbine.html、群れ運動は boids-flocking.html を参照してください。

硬さ換算シミュレーターとは

🙋
図面に「200 HB 以上」って書いてあるんですけど、現場のロックウェル計しか持ってないんです。これって変換できますか?
🎓
できるよ。ASTM E140 や JIS の換算表があるんだ。このツールで HB=200 にしてみて。HV≈215、σ_B≈700 MPa と出ているはず。ただし HRC は「—」になっているだろう? HB 200 程度は HRC スケールの下限以下で、実用的に読めない領域なんだ。
🙋
なぜ HRC が読めないんですか?同じ硬さなのに測れないって変じゃないですか。
🎓
ロックウェル C は焼入鋼向けの 150 kgf の本荷重で、硬い材料の沈み込み差を読む方式なんだ。HRC 20 程度(だいたい HB 235、HV 240)より柔らかい材料は、針の位置がスケール下端にきて再現性が悪くなる。だから HB 200 のような中硬度材は HRB(B スケール、鋼球+100 kgf)で評価するのが正解。HB を 400 まで上げてみて。HRC≈43 と出るはずだ。これは S45C 焼入焼戻し材の硬さ帯だね。
🙋
なるほど、上のスライダーを動かすと曲線も動きますね。赤い HV と青い HRC×10 と緑の HK と紫の σ_B/10 が同時に描かれている。
🎓
そう、それが「硬さスケール間の関係」を一目で見るためのグラフだ。HV は HB にほぼ比例(傾き 1.05)、HK は HV にほぼ重なるけど少しだけ低い(HK ≈ 0.985 HV)、HRC は非線形で HV 240 以上から立ち上がる。σ_B はだいたい HB の 3.5 倍——「200 HB → 700 MPa」と覚えておけば、鋼材の引張強度を非破壊で素早く見積もれる。
🙋
材料モードを「アルミ合金」にしたら σ_B が下がりました。これって正しい変換ですか?
🎓
材料群で σ_B/HB の係数が変わるんだ。鋼は 3.5、アルミ合金は 3.4、ステンレス(オーステナイト系)は加工硬化が強いので 3.7、銅合金は 4.0 が目安。これは経験則の補正で、厳密な物性ではない。だからツールの値は「±10% の概算」と理解して、合否判定が必要な場面では必ず一次試験を別途行うこと。換算値はあくまで一次推定だよ。

よくある質問

どちらも「単位投影面積あたりの平均接触圧力」に近い量を測っており、定義上スケールが似ているからです。ブリネルは球冠面積、ビッカースは四角錐の側面積で荷重を割りますが、押込み圧力 p_m ≈ 3·σ_y の関係(Tabor 則)が双方に成り立つため、HV ≈ 1.05·HB + 5 という近似線形関係が成り立ちます。高硬度(HB 500 超)では HV の方が大きく出る傾向があり、HV ≈ 1.1·HB 程度に逸脱します。
原則として鋼(炭素鋼・低合金鋼)でのみ高い精度を持ちます。ASTM E140 は鋼の表が主であり、非鉄金属(ニッケル合金・銅合金・アルミ合金等)は別途の補助表(E140 の付属表 B 〜 H)で扱われ、適用範囲も狭くなります。本ツールでは材料モードで簡易補正を入れていますが、非鉄金属の換算値は「桁オーダーの目安」として使い、合否判定には必ずその材料の試験方法による直接測定を行ってください。
ショア硬さは静的な押込みではなく、ダイヤモンドハンマー(C型)または鋼球(D型)を試料に落下させ、その反発高さから硬さを算出する動的試験です。反発高さは試料の弾性回復に依存するため、塑性指標である HB/HV/HRC とは物理的背景が異なります。経験的に HS ≈ 0.05·HV + 8 程度の換算が成り立ちますが、ばらつきが大きく ±15% 程度の誤差を許容する用途(大型ロールの現場確認等)に限るのが安全です。
ASTM International の公式サイトから ASTM E140「Standard Hardness Conversion Tables for Metals」を購入できます。鋼用の Table 1 は最も広く参照され、Brinell HB(10 mm 球、3000 kgf)・Vickers HV・Rockwell HRC/HRB/HRA/HR15N など複数スケールを 1 つの行で対応付けます。日本国内では JIS B 7724(ビッカース硬さ試験機の検証)・JIS G 0202(鉄鋼用語)に同等の換算表が掲載されており、公的試験所はこれらに準拠して値を表記します。

実世界での応用

材料規格と図面指示の橋渡し:金属材料規格は HBW で記載されることが多い一方、現場の硬さ計はロックウェル(HRC/HRB)やビッカース携帯式が主流です。「S45C 焼入焼戻し材 HBW 217–277」と図面に書かれていても、現場で HRC を測って 22–29 程度ならほぼ合格、と即座に判断するために換算が必要になります。

非破壊での引張強度推定:機械加工品・鋳鋼品・溶接部などで σ_B を直接測れない場合、HB から σ_B ≈ 3.5·HB [MPa] で素早く推定します。HB 200 なら σ_B≈700 MPa、HB 300 なら σ_B≈1050 MPa。製品強度の一次見積もりや、溶接熱影響部(HAZ)の評価で広く使われます。

品質管理データのトレーサビリティ:製造工程の途中で測定方法が変わることがあります(焼鈍前は HB で受入、焼入後は HRC で出荷確認など)。換算表を用いて「HB 換算値」に統一して履歴管理することで、工程内の硬さ変化を一貫して追跡できます。

輸入材料・海外仕様との照合:米国規格は HRC・HRB が主、欧州は HV、日本は HB・HV、中国は HB・HRC と地域差があります。輸入材の材料証明書に書かれた値を社内基準のスケールに換算する場面で、ASTM E140 / JIS Z 2244 が共通言語になります。

よくある誤解と注意点

最も重大な誤解は、換算値を「測定値」として扱ってしまうことです。HB から換算した HRC は、実際に HRC 試験で測った値とは別物であり、±2 単位程度の誤差を含みます。受入検査や規格適合判定が必要な場面では、必ずその材料の試験方法で直接測定すること。「HB 250 を換算したら HRC 25 だから合格」は法的に通用しません。

次に多いのが、適用範囲外で換算を行ってしまうことです。HRC は HV 240 以上(HB 235 以上)で有効であり、それより柔らかい材料は HRB スケール(鋼球+100 kgf)を使うのが正解。本ツールでは HB ≤ 250 の領域で HRC を「—」と表示することで、この誤用を防いでいます。同様に HRC は HV 940(HRC 68)が上限で、それより硬い材料は HV または HRA(120 kgf+ダイヤ円錐)で評価します。

最後に、σ_B ≈ 3.5·HB を非鉄金属にも適用してしまうことに注意が必要です。アルミ合金は係数が 3.4 程度ですが、純アルミの冷間加工材では 2.8 まで下がることもあり、銅合金は 4.0 近くまで上がります。オーステナイト系ステンレスは加工硬化が強く、表面硬さは高くても引張強度はそれほど上がらないケースがあり、3.6〜3.8 のばらつきがあります。材料群を見極めずに「3.5 倍」だけで設計強度を決めるのは危険で、必ず材料別の補正を行うか、引張試験で実測してください。関連ツールとして圧痕径から HB を直接計算する brinell-hardness.html、エネルギー伝達のペルトン水車 pelton-turbine.html、群れ運動シミュレーション boids-flocking.html、ベルト摩擦の belt-friction.html も合わせて参照してください。