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応力解析シミュレーター

3D 主応力 シミュレーター — 応力テンソルの固有値

3 次元応力テンソル (σx, σy, σz, τxy) を直接スライダーで指定し、3 つの主応力 σ1≥σ2≥σ3、最大せん断応力 τ_max、平均応力 σ_m を固有値解析でリアルタイム算出する応力解析シミュレーターです。3 つのモール円の重ね描きと主応力バーで応力状態を直感的に可視化でき、降伏・破壊評価の出発点となる主応力解析を素早く確認できます。

パラメータ設定
垂直応力 σx
MPa
垂直応力 σy
MPa
垂直応力 σz
MPa
せん断応力 τxy
MPa
中心 = (σx+σy)/2、半径 = √(((σx−σy)/2)² + τxy²)
λ_{1,2} = 中心 ± 半径、λ_3 = σz、降順ソートで σ1≥σ2≥σ3
τ_max = (σ1−σ3)/2、σ_m = (σ1+σ2+σ3)/3

既定値 σx=100, σy=50, σz=20, τxy=30 MPa で σ1=114.0 MPa, σ2=36.0 MPa, σ3=20.0 MPa, τ_max=47.0 MPa, σ_m=56.7 MPa となります。τxy を増やすと σ1-σ3 円が広がり最大せん断応力も増加します。

計算結果
主応力 σ1 (max)
主応力 σ2 (mid)
主応力 σ3 (min)
最大せん断応力 τ_max

3 つのモール円(σ-τ 平面)

横軸 = 垂直応力 σ、縦軸 = せん断応力 τ。3 主応力ペア (σ1,σ2)、(σ2,σ3)、(σ1,σ3) から得られる 3 円を重ね描き。最大円の半径が τ_max を表し、3 主応力は τ=0 の縦線でマークされます。任意の応力点は 3 円で囲まれる領域に必ず収まります。

主応力バー(降順 σ1, σ2, σ3)

3 本のバーが降順ソート後の σ1, σ2, σ3 の値を示します。正のバーは引張、負のバーは圧縮。バー先端に数値ラベルが表示され、降伏応力との比較や引張・圧縮の優位性を一目で把握できます。

理論・主要公式

応力テンソル(簡略形、τ_yz = τ_xz = 0):

$$\sigma = \begin{bmatrix} \sigma_x & \tau_{xy} & 0 \\ \tau_{xy} & \sigma_y & 0 \\ 0 & 0 & \sigma_z \end{bmatrix}$$

2×2 部分の固有値(σz は独立した主応力):

$$\lambda_{1,2} = \tfrac{\sigma_x+\sigma_y}{2} \pm \sqrt{\left(\tfrac{\sigma_x-\sigma_y}{2}\right)^2 + \tau_{xy}^2}$$

降順ソート $\sigma_1 \geq \sigma_2 \geq \sigma_3$ から最大せん断応力と平均応力:

$$\tau_{\max} = \frac{\sigma_1 - \sigma_3}{2}, \qquad \sigma_m = \frac{\sigma_1+\sigma_2+\sigma_3}{3}$$

主応力は応力テンソルの固有値、主方向は固有ベクトルです。τ_max はトレスカ降伏条件の基準量、σ_m は静水圧成分で偏差応力 $s_{ij}=\sigma_{ij}-\sigma_m \delta_{ij}$ を定義します。3 つのモール円のうち最大円の半径が τ_max に等しくなります。

3D 主応力 シミュレーターとは

🙋
既定値だと σ1=114.0、σ2=36.0、σ3=20.0 MPa って出てます。σz=20 がそのまま σ3 に来てるのはなぜですか?
🎓
良い質問だ。今回の応力テンソルは τyz と τxz をゼロと仮定した簡略形だから、z 軸方向にせん断成分がない。だから σz=20 はそのまま 1 つの主応力(固有値)になる。残り 2 つの固有値は xy 面内の 2×2 ブロックから決まって、中心 (σx+σy)/2=75、半径 √((25)²+30²)=√1525≈39.05 で、75±39.05 → 114.05 と 35.95 になる。それを降順に並べて σ1=114, σ2=36, σ3=20。たまたま σz が中間ではなく最小に来た形だね。τxy を大きくしていくと σ1-σ2 円が広がって、いずれ σ2 が σz より小さくなり、σz が σ2 に昇格する瞬間が見える。
🙋
τ_max=47 MPa とありますが、これがトレスカ降伏で使うやつですか?
🎓
そう、最大せん断応力理論(トレスカ)はまさに τ_max = (σ1−σ3)/2 を基準にする。今回は (114−20)/2=47 MPa。降伏応力 σy を持つ材料なら τ_max=σy/2 で降伏判定するから、例えば SS400 鋼(σy≈245 MPa)なら σy/2≈122 MPa まで余裕がある。グラフを見ると、最大のモール円(赤、σ1-σ3 円)の半径がちょうど 47 になっているのが分かる。これがトレスカの 3D 版の本質で、教科書の 2D モール円だけ見ていると「3 円の重ね描き」の意味は伝わらないんだ。
🙋
モール円が 3 つ重なってるの初めて見ました。任意方向の応力点はどこに描かれるんですか?
🎓
3D の任意方向の応力点 (σn, τn) は、3 つのモール円で囲まれる「三日月形の領域」の中に必ず収まる、というのが Otto Mohr の偉大な定理だ(1882 年)。具体的には σ1-σ3 大円の内側、かつ σ1-σ2 と σ2-σ3 小円の外側、という領域。だから最大せん断応力は必ず σ1-σ3 大円の最上部 τ=(σ1−σ3)/2 で達成され、その方向は σ1 と σ3 の主軸を 45° に平分する面。CAE で「最大せん断応力コンター」を出すと、この τ_max の分布がそのまま見える。中間主応力 σ2 を変えると三日月形の縦幅が変わるから、せん断卓越の方向にも影響する。
🙋
τxy をスイープすると σ1, σ2 が大きく変化するけど σ3=σz=20 のまま動かない。これも τyz=τxz=0 のせい?
🎓
その通り。スライダーは τxy だけだから、xy 面内のせん断しか変えていない。z 軸とのカップリングがゼロなので、固有値分解で z 方向は常に独立。τxy を大きくして σ1-σ2 円が σz=20 を完全に飲み込むと、σz が中間(σ2)に昇格し、xy 面内の小さい方の固有値が σ3 になる。具体的には τxy>±√((σz−σx)(σz−σy)) = ±√((-80)(-30))≈±48.99 の辺りで切り替わる。実機解析ではこういう「主応力の順位入れ替わり」がコンター図の不連続として現れることがあって、ポスト処理で警告される時があるんだ。本ツールで降順ソート挙動を体感しておくと、現場でその警告に動じなくなる。
🙋
平均応力 σ_m=56.7 MPa って何に使うんですか?
🎓
σ_m = (σ1+σ2+σ3)/3 は静水圧成分で、応力テンソルの I1/3 に等しい。延性金属のミーゼス降伏には影響しないが、ボイド成長や延性破壊(Gurson モデル等)では応力三軸度 η = σ_m / σ_VM が支配パラメータになる。今回 σ_m=56.7、σ_VM を計算すると約 85.8 MPa(自前で確認してみて)、η≈0.66 で「中程度の三軸度」。η>0.33 ぐらいから延性破壊エネルギーが急減し、η>1 で脆性的な破断モードに移行する。土・コンクリート・ポリマーでは σ_m そのものが降伏基準(Drucker-Prager 等)に直接組み込まれる。本ツールで σx, σy, σz を均等に増減すれば、σ_m だけが動いて偏差応力テンソルは不変、という静水圧負荷の挙動が確かめられる。

物理モデルと主要な数式

本ツールは応力テンソル σ_ij の固有値問題を解いて 3 つの主応力(principal stress)を求めます。主応力とは、その方向(主軸、principal axis)に座標系を回転させたときにせん断応力成分がゼロになる、特別な垂直応力です。応力テンソルが対称行列であることから、3 つの主応力は必ず実数として得られ、対応する主軸は互いに直交します。

$$\sigma = \begin{bmatrix} \sigma_x & \tau_{xy} & 0 \\ \tau_{xy} & \sigma_y & 0 \\ 0 & 0 & \sigma_z \end{bmatrix}$$

本ツールでは τ_yz = τ_xz = 0 と仮定した簡略形を用いており、z 軸とのせん断カップリングがありません。この場合、固有値分解は xy 面内の 2×2 部分と z 方向の 1×1 部分に完全分離され、σz は常にそのまま 1 つの主応力となります。残り 2 つは xy 面内のモール円中心 c=(σx+σy)/2 と半径 r=√((σx−σy)/2)²+τxy² から $\lambda_{1,2} = c \pm r$ で求まります。

$$\tau_{\max} = \frac{\sigma_1 - \sigma_3}{2}$$

降順ソート $\sigma_1 \geq \sigma_2 \geq \sigma_3$ の後、最大せん断応力 τ_max は最大と最小の主応力の差の半分です。これは 3 つのモール円(主応力ペア 3 組から作る 3 円)のうち最大円(σ1-σ3 円)の半径に等しく、Mohr の三円定理により任意方向のせん断応力はこの値を超えることがありません。τ_max はトレスカ降伏条件 τ_max = σy/2 と直接結び付きます。

$$\sigma_m = \frac{\sigma_1+\sigma_2+\sigma_3}{3} = \frac{I_1}{3}$$

平均応力(静水圧応力)σ_m は応力テンソルの第 1 不変量 I1 の 1/3 で、応力テンソルから差し引くと偏差応力テンソル $s_{ij} = \sigma_{ij} - \sigma_m \delta_{ij}$ が得られます。延性金属の塑性流動は偏差応力にのみ依存し、σ_m は弾性体積変化(圧縮率 K 倍)のみを引き起こします。応力三軸度 η = σ_m / σ_VM は延性破壊・疲労寿命の重要なパラメータです。

実世界での応用

CAE ポスト処理の標準出力:Abaqus、ANSYS、NASTRAN、Marc などの汎用 CAE では、線形弾性解析・塑性解析のアウトプットとして σ1, σ2, σ3 の主応力コンター、最大せん断応力 τ_max コンター、Mises 相当応力コンターが標準的に出力されます。本ツールで体感できる「降順ソート」と「3 主応力の相互関係」は、これら CAE 結果を読み解くための基礎リテラシーです。特に最大主応力 σ1 は脆性材料(鋳鉄、コンクリート、セラミックス)の引張破壊判定に直接使われ、σ3(最小主応力 = 最大圧縮)は地盤工学・岩盤力学で重要視されます。

疲労解析の基本量:金属疲労の評価では、応力テンソル全体を扱う代わりに主応力ベース(最大主応力法、Sines、Findley、Crossland 等)の評価式が広く使われます。例えば最大主応力法では σ1_max を疲労限度 σ_w と比較し、Findley 法では各主軸ペアの最大せん断応力振幅と垂直応力の組み合わせで評価します。多軸疲労(曲げ+ねじり、内圧+軸力)の局所応力評価では、本ツールのような主応力解析が時々刻々と必要になります。

地盤工学・岩盤力学:地盤の応力状態は主応力で表現するのが標準で、特に σ3(最小主応力 = 拘束圧)と σ1(最大主応力 = 鉛直または偏差応力)の比 σ1/σ3 で破壊判定(Mohr-Coulomb 基準、Hoek-Brown 基準)を行います。原位置応力測定(油圧フラクチャリング法、応力解放法)の出力もすべて主応力テンソルです。トンネル掘削や斜面安定解析では、ポスト処理で「主応力ベクトル図」を可視化するのが定番です。

応力三軸度と延性破壊:金属プレス成形・鍛造のシミュレーションでは、応力三軸度 η = σ_m / σ_VM が破断予測の主要パラメータです。LS-DYNA の GISSMO、Abaqus の Ductile Damage モデルなど、ほぼすべての延性破壊モデルが η を入力とします。本ツールの平均応力 σ_m と主応力から η を簡易計算でき、η<0(圧縮優位、絞り加工で延性向上)、η≈0.33(単軸引張)、η>1(脆性的破断)の感覚を養えます。

よくある誤解と注意点

最も多い誤解は、「主応力 = ミーゼス相当応力」というものです。主応力 σ1, σ2, σ3 は応力テンソルの固有値で 3 つの値、ミーゼスは 3 主応力の差の二乗平均から作る 1 つのスカラーであり、別物です。σ1 だけを降伏応力 σy と比較するのは脆性材料の最大主応力理論、ミーゼスと比較するのが延性材料の J2 流則。両者をきちんと区別しないと、設計の安全側・危険側評価が逆転することがあります。

次に、「2D(平面応力)のモール円が 1 つだから 3D も 1 つ」という誤解です。2D 平面応力では z 方向の応力をゼロと仮定するため確かに円は 1 つに見えますが、実際は σz=0 が 1 つの主応力として隠れており、見えない第 2、第 3 のモール円が存在します。最大せん断応力 τ_max は (σ1−σ3)/2 で計算する必要があり、平面内のモール円半径 r=(σ1−σ2)/2 とは違うことに注意。これを混同すると、薄板の表面で 2D 解析した結果が「降伏していない」と出ても、実は τ_max を見ていなかっただけ、というミスに繋がります。

最後に、「降順ソートは数値計算上の些細な処理」という油断です。実機の CAE では時刻歴解析や荷重ステップごとに σ1/σ2/σ3 の順位が入れ替わることがあり、特に等方圧縮に近い状態では数値ノイズで頻繁にスワップします。コンター図でこの「ジッタ」が見えた場合、計算が壊れているのではなく主応力の順位が時々刻々と入れ替わっているだけ、というケースが多い。本ツールで σz≈σ2 の閾値を τxy で動かす実験をすると、その挙動が体感できます。

よくある質問

主応力(principal stress)とは、応力テンソル σ_ij を対角化したときの固有値で、せん断応力がゼロになる特別な座標軸(主軸)上の垂直応力です。3 次元では σ1≥σ2≥σ3 の 3 つが存在し、降伏判定・破壊解析・疲労評価のすべての出発点となります。本ツールの既定値 σx=100, σy=50, σz=20, τxy=30 MPa では σ1=114.0 MPa, σ2=36.0 MPa, σ3=20.0 MPa が得られます。
最大せん断応力は τ_max = (σ1−σ3)/2 で求まり、3 主応力のうち最大と最小の差の半分に等しくなります。これは 3 つのモール円のうち最も大きい円(σ1-σ3 円)の半径として図示できます。トレスカ降伏条件は τ_max=σy/2 で表され、本ツールの既定値では τ_max=(114−20)/2=47.0 MPa となります。せん断破壊・延性金属の塑性開始の判定指標として実務で広く使われます。
2D(平面応力)では主応力が 2 つなのでモール円は 1 つですが、3D 応力状態では主応力ペア (σ1,σ2)、(σ2,σ3)、(σ1,σ3) の 3 組から 3 つの円が描けます。任意の方向の応力点はこれら 3 つの円で囲まれた三日月領域に必ず収まります(Mohr's circle in 3D)。最大円の半径 = (σ1−σ3)/2 が最大せん断応力で、内側の 2 円は中間主応力に関する情報を持ちます。
平均応力 σ_m = (σ1+σ2+σ3)/3 は応力テンソルの第 1 不変量 I1/3 に等しく、体積変化を引き起こす静水圧成分です。延性金属のミーゼス降伏は静水圧に依存しない(偏差応力のみで決まる)一方、土・コンクリート・脆性材料の破壊は σ_m に強く依存します。本ツール既定値では σ_m=(114+36+20)/3=56.7 MPa で、これを差し引いた偏差応力テンソル s_ij = σ_ij − σ_m δ_ij が塑性流動を支配します。