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寸法・公差解析ツール

公差スタックアップ解析(RSS法・ワーストケース・モンテカルロ)

部品の寸法公差を積み上げた組立ギャップを最悪値法・RSS法・モンテカルロシミュレーションで比較。トルネード図で寄与度を可視化します。

部品リスト
部品名 公称
[mm]
+公差 −公差 感度 a
シグマ水準
MCサンプル数
最小クリアランス目標 [mm]
計算結果
MC σ
mm
P(Y < 目標)
不合格率 [%]
Cp / Cpk
工程能力指数
MC 最小値
mm
公称ギャップ Y
mm
WC 公差 ±
mm
RSS 公差 ±
mm
MC 平均
mm
モンテカルロ — 組立ギャップ分布
トルネード図 — RSS分散への寄与度
理論・主要公式

$$T_{total} = \sum_{i=1}^n T_i \quad \text{(最悪ケース)}$$

最悪ケース累積公差:全部品公差の代数和(100%保証)

$$T_{RSS} = \sqrt{\sum_{i=1}^n T_i^2}$$

RSS(二乗和平方根)累積公差:統計的手法(正規分布仮定)

$$T_{6\sigma} = \sqrt{\sum_{i=1}^n \left(\frac{T_i}{3}\right)^2} \cdot 3$$

6シグマ対応の統計公差:各公差を $\pm3\sigma$ と仮定

公差スタックアップ解析とは

🙋
公差スタックアップって何ですか?部品を組み立てた時の「隙間」や「干渉」を計算するって聞いたけど。
🎓
その通り!例えば、エンジンのピストンとシリンダーの隙間を考えてみよう。ピストンの直径、シリンダーの内径、それぞれに製造上のバラつき(公差)があるよね。これらを全部積み上げて、最悪の場合に干渉しないか、逆に隙間が広すぎないかを計算するのが公差スタックアップ解析だ。このシミュレーターでは、上の「シグマ水準」スライダーを動かすと、計算結果がどう変わるかすぐに確認できるよ。
🙋
え、最悪の場合だけ計算すればいいのではないの?なんで「RSS法」とか「モンテカルロ」っていう別の方法があるんですか?
🎓
いいところに気が付いたね。最悪値法は全部品が同時に最大サイズ、最小サイズになるという「最悪の組み合わせ」を想定するから、絶対に安全だけど、すごく過剰な設計になるんだ。実際の量産では、全部品が同時に極端な値になる確率は非常に低い。だから統計を使って現実的なバラつきを予測するのがRSS法やモンテカルロ法なんだ。試しに「MCサンプル数」を増やしてみて、モンテカルロの結果がどう安定するか確認してみて。
🙋
なるほど!じゃあ、横のトルネード図で「寄与度」が大きい部品の公差を厳しくすれば、全体のバラつきを効率的に減らせるということですか?
🎓
その通り!トルネード図は、どの部品の公差が最終的な隙間のバラつきに大きく効いているかを一目で教えてくれる設計の羅針盤なんだ。寄与度が大きい部品(バーが長い部品)の公差を少し厳しくするだけで、全体のバラつきを大きく改善できる。逆に、寄与度が小さい部品は公差を緩めてコストダウンできる。この「最小クリアランス目標」を変えながら、どの部品の公差をどう変更すれば目標を達成できるか、シミュレーターで遊びながら体感してみよう。

よくある質問

最悪値法は全部品が同時に公差限界に達する前提で最も安全側の見積もりです。RSS法は統計的に現実的なバラつきを想定し、大量生産品の設計に適します。モンテカルロ法は非線形な影響や分布形状を反映できるため、複雑な組立や不良率の詳細評価に推奨します。
トルネード図は各寸法公差が組立ギャップに与える影響度(寄与度)を棒グラフで可視化します。棒が長いほど影響が大きく、設計変更の優先順位を決める指標になります。例えば、最も長い棒の部品の公差を厳しくすれば、組立ばらつきを効率的に低減できます。
はい、あります。例えばてこの原理や角度公差が関わる場合、感度係数は幾何学的な関係から1より大きくなったり、小数になったりします。本ツールではユーザーが任意の感度係数を入力可能で、複雑な機構の解析にも対応できます。
一般的には10,000回以上を推奨します。試行回数が少ないと結果のばらつきが大きく、信頼性が低下します。10,000回で十分な精度が得られますが、より厳しい不良率評価(例:1ppm)が必要な場合は100,000回以上に増やしてください。計算時間と精度のバランスを考慮しましょう。

実世界での応用

自動車エンジン設計:ピストンとシリンダーのクリアランスは、燃焼効率と摩擦・摩耗に直結する極めて重要なパラメータです。RSS法やモンテカルロ法を用いて、数百~数千個の部品公差を積み上げ、量産時のクリアランスバラつきが許容範囲内に収まることを統計的に保証します。

スマートフォンなどの精密組立:筐体、ディスプレイ、基板、カメラモジュールなど多数の部品が積層される製品では、全体の厚みや段差のバラつきを管理する必要があります。トルネード図を活用し、寄与度の大きい部品の公差を重点的に管理することで、高い品質を効率的に実現します。

航空宇宙機器の開発:信頼性が最優先される分野では、最悪値法が依然として使用される場面があります。特に、単発生産や故障が許されない安全関連部品において、全ての可能性を考慮した過保守な設計が選択されます。

機械治具・金型設計:複数のブロックやプレートを組み合わせて構成される治具では、累積公差によって位置決め精度が決まります。モンテカルロ法を用いて、非対称公差(例: +0.1/-0.0)を持つ部品の影響を評価し、治具の出来栄えを予測します。

よくある誤解と注意点

まず、「RSS法は常にワーストケースより良い(狭い公差範囲を出す)方法」と思い込んでいないか? 実は、部品数が極端に少ない場合(例えば2〜3部品)、RSS法の結果がワーストケースとほぼ同じか、逆に安全率を見誤ることもあるんだ。例えば、たった2つの部品の公差が±0.1mmなら、ワーストケースは±0.2mm、RSS法は約±0.14mm。ここでRSS法を盲信して設計すると、想定より不良率が高くなるリスクがある。部品数が増えるほど統計的な平均化が効くから、RSS法の真価が発揮されることを覚えておこう。

次に、「感度係数a_iは全部+1か-1でしょ?」という思い込み。単純な直列スタックではそうだが、幾何学的な関係や角度が絡むと話は別だ。例えば、リンク機構の遊びを計算する時、部品の長さ公差が角度のサインやコサインを通じて効いてくる。この時、感度係数は1とは全く異なる値になる。ツールで「感度係数」をいじれるなら、ぜひ1以外の値(0.5や-0.707など)を入れて、結果がどう変わるか確認してみてほしい。

最後に、モンテカルロ法の「分布設定」の罠。ツールでは簡単のために正規分布を仮定することが多いけど、実務ではそうじゃないことがたくさんある。例えば、切削加工では工具摩耗で寸法が片側に偏ったり、選別組み立てをした後の部品は分布が切り詰められたりする。こうした現実の分布を無視してデフォルトの正規分布で計算すると、実際の不良率を大きく見誤る。モンテカルロ法を使う最大の強みはこの「分布の自由度」にあるから、可能なら実際の測定データから分布を推定するクセをつけよう。