残念ながらそう単純じゃない。たしかにバンクを深くすると旋回半径 R は小さく、旋回率も上がる——下の「荷重倍数 vs バンク角」のグラフを見てごらん。バンク角が90°に近づくと n はほぼ垂直に立ち上がるだろう? つまり小回りを求めるほど機体には強烈なGがかかる。構造制限荷重倍数を超えれば、機体が壊れる。これが第一の限界だよ。
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Gが上がると失速速度も上がるって聞いたことがあります。それも旋回と関係あるんですか?
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大ありだよ。旋回中は揚力を n 倍に増やさないといけない。揚力は速度の2乗に比例するから、必要な速度は √n 倍になる。だから旋回時の失速速度は V_s·√n。これが第二の限界だ。水平飛行では失速速度より十分速くても、ゆっくり飛びながら急にバンクすると、旋回失速速度のほうが追いついて失速する——これが有名で危険な「加速失速」。旋回は「遅すぎると失速」「急すぎると構造破壊」の2つの限界に挟まれた、狭い箱の中の操作なんだ。
まず多い誤解が、「荷重倍数は速度や機体重量で決まる」というものです。定常水平旋回では荷重倍数 n は n = 1/cosφ で、バンク角 φ だけで決まります。重い機体でも軽い機体でも、速い機体でも遅い機体でも、60°バンクなら必ず 2G です。速度や重量が効くのは旋回半径や旋回率のほうで、荷重倍数には一切関係しません。本ツールでバンク角を固定したまま速度スライダーを動かすと、半径は変わっても荷重倍数 n が動かないことが確認できます。これは多くの人が直感に反すると感じるポイントです。
次に、「旋回半径と旋回率は同じことの裏返しだ」という思い込みです。たしかにバンク角を一定にすれば両者は連動しますが、速度を変えると挙動が分かれます。旋回半径 R は速度の2乗に比例して大きくなる一方、旋回率 ψ̇ = g·tanφ/V は速度に反比例して小さくなります。つまり「速く飛ぶと、半径は大きいのに1周にかかる時間も長くなる」。最小旋回半径を出す速度と、最大旋回率を出す速度は別物で、格闘戦ではこの2つの最適速度を使い分けます。半径と時間を混同しないことが重要です。