インベストメント鋳造シミュレーション

カテゴリ: 製造プロセスシミュレーション | 2026-10-02 改稿
CAE visualization for investment casting theory - technical simulation diagram
インベストメント鋳造シミュレーション

理論:凝固の順序を設計する

概要

🙋

インベストメント鋳造は、普通の砂型鋳造と解析で何が違うのですか?

🎓

型が違う。インベストメント鋳造では、ろう(ワックス)で作った模型にセラミックのスラリーと砂を何層も塗り重ねて殻(シェル)を作り、ろうを溶かし出してから焼成する。殻は厚さ数mm〜10 mm程度と薄く、注湯の直前まで数百〜千度以上に予熱されることが多い。そのため溶湯は冷えにくく、薄い肉厚まで湯が回る一方、凝固はゆっくり進み、どこが最後に固まるかが形状でほぼ決まる。解析では、殻の熱物性と厚さ、予熱温度、そして炉から出した殻の外面からの放射を正しく与えることが、砂型以上に結果を左右する。タービン翼のような単結晶や一方向凝固品では、炉から殻を引き抜く速度まで含めて温度勾配を制御する。

Chvorinovの法則と押湯

$$ t_s = B\left(\frac{V}{A}\right)^2,\qquad M = \frac{V}{A},\qquad M_{\text{riser}} \ge 1.2\,M_{\text{casting}} $$

t_s は凝固時間、V は体積、A は冷却に寄与する表面積、M はモジュラス、B は型と合金で決まる定数。押湯(溶湯を補給する部分)は製品より遅く固まる必要があり、モジュラスを1.2倍以上にするのが目安。

収縮代

$$ L_{\text{die}} = \frac{L_{\text{part}}}{(1-s_w)(1-s_m)} $$

s_w はろうの線収縮率、s_m は合金の線収縮率。ろう型の金型は両方を見込んで大きく作る。

Coffee Break よもやま話

5000年前からの技術

ろうで形を作り、粘土で包んで焼き、ろうを溶かし出して金属を流す方法は、紀元前3000年ごろのメソポタミアやインダス文明の青銅器にすでに見られる。20世紀に入ると歯科用の金冠に使われ、第二次世界大戦ではジェットエンジンのタービン翼を量産する方法として一気に工業化した。今日の単結晶タービン翼は、この古い方法に凝固制御とシミュレーションを組み合わせて作られている。

計算例

例1:薄肉部とブロックの凝固時間、押湯の大きさ

部位モジュラス凝固時間(薄肉部比)必要な押湯(H = 1.5D)
厚さ3 mmの薄肉部1.50 mm1—
20×20×30 mmのブロック(全面冷却)3.75 mm6.25直径24 mm以上
同上、20×30 mmの1面が薄肉部とつながる4.62 mm9.5直径29.5 mm以上

つながった面からは熱が逃げないので、ブロックのモジュラスは3.75 mmから4.62 mmに上がり、凝固時間はさらに1.5倍になる。厚い部分が薄い部分を挟んで孤立すると、補給が途切れて引け巣ができる。

🙋

押湯の大きさは計算で決まりました。それでもシミュレーションをする意味はありますか?

🎓

ある。モジュラスの計算は「各部位が独立に冷える」という前提に立っているが、実際の製品では薄肉部とブロックが熱をやり取りし、殻の厚さも場所によって違い、隣り合う製品どうしの放射で冷えにくい面もできる。シミュレーションでは、固相率の分布を時間ごとに追い、液相のまま周囲を固相に囲まれた孤立領域(ホットスポット)ができていないかを確かめる。さらにNiyama基準のような温度勾配と冷却速度による指標で、微細な引け巣の出やすさを評価する。手計算は押湯の初期寸法と位置を決める道具、シミュレーションはその案が本当に補給できるかを確かめる道具、と使い分けるのがよい。

例2:ろう型の金型寸法

製品寸法ろう収縮合金収縮金型寸法
100 mm1.0%2.0%103.07 mm

収縮率は仮定の値。2つの収縮を単純に足すと103.00 mmになり、0.07 mmの差が出る。精密鋳造の公差は±0.1 mm台のこともあるので、掛け算で扱う。実際の収縮は、殻や中子に拘束される方向で小さくなるため、方向ごとに補正値を持つのが普通だ。

実務での進め方

  1. 製品とツリー(湯道・押湯)の形状を作り、モジュラスで押湯の初期案を決める。
  2. 殻の厚さ・熱物性・予熱温度、注湯温度と注湯時間を設定する。
  3. 充填解析で湯回り不良と巻き込みを確かめる。
  4. 凝固解析で孤立した液相とNiyama指標を見て、押湯と湯道を修正する。
  5. 試作品のX線検査や切断面と比べ、殻と界面の熱伝達の値を調整する。
Coffee Break よもやま話

「炉から出して注ぐまでの30秒」

予熱した殻を炉から出して注湯するまでの数十秒で、薄い殻の外面は放射でみるみる冷える。解析で殻を予熱温度のまま一様に与えると、薄肉の先端で湯回り不良が出ないのに、現場では出る、という食い違いが起きやすい。殻を炉から出した時刻から冷却を計算に含めるだけで、湯回り不良の位置が試作と合うようになることは珍しくない。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
殻を一様な予熱温度で与える湯回り不良を見逃す出炉後の放射冷却を含める
ツリー全体を解かない隣接部品の放射を無視ツリーごと解析
収縮率を足し算寸法がずれる掛け算と方向別の補正
モジュラスだけで押湯を決定孤立した液相を見逃す凝固解析で確認
界面熱伝達を一定値凝固時間の誤差隙間の発生を考慮
🙋

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🎓

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