床応答スペクトル

カテゴリ: 構造解析 | 統合版 2026-04-06
CAE visualization for floor response spectrum theory - technical simulation diagram
床応答スペクトル

床応答スペクトルの理論基礎

床応答スペクトルとは

🧑‍🎓

先生、「床応答スペクトル」って何ですか?


🎓

建物の各階の床レベルでの応答スペクトルだ。地盤の地震入力が建物を通過して各階で増幅される。機器の耐震評価に使う。


🎓

流れ:地震→地盤→基礎→建物(増幅)→各階の床加速度→機器への入力


🧑‍🎓

建物が「フィルター」として地震を増幅するんですね。


🎓

建物の固有振動数付近の成分が増幅される。高い階ほど増幅が大きい。


計算方法

🎓

1. 建物のFEMモデルで時刻歴応答解析 — 地震波入力→各階の加速度時刻歴

2. 各階の加速度時刻歴からSRS(応答スペクトル)を計算 — 機器の入力スペクトル

3. 機器の耐震評価 — 床応答スペクトルを入力として機器の応答を計算


🧑‍🎓

建物の解析→床応答スペクトル→機器の解析の3段階ですか。


🎓

原子力プラントでは建物(RC造)の地震応答解析→床応答スペクトル→機器(配管、弁、電気盤等)の耐震評価が標準ワークフロー。


まとめ

🎓

要点:


  • 建物の各階の応答スペクトル — 機器の耐震入力
  • 建物が地震を増幅 — 固有振動数付近で。高い階ほど大きい
  • 建物の時刻歴→SRS→機器の評価 — 3段階
  • 原子力の耐震設計で最重要 — NRCのReg Guide準拠

Coffee Break よもやま話

フロア応答スペクトルは「建物の中の地震」

フロア応答スペクトル(FRS)は地震時に建物の各階床が1自由度振動子(機器)に与える入力の厳しさを示す指標。地面のスペクトルを入力とした建物解析結果を、各階で再計算する「2段階解析」の考え方はG.W. Housnerが1956年に提唱した。原子力施設では建物FRSを使って機器・配管の耐震設計を行うことが世界標準(ASCE 4-98等)になっている。

床応答スペクトルの数値計算手法

床応答スペクトルの計算

🎓

NastranのSOL 112(モード法過渡)or SOL 109(直接法過渡)で建物の時刻歴を計算し、各階ノードの加速度からSRSを生成。


🎓

直接的な方法:NastranのPARAM,SRSで自動SRS出力。


またはPython/MATLABで加速度時刻歴からSRSを計算。


ブロードニング(Peak Broadening)

🎓

床応答スペクトルのピークを±15%程度広げる処理。建物のモデル化の不確かさを考慮。NRC Reg Guide 1.122で規定。


🧑‍🎓

ピークを広げて保守側にするんですね。


🎓

建物のFEMモデルの固有振動数には±10%程度の不確かさがある。ピークをブロードニングすることで、実際のピーク位置がずれても機器の評価が保守側になる。


まとめ

🎓
  • FEMの時刻歴→SRS後処理Nastran PARAM,SRS or Python
  • ピークブロードニング — ±15%。NRC Reg Guide 1.122
  • 原子力の標準ワークフロー — 建物解析→床スペクトル→機器評価

  • Coffee Break よもやま話

    FRSのブロードニングは15%が米NRC標準

    FRSピークの不確実性(建物固有周波数のモデル誤差、土壌-構造相互作用など)を考慮してスペクトルを左右に広げる「ブロードニング」は、NRC Regulatory Guide 1.122で±15%(つまり合計30%幅)を標準と定めている。日本の耐震設計審査指針でも同様の考え方が採用されており、実際のピーク加速度が解析値より小さく評価されるリスクを低減する。

    床応答スペクトルの実務適用

    床応答スペクトルの実務

    🎓

    原子力プラントの機器耐震評価が最大の適用。


    実務チェックリスト

    🎓
    • [ ] 建物モデルの固有振動数がサイト応答解析と整合しているか
    • [ ] 地震波形(SSE, OBE)が正しいか
    • [ ] 各階の加速度時刻歴が出力されているか
    • [ ] SRSが正しく計算されているか(減衰比、周波数範囲)
    • [ ] ピークブロードニング(±15%)が適用されているか
    • [ ] 機器の耐震入力として使用する階が正しいか

    • Coffee Break よもやま話

      原子炉建屋の最上階FRSは地面の10倍になる

      原子力発電所の原子炉建屋では、建物の増幅効果により最上階のFRS加速度が地面入力の5〜15倍に達することがある。1995年阪神淡路大震災後の電力中央研究所の分析では、実際の地震計記録から遡計算したFRSが設計FRSを最大3倍上回るケースが確認された。この経験が2006年のNRCガイドライン改訂と日本の新耐震設計審査指針策定を促した。

      床応答スペクトルのソフトウェア比較

      床応答スペクトルのツール

      🎓
      • Nastran SOL 109/112 — 建物の時刻歴。SRS自動出力
      • Abaqus *DYNAMIC — 時刻歴解析→Pythonで後処理
      • SASSI(System for Analysis of SSI) — 地盤-構造連成の専用コード
      • ACS SASSI — SSI + 床スペクトルの統合

      • 選定ガイド

        🎓
        • 原子力の耐震Nastran + SASSI(業界標準)
        • 建築の機器耐震 → 建築一貫計算ソフト + 後処理

        • Coffee Break よもやま話

          CLASSI/SASSSIは原子力FRS解析の専用ツール

          FRS解析専用ソフトとして原子力業界で使われる主要ツールはSASSI2000(UCバークレー、TAFT付属)とASCEASS/CLASSI(IBM系)。両者ともSSI考慮のFRS計算が可能で、NRC承認実績がある。汎用FEMでは大型モデルのFRS出力に対応したAnsysのRS-Linkと、NastranのResponse Spectrum Analysisが多用される。いずれもIEEE 344の機器耐震試験基準との整合チェックが必須。

          床応答スペクトルの先端研究

          床応答スペクトルの先端研究

          🎓
          • 確率論的床スペクトル — 地震のばらつきを考慮した確率的な床スペクトル
          • 非線形建物の床スペクトル — 弾塑性建物の床スペクトル。線形仮定を超える
          • SSI(地盤-構造連成)の影響 — 地盤の柔らかさが床スペクトルを変える

          • Coffee Break よもやま話

            土壌-構造連成でFRSピークが40%低下することも

            建物基礎と地盤の相互作用(SSI: Soil-Structure Interaction)を考慮すると、剛基礎仮定に比べてFRSのピーク値が20〜40%低下する場合がある。これは地盤が構造のエネルギーを吸収する「放射減衰」効果による。ASCE 4-16ではSSI考慮の詳細解析(SASSI2000等)をオプションとして認めており、保守的すぎる設計コストの削減に活用されている。

            床応答スペクトルのトラブル対応

            床応答スペクトルのトラブル

            🎓
            • ピークが鋭すぎる → 減衰が小さすぎる。ブロードニングが適用されていない
            • スペクトルレベルが低い → 建物のモデルに質量が不足(有効質量を確認)
            • 階ごとの差が小さい → 建物が剛体的(固有振動数が高い)。正常な場合もある
            • 床スペクトルは「建物のモデルの精度」に依存 — 建物の固有振動数と減衰が鍵

            • Coffee Break よもやま話

              FRSのゼロ周期加速度が入力と一致するか確認

              FRSの高周波端(ゼロ周期加速度:ZPA)は剛体機器の応答に対応し、その値は建物モデルの当該フロアの絶対加速度と一致しなければならない。一致しない場合は①モード切り捨て(有効質量和の確認)、②モード加速度法の未適用、③加速度出力の座標系ミスが考えられる。ANSYSのRSPECコマンド後に`PRRSOL`で直接フロア加速度をZPAと比較するのが最速チェック法。

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              Written by NovaSolver Contributors
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