疲労亀裂伝播(Paris則)

カテゴリ: 構造解析 | 統合版 2026-04-06
CAE visualization for crack propagation fatigue theory - technical simulation diagram
疲労亀裂伝播(Paris則)

疲労亀裂伝播(Paris則)の理論基礎

Paris則

🧑‍🎓

先生、疲労亀裂の伝播はどう予測するんですか?


🎓

Paris則(1963)は疲労亀裂の進展速度を応力拡大係数の範囲で記述:


$$ \frac{da}{dN} = C(\Delta K)^m $$

$da/dN$: 1サイクルあたりの亀裂進展量、$\Delta K = K_{max} - K_{min}$: 応力拡大係数範囲、$C, m$: Paris定数。


🧑‍🎓

$\Delta K$ が大きいほど亀裂が速く進む。対数グラフで直線。


🎓

鋼の典型値: $C \approx 10^{-12}$ (m/cycle, MPa$\sqrt{m}$単位), $m \approx 3$。$m$ が材料の亀裂進展感度。


疲労亀裂の3段階

🎓

1. Region I — $\Delta K < \Delta K_{th}$(しきい値以下)。亀裂は進展しない

2. Region II — Paris則が成り立つ領域。安定伝播

3. Region III — $K_{max} \to K_{IC}$。急速破壊に遷移


残存寿命の計算

🎓

初期亀裂 $a_0$ から臨界亀裂 $a_c$($K = K_{IC}$)まで積分:


$$ N = \int_{a_0}^{a_c} \frac{da}{C(\Delta K(a))^m} $$

まとめ

🎓
  • $da/dN = C(\Delta K)^m$Paris則。疲労亀裂伝播の基本
  • $\Delta K_{th}$ — しきい値以下では伝播しない
  • 残存寿命 = 初期亀裂→臨界亀裂の積分 — 検査間隔の決定
  • 損傷許容設計の基盤 — 航空機の構造寿命管理

  • Coffee Break よもやま話

    Parisの法則とNASAの資金援助

    疲労き裂伝播速度の基本法則「da/dN = C(ΔK)^m」は1961年にParis・Gomezが発表した。初期は主要学術誌に何度も掲載拒否されたが、NASAが民間航空の構造健全性への応用性を認め資金を提供したことで広まった。現在は世界中のき裂評価規格(ASTM E647、BS 7910等)の基礎となっている。

    疲労亀裂伝播(Paris則)の数値計算手法

    亀裂伝播のFEM

    🎓

    1. FEMでSIF $\Delta K(a)$を亀裂長さごとに計算 — 亀裂を段階的に延長

    2. Paris則で$da/dN$を計算

    3. 累積でサイクル数$N$を求める


    専用ツール

    🎓
    • NASGRO(NASA) — 疲労亀裂伝播の業界標準。SIFデータベース+Paris則+R比効果
    • FRANC3D — 3次元亀裂の自動リメッシュ+伝播
    • Abaqus XFEM + *DAMAGE EVOLUTION, CYCLIC — FEM内で亀裂伝播

    • まとめ

      🎓
      • SIFを亀裂長さごとに計算→Paris則で積分
      • NASGRO(NASA)が業界標準
      • FRANC3D + FEM — 3次元亀裂の自動伝播

      • Coffee Break よもやま話

        ΔK計算のSIFハンドブック活用

        Paris則の適用には応力拡大係数範囲ΔK = Δσ√(πa)・Fの計算が必要だ。形状係数Fは解析解(無限板ではF=1)か、ハンドブック(応力拡大係数ハンドブック、Stress Intensity Factor Handbook)から取得する。実用上は半楕円表面き裂(Q因子補正付き)が最も使用頻度が高く、FEMによるSIF計算はその精度確認に使われる。

        疲労亀裂伝播(Paris則)の実務適用

        亀裂伝播の実務

        🎓

        航空機の損傷許容設計(FAR 25.571)、圧力容器のAPI 579 FFS評価、原子炉の亀裂成長評価。


        実務チェックリスト

        🎓
        • [ ] 初期亀裂サイズ $a_0$ が検査の検出限界に基づいているか
        • [ ] Paris定数 $C, m$ が材料試験に基づいているか
        • [ ] R比($K_{min}/K_{max}$)の影響を含めたか(Walker式等)
        • [ ] 残存寿命が検査間隔の2倍以上か(安全率
        • [ ] SIFのFEM計算がハンドブック値と整合するか

        • Coffee Break よもやま話

          FAA安全寿命からダメージトレランスへの転換

          1974年の米国FAR 25.571改訂でダメージトレランス設計が航空機に義務化された。背景には1969年F-111機の翼桁欠陥による事故がある。現在すべての商用航空機は疲労き裂伝播寿命の解析を義務付けられており、Paris則を使って残余寿命を保守的に評価し、点検間隔を設定する手順が標準化されている。

          疲労亀裂伝播(Paris則)のソフトウェア比較

          亀裂伝播のツール

          🎓
          • NASGRO(NASA/SwRI) — 疲労亀裂の業界標準。SIFデータベース+材料データベース
          • FRANC3D — 3次元亀裂。FEMソルバーと連携
          • Abaqus XFEM — FEM内での亀裂伝播
          • AFGROW(USAF) — 米空軍の亀裂伝播コード

          • Coffee Break よもやま話

            NASGRO軟件とNASAの遺産

            NASGROはNASA・SwRI(サウスウエスト研究所)・ESAが共同開発したき裂成長解析ソフトで、Commercial版はFAA認定ソフトとして米国航空宇宙産業で広く使われる。NASGRO方程式はParisモデルを拡張してR比依存性・閾値ΔKth・破壊靭性Kcを1式で表現でき、5000種超の材料データを内包する。Pratt & WhitneyやGEはエンジン部品認証解析に使用している。

            疲労亀裂伝播(Paris則)の先端研究

            亀裂伝播の先端

            🎓
            • NASGRO方程式 — Paris則を拡張。$\Delta K_{th}$, $K_{IC}$, R比効果を含む統合式
            • 短い亀裂の伝播 — Paris則が適用できない短い亀裂($a < 1$ mm)の特殊挙動
            • 確率論的亀裂伝播 — Paris定数のばらつきを含む確率的寿命予測
            • デジタルツイン — リアルタイム亀裂監視+残存寿命予測

            • Coffee Break よもやま話

              可変振幅荷重下のき裂開口効果

              実際の使用環境では荷重が一定でなく、高荷重サイクルの後に低荷重サイクルを加えると亀裂が遅延する「荷重遅延効果」が生じる。この現象はElber(1971年)が発見した「き裂閉口」で説明される。Wheeler・Willenborgモデルはこれを定量化し、過大荷重比1.5倍の場合にParis則の単純積分に比べ寿命が1.5〜3倍延びる予測が可能だ。

              疲労亀裂伝播(Paris則)のトラブル対応

              亀裂伝播のトラブル

              🎓
              • 残存寿命が過大 → $\Delta K_{th}$以下のサイクルを含めているか。腐食環境では$\Delta K_{th}$が低下
              • SIFが亀裂長さで急変 → メッシュの不十分。亀裂を段階的に延長して$\Delta K(a)$を確認
              • R比の効果 → Walker式 or NASGRO方程式でR比補正

              • Coffee Break よもやま話

                R比依存性の見落とし

                Paris則のパラメータCとmは応力比R(=Kmin/Kmax)に依存するが、データベースのR比と実構造のR比が一致しないと予測誤差が大きくなる。R=0.1のデータをR=0.5で使うと、アルミ合金2024-T3では伝播速度を2〜3倍過小評価することがある。Forman式やNASGROモデルはR比依存性を内包しているため、可変荷重下の実設計への適用に向いている。

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                Written by NovaSolver Contributors
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