初期応力剛性マトリクス
初期応力剛性マトリクスの理論基礎
初期応力剛性マトリクス
先生、初期応力剛性マトリクスと幾何剛性マトリクスは同じものですか?
同じ概念の別名だ。$[K_\sigma]$ は「初期応力剛性」「幾何剛性」「応力剛性」とも呼ばれる。座屈解析と振動解析で使われる。
構成
$[K_\sigma]$ は現在の応力状態 $\{\sigma\}$ から構成される。梁要素の場合は軸力 $N$、シェル/ソリッドの場合は膜応力 $N_{xx}, N_{yy}, N_{xy}$ が入る。
$[G]$ は変位の勾配行列、$[S]$ は応力マトリクス。
まとめ
Euler座屈と初期応力剛性行列の発見
圧縮荷重下での座屈を線形代数問題として定式化したのはLeonhard Eulerの1744年の業績だ。彼が導いた「臨界荷重」の概念は実は「初期応力剛性行列が正定値を失う(固有値が0になる)」という現代の表現に対応する。1960年代にTurnerらがFEMに初期応力剛性行列を導入したことで、任意形状の座屈解析が初めて可能になった。
初期応力剛性マトリクスの数値計算手法
$[K_\sigma]$の計算
FEMでの計算:
1. 静解析(or非線形解析)で応力分布を求める
2. 各要素の応力から$[K_\sigma]_e$を計算
3. 全体$[K_\sigma]$に組み立て
全ソルバーで自動計算(座屈解析、プレストレスモーダル)。NLGEOMの非線形解析でも内部的に使用。
まとめ
初期応力剛性行列の組み立て方
初期応力剛性行列Kgは要素内の応力σijと形状関数微分行列の積分∫[G]ᵀ[σ][G]dVで計算する。圧縮応力が支配的なときKgは負定値成分を持ち、(K+Kg)の行列式が0になる荷重が線形座屈荷重Pcrだ。FEMの線形座屈解析は(K+λKg)φ=0の一般化固有値問題を解くことに帰着し、最小固有値λminが安全率(λmin>1で安全)を表す。
初期応力剛性マトリクスの実務適用
実務チェックリスト
鉄骨ラーメン構造の幾何学的非線形設計
AISC 360-10では高層鉄骨ビルの設計で初期応力を考慮した「直接解析法(DAM)」の使用を推奨している。柱が圧縮荷重を受けた状態での水平剛性低下(P-δ効果)を初期応力剛性行列で自動考慮するDAMは、仮想細長比0.2の換算をする「有効長さ法」より3〜5%保守的だが精度が高い。400m超の高層建物ではDAMが標準解析法として使われている。
初期応力剛性マトリクスのソフトウェア比較
ツール
全ソルバーで対応。概念は共通だが名称が異なる。
SAP2000直接解析法の設定
CSI SAP2000のDirect Analysis Method(DAM)設定では、自動的に初期応力剛性行列と柱の剛性低減係数(0.8×EI)を適用してP-δ・P-Δ効果を考慮した非線形解析を実行できる。AISC 360認定ソフトとして米国の構造設計事務所での採用率が高く、特に超高層ビルの風・地震応答解析でのDAM標準設定が確立している。
初期応力剛性マトリクスの先端研究
先端研究
初期応力剛性:プレストレスコンクリートの設計
初期応力剛性の概念は1940年代のプレストレストコンクリート技術者フレシネが橋梁設計で実用化した。PC鋼線の引張プレストレス(通常1,200〜1,400 MPa)がコンクリートに初期圧縮応力剛性を与え、耐荷重を倍増させる原理は現代のCAE解析でも`PRESTRESS`オプションとして各ソルバーに継承されている。
初期応力剛性マトリクスのトラブル対応
トラブル
線形座屈の固有値が1未満になる不合理な結果
線形座屈解析で固有値λ<1(設計荷重で既に座屈)という結果が出ても、実際には座屈しない場合がある。線形座屈は初期不整なしの「完全形状」を仮定するため、膜圧力容器のような幾何学的剛性化効果が大きい構造では非保守的になる。シェルの場合は初期不整(板厚の0.1〜1倍の幾何学的誤差)を加えた非線形座屈解析で確認することが推奨される。
関連トピック
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