形状記憶合金(SMA)モデル
形状記憶合金(SMA)の理論基礎
形状記憶合金とは
先生、形状記憶合金(SMA)って変形しても元に戻る材料ですよね。
SMA(Shape Memory Alloy)はNiTi(ニチノール)が代表。2つの特殊な挙動:
1. 超弾性(Superelasticity) — 大変形(6〜8%ひずみ)しても除荷で完全に回復。温度一定
2. 形状記憶効果 — 変形後に加熱すると元の形状に回復。温度変化で相変態
相変態
SMAの特性はマルテンサイト→オーステナイトの相変態に起因:
- 高温(オーステナイト) — 硬い。超弾性を示す
- 低温(マルテンサイト) — 柔らかい。加熱でオーステナイトに戻る→形状回復
FEMでのモデル
Abaqusの*SUPERELASTIC(超弾性SMAモデル)。応力誘起のマルテンサイト変態をモデル化。
$\varepsilon^{tr}$ は変態ひずみ。応力によるオーステナイト→マルテンサイト変態。
まとめ
形状記憶効果の発見
NiTi(ニチノール)合金の形状記憶効果は1963年にWilliam Buehlerと Frederick WangがUS海軍兵器研究所(NOL)で偶発的に発見した。合金名「Nitinol」はNickel Titanium Naval Ordnance Laboratoryの頭文字に由来する。マルテンサイト変態(低温相)とオーステナイト(高温相)の相変態が形状記憶・超弾性の物理的基盤だ。
形状記憶合金(SMA)の数値計算手法
SMAのFEM設定
```
*MATERIAL, NAME=NiTi
*DEPVAR
24,
*USER MATERIAL, CONSTANTS=14
$ Auricchio modelのパラメータ
```
または:
```
*SUPERELASTIC
sigma_SL, sigma_EL, sigma_SU, sigma_EU, epsilon_L, ...
```
超弾性のヒステリシスループ(載荷-除荷で経路が異なる)をFEMで再現するんですね。
そう。載荷で応力誘起マルテンサイト変態→除荷でオーステナイトに逆変態。ヒステリシスでエネルギーを散逸。
まとめ
Brinson構成則の同定実験
形状記憶合金の代表的構成則Brinson(1993年)では相変態開始・終了応力(σsAs, σfAs, σsMs, σfMs)と最大変態ひずみεLの計5〜6パラメータが必要。DSC(示差走査熱量測定)で変態温度を特定し、等温引張試験を複数温度で実施してσ-ε曲線から変態応力を読み取るのが標準手順だ。
形状記憶合金(SMA)の実務適用
SMAの実務
実務チェックリスト
血管内ステントの設計解析
ニチノール製の冠動脈ステント(径3〜4mm)の設計では、体温37℃でオーステナイト状態に変態し血管壁を0.3〜0.5N程度で押し広げる挙動をFEAで予測する。Abaqusの*SMATERIALキーワード(Superelastic)とAuricchio-Taylorモデルを組み合わせ、FDA 510(k)申請の計算根拠として2010年代から使われている。
形状記憶合金(SMA)のソフトウェア比較
SMAのツール
選定ガイド
Abaqusの超弾性実装
AbaqusではAuricchio(1997年)モデルをベースにした超弾性(Superelastic)材料をv6.5(2005年)から標準搭載。*MATERIALの下に*SUPERELASTIC, LAW=LAGOUDAS またはLAW=AURICCHIOを選択できる。SimuliaCorrectedは2021年にLAGOUDADSモデルの変態ひずみ非対称性パラメータを追加し、圧縮側の変態応力差を表現できるよう機能拡張した。
形状記憶合金(SMA)の先端研究
SMAの先端
R相変態と多段変態
NiTi合金には主変態(B2↔B19')の前にR相(菱面体)変態を経由するものがある。R相変態のひずみは最大約0.7%と小さいが、ヒステリシスが狭く繰返し特性が安定する利点がある。医療デバイス用ステントでは長期疲労寿命の観点からR相変態域を使う設計も行われており、Abaqus UMATによる多段変態モデルの実装事例が報告されている。
形状記憶合金(SMA)のトラブル対応
SMAのトラブル
変態温度のばらつきへの対応
NiTiの変態温度は組成の0.1at%差でAf温度が10℃変化するため、量産ステント解析では変態温度にばらつきを考慮した感度解析が必須。Afが体温37℃より高い場合(マルテンサイト状態で留まる)は超弾性効果がなくなり、ステント径が設計値を下回る。FDA GLPの製造管理基準でAf=32〜35℃が一般的な仕様範囲とされる。
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