Mooney-Rivlin超弾性モデル
Mooney-Rivlin超弾性の理論基礎
超弾性とは
先生、「超弾性」はゴムのような材料のモデルですか?
そう。超弾性(hyperelasticity)は大変形しても元に戻る材料。ゴム、エラストマー、生体組織。応力がひずみエネルギー関数 $W$ の微分で決まる。
Mooney-Rivlinモデル
Mooney-Rivlinは最も広く使われる超弾性モデル。ひずみエネルギー:
$I_1, I_2$ は変形テンソルの不変量。$C_{10}, C_{01}$ が材料定数。
2つの定数だけでゴムの大変形を表現できるんですか?
ひずみ100%程度までは良い精度。200%以上ではOgdenモデルやArruda-Boyceモデルのほうが正確。Mooney-Rivlinは「最もシンプルで広く使われる」モデル。
Abaqus
```
*HYPERELASTIC, MOONEY-RIVLIN
C10, C01, D1
```
$D1$ は体積弾性率(非圧縮の場合 $D1 \to 0$)。
Nastran
```
MATHE, 1, MOONEY
, C10, C01, , , , , D1
```
材料試験
Mooney-Rivlinの定数は以下の試験から決定:
- 一軸引張試験 — 最も基本的
- 二軸引張試験 — より正確
- 平面引張(純せん断) — 補完的
Abaqusでは*HYPERELASTIC, TEST DATAで試験データを入力し、自動フィッティング。
まとめ
要点:
- $W = C_{10}(I_1-3) + C_{01}(I_2-3)$ — 2定数のひずみエネルギー
- ひずみ100%までは良い精度 — それ以上はOgden等
- 非圧縮に注意 — ハイブリッド要素(C3D8RH等)が必須
- 試験データからフィッティング — *HYPERELASTIC, TEST DATA
Mooneyの1940年論文とRivlinの1948年拡張
Melvin Mooneyが1940年にゴムの等方超弾性を初めて2パラメータ(C₁, C₂)で表現した論文を発表したとき、有限変形の数学的体系はまだ確立途上だった。1948年にRonald Rivlinが不変量I₁, I₂, I₃を用いた一般的なひずみエネルギー関数の展開理論を与え、Mooney関数がその最低次近似であることを証明した。これが「Mooney-Rivlin」と二人の名を冠する由来である。
Mooney-Rivlin超弾性の数値計算手法
超弾性のFEM実装
超弾性材料のFEMでの注意点:
1. NLGEOM=YES必須 — ゴムは大変形
2. ハイブリッド要素 — ゴムは非圧縮($\nu \approx 0.5$)。体積ロッキング対策
3. $C_{10}, C_{01}$ のフィッティング — 試験データから
どの要素を使いますか?
まとめ
C₁・C₂フィッティングの実務
Mooney-RivlinパラメータC₁とC₂は通常、一軸引張・平面ひずみ・等二軸の3種類の試験データへの同時最小二乗フィッティングで決定する。天然ゴム(NR)の典型値はC₁≈0.16 MPa, C₂≈0.04 MPaで、伸び率λ=3程度まで良好に適合する。Abaqusの「Evaluate」機能では各試験モードの予測曲線を一画面で確認でき、パラメータが安定かどうか(Drucker安定性)も自動チェックされる。
Mooney-Rivlin超弾性の実務適用
超弾性の実務
Oリング、タイヤ、ゴムブッシュ、防振マウント、医療デバイス等。
材料定数の決定
安定性チェック
Mooney-Rivlinは全変形モード(引張、圧縮、せん断)で正の剛性を持つ必要がある。フィッティング結果が不安定(負の剛性)になることがある。AbaqusのSTABILITY CHECKで確認。
実務チェックリスト
タイヤサイドウォール解析の主力モデル
自動車タイヤのサイドウォール(天然ゴム系コンパウンド)の大変形解析では、Mooney-Rivlin 2パラメータモデルが今なお業界標準のファーストチョイスである。Bridgestone・MichelinのFEM解析部門は1990年代からAbaqusとMooney-Rivlinの組み合わせで接地圧分布・変形形状を解析しており、実タイヤ計測との誤差を5%以内に抑えるフィッティング手順が確立されている。λ≧4の大伸び域ではOgdenモデルへの切り替えが推奨される。
Mooney-Rivlin超弾性のソフトウェア比較
超弾性のツール
選定ガイド
MarcとMSC Nastranの超弾性実装
MSC MarcはAbaqusと並ぶゴム解析の老舗で、Mooney-RivlinはMARCの第1世代(1971年リリース)から実装されている。Marc 2020以降では、試験データをCSVで読み込み自動フィッティングする「Hyperelastic Fitting Tool」が追加された。MSC Nastranは従来ゴム解析に不向きとされてきたが、Nastran SOL 400(非線形)での超弾性材料対応が2016年に強化され、MarcとのHybrid環境で使えるようになった。
Mooney-Rivlin超弾性の先端研究
超弾性の先端研究
不圧縮制約とペナルティ法
ゴムは体積変化をほぼ生じない(ポアソン比≈0.499)不圧縮性材料であり、変位法FEMで扱うと体積ロッキングが起きる。対策として「ほぼ不圧縮(Nearly Incompressible)」定式化にバルクモジュラスKをペナルティとして加え、典型的にはK/μ≈1,000〜10,000に設定する。Abaqusのハイブリッド要素(C3D8Hなど)は静水圧を独立自由度として扱うことでこの問題を回避しており、ゴム解析では「H」サフィックス要素の使用が強く推奨されている。
Mooney-Rivlin超弾性のトラブル対応
超弾性のトラブル
不安定パラメータの落とし穴
Mooney-Rivlinでは C₂<0 になるフィッティング結果が出ることがある。C₂が大きな負値の場合、高伸び域で応力-伸び曲線が単調増加にならず(Drucker不安定)、解析が反転・発散する危険がある。Abaqusの「Material Evaluation」で Stability check を実行すると不安定ひずみ範囲が表示される。実務的な対処は、不安定域を含まない伸び範囲内でのみ使用するか、Ogden・Yeohモデルに変更することである。
関連トピック
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