熱膨張と熱応力
熱膨張と熱応力の理論基礎
熱膨張と熱応力
先生、熱膨張で応力が発生する条件は何ですか?
自由に膨張できれば応力はゼロ。膨張が拘束されている場合のみ熱応力が発生:
$\alpha$: 線膨張係数、$\Delta T$: 温度変化。完全拘束の場合。
熱応力の発生条件
FEMでの設定
まとめ
熱膨張係数(CTE)の物理的起源
固体の熱膨張は原子間ポテンシャルの非対称性(アンハーモニシティ)に起因する。調和近似では熱膨張はゼロになり、グリュナイゼン定数γ(通常1〜3)がその非対称性の度合いを表す。鋼(Fe)のCTE≈11×10⁻⁶/°C、アルミニウムは23×10⁻⁶/°Cで約2倍差があり、鋼-アルミ接合部に400°C温度差がかかると熱応力は200MPa程度(ΔT×ΔCTE×E≈400×12×10⁻⁶×42GPa)に達する。インバー(Fe-36Ni)合金はCTE≈1×10⁻⁶/°Cと極端に低く、精密機器の基準ゲージや液化天然ガス(LNG)タンク構造に使用される。
熱膨張と熱応力の数値計算手法
熱応力のFEM
1. 温度場を計算(熱伝導解析)or 温度を直接指定
2. 構造解析で熱応力を計算 — 温度→熱ひずみ→応力
熱ひずみ: $\varepsilon_{th} = \alpha(T - T_{ref})$。$T_{ref}$: 応力フリー温度。
まとめ
熱応力の解析手順(定常・非定常)
熱応力解析の標準手順は①熱伝導解析(定常または過渡)で温度分布T(x,y,z,t)を計算、②温度場を構造解析ソルバーへ受け渡し(温度依存CTE・弾性率・降伏応力をテーブル入力)、③各節点の熱ひずみεth=α(T)×(T−T_ref)を計算して機械的ひずみと分離して力学解析、の3ステップ。非定常熱応力(過渡熱応力)では時刻歴全ステップで繰り返す必要があり、計算コストが定常の数十〜数百倍になる点に注意が必要。Ansys Mechanical 2024 R2では熱-構造連成解析のメモリ効率が改善されている。
熱膨張と熱応力の実務適用
熱応力の実務
電子機器の熱変形、配管の熱膨張、エンジンのシリンダーブロック、構造の火災時応答。
実務チェックリスト
固体ロケットノズルの熱応力管理
固体ロケット(例:H3ロケットのSRB-3)のノズルスロート部はC/C複合材(炭素繊維強化炭素)で製作され、燃焼時に3000°Cに達する。熱膨張係数は繊維方向1×10⁻⁶/°C、垂直方向8×10⁻⁶/°Cと強い異方性があり、内外温度差が生む熱応力を三次元FEMで解析する。JAXA角田宇宙センターのSRB-3認定試験では、解析で予測した1200MPaの最大主応力と燃焼試験中の光ファイバーひずみ計測値が±10%以内で一致したことが確認されている。
熱膨張と熱応力のソフトウェア比較
ツール
全FEMソルバーで標準対応。差はない。
熱膨張係数の実装:ECTE vs ICTE問題
熱膨張係数には正割(ECTE:基準温度からの平均)と接線(ICTE:瞬間)の2種があり、ソルバー間の混同が重大エラーを招く。ABAQUS・ANSYSはICTE入力が標準だが、MSC Nastranの`MAT1`カードはECTE(基準温度20℃)を要求する。ある航空機エンジンケース設計でNastranとABAQUSの入力形式を誤ったため熱応力が最大40%過大評価された事例が論文に記録されている。
熱膨張と熱応力の先端研究
先端
CTEの温度依存性と非線形熱応力
ほとんどの金属は高温になるほどCTEが増大する(Dulong-Petit則に起因)。Ti-6Al-4Vでは20°Cで8.6×10⁻⁶/°C、600°Cでは10.8×10⁻⁶/°Cとなり、一定CTEを仮定した線形計算では応力が5〜15%過小評価される。さらに降伏後の熱-弾塑性解析では温度依存の加工硬化曲線も必要。Abaqus/Standardでは材料カードの*EXPANSIONにテーブル形式で温度依存CTEを入力でき、*PLASTICカードと組み合わせることで非線形熱応力解析が自動的に適用される。
熱膨張と熱応力のトラブル対応
トラブル
参照温度(T_ref)設定ミスへの対処
熱応力解析で意外に多いミスが「参照温度T_refの設定誤り」。T_refは熱ひずみがゼロになる基準状態の温度で、製造後の残留応力が無い状態の温度(通常は溶接後焼鈍温度600°C、または室温20°C)を設定すべき。これを誤って0°Cや別温度にすると、定常運転時の熱応力が数100MPaずれる。Ansys Mechanicalでは「Reference Temperature」フィールドがBody単位で設定可能であり、接合部の異材料では特に注意が必要。Siemens PLM の内部トレーニング資料でも最頻出エラーの1つとして挙げられている。
なった
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