球周りの強制対流

カテゴリ: 熱解析・強制対流 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for sphere external flow theory - technical simulation diagram
球周りの強制対流

理論:球の熱伝達の相関式

概要

🙋

球の熱伝達の式はいくつかあるようですが、どれを使えばいいですか?

🎓

代表的なのはWhitakerの式とRanz-Marshallの式だ。どちらも流れがないときのNu = 2(周りへの熱伝導)から始まり、流れの効果を足す形をしている。Re = 1000くらいまではほとんど同じだが、レイノルズ数が大きくなると差が開く。Ranz-Marshallの式は液滴の蒸発の実験から作られたので、小さな粒子や液滴には向いているが、大きな球の速い流れにはWhitakerの式が合う。鋼球の冷却と微粒子を例に、数値で確かめよう。

2つの相関式

$$ Nu_{W} = 2 + \left(0.4\,Re^{1/2} + 0.06\,Re^{2/3}\right)Pr^{0.4}\left(\frac{\mu}{\mu_s}\right)^{1/4},\qquad Nu_{RM} = 2 + 0.6\,Re^{1/2}Pr^{1/3} $$

Whitakerの式はRe = 3.5〜7.6×10⁴、Pr = 0.71〜380の範囲で作られた。μ/μ_s は壁温での粘度との比で、気体ではほぼ1とみなせる。

集中定数法による冷却時間

$$ \tau = \frac{\rho c\,d}{6h},\qquad \frac{T - T_\infty}{T_0 - T_\infty} = e^{-t/\tau},\qquad Bi = \frac{h\,(d/6)}{k_s} < 0.1 $$
Coffee Break よもやま話

噴霧乾燥から生まれた式

Ranz-Marshallの式は、1952年にアメリカのランツとマーシャルが、噴霧乾燥の設計のために、つり下げた水滴の蒸発を測って作った。液滴の蒸発と熱伝達は同じ形の式で表せるので、燃料噴霧、スプレー乾燥、粉体の加熱など、粒子や液滴を扱うあらゆる分野で今も使われている。一方Whitakerの式は1972年に、それまでの多くの実験データをまとめ直して、広いレイノルズ数とプラントル数に使えるようにした式だ。

計算例

例1:2つの式の比較(空気、Pr 0.71)

レイノルズ数WhitakerRanz-Marshall差
12.402.54+6%
103.353.69+10%
1006.627.35+11%
1,00018.318.9+4%
10,00061.255.5−9%
70,000183144−22%

例2:直径10 mmの鋼球の空冷

300℃の鋼球を20℃の空気で50℃まで冷やす(Whitakerの式、放射は含めない)。風速5 m/sでは Re = 3185、Nu = 33.0、熱伝達率86.8 W/m²K、ビオ数0.0032、時定数71秒。

風速熱伝達率50℃までの時間
0.5 m/s28.0 W/m²K490 秒
2 m/s54.2 W/m²K254 秒
5 m/s86.8 W/m²K158 秒
10 m/s126 W/m²K109 秒
20 m/s184 W/m²K75 秒
40 m/s271 W/m²K51 秒
🙋

風速を8倍の40 m/sにしても、冷却時間は3分の1にしかならないんですね。

🎓

球のまわりの境界層は風速が上がると薄くなるが、熱伝達率はおよそ風速の平方根でしか増えない。だから冷却時間を半分にするには風速を5 m/sから約18 m/sへ3.6倍にする必要があり、送風の動力は風速の3乗で増えるので、効率はどんどん悪くなる。また低い風速では、ここで入れていない放射が効いてくる。放射率0.8なら300℃で約16 W/m²Kに相当し、0.5 m/sの28 W/m²Kと比べて無視できない。ビオ数が0.003と小さいので、鋼球の内部の温度差は気にしなくてよい。

例3:静止空気中の微粒子(Nu = 2)

粒子の直径熱伝達率 h = 2k/d
50 µm1,050 W/m²K
5 µm10,500 W/m²K

計算のポイント

  1. 物性は膜温度(表面と周囲の平均)で評価し、粘度の補正を入れる。
  2. レイノルズ数が式の適用範囲に入っているか確かめる。
  3. 風速が小さいときは自然対流と放射を加える。
  4. ビオ数が0.1を超えるなら、集中定数法ではなく内部の熱伝導を解く。
  5. 粒子群や充填層では、隣り合う粒子の影響で熱伝達率が変わる。
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「ボールベアリングの焼入れ」

軸受の鋼球は、焼入れのあと油や空気で冷やされる。小さな球ほど熱伝達率が大きく、しかも体積に対する表面積が大きいので、速く冷える。直径が2倍になると、熱伝達率はおよそ0.7倍、時定数は直径に比例して増えるので、冷却時間は約3倍になる。サイズの違う球を同じ条件で冷やすと、大きな球だけ硬さが足りないことがあるのはこのためで、球の大きさに合わせて冷却条件を変えている。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
高ReでRanz-Marshall20%程度の過小評価Whitakerを使う
Nu = 2を忘れる低Reで過小評価伝導の項を入れる
放射を無視高温で冷却を過小評価放射を加える
Biを確かめない内部の温度差を見逃すBi < 0.1を確認
代表長さを半径にReを半分に直径を使う
🙋

関連する内容も知りたいです。

🎓

強制対流ツールで試せるよ。関連するページは円柱の直交流、平板の外部流、集中定数法、球の自然対流が参考になる。

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