円柱周りの強制対流

カテゴリ: 強制対流 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for cylinder crossflow theory - technical simulation diagram
円柱周りの強制対流

理論:相関式とその使い分け

概要

🙋

屋外の温水配管の放熱量を見積もりたいです。風があるときの熱伝達率はどう求めればいいですか?

🎓

円柱を横切る流れの相関式を使うのが基本だ。レイノルズ数とプラントル数からヌセルト数を出し、熱伝達率に直す。ただ、相関式はいくつもあって、同じ条件でも1割くらい違う。それと、風が弱いときは放射と自然対流が効いてくるから、強制対流だけで計算すると放熱を大きく見誤る。風速の範囲に応じて、何が効いているかを確かめるのが大事だよ。

チャーチル–バーンスタインの式

$$ Nu_D = 0.3 + \frac{0.62\,Re_D^{1/2}\,Pr^{1/3}}{\left[1 + (0.4/Pr)^{2/3}\right]^{1/4}}\left[1 + \left(\frac{Re_D}{282000}\right)^{5/8}\right]^{4/5} $$

$Re \cdot Pr > 0.2$ の広い範囲で使える式。物性は膜温度(表面と流体の平均)で評価する。ヒルパートの式やズカウスカスの式はレイノルズ数の範囲ごとに係数を変える形だ。

関係する無次元数

$$ Re_D = \frac{U D}{\nu}, \qquad Ri = \frac{Gr}{Re^2}, \qquad f_{shed} = \frac{St\,U}{D},\ \ St \approx 0.2 $$

リチャードソン数 $Ri$ が1に近いと自然対流と強制対流が同程度、0.1より小さければ強制対流が主になる。$f_{shed}$ はカルマン渦の放出周波数。

Coffee Break よもやま話

電線の歌と熱線風速計

風の強い日に電線がヒューと鳴るのは、電線の後ろで放出される渦の周期的な力のためで、19世紀にストローハルが研究した。円柱の熱伝達も同じ時代から研究され、20世紀の初めには、細い金属線を電気で温め、風で冷やされる度合いから風速を測る熱線風速計が作られた。キングは1914年に細い線の熱伝達の式を示し、これは乱流の測定の基礎になった。円柱の熱伝達は、配管や熱交換器の管群だけでなく、測定器の原理にもなっている。

計算例:外径25 mmの温水配管

外径25 mm、表面80 ℃の配管が20 ℃の空気中にある。膜温度50 ℃の空気の物性(動粘度1.82×10⁻⁵ m²/s、熱伝導率0.0280 W/mK、プラントル数0.704)を使った。

風速Reヌセルト数(CB / ヒルパート / ズカウスカス)式の差熱伝達率(CB)放熱(CB)渦の周波数
0.5 m/s68713.2 / 12.8 / 11.712%14.8 W/m²K70 W/m4 Hz
2 m/s2,74726.8 / 24.3 / 26.410%30.0 W/m²K141 W/m16 Hz
5 m/s6,86843.5 / 40.4 / 45.813%48.8 W/m²K230 W/m40 Hz
10 m/s13,73663.8 / 61.9 / 69.411%71.5 W/m²K337 W/m80 Hz
20 m/s27,47395.2 / 95.1 / 105.210%106.6 W/m²K502 W/m160 Hz
🙋

相関式によって1割以上違うんですね。どれが正しいんですか?

🎓

どれも実験データに合わせた式だから、1割程度の違いはその不確かさだと考えるのがいい。どれか1つを信じるより、複数の式で幅を確かめて、設計に余裕を持たせるのが実務的だ。それよりも大きいのが、強制対流以外の熱の逃げ方だよ。例えば風速0.5 m/sのとき、次の表のように放射と自然対流を比べると、強制対流だけでは足りないのがわかる。

例2:放射と自然対流

熱の逃げ方熱伝達率放熱
強制対流(0.5 m/s)14.8 W/m²K70 W/m
放射(放射率0.9、塗装面)6.95 W/m²K33 W/m
放射(放射率0.1、アルミ地肌)0.77 W/m²K3.6 W/m
自然対流(無風)7.64 W/m²K36 W/m

リチャードソン数は風速0.2 m/sで1.14、0.5 m/sで0.18、2 m/sで0.01。0.5 m/s以下では自然対流の影響が無視できず、放射は表面の仕上げで約9倍変わる。

解析の進め方

  1. 風速の範囲からレイノルズ数とリチャードソン数を求め、何が主になるかを確かめる。
  2. 複数の相関式で熱伝達率の幅を確かめる。
  3. 放射を表面の放射率で見積もり、対流と足し合わせる。
  4. CFDで確かめるなら、非定常で渦の放出を解き、時間平均で熱伝達率を評価する。
  5. 管が並ぶ場合は、前の管の後流の影響を考える(管群の相関式を使う)。
Coffee Break よもやま話

「CFDの熱伝達率が相関式の6割」

円柱周りの熱伝達をCFDで計算したら、相関式の6割ほどしか出なかった——という例がある。定常のRANSで解いていたため、後ろの渦の放出が起きず、後面の熱伝達がほとんど表れていなかった。非定常で解き直して時間平均すると、相関式の1割以内に入った。円柱の後面の熱伝達は、周期的な渦の放出に支えられている。定常解が収束しないとき、それは流れが本来非定常だというサインのことがある。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
強制対流だけで計算弱風で放熱を過小評価放射・自然対流を加える
相関式を1つだけ信用1割程度の誤差を見落とす複数の式で幅を確認
物性を流体温度で評価熱伝達率がずれる膜温度で評価
定常のCFDで渦を無視後面の熱伝達を過小評価非定常で時間平均
管群に単一円柱の式後流の影響を誤る管群の相関式
🙋

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